班対抗運動会 ~ しあわせ草を食う生物

あらすじ

30・50日目の試合に勝利し、一軍相手に2連勝したパワポケ。
ところが、途中で野球班と重量挙げ班のケンカが起こる。
収容者たちのストレスがたまってきていると危険視したヘルガ。
そこでマコンデがよい考えを思いつく。それは班対抗の運動会だった。
パワポケは班対抗運動会に向けて能力を鍛える。そして班対抗の運動会に勝った後、
試合にも勝利! バオから島の秘密が記されている本を見る。
ヘルガからこの組織には動機があると聞くと、この世界に憎しみを広めることだったのだ!
それを聞いたパワポケは、それは間違っていると戦慄したのだった...
90日目の試合に勝利後、ドクターはうっかりしあわせ草のエキスが入ったビンを落としてしまう。
その後収容者2人が洞窟で休んでいると、怪物のうなり声が。
その正体を見に行った収容者2人はうなり声を上げた怪物に食べられてしまった!

バオ「やあ!」
パワポケ「あれ、バオじゃないか。」
バオ「なあ、前に協力してくれるって言ったよな?
ちょっと、あいつらを追い出すのを手伝って欲しいんだ。」
パワポケ「よし、まかせろ。」

(そして...)

バオ「ほら、これなんだけどさ。」
パワポケ「うわ、爆弾じゃないか!」
バオ「そうさ。これをあいつらの所に運ぶのを手伝って欲しいんだ。」
パワポケ「それで、どうするんだ?」
バオ「オレが、この先っちょを叩いて爆発させる。」
パワポケ「なんだって! 死ぬ気か?」
バオ「オレはこう見えても足速いんだぜ。爆弾のカケラなんて、こう ひょいっとよけるさ。」
パワポケ「.....なあ、バオ。爆発って見たことあるのか?」
バオ「ああ、ヤシの実が落ちるとこぐらい見たことあるぜ。こう、パーンと爆発して...」
パワポケ「...............お前、銃の弾はよけられる?」
バオ「「じゅう」ってライフルのことか? そんなの無理に決まってるだろ。」
パワポケ「爆弾の爆発はあれより速いぞ。(破片じゃなくて衝撃波だしな。)」
バオ「うそっ!? それじゃあ、ちょっと考え直そう。そうだ、あんたが叩くってのは?」
パワポケ「......断る。」

パワポケは渡辺にこないだ預けたペラを返してほしいというが、またしてもペラがない。
渡辺はまた50ペラ預けてみないかといい、パワポケはもう返ってこないと
思った方がいいと愚痴をこぼしながら50ペラを渡す。
パワポケは預けたペラを返して欲しいというが、またないという。...が、
それは嘘であり、預けたペラがなんと5倍になって返ってきた!
その後、渡辺は野球を真面目にがんばり、パワーアップした。

パワポケ「今日は、所長達が出払ってるから管理所が手薄なんだよな。
今日こそ、倉刈さんに電話させてあげるぞ。管理所の中には誰もいないから...
警備している兵隊に話しかけて注意をそらせばいいんだけど...ここは小杉に頼もう。」

(そして...)

小杉「...なるほど、危険な仕事だな。50ペラでやってやろう。」
パワポケ「高いな。」
小杉「命がけなんだぞ。むしろ、安すぎるくらいだ!」
パワポケ「わかったよ。」

パワポケは小杉に50ペラを払った。

小杉「ところで、決行は夕方だ。」
パワポケ「なんだって?」
小杉「夜だと怪しまれるからな。」

(そして...)

小杉「よう。」
倉刈「あ、小杉く...さん。」
パワポケ「小杉、約束だからな。」
小杉「ああ、俺はもらうものもらったら何の問題もないからな。」
倉刈「どういうことですか?」
パワポケ「いいからいいから。じゃあ、小杉は...」
小杉「俺に指図するなよ。まかせろって!」
パワポケ「...頼んだぞ。」

小杉は兵隊に話しかけた。

小杉「よお、お仕事ごくろうさま~」
BB団の兵士「ふん、この問題児が! 見張りの邪魔だから、あっちへいけ!」
小杉「まぁ、そう言うなよ。実はさ、ちょっと頼みたいことがあるんだけどな...」
パワポケ「今です! 倉刈さん!」
倉刈「はい!」

(タタタタタッ...)

