概要
ロロノア・アライズは、南方の辺境国出身の放浪の剣士である。腰に大小二振りの剣を帯びた、独特の二刀流の使い手として知られる。かつては故郷で悪魔や魔獣の討伐を専門とする傭兵として名を馳せていたが、ある事件をきっかけに故郷を失い、大陸を放浪するようになった。
物語の主人公であるウィリアム・G・マリーブラッド(ウィル)とは、港湾都市「白帆の都(ホワイトセイルズ)」で出会う。当初はウィルの理想主義的な在り方に懐疑的な立場を取り、たびたび衝突するが、数々の困難を共に乗り越える中で、彼の最も信頼できる戦友の一人となっていく。神への信仰ではなく、己の技量と経験のみを信じる現実主義者であり、その姿勢はウィルの成長に大きな影響を与えた。
生い立ち
アライズは、大陸南部に存在した小規模な封建領主、アライズ家の末裔である。アライズ家は代々、〈悪魔の山脈〉から溢れ出る魔獣や亜人を討伐し、国境線を守護する役目を担っていた。そのため、一族の者は幼少期から対人間ではなく、対魔族・対魔獣を想定した特殊な剣術を叩き込まれる。彼が得意とする二刀流もまた、変則的な動きをする敵や、複数の敵を同時に相手にするための、実戦から生まれた技であった。
彼が十代半ばの頃、〈大破壊〉の時代に封印されたはずの上位悪魔が突如として領内に現れ、アライズ家は一夜にして滅亡の憂き目に遭う。アライズは父や兄たちが奮戦する間に辛くも脱出に成功するが、家族と故郷の全てを失った。この出来事は彼に深いトラウマを刻みつけ、同時に悪魔に対する強い復讐心を抱かせる原因となる。
故郷を失ったアライズは、天涯孤独の身となり、傭兵として生きる道を選ぶ。南方の辺境地帯は、中央の神殿や国家の庇護が行き届かない無法地帯であり、彼はそこで生き抜くために、より一層、己の剣技を磨き上げていった。報酬のため、そして復讐の標的である上位悪魔の手がかりを掴むため、危険な依頼を請け負い続け、その過程で「悪魔殺しのアライズ」という異名で呼ばれるようになる。
作中での活躍
アライズが物語に登場するのは、ウィルが聖騎士(パラディン)として名を上げ始め、北方から港湾都市「白帆の都」にやってきた後のことである。当時、都市近郊の森に出没する強力な魔獣の討伐依頼が出ており、ウィルたちのパーティとアライズはそれぞれ別々にこの依頼に乗り出す形で出会った。
当初、アライズはウィルのことを「神の御言葉を振りかざす世間知らずの坊主」と見ており、その青臭い正義感を公然と嘲笑っていた。しかし、戦闘においてウィルが神官としての回復魔法や聖なる武技を使いこなすだけでなく、卓越した戦術眼と、仲間を見捨てない強い意志を持っていることを目の当たりにし、次第にその評価を改めていく。
特に、都市を襲った大規模な獣人の群れとの戦いでは、彼の存在が戦局を大きく左右した。ウィルが騎士たちを率いて正面から敵の主力を引き受ける一方、アライズは長年の経験で培ったゲリラ戦術を駆使し、敵の指揮官を的確に討ち取る。彼の現実的で冷徹な判断と、ウィルの理想を掲げた献身的な戦い方が融合することで、一行は絶望的な状況を覆すことに成功した。この共闘を経て、二人の間には固い信頼関係が芽生えることとなる。
その後も、アライズはウィルの仲間として彼の旅に同行する。特に南大陸に渡ってからは、辺境の地理や魔獣の生態に関する彼の豊富な知識が、一行の窮地を何度も救った。
対戦や因縁関係
ウィリアム・G・マリーブラッド
アライズにとって最も重要な関係にある人物。出会った当初は、神への信仰を力とするウィルと、己の腕のみを信じるアライズとで、思想的に対立する場面が多かった。しかし、ウィルの揺るぎない信念と、人々を救うために己を顧みない姿に触れるうち、アライズはかつて失った「誰かのために戦う」という誇りを取り戻していく。一方のウィルも、アライズの持つ現実的な視点や、綺麗事だけでは救えない命があるという厳しさを学び、精神的に大きく成長した。戦闘においては、ウィルが前線で敵の攻撃を受け止める「盾」となり、アライズがその隙を突いて敵の急所を断つ「刃」となる、見事な連携を見せる。
