とざい、とうざい。わたしく、テーマ部門へのエントリーを願う者にあります。
拙作、名を『錆色の趣』と申します。
さて、今回紹介致しますは一人の老兵。…と申しましても”武人”と呼ぶにはあまりにも卑屈に過ぎる小物も小物。
幾戦も経ながら戦果らしい戦果も挙げず、秀でたものと言えば生存技術位なもの。まさに『錆びついた刀』にございます。
本人はもちろん、周囲も『終わった人材』とみなしていることは明白で、装備も階級も若いものに追い越されるような有様な訳で。
幾戦も経ながら戦果らしい戦果も挙げず、秀でたものと言えば生存技術位なもの。まさに『錆びついた刀』にございます。
本人はもちろん、周囲も『終わった人材』とみなしていることは明白で、装備も階級も若いものに追い越されるような有様な訳で。
そこで降りかかりますは部隊の危機。大軍に囲まれての撤退戦。絶対絶命とはまさにこのこと。生存など望めぬ”しんがり”に誰を選ぶか。
軍議の重い空気に突如、最後尾から老兵の下卑た笑い声が響くのであります。
「要は捨て駒だろ?俺みたいな人間のゴミを、こういうときに使うんだよォ!」
軍議の重い空気に突如、最後尾から老兵の下卑た笑い声が響くのであります。
「要は捨て駒だろ?俺みたいな人間のゴミを、こういうときに使うんだよォ!」
果たして陣地に押し寄せた大軍。彼らが見たのは大量の張りぼて。そして、卑屈な笑みを老兵が一匹。
邪魔者を全力で排除に当たろうと致しますが、しかして簡単にはくたばらない訳であります。
だまし討ち、雲隠れ、死んだふり…。持てる技能の限りを尽くして文字通り死に物狂いで戦う老兵の顔はい余んで見たことないほど生き生きしていたとか。
邪魔者を全力で排除に当たろうと致しますが、しかして簡単にはくたばらない訳であります。
だまし討ち、雲隠れ、死んだふり…。持てる技能の限りを尽くして文字通り死に物狂いで戦う老兵の顔はい余んで見たことないほど生き生きしていたとか。
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さて、最後に朱色のアクセントを添えて仕舞いと致しましょう。
悲愴な時間稼ぎの末に援軍を得た部隊はその後攻勢に転じ、敵が討ち果たされ、皆が歓喜に沸く中、果たしてこの老兵が見つかる訳であります。
血か泥か分からぬ汚れ。誰が見てももう長くないと知れる傷。
悲愴な時間稼ぎの末に援軍を得た部隊はその後攻勢に転じ、敵が討ち果たされ、皆が歓喜に沸く中、果たしてこの老兵が見つかる訳であります。
血か泥か分からぬ汚れ。誰が見てももう長くないと知れる傷。
そこに現れましたるは部隊の指揮官。
何とか言葉を紡ごうとする老兵を押しとどめ、口を開くことには、
「もうよいのだ…休め。損害はほぼ無く撤退はおろか勝利までもあいなった。そなたこと誠の武人である。大義であった。」と、静かに言い聞かせるのであります。
その言葉が聞こえてか聞こえずか、老兵はこと切れる。
そこに血が出るほど強く噛まれた指揮官の唇から、老兵の錆びた鎧に朱がしたたる光景にて「錆色の趣」のお話は幕と致しましょう。
何とか言葉を紡ごうとする老兵を押しとどめ、口を開くことには、
「もうよいのだ…休め。損害はほぼ無く撤退はおろか勝利までもあいなった。そなたこと誠の武人である。大義であった。」と、静かに言い聞かせるのであります。
その言葉が聞こえてか聞こえずか、老兵はこと切れる。
そこに血が出るほど強く噛まれた指揮官の唇から、老兵の錆びた鎧に朱がしたたる光景にて「錆色の趣」のお話は幕と致しましょう。
ありていに言えば、高度な看取られにございますね。いたく話し込んで仕舞やしたが、この錆色への憧れに共感される殿方お嬢様方がいらっしゃいましたら幸いでございます。
では、わたくしめのお話はこれにて。
では、わたくしめのお話はこれにて。
3:50:59頃より
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