パワポケ「早く!」
倉刈「はい。」

(トゥルルル...カチャ)

(はい。倉刈です。)
倉刈「日出子? 日出子か?」
(えっ? 何? だれ? おとうさん? おとうさんなの? どうしたの? 今どこにいるの?)
倉刈「いや、心配しなくていいから。どうだい大学は?」
(そんなことより、今どこなの?)
倉刈「いや、もうすぐしたら帰るから心配しなくていいよ。」
(えっ? ほんと?)
倉刈「弟のあきらはどうだ?」
(ええ、元気よ。でもお父さん...)
パワポケ「倉刈さん。もう時間が...」
倉刈「...ああ。日出子。あれ、いつも言ってたあれ、言ってくれないか?」
(...恥ずかしいわ。)
倉刈「頼む。」
(日本一のおとうさん! 頑張って!)
倉刈「うっ...ありがとう..日出子。」
パワポケ「倉刈さん...」
倉刈「じゃあ元気でな...ひで...」

(チン!)

パワポケ「さあ急いで!」

(そして...)

小杉「よう。そっちはうまくいったか?」
倉刈「ええ、すいません小杉さん。」
小杉「いいって。昔、同じ釜の飯食ったよしみだよ。」
倉刈「えっ? でも、私はあなたと同じチームにいたことは...」
小杉「なんでもない。こっちの話だよ。」
パワポケ「よかったですね、倉刈さん。」
倉刈「ありがとう、パワポケさん。」

倉刈がパワーアップした!

翌日...

所長「...なに? 外部との通話記録が残っていた、だと。ただちに調査を開始しろ!」
BB団の兵士「ハッ!」

57日目

収容者B「おい、江川班!
お前たちは、シャワー小屋の使い方が汚いぞ。掃除する俺たちのことも考えろ。」
小杉「お前たちこそ、トイレをもう少しキレイに使えよ。同じ文明人とは思えないぜ。」
収容者B「ケッ! いまどき野球なんて古いんだよ。サッカーだろ、サッカー。」
小杉「なんだと!」
収容者C「あー、それは関係ないんじゃないのかな。うん。」
収容者A「...お前は、黙ってろって。あ、ケンカになった!」

(ドカバキボコ)

パワポケ「おい、みんな やめ...」

(バキ!)

パワポケ「なにをする!」

(ドカバキボコ)

(パーン!)
BB団の兵士「やめんか、バカモノども!」
全員「.......」

(そして...)

BB団の兵士「...ということがありました。」
所長「いかんな。収容者どものストレスが溜まってきている。」
マコンデ「ほっほっほ~。この私めに、よい考えがございます♡」

(そして...)

パワポケ「ええっ、班対抗の運動会?」
江川班長「うむ。10日後に行なうらしい。」
小杉「よーし、今日の借りを返してやるぜ。」
江川班長「じゃあみんな。やりたい競技を選んでくれ。」

パワポケは球入れを選んだ。

落田「球入れには、コントロールが必要でやんすね。」
パワポケ「10日後は、がんばるぞ!」

そしてパワポケは、60日目の野球のテストも合格した。

62日目

江川班長「今晩、江川班は追加の作業があるぞ。」
三谷「5日後の運動会で使う道具を作れってんですな。」
落田「パワポケ君、チャンスでやんすよ! この球入れのカゴに細工をして...」
パワポケ「...まともに作れ。イカサマをして勝っても、うれしくないだろ!」
落田「ちぇー、でやんす。」

