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りーたん編 3 - (2008/08/14 (木) 23:14:45) のソース

 どこかのお姉さま方と違って、私には学校の外で男の子と会うことさえ厳しい。 
母の躾も大きいが、事務所から「お前がキッズでは大事な柱なんだからな」と耳にたこが出来るほど言われているからだ。 
私に限らず、りーちゃんも人気の高さからいって恋愛はタブーとされている。 
ちょっとしたスキャンダル一つさえ許されない私たちには、ちっさーが唯一外で会っても許される男の子なのだ。 
私はともかく、りーちゃんはちっさーにかなり真剣なようだけれど、それはそれで心配してしまう。 
りーちゃんの気持ちを考え、私は未だに彼が好きな相手が誰なのかは明かしていない。 
自分がその相手ではないとわかった途端、彼女は嫉妬して涙を流して悔しがるのが想像できる。 
いくら私でも、親友の涙はみたくない。 
りーちゃんには何とかして、うまくいってほしいなと思う気持ちが少なからずある。 
だからこそ、今回のお泊り会はりーちゃんのキューピットになってあげたい。 
自分で言うと安っぽく聞こえてしまうが、こうみえて私は友達思いなところがあるのだ。 
本音を言えば、自分の好奇心を満たす意味もあり、結果的には一石二鳥となれば持ってこいだろう。 
さすがにインターネットや漫画で飢えを凌ぐのにも無理がある。 
実体験に勝るものはなしだ。 

「愛理、梨沙子ちゃんが遊びにきてるわよ。梨沙子ちゃん、さぁどうぞどうぞ。汚いところですけど」 

 夢中でパソコン画面と向き合っている間に、どうやらりーちゃんが遊びに来てくれたらしい。 
私はそっと開いていたノートパソコンの画面を閉じ、いつドアが開けられてもいいようににっこりと微笑む。 
ドアがノックされる音がして、今にも抱きついてきそうなりーちゃんのとびっきりの笑顔が覗く。 

「こんにちは。今日はお泊り会だっていうから、慌てて家を飛び出してきちゃった」 

 大人びた容姿とは不似合いな子供じみた無邪気な笑顔。 
やはり、りーちゃんは容姿の割に精神面では子供な部分が強いとみえる。 
この笑顔だけはどうやっても真似できない私には、自分が妙にひねたところがあるような気がして悲しい。 
これでも、『あぁ』を田中さんたちとやっていた頃より、生意気な部分は自覚して抑え込んでいるのに、どうしてなんだろう。 
一度でいいから私はりーちゃんになって、あの笑顔を皆に振りまいてみたいものだ。 

「そんなに慌てなくてもいいのに。ちっさーなんか全然連絡もなし。たぶん時間になったら来るとは思うけどね」 
「えへへへ、そっか~あいつまだなんだ。ワクワクしちゃうね」 
「よかった。りーちゃんがそう言ってくれるのが何より嬉しいよ」 

 りーちゃんは私の家にはもう何度も来ているので、当たり前に部屋にあるソファに腰かけた。 
クッションを抱いて、彼が来るのが待ちきれないのかソファの上で転がりまわっている。 
こんな幸せそうな顔しているこの娘を、地獄の底に突き落としたりしたら、許さないからね。 

「待ちきれないな~あぁ~もう。どうしよう~胸が張り裂けそうってこういうこと言うんだね」 
「りーちゃん、思いっきり恋する乙女だね。約束の時間近いし、そろそろ来るんじゃないかな~」 

 りーちゃんが到着してからしばらくして、ちっさーもようやく到着した。 
彼は今日もボーイッシュなファッションに身を包み、緊張した足取りでゆっくりと歩いてくる。 
元々男の子なのだから、ボーイッシュという必要はないのだけれど、彼の場合なぜかそう言いたくなるのだ。 
普段ずっといる私でもたまにちっさーが実は男の子なのか女の子なのか迷うことがある。 
それくらい、彼には中性的な部分が目立つ。 
でも、今日の彼はこんがりと焼けた肌に似合う短パン姿なこともあって、少年っぽさが強い。 

「おじゃまします。あ、もうりーちゃんも来てたんだ。こんにちは」 
「千聖~♪」 
「うわっ、り、りーちゃん。お、驚かさないでよ」 
「だって~我慢できなかったんだもん」 

 ちっさーの顔をみるなり、駈け出していって飛びついたりーちゃんはとても満足そうだ。 
頬ずりまでして、ちっさーの頬の感触まで堪能しているのだから、これは相当好きなんだろう。 
一方のちっさーは困惑した様子で、引き剥がすにもそれができずにあわわ言いながら、されるがままになっている。 
焼けた肌にほんのりと赤みがさし、彼がりーちゃんのスキンシップに照れているのがわかる。 
たぶん、男の子なら誰でも一度は目をやってしまうあの大きな胸が当たっているせいに違いない。 
りーちゃんの無邪気さからいって、当たっているからといってさしあたって気にしている風でもない。 
恐るべし、りーちゃん。 

「さぁさ、ちっさーは荷物を置いてきなさいな。ちっさーは電車で移動大変だったでしょ。少し休んでいていいよ。 
 その間に私たちは汗かいちゃったし、ちょっとお風呂に入ってきちゃおうよ」 
「だね~綺麗にしておかなくっちゃ。ばぁ~い、千聖」 

 私とりーちゃんは手を繋ぎ、二人してお風呂場へと消えていった。 
取り残された彼は、目を丸くして自分の置かれた状況についていけず、またしても困惑しているようだ。 
ちっさー、君にもきっと男の欲望が眠っているはずだよ。 
そこをうまく刺激できるよう、お風呂でりーちゃんをちょっと悪戯してしまおう。 
君が欲望を抑えきれなくなるくらい、私がりーちゃんの魅力を引き出してあげるから。 
そうして、君をどんどんりーちゃんの虜にしていくのだ。 
自分でもこれがゲーム感覚なせいか、やたらと楽しくて仕方無い。 
ケッケッケ、ちっさー、さぁ誘惑の開始だよ。

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