我は毛利元就。日輪の申し子なり。
…今、我は生涯最大の危機を迎えている…け、計算していないぞ、こんなの…
…我の夜具が…濡れている…この匂い…明らかに小便であろう。
まさか、まさか、この我が…この我が!?…かような有様、捨て駒共に知れたら…我は…!
…にゃー。
……思い出した。夕べはこの仔猫と共に眠ったのであったな。
考えてみれば我の寝巻きも褌も汚れてはおらぬ。彼奴の仕業であったか。
不埒な獣め、よくも粗相を…どうしてくれよう…輪刀の錆びにしてくれん…
…否、日輪のご加護を受けしこの輪刀で仔猫如きを斬り捨てるのはさすがに憚られる…
それに居室を畜生の血で汚すのも不快である…どうすれば良い…
「殿様。お早うござりまする。お顔を洗われますよう…」
まずい、侍女が入ってきた…この状況を見られては…!無論、我の小便では無いのだがっ!
「夕べは良くお休みになられましたでしょうか?…あら、この匂い…?」
しまった!!気付かれたか!
…良く気の利く、数少ない使える手駒であったが…その口、封じさせてもらう!
…が。
「まぁ!いけない猫ちゃん!殿様のお布団を汚すなんて…めっ!」
目ざとく仔猫を見つけて言うや否や侍女は仔猫の首を押さえつけ、小便の跡に顔を押し付けるのであった。
当然、仔猫はにゃーにゃーと鳴き、必死で抵抗する。
な、何をしておる、嫌がっておるではないか…!
「いいえ、殿様。これは『しつけ』にございまする。飼い猫は小さいうちにこうして躾けねば
ところ構わず粗相をするようになってしまいます。可哀想ですがここはお任せ下さりませ」
…だ、誰もまだ飼うとは…い、いや、そ、そういうものであるか…
宜しい、では貴様に任す。我は顔を洗い朝餉を取るとしよう。
それからその汚れた夜具は…
「はい、処分しておきまする。今晩までには新しい夜具をしつらえるよう手配いたします」
…優秀な手駒はやはり良いものだ…余計な指図をせずとも我が意を汲み取り、的確に動く。
先刻までの憂鬱も吹き飛び、我は気分良く手水場へと向かった。
ぬこ5
最終更新:2006年09月18日 03:55