所長「収容者たちの運動会まであと5日か。
それにしてもマコンデ。お前にしては健全な提案だったな。」
マコンデ「ほっほっほ、違うのですよ。」
所長「ん?」
マコンデ「審判はわれらBB団がやりますがそこで、わざと疑惑の判定を連発するのです!
すると、班どうしの疑心暗鬼をさそい、やつらはいっそう憎み合うことに。」
所長「......却下だ。」
マコンデ「ええっ?」
所長「そもそも、収容者同士がケンカするのを防ぐためのイベントで、
いっそう対立を大きくしてどうする!」
マコンデ「むしろ、連中がおたがいを憎んでいる状態が好都合ではないかと...
たとえば、もし連中が全員結束したらこの島を管理できなくなりますよ?」
所長「こういうイベントで班の内部の結束が高まれば、班と班との間の対抗心も高くなるさ。」
団長「ブルマでやんす!」
(バンバン!)
団長「運動会といえばブルマと相場が決まっているのでやんす!」
所長「団長。収容者に、女はおりません。」
団長「うぐっ...じゃ、この際お前が...」
所長「お断りします!」

67日目

マコンデ「ウォッホン! それでは、第一回しあわせ島班対抗運動会を開催する!」
(パーン!)
BB団「副所長、それは実弾です!」
パワポケ「俺の担当は球入れだな!」
落田「パワポケ君、出番でやんす!」
パワポケ「よし、まかせろ!」

(そして...)

パワポケ「よしっ、勝ったぞ!」
落田「でかしたでやんす。」

砲丸投げの結果

三谷「フン、楽勝だな!」

短距離走の結果

倉刈「なんとか勝ちましたよ。(日出子、お父さんは、がんばってるぞ。)」

マラソンの結果

渡辺「おーい、勝ったぞー!」

騎馬戦の結果

小杉「やっつけてやったぜ!」
中田「ざまあみろだ。」

全種目終了後...

BB団の兵士「結果を発表する! .........5ポイント獲得で、野球班の勝利!」
野球班のみんな「やったー!!」
重量挙げ班たち「...ちぇっ。」
BB団の兵士「負けたチームからは50ペラを全員から徴収し、
勝ったチームに渡すことになる。以上で本日の運動会を終わる。解散!」

所持金が50ペラ増えた

所長「あれっ? 最後に、フォークダンスとかキャンプファイヤーはやらないのか?」
BB団の兵士「は?」
所長「いや、なんでもないぞ! ...なんでもない...」
BB団の兵士「(楽しみにしていたみたいだな。)」

そしてパワポケは試合のために班長に50ペラを渡し、70日の試合で大活躍して勝利!

マコンデ「そろそろ例の大会ですな。」
所長「チームの仕上がりはどうか?」
マコンデ「は、万全です。あの大会の優勝賞品が何なのかは今だにわかりませんが...」
所長「そんなものはどうでもよい。上位入賞、できれば優勝だ。
しあわせ草効果の宣伝こそわれわれの目的なのだからな。」
マコンデ「しかし、優勝となると...あの国のチームに勝ってしまうわけですが。」
所長「.....それだ。わが組織の今後を考えると、
あの国のチームには、わざと負けるのが賢明かもしれない。
しかし、もし負けると、我らの技術がかの国の技術に劣っていることになる。
なにか、いい方法がないものか。」

工場で収容者の2人が銃が故障するよう細工をしている。

収容者C「ここで俺たちが作ってる銃は、
どこかで使われるんだよな。あまり、いい気はしないよな。」
収容者A「この針みたいな部品があるだろ? これをハンマーで一回叩いて...」
(カン!)
収容者A「ペンチで元に戻しておくんだ。」
収容者C「すると、どうなるんだ?」
収容者A「この銃が、故障しやすくなる。」
収容者C「あ...ああ、なるほどな!」