アライズにとって最も重要な関係にある人物。出会った当初は、神への信仰を力とするウィルと、己の腕のみを信じるアライズとで、思想的に対立する場面が多かった。しかし、ウィルの揺るぎない信念と、人々を救うために己を顧みない姿に触れるうち、アライズはかつて失った「誰かのために戦う」という誇りを取り戻していく。一方のウィルも、アライズの持つ現実的な視点や、綺麗事だけでは救えない命があるという厳しさを学び、精神的に大きく成長した。戦闘においては、ウィルが前線で敵の攻撃を受け止める「盾」となり、アライズがその隙を突いて敵の急所を断つ「刃」となる、見事な連携を見せる。
メネルドール
森エルフの狩人であるメネルとは、共に現実主義者であることから、比較的早い段階で互いを認め合っていた。二人とも口数は多くないが、斥候や奇襲といった場面では、言葉を交わさずとも互いの意図を理解し、完璧な連携を展開する。家族を失った過去を持つという共通点も、二人の間に静かな連帯感を生んでいる。
森エルフの狩人であるメネルとは、共に現実主義者であることから、比較的早い段階で互いを認め合っていた。二人とも口数は多くないが、斥候や奇襲といった場面では、言葉を交わさずとも互いの意図を理解し、完璧な連携を展開する。家族を失った過去を持つという共通点も、二人の間に静かな連帯感を生んでいる。
上位悪魔「黒爪(こくそう)のヴァラキア」
アライズの故郷を滅ぼし、一族を皆殺しにした因縁の相手。非常に狡猾で残忍な性格をしており、強者をいたぶることを好む。アライズの心に深い傷を残した元凶であり、彼が旅を続ける最大の理由でもある。物語の進行とともに、このヴァラキアが「最果ての賢者」の勢力と関わりがあることが示唆され、アライズの個人的な復讐の旅が、世界の存亡をかけた戦いへと繋がっていくことになる。
アライズの故郷を滅ぼし、一族を皆殺しにした因縁の相手。非常に狡猾で残忍な性格をしており、強者をいたぶることを好む。アライズの心に深い傷を残した元凶であり、彼が旅を続ける最大の理由でもある。物語の進行とともに、このヴァラキアが「最果ての賢者」の勢力と関わりがあることが示唆され、アライズの個人的な復讐の旅が、世界の存亡をかけた戦いへと繋がっていくことになる。
性格と思想
アライズは、一見すると皮肉屋で、他者との馴れ合いを嫌う孤高の人物に見える。彼の言動は常に現実的かつ合理的で、感傷や理想論を徹底して排除しようとする傾向がある。これは、過去の過酷な経験から形成された彼の自己防衛本能でもある。神々の存在は認めつつも、その加護には一切期待していない。「神は祈る者ではなく、戦う者にのみ微笑む。それも、生き延びた後で結果的にそう言えるだけだ」というのが彼の持論である。
しかし、その冷徹な仮面の下には、強い正義感と仲間への情を隠している。一度仲間と認めた相手のためならば、自らの危険を顧みずに戦う覚悟を持っている。特に、子供や非力な者が理不尽に命を奪われることに対しては、強い怒りを見せる。これは、彼自身が守るべきものを守れなかったという過去の悔恨に起因している。
ウィルと出会ってからは、彼の頑なだった心も少しずつ変化を見せ始める。ウィルのように、絶望的な状況でも希望を捨てずに戦い続ける生き方があることを知り、己の復讐心だけでなく、未来を守るために剣を振るうことの意味を見出していく。
物語への影響
ロロノア・アライズというキャラクターは、物語に対して多角的な深みを与えている。第一に、ウィルの成長を促す「鏡」としての役割を果たしている。神々の庇護のもとで育ち、純粋な正義を信じるウィルに対し、アライズは神に見捨てられた世界の厳しさと、それでもなお戦い続ける人間の強さを体現する存在として対置される。彼の存在は、ウィルが理想だけでなく、現実を見据えた真の英雄へと成長していく上で不可欠な要素であった。
第二に、彼の存在は「最果てのパラディン」の世界観を大きく広げた。中央の神殿や国家の力が及ばない辺境地域が、いかに過酷な環境であるか、そしてそこに生きる人々のたくましさを、彼の過去や言動を通して具体的に描き出している。
そして第三に、彼の個人的な復讐の物語は、ウィルたちが立ち向かう世界の危機という大きな物語に、人間的な葛藤と動機を与えるサブプロットとして機能している。神々の代理戦争ともいえる大きな戦いの中で、アライズの「個人の復讐」という小さな、しかし切実な物語が組み込まれることで、読者はより一層、登場人物たちに感情移入しやすくなっている。彼は、神々に選ばれた英雄ではない、一人の人間が運命に抗い、戦い続ける姿を象徴するキャラクターといえるだろう。
