俺はスター選手の小杉 優作(こすぎ ゆうさく)。
去年は新人王を取ったし、入団2年目の今年も絶好調だ。
今日も試合で大活躍。今もこうして記者達に囲まれて困っている。
「パワポケくん~、今からミーティングでやんすよ。」
パワポケ「うるせえな! そんなメンドクサイものに俺は参加しねえんだよ。」
「ええ~?! クビになってしまうでやんすよぉー!」
パワポケ「なんなんだよ、ついてくんなよぉー! ふん、どうせ俺ぁお荷物選手だよっ!」
(タタタタタッ...)
小杉「じゃ、ボクはこれで。今からテレビ局に行かなくちゃダメなんです。」
(タッタッタッタ...)
(ドガッ!)
なんと!! パワポケと小杉が衝突!
パワポケ「あっ?!」
小杉「うわあっ?!」
......。...くん、...パワポケくん。
パワポケ「ん? な、なんだ? (誰だ、こいつ...)」
「あ、気がついたでやんすね。」
パワポケ「えーと...君は誰だい?」
「なに言ってるんでやんす。オイラ、凡田 大介(ぼんだ だいすけ)でやんすよ。」
パワポケ「へ? ...凡田? あれ、俺がテレビに出てる...」
凡田「あれはジャイアンツの小杉でやんすよ!」
パワポケ「え? 小杉は俺じゃあ...?」
凡田「なに言ってるんでやんすか?!
あんたは、万年二軍でモグラーズのお荷物選手のパワポケ君でやんすよ!」
パワポケ「は? お、俺は...小杉...だろ?」
凡田「まだ言うでやんすか! あそこのカガミで自分の顔を見てくるでやんす!」
パワポケが鏡で自分の顔を見てみると...
パワポケ「え? えええーー!? 誰だよ、こいつー?! これ、俺の顔...?
ウソだろー!! 俺は小杉だろー?! 俺はスターなんだ!」
凡田「はいはい、そのくらいにするでやんす。
さあ、元気になったんだからバカなこと言ってないで、さっさと退院するでやんす。」
その翌日...
凡田「パワポケ君、おはようでやんす。」
パワポケ「...おはよう。」
凡田「元気ないでやんすね? たしかに、現実はつらいでやんす。
でも、そこから逃げ出さないで今日も元気に練習するのでやんす! じゃ、先に行ってるでやんすよ。」
(タッタッタッ...)
パワポケ「...廊下でぶつかった時に、俺とパワポケってヤツの体が入れ替わったとしか思えない。
でも、こんな話、誰も信じないよな。他にすることもないし、野球の練習でもするか。
どうせ、夜までのガマンだ。」
練習後...パワポケは路上で小杉を見かける。
パワポケ「おい、ちょっと待て!」
小杉「! ...なんの用だい。」
パワポケ「とぼけるな! 俺の体を返せ!」
小杉「ハハハ。いいかい、オレがあんたの体を盗んだわけじゃないんだ。
あくまでもあれは事故だろ。」
パワポケ「でも、俺のふりをしてるじゃないか。」
小杉「ああ、あんたもな!」
パワポケ「え、いや、それは...こんな話、誰も信じないからしかたなく...」
小杉「それに、いったいどうやって元に戻すつもりなんだ?」
パワポケ「うっ! だ、だから、それを一緒に考えよう。」
小杉「やだね。オレは、このままの方がいいや。」
パワポケ「じょ、冗談じゃない!」
(バキッ!)
小杉「あきらめなよ。今の体じゃ、ケンカしたってオレの方が強いんだからな。」
「あら、そこにいるの、優作さん?」
小杉「ああ、浅上 綾華(あさがみ あやか)さんか。ちょっとヨッパライにからまれたんだ。」
パワポケ「(綾華? 球場によく応援に来てくれた俺のファン...)
おい、ちょっと待て! まさか、彼女に...」
(バキ!)
小杉「あんなのは相手にしないでさっさと行こうぜ。」
綾華「え? ええ。」
パワポケ「.....。」
小杉に一方的にやられたパワポケは...
パワポケ「チックショー、今に見てろ!」
次の週
凡田「どうしたんでやんす? 練習に行くでやんすよ。」
パワポケ「うるさいな! 俺は練習どころじゃないんだ!」
(バキ!)