パワポケはその場で見なかったことにした。

パワポケ「気持ちは、俺にもわかるからな。」

バオ「やあ!」
パワポケ「あれ、バオじゃないか。」
バオ「なあ、考えたんだけどさ、あんたらが畑で作ってるしあわせ草ってあるだろ?」
パワポケ「うん。」
バオ「あれは、もともとこの島に生えていたものなんだけどさ、
あれを食べると生き物が大きくなるらしいんだ。」
パワポケ「はぁ? 本当に?」
バオ「北側の洞窟に、日本人が飼ってたトカゲがいるんだ。
こいつが、しあわせ草を食って大きくなったって、じじいから聞いたぜ。」
パワポケ「......それで?」
バオ「だからさ、その辺の生き物に片っ端から食わせて、
大きくなった生き物に、兵隊たちを襲わせるってのはどう?」
パワポケ「......ダメだな。」
バオ「どうして?」
パワポケ「まず、あの草は変な臭いがするのか虫も近寄らない。
だから食べさせるのは難しいな。次に、そんな作戦だと俺たちも村の人間も危ない。
最後に....飼われてたそのトカゲって、人を襲うのか?」
バオ「いやぁ、おとなしいもんだぜ。....あ。」
パワポケ「根本的に、だめじゃないか。」

所長「ほう、通学のバスに爆弾を?」
マコンデ「はい。死者は50人を超えたそうです。」
所長「ハハ、最近ではそういう見境のない犯罪は貴重だな。
次の取り引きでは、少しサービスしてやれ。試作品を渡してみてもいい。」
マコンデ「しかし、よろしいのですか? そんな凶悪な連中に武器を売るなんて。
下手をすると、我々の評判を落として国際世論の攻撃を受けることになりかねませんぞ?」
団長「どんな相手にも武器を売る、そういう評判も大事でやんす。
それに、世界中に恐怖と憎しみを広めることこそ、我がBB団の目的でやんす。」
マコンデ「はい...わかりました、団長。」
団長「そろそろ、奴にも罪の意識が芽生えたでやんすかね?」
所長「彼には、悪である覚悟が足りません。
ああいうタイプは、突然裏切ることがありますから、注意が必要かと。」
団長「ヘルガ。始める前は、誰しも覚悟はしているつもりなのでやんすよ。
ただ、現実は常に予想の上をいくのでやんす。」
ヘルガ「...なるほど。心得ておきます。」

ヘルガ「ここでなにをしている。」
パワポケ「ちょっと考え事をね。
この組織...BB団は、単なる普通の犯罪組織には見えないな。」
ヘルガ「ふむ。犯罪組織の「普通」というのも、奇妙な概念に思えるが?」
パワポケ「いや、この組織には動機がある。それがなにかはわからないけど、
少なくとも金じゃないな。この島は、快適とはほど遠い。
それなのに活動ができるのは、強い信念があるからだ。」
ヘルガ「...まあ、貴様になら話してみても良いだろう。BB団の目的は、人類を救うことだ。」
パワポケ「はぁ?」
ヘルガ「お前は気づいていないかもしれないが、
今、人類は危機に直面している。文明と科学の進歩がまねいたことだ。」
パワポケ「具体的にどういう危機なんだい。核爆弾か? 汚染か? 電磁波だとでも?」
ヘルガ「それは、滅亡にいたる方法にすぎん。われらが問題にするのは、動機の方だ。」
パワポケ「動機だって?」
ヘルガ「疫病、飢餓、戦争...こういったものは、たしかに存在し、今でも大きな問題ではある。
だが、それはほんの10年前と比べてもどんどん改善されている。
いずれ、人間をおびやかす外的な要因は弱まり、無視できるようになるだろう。」
パワポケ「けっこうなことじゃないか。」
ヘルガ「そして、人類は直面することになる。己自信の闇に、な。」
パワポケ「何を言って...」
ヘルガ「生きるのが困難で忙しいうちは良い。あまり、それを考えなくてすむからな。
克服すべき障害、戦うべき敵を失った時、誰もが冷酷な真実に気づくのだ。」
パワポケ「....」
ヘルガ「そう、もはやこの世界に未来を託すべき希望、夢も神秘も残されてはいない。
もし、この世界から解決すべき問題がなくなってしまったら、
そこには絶望しか残っていないのだ!」
パワポケ「なんてことだ...まさか、君たちは?」
ヘルガ「そうだ! 人類には敵が必要なのだ。憎み、戦い、打ち倒す。
自分たちが不幸であることの言い訳となってくれるものが。」
パワポケ「バカな! そのために世界中の犯罪者とテロを援助しているのか?
それは単に不幸な人を増やすだけだ!」
ヘルガ「その苦しみが1つ終わった時、
それ以上の人間が希望を得るさ。これで幸せになれる、とな。
悲劇と絶望なくして希望のタネは育たんのだ!」
パワポケ「くっ!」
ヘルガ「まあ、よく考えるのだな。そうすれば、理解できるはずだ。」
パワポケ「..................それは間違っている、きっと。」

