皆口セレナ(みなぐち セレナ)は、架空のSFアドベンチャー作品『星辰の航路(せいしんのこうろ)』に登場する主要人物の一人である。
彼女は、銀河系の辺境宙域を支配する巨大な独立複合体「ゾディアック連合」に所属する特殊作戦部隊、通称「オリオン特務隊」の若き隊長を務める女性士官である。作中における主要な舞台となる、未開拓宙域の調査と確保を目的とした「イプシロン計画」において、ゾディアック連合側の前線指揮官として登場する。物語の中核となる未確認超古代文明の遺産「アストラル・キー」を巡る、主人公たちが所属する「地球連合軍」との対立構造において、セレナはゾディアック連合の冷徹かつ有能な代理人として、物語の序盤から主人公たちの前に立ちはだかるライバル的な立ち位置を占めている。物語が進むにつれて、彼女の行動原理やゾディアック連合の内部事情が明らかになり、単なる敵役ではない多面的な側面を見せるようになる。
セレナは、かつてゾディアック連合の一員であったが、現在は崩壊した自由惑星「カストル」の出身である。カストルは、高度な情報解析技術と電子戦能力に特化した技術文明を持つ惑星であったが、資源を巡る紛争の激化により、ゾディアック連合内の他の強硬派勢力との大規模な抗争に巻き込まれ、最終的に連合の規制派によって壊滅させられた過去を持つ。幼少期にこの紛争を体験し、両親と故郷を失ったセレナは、ゾディアック連合の孤児収容プログラムによって保護された。その後、彼女は卓越した知性と高い適応能力を認められ、連合の士官養成機関に入校する。特に戦略立案と指揮統率能力において、同期の中でも傑出した成績を収めた。軍歴初期は情報部に所属し、カストル文明の遺産である高度な電子戦術を習得・応用したことで、数々の困難な任務を成功に導いた。その功績と冷徹な判断力が評価され、若くして特殊作戦部隊「オリオン特務隊」の隊長に抜擢され、最重要機密である「イプシロン計画」の実働部隊指揮を任されるに至った。
作中でのセレナの活躍は、「アストラル・キー」の捜索と、それを阻止しようとする主人公たちとの攻防が中心となる。物語の初期、彼女は自身の旗艦「アルデバラン」を駆り、地球連合軍の調査船を何度も出し抜き、超古代文明の遺産が眠る領域への到達を試みる。その際、彼女は物理的な戦闘よりも、緻密な情報戦や電子戦、そして相手の裏をかく戦略的行動を優先する。特に、主人公たちが重要な情報を入手しようとする際に、ネットワークへのハッキングや情報源の遮断を行うなど、間接的な手段で効果的に妨害を行った。物語中盤では、地球連合軍とゾディアック連合双方の部隊が激突する「オリオン星系会戦」において、劣勢であったゾディアック連合軍を立て直し、地球連合軍の主力艦隊に対して一網打尽の危機に瀕するほどの巧妙な罠を仕掛けた。この会戦で主人公の乗艦を一時的に機能停止に追い込み、目的の遺産を寸前で奪取する。しかし、物語の終盤、セレナは「アストラル・キー」の真の力を知るにつれて、ゾディアック連合上層部の真の目的、すなわち、キーの力を利用した全銀河の軍事支配計画に疑念を抱き始める。最終的に彼女は、故郷カストルを崩壊させたゾディアック連合の強硬派と同じ思想が上層部にあることを確信し、物語の最終局面において、主人公たちと一時的な共闘関係を結ぶことを選択する。彼女の協力が、主人公たちがゾディアック連合の野望を阻止するための決定的な鍵となった。
セレナの主な関係者としては、まず彼女の直属の上官であり、ゾディアック連合の実権を握る強硬派の指導者であるガニメデ元帥が挙げられる。元帥はセレナの能力を高く評価する一方で、彼女を道具として見なしており、セレナもまた元帥に対して深い忠誠心ではなく、自己の生存と目的達成のための協力関係として接していた。主人公である地球連合軍の士官、アッシュ・ライトとは、物語を通して最も激しく対立するライバル関係にある。アッシュの直情的で仲間を重んじる戦い方に対し、セレナは冷静沈着で非情な判断を下すため、当初は相容れない存在であった。しかし、幾度もの交戦と情報戦を経て、互いの実力を認め合うようになる。特に最終決戦前の共闘の際には、戦術的なパートナーシップを築いた。また、オリオン特務隊の副官であるトール・ヘイワードは、セレナが唯一本心を打ち明けられる存在であった。ヘイワードは彼女の故郷の過去を知り、常に彼女を献身的に支え、非情な命令を下さざるを得ないセレナの苦悩を理解していた。
彼女の性格は、外見的には冷徹で感情を表に出さない、機械的な指揮官として描写されることが多い。しかし、作中の描写から、その冷たさは過去の悲劇的な経験から来る自己防衛の手段であることが示唆されている。彼女の行動原理の根底にあるのは、「弱者は滅びる」という故郷の崩壊から学んだ教訓であり、それゆえに彼女は常に最強の力と、それを手にするための最適解を追求する。彼女の思想は、一見するとゾディアック連合の強硬派のそれに近いが、彼女が本当に求めているのは支配ではなく、「二度と故郷のような悲劇を起こさせないための絶対的な安定」であった。物語が進むにつれ、彼女は強大な力による支配が新たな悲劇を生むということに気づき、最終的に彼女の行動の軸は「真の安定とは何か」という問いへと変化する。彼女は合理主義者であり、非情な決断を下すことも厭わないが、それは最小限の犠牲で最大限の成果を得るためであり、無駄な殺生を嫌う一面も持っている。
皆口セレナの存在と行動は、『星辰の航路』の物語全体に極めて大きな影響を与えている。物語の序盤から中盤にかけて、彼女の緻密な戦略と電子戦能力は、主人公たち地球連合軍の行動を大きく制限し、物語に緊張感と絶望的な困難をもたらした。彼女の存在がなければ、主人公たちはもっと早く目的を達成できていた可能性が高く、彼女の防衛線が物語の長尺な展開を生み出したと言える。また、セレナが最後に主人公たちと共闘するという選択をしたことは、物語のテーマである「対立を超えた協調」を象徴する出来事となった。彼女の持つゾディアック連合内部の情報と、高度な戦略・技術的な知識が、ゾディアック連合の野望を打ち砕くための決定的な役割を果たした。さらに、彼女の生い立ちや価値観が作中で描かれることで、ゾディアック連合という巨大な敵組織が単一の悪ではない、内包された悲劇や矛盾を抱える複雑な存在であることを視聴者に理解させる助けとなり、物語のテーマ性と深みを増すことに貢献した。彼女の最終的な決断は、主人公アッシュ・ライトの価値観にも大きな影響を与え、戦いの後、アッシュがゾディアック連合との和解の道を探るきっかけの一つともなった。