凡田「パワポケ君、あきらめたらそこで終わりでやんす!
なにか悩みがあるのなら、親友のオイラが相談にのるでやんすよ。」
パワポケ「(ひょっとしたら信じてくれるかな?)
実は、俺は小杉という人間なんだ。でも、この前廊下でぶつかって...」
(バキ!)
凡田「いいかげんにしないと、温厚なオイラでも怒るでやんすよ!」
凡田は怒ってパワポケの部屋を出て行ってしまった。
パワポケ「...うう、本当の事なのに...
でも、なにかいい考えを思いつくまでパワポケとして行動した方が良さそうだな。
さもないと、いざってときに誰も相手にしてくれないかもしれないし。」
次の週
凡田「あれ、水木さん。復帰したんでやんすか?」
水木「ああ、ケガの方はバッチリ。けど、しばらくは二軍生活だな。」
凡田「水木さんは、一軍と二軍の行き来が激しいでやんすねー。」
水木「ふん! ほとんど二軍にいるお前には言われたくねーな。」
凡田「いや、オイラはまだマシでやんす。パワポケ君に比べれば。」
パワポケ「えっ、俺?」
水木「ああー、そうだな。お前は実績も全然ないし、
この前マヌケな事故で入院してたし、もっともクビに近い男だよな。」
パワポケ「おいおいそんなの困るよ。俺、野球以外なんにもできないのに。」
水木「はぁ? 俺たちは、みんなそうじゃないか。いまさらなに言ってんだ、お前。
クビがイヤなら、もっと練習して、試合で活躍して、それでもって監督に認められないとな。」
パワポケ「......。そうか。野球の実力が認められないとクビになってしまうんだ。
そんなことになったら、体を取り戻すどころじゃないぞ。
くそっ! このまま、体を奪われたまま終わってたまるか!」
1年目 4月4週
パワポケは路上で誰かにつけられていることに気づく。
パワポケ「.......。さっきから、誰かにつけられているような気がするな。おい、誰だ!」
「あ!」
パワポケ「なんの用だ?」
「え? えーっと...その...おやすみなさい!」
(タタタタタッ...)
パワポケ「なんなんだ、今の子は。」
「いやー、あいかわらず冷たいね、お前って。」
パワポケ「(また、変なヤツが現れたな) えーと、あなたは?」
「ありゃ、記憶喪失のウワサは本当か。塚本 甚八(つかもと じんぱち)だよ、お前の親友。
最近、お前が遊びに来ないんで心配になったんだよ。白木 恵理(しらき えり)のヤツも、
最近お前がかまってくれないんで様子を見に来たってとこだろう。」
パワポケ「(白木 恵理(しらき えり)? ...さっきの子か。)」
塚本「まあ、別にお前がどうなろうと知ったこっちゃあないが、貸した金は返してもらわないとな。」
パワポケ「調子にのるな!」
塚本「おいおい、怒るなよ。ちょっとからかっただけだって。
意外に元気そうで安心したぜ。それじゃ、またな。」
パワポケ「...このパワポケって奴には、妙な知り合いが多かったんだな。」
次の週
「パワポケ。おい、パワポケ!」
パワポケ「あ!? はい! (まだ、この名前には慣れないな...)」
「この前の事故で、記憶が混乱してるって聞いたけど、大丈夫か?」
パワポケ「はい、なんとか...ええと、あなたは?」
「おいおい、本当に大丈夫かよ? 二軍監督の古沢 小一郎(ふるさわ しょういちろう)だよ!」
パワポケ「あ、そうでした。」
古沢監督「...その様子だと、コーチたちのことも忘れたとか言うんじゃないだろうな。」
パワポケ「え...はい、実は。」
古沢監督「よし、まずはあいつからだ。あのやたらと筋肉質なヤツが
筋力コーチの鬼鮫 清次(おにざめ せいじ)。」
パワポケ「は? 筋力コーチ?! 打撃コーチとかじゃなくて?」
古沢監督「なに言ってるんだ。見るからに筋力って感じだろ?」
パワポケ「(そういう問題なのか?)」
古沢監督「次にあの男だが...」
パワポケ「あの...木からぶら下がってる人ですか?」
古沢監督「変化球コーチの迅雷 隼人(じんらい はやと)。最後にあの男が...」
パワポケ「あ、普通だ。」
古沢監督「技術コーチの手久野 正巳(てくの まさみ)。」
パワポケ「(...名前が変なのか。)」
古沢監督「いいか、一軍に行くためにはあの3人のコーチの教えを受けることが重要だぞ。」
「コーチコマンド」が使えるようになりました!