中田「.....」
パワポケ「あれ? どうしたんですか、中田さん? 元気ないですね。」
中田「ああ、パワポケか...俺さあ、ここにもう5年もいるんだ。
でもよ、実家には、もう7年も帰ってねえんだ...」
パワポケ「7年も..ですか...」
中田「俺の実家は、農家やっててよ、年老いたお袋が一人で暮らしてるんだ。
だから、1日でも早くここを出て、田舎に帰り、お袋に、今までかけた苦労を返したいんだ...」
パワポケ「それじゃ、一緒に、早くここを出れるように、がんばりましょうよ!」
中田「そうなんだよ。わかってるんだよ。
でもさあ、全然ペラが貯まんねえんだよ。どうしたらいい...?」
パワポケ「ど、どうしたらって........」
落田「がんばるんでやんす! がんばるしかないでやんす!
少しでも希望があるのなら、がんばるのでやんす!!」
パワポケ「落田君、いいこと言うじゃないか!」
中田「そ、そうだよな...それしかないんだよな...よ~し、一緒にがんばろうぜ、二人とも!」
パワポケ「で、落田君は、少しはペラは貯まったのかい?」
落田「全然でやんす~~~...」

小杉「.........」
パワポケ「小杉、こんな所にいたのか。そろそろ宿舎に帰らないと。」
小杉「...うるさいな。ほっといてくれよ。」
パワポケ「...君が、この島でなにかと投げやりなのは、
帰る場所がないと思ってるからじゃないか?」
小杉「そうだよ! たとえペラを貯めたって、オレは日本には帰れない。...有名人だからな。」
パワポケ「もう一度、顔を変えてみたらどうだ? まったく別の顔に。」
小杉「恥ずかしい話だが、それで生きられる自信がないんだ。
以前の知り合いは本物の小杉をオレだと思ってるし、唯一真相を知ってた奴は、オレを裏切ったしな。」
パワポケ「なーんだ、そんなバカなことを気にしていたのか。」
小杉「いや、しかしオレは野球以外のことは皆目ダメ...」
パワポケ「そうじゃない。この島で、江川班のみんなと大勢知り合いになったじゃないか。」
小杉「あっ、そうか! こんな異常な体験をした仲間なんだ。きっと外の世界でも助けてくれる!」
パワポケ「そうだ。そのためにも、みんなが無事に
この島から出られるように野球をがんばろうじゃないか。」
小杉「よーし、元プロの実力を見せてやるぜ!」

小杉がパワーアップした!

そしてパワポケは、80日の野球のテストも合格した。
リフレッシュ小屋でヤギと過ごした後、見送りにきてくれた。

ヤギ「メェ~~~。」
パワポケ「おや、俺を見送ってくれるのかい?」
ヤギ「メェ~~~~。」
パワポケ「ありがとうよ。それじゃ、またな。」
ヤギ「メェ~~~~~。」

パワポケ「なんか、今日は気分が重いなあ...そうだ、気分転換に泳ぎに行こう。」

(そして...)

パワポケ「天気が良くて、気持ちいいなあ~。」
(た、助けて~~~!)
パワポケ「ん...!?」
インミン「だ、誰か、助けて~~~!」
パワポケ「あ!! インミンが、おぼれてるぞ! た、大変だ、助けなきゃ!」

(そして.....)

パワポケ「インミン、もう大丈夫だ! 俺につかまれ!」
インミン「あ、パワポケ...!?」

(ぐぐっ!)
(バシャバシャバシャ...)

パワポケ「よし、もう少しで浜に上がるぞ。がんばれ、インミン!」
インミン「う、うう...」
パワポケ「ふう~~、やっと着いたぞ...大丈夫か、インミン!?」
インミン「.....」
パワポケ「え...!? 息が止まってるぞ!? た、たいへんだ~!!
ど、ど、ど、どうしよう...こ、こうなったら、え~~~い!」

(す~~~)
(ぶちゅっ!)
(ふうぅ~~~~~~)
(す~~~~)
(ぶちゅっ!)
(ふうぅ~~~~~~)

落田「あ、パワポケ君が、インミンに覆いかさぶって、
チュ~してるでやんす! だ、ダイタンでやんす~! パワポケ君、やるでやんす~~~!」
パワポケ「ま、まだ、だめか...く、くそ~!」

(す~~は~~~)
(ぶちゅっ!)

(パチッ!)
インミン「...!?」
パワポケ「あ!!」
インミン「あ...!?」
パワポケ「イ、インミン、大丈夫か!?」
インミン「パワポケ...た、助けてくれたんだ...」
パワポケ「よ、よかった...」

(バタッ...)

落田「あ、パワポケ君が倒れちゃったでやんす!
チュ~のしすぎで、呼吸困難になっちゃったでやんすね。うらやましいでやんす~。
オイラもそんな熱いチュ~をしてみたいでやんす~~~。」

(そして.....)

パワポケ「.....あ、インミン...」
インミン「あ、やっと気がついたか? パワポケ、大丈夫か?」
パワポケ「ああ、ちょっと息苦しくなっちゃって倒れちゃったみたいだね...
とにかく、インミンが助かって、よかったよ...」
インミン「ありがとう、パワポケ。パワポケが助けてくれなかったらワタシ、今頃...」
パワポケ「でも、どうしてあんなことになったんだい? インミンは、泳ぎが得意だろ?」
インミン「うん、なんか疲れてたみたい。それで、急に足がつっちゃって...」
パワポケ「最近、BB団のやつらの態度がひどくなってきてるからなあ...
働かされすぎなんだろうなあ...」
インミン「それじゃ、みんなが心配してるかもしれないからワタシ、
そろそろ帰るね? パワポケ、ありがと。」

(チュッ!)

パワポケ「あ...」
インミン「それじゃ、サヨナラ~!」
落田「あ、今度は、インミンにチュ~してもらったでやんす~! うらやましいでやんす~。」

パワポケは度重なる作業で疲れ果てて宿舎に戻り...

パワポケ「はぁ~、今日も一日疲れたなぁ~」

(わいわいわい...)

パワポケ「なんだろう...みんな、ここの暮らしに満足しているように見えるぞ。」
落田「人間、管理される側はらくちんでやんすからね。
何も考えずに、ただ従っていればいいんでやんすから。
少しの不自由さえ我慢すればここも表の世界も、それほど変わらないかもしれないでやんす。」
パワポケ「そ、そうかもな...支配される側は、文句さえ言っていればいいんだからな。
まあ、ここではその文句さえ言えないんだけど。」
落田「でも、みんな満足しているみたいでやんすよ?」

(わいわい...)

パワポケ「人間低い所でとどまっていると、そこでよどむんだよ。
よどんでしまったら、人間は終わりさ。落田君。俺は元の世界に戻るからな...絶対に!」
落田「オイラもでやんす!」

89日、パワポケは江川に30ペラを渡した。
そして90日目の試合で大活躍して勝利し、ついに4連勝!