パワポケはジンライコーチの指導を受け、その次でイサム、馬井に会った。そして...
「む~~~ん。」
「む~~~~ん。」
パワポケ「なんだありゃ?」
凡田「へ? いまさら、荒井兄弟が珍しいのでやんすか?」
パワポケ「いや、さすが双子だけあって似てるよな。」
凡田「え? 双子じゃないでやんすよ。」
パワポケ「え、他人のそら似なのか!」
凡田「それ、新種のギャグでやんすか?」
「む~~~~~ん。ぼくたちがどうかしたのかな~~?」
パワポケ「(げ、3人め! 3つ子なのか!?)
い、いや...記憶が混乱していてさ。えっと、キミは荒井...?」
「む~~~ん。ぼくは、荒井 金男(あらい かねお)なんだなぁ~。」
「む~~~~ん。ぼくは、荒井 銀次(あらい ぎんじ)なんだなぁ~。」
「む~~~~~ん。ぼくは、荒井 晴男(あらい ぱるお)なんだなぁ~。」
凡田「モグラーズの球団職員でやんす。しかし、この3人を忘れるなんて相当重症でやんすね。」
金男「む~~~ん。二軍暮らしはつらいんだなぁ~。」
銀次「む~~~~ん。つらいことは忘れてもいいんだなぁ~。」
晴男「む~~~~~ん。でも、忘れてしまっても現実は変わらないんだなぁ~。」
パワポケ「な、なんか、むちゃくちゃ言われてないか?」
金男「それがいやなら、一軍に上がれるようにがんばるんだなぁ~。」
銀次「必死で練習するんだなぁ~。」
晴男「でも、努力が報われるとはかぎらないんだなぁ~~。」
凡田「同じ顔を3つも並べて、そんなわかりきったこと言うな! でやんす!!」
パワポケ「(これが二軍ということなのか。
スターのはずの俺が、どうしてこんな目に...とりあえず、一軍へ行くぞ!)」
6月1週、パワポケは凡田に外出して気分転換するように努められ、ファミレスへ向かった。
ファミレス
「いらっしゃいませ。席にご案内します、何名様ですか?」
パワポケ「あ、一人だけど...」
「こちらの席にどうぞ。何になさいますか?」
パワポケ「きみ。」
「わたしですね? 注文は、以上でよろしいですか?」
パワポケ「あ、はい。」
「ちなみに、私はすごく高いですよ?」
パワポケ「値段は、いくらなの?」
「100億万円です。」
パワポケ「2000円にまけて?」
「イヤです。」
パワポケ「それじゃ、ハンバーグセットでいいや。」
「ありがとうございます。しばらくお待ち下さい。」
(そして...)
パワポケ「あ~うまかった! さてと、お腹もいっぱいになったし そろそろ帰ろう。」
「ありがとうございました!」
そして、試合へ...
凡田「パワポケ君、今日の試合は監督が見に来るらしいでやんすよ。」
パワポケ「監督なら毎日ベンチにいるじゃないか。」
凡田「それは古沢監督でやんす!
今日来るのは一軍の北条 洋平(ほうじょう ようへい)監督でやんす。
あ、ほら、あそこにいるでやんす!」
パワポケ「(ああ、そういえばモグラーズの監督はあの人だったな。)」
凡田「とにかく、いいところ見せて一軍に昇格でやんす。」
パワポケ「よし、いいとこ見せるぞ!」
北条監督「で、一軍で使えそうなヤツはいるのか?」
古沢監督「あのパワポケってヤツが、最近いいんだよ。」
北条監督「ほう?」
パワポケは試合で大活躍した。
北条監督「ふん、まあまあ選手は育っているようだな。」
古沢監督「パワポケはどうだった?」
北条監督「...まあな。」
続く
最終更新:2023年04月06日 14:58