落田「4連勝でやんす! 信じられないでやんす!」
小杉「あいつが試合に出るようになってから、オレたち負け知らずだぜ。」
布具里「ああ、びっくりだ。」
三谷「もう、このまま一軍と入れ替わってもいいぐれーだな。」

しあわせ島・管理所

団長「裏野球大会には、二軍を使うでやんす。」
マコンデ「しあわせ草の効果のデモンストレーションがメインで、試合の勝ち負けはどうでもいいと?」
ヘルガ「まあ、あの超人チームが相手ではまず勝てないだろうが、そこそこの試合はするだろう。
島に入った直後の、彼らの運動能力のデータをまとめておいてくれ。試合前に顧客たちに送るんだ。」
マコンデ「なるほど...しかし、二軍連中が試合でまったくダメだったらどうします?」
ヘルガ「ははは、心配せずとも、今の二軍のやつらは、一軍より強いぞ。」
マコンデ「........」

91日目

ドクター「やれやれ、島民の村との道ももう少し整備して欲しいものです。」

(ガチャン)

ドクター「ああっ、ビンを1つ落とした! 昨日、精製したばかりのしあわせ草のエキスが...
とてももったいないですけど、作り直すしかないですねぇ...」

ドクターが作り直しに戻ると、奇妙な生物がしあわせ草のエキスをなめ始めた。

「キュー、キュー。キュ? ピチャピチャ ペロペロ...」

95日目

収容者B「はー、やれやれ。まったく、あんな作業ばかりマジでやってなんかいられねえよ。」
収容者「ここは、いいサボリ場所だな。」
収容者B「だろ? そのうちに村の女でも誘って...」

(グルルルル...)

収容者「なんだ、今の? 洞窟の奥から聞こえてきたけど。」
収容者B「変だな。あんな鳴き声は、初めて聞いたぞ。」
収容者「なにか住みついたんじゃないか?」
収容者B「オイオイ、そりゃあ困る。よし、追い出そう。」

収容者Bは、洞窟の奥へ行くが...

収容者「............遅いな。おーい、大丈夫か?」

(グルル...)

収容者「え? ヒッ! なんだよお前?! ち、近寄るんじゃねえ! ぎゃあああああっ!」

(バキ ベキ グシャ グシャ ボリボリ ムシャムシャ...)

97日目

江川班長「私たち二軍が、裏野球大会決勝戦に?」
マコンデ「ウム。その試合に勝てば、特別に200ペラを全員にやるぞ。」
江川班長「しかし、その大会は島の外では? 脱走者が出ないとも限りません。」
マコンデ「わっはっはっは!」
江川班長「?」
マコンデ「いや失敬、失敬。逃げ出す奴が出るかもしれんな。
なんなら、江川。お前が逃げ出してもかまわんぞ。」
江川班長「い、いえ、ワタシは脱走など...」
マコンデ「そうだろうな。お前は班長という立場を利用し、
いろんな手口でペラをかせいで来た。
今や、この島では収容者でありながら我々と同程度の生活を手に入れている。
いや、見事なものだ、元銀行員。」
江川班長「........それで、日本へ逃げてどうする?
女に入れあげて、銀行の金を着服した男に、どんな未来が残ってるんだね?」
(でも...、ワタシは麗香にもう一度だけでいいから会いたい。)」
マコンデ「お前の取るべき道は、ただ一つだ。
借金を返して、わが組織の一員になれ。別の名前で人生をやり直せる。
わがBB団が、お前の新しい人生を保証してやる。」
江川班長「...これまでに島を出た連中も?」
マコンデ「.....まあな。」
江川班長「ククク、別の選択をした連中は死んだよ。」

(そして...)

収容者の宿舎

パワポケ「えっ、裏野球大会?!」
落田「世界的な大会の決勝戦に、オイラたちが出るんでやんすか?」
江川班長「そうだ。しかも勝てば200ペラだぞ!」
小杉「待てよ、江川班長。そんな大会、聞いたこともないぞ。それに、どうして決勝戦なんだよ。」
江川班長「そこまでは、一軍の連中が勝ちあがって行ったからだよ。」
小杉「ますます、おかしいじゃないか。どうして決勝戦も一軍でやらないんだ。」
江川班長「はは、私らに対外試合をすることで刺激を与えたいんじゃないかな。」
落田「なんか、うさんくさいでやんすね。」
パワポケ「(でも、島の外に出るということは、脱出のチャンスだよな。)」

パワポケは脱走をやめた。

パワポケ「(どうせBB団も予測してるよな。...危険を冒すのはやめよう。)」

98日目

ドクター「エッ、3倍? そんな量を投与したら、副作用が...」
マコンデ「明日の試合は、長い間研究してきた
しあわせ草のデモンストレーションだ。二軍の選手は全員死んだってかまわん。」
ドクター「...それは団長と所長の許可はもらってるんですよね?」
マコンデ「あたりまえだ、バカモノ!」
ドクター「では、手配してきます。」
マコンデ「本当はワシの独断だがな。」

99日目

俺たちは船に乗せられて裏野球大会の会場についた。

江川班長「みんな、今日は久しぶりに私らはしあわせ島の外にいる。
だが、大会が開かれているこの島も他の世界から隔離されている。
脱出は不可能だし、もし一人でも脱走を試みれば全員が罰を受ける。
だから、バカなことを考えず堂々と試合に勝って、ペラを得ようじゃないか。」

(そして)

大統領「どうして連中は、決勝戦だけメンバーが違うのかね?」
ボンド「コレまでのメンバーは調整中でぃす。
あそこのチームは薬物に頼っているみたいでぃすから...」
大統領「なんだ、わが国に恐れをなして二流の連中に置き換えたかと思ったが。」
ボンド「(たぶんそうでぃすけど、そう言うとアナタ、怒りますからねぇ~)」
パワポケ「USスーパーヒーローズ?!
あの...なんか向こうのチーム、やたらと強そうなんですけど。」
小杉「何人か、大リーガーが偽名で入ってるみたいだしな。」
パワポケ「はぁ?!」
布具里「まあ、みんな。ひょっとしたら勝てるかもしれないから200ペラのためにがんばろーぜ。」
パワポケ「ふざけるな。」
江川班長「なにを言い出すんだ?」
パワポケ「(ひょっとしたら、なんて言ってたら絶対勝てないもんな。)
班長、気づいてないんですか? あの相手チームなら、対戦相手のことを調べていないはずがない。
つまり、しあわせ島のことを知っているはずなんですよ。」
江川班長「ま、まさか。...いや、すでに取り引きが?」
パワポケ「ええ、おそらく。俺たちがあのチームに勝てば、怒ったあの国が、島を攻...」
落田「それで、決勝だけオイラたちなんでやんすか!」
小杉「くっそー、道理で変な話だと思ったぜ!」
パワポケ「え? あ、八百長ってことじゃなくて、島のことをあの国が知ってて...」
落田「絶対に勝つでやんす!」
パワポケ「(まあ、やる気を出してくれたみたいだし、いいか。)」

仲間全員のやる気が全快しました!
この試合だけ特別に味方全員の打撃・投球・守備・走塁が強化されます!

パワポケはUSスーパーヒーローズに勝った!

パワポケ「やったー、勝ったぞ!」
大統領「そ、そんなバカなー!」
ボンド「まあまあ。あれは、きっと決勝戦用の特別チームだったのでぃす。」
大統領「くっ...神を恐れぬ卑劣なやつらめ!」
ボンド「(神様と自分が、すでに区別つかなくなってましゅね。)」
大統領「そうだ、我が国の敗北を大会の記録に残すわけにはいかん。
こうなったら、大会関係者全員をこの世から抹殺して....」

(むぎゅ!)

大統領「モガモガ...コ、コラ、何をする?!」

(バタッ!)

ボンド「.....さてと。おおう、大変でぃ~す!
大統領が、お菓子をノドに詰めて倒れてしまいましたでぃ~す!」
マコンデ「二軍のくせにあのチームに勝ってしまうなんて...」
江川班長「とりあえず、お約束のものを。」
マコンデ「む? ムウウウ...チッ、みんなで分けろ。」

所持金が200ペラ増えた

しあわせ島・管理所

ドクター「二軍選手のデータをお持ちしました。」
ヘルガ「ウム、ご苦労。.......! なんだ、この投薬量は? 規定量の3倍ではないか!」
ドクター「は? 副所長の指示で...」
ヘルガ「あのバカモノがぁあああ!」

続く

最終更新:2021年10月31日 19:38