ゲームスタート ◆eBcz2IT0Gk
舗装されている道を一人の男が座っていた。
彼は手早く持っている荷物の中身を確認し何枚かの紙といくつかの道具を取り出してノロノロと立ち上がり歩き出す。
彼、
笹塚衛士は正義感を持ち合わせるて居る方ではなかった。だがこのような犯罪を容認できる男でもなかった。
普段の勤務態度こそ褒められたものではないが彼はこう見えても刑事だ。このような犯罪は見逃すべきではない。
名簿を見ようと思いそれを広げる。
見る限りではあの会場に居た怪物だけではなく怪盗Xや葛西、至郎田など犯罪者等の危険人物が何人か紛れ込んでいるらしい。
彼らは
桂木弥子のような無力な一般市民などを躊躇いも無く殺すだろう。
それだけはなんとしても避けなければ無かった。
まぁ彼が動かなくてもあの魔人
脳噛ネウロ全て返り討ちにしそうだが。でもやるしかない。だって警察だし。
次はどこに行くかだが今現在いる地区はG-6らしい。少し進めば警視庁が見えてくるはずだ。まあ地図が正しければだが。
いきなりこんな所に連れてこられたのだ、普通の人間ならある程度混乱し助けを求めようとするだろう。
そして常識的に犯罪から助けてくれる存在『警察』に助けを求める。
実際にあるのは警視庁なのでちょっと違うのだがそこに向かう者が出てきても可笑しくは無い。
そう考えながら歩いていた彼は急にその足を止める。歩いていた道の少し先で歩いてる人影が見える。
接触を図ろうと思い用心の為予めにデイパックから出していた支給品の一つである『AM』と刻印された44オートマグを構える。
「…そこの君!警察だ!聞こえたら返事をしてくれ!!
妙な事は思わないほうがいい、こちらは銃を持っている!!」
彼は内心焦っていた。今接触する相手がもし怪盗Xのような素手で人間一人を屠れる危険人物であったら準備不足もいいところだ。
大口径とはいえ悪名高きAM社の44オートマグでは少し心許無かった。
返事は無かったが声を掛けたからには接触しないわけには行かずゆっくりと距離を縮めていく。
近づいてからわかった事だが女性のようだった。
確かに銃を持った男にいきなり声を掛けられたらこうなるかも知れないが彼女は手に持っている携帯の画面ばかり見つめておりこちらには目も向けない。
携帯を見ていた彼女の顔色は急に酷くなっていき肩が小さく震え始めていた。
いやな予感のしてきた、と彼は接触を図った事に半ば後悔し始めていた。
「…なぁアンタ聞いてる?こんな状況だし混乱するのは分かるし信用できないのも当たり前だが…そのなんだ…会話くらいしてくれなきゃ困る」
そう言いながら彼は頭をポリポリと掻く。
彼はコミュニケーション能力が無い分けではないがこのような相手との交渉ごとは不得意だった。
やはり返事は返ってこず彼はすっかり困り果てていた。
「…さい」
「ん?」
彼は声が聞こえた気がしたので彼女を見ていみる。
いつの間にかこちらを向いていた彼女は小声で何かを喋っていた。
「…なさい」
「出来ればもっと大きな声で話してくれるとありがたい」
そう言いながら額の汗を拭い銃を構えなおす。
柄にも無く彼は彼女が出す不気味な雰囲気に完全に呑まれていた。
「…」
「何とか言ったらどうなんだ?」
「…ごめんなさい」
「なぜ謝るんだ」
やっと聞こえたその声はかすかに震えていた。
だがなぜか彼は彼女の雰囲気にある懐かしさを覚えた。いや懐かしさと言うより既視感に近い。
かつて自分はこの感覚を何度も味わったような気がする。
「…私はやらなきゃいけないの。FBの命令だから」
「いったい何をやるんだ?」
「…貴方を殺さなきゃ」
「そうかい!」
交渉決裂だなと続けて言いながら彼は銃を構えなおし目の前の女を撃つ。
はずだった。
「…?」
引き金を引こうとしても一向に音が鳴らない。
なぜか銃を持っていた右腕が上がらない。
というか物凄く痛い。当たり前だ。肘から先が無くなっていたのだから。
女が何かしたのかと思い彼女を見ると女は空を指出した。
不思議な光景だった。今さっきまであった腕が『何か』に咥えられ空中に浮いている。
そしてその『何か』というのは…
「鮫?」
彼と彼女の間を鮫がぷかぷかと浮いている。
そしてさっきまで彼の右腕だった物を美味しそうに食べていた。
と言っても鮫の表情など分からないが。
「…鮫じゃない」
彼の先ほどの発言に少し彼女は怒っているようだった。
「…アビソドン」
「…名前?」
「…そう、かわいい?」
「…」
アビソドンとか言う鮫?を愛しげに撫でる彼女の事をまるでペットを自慢する飼い主だと彼は思った。
撫でる腕から逃げるように鮫が彼女の周りをくるくる回っている。
実際には嫌がる様子はなくこれも一種の飼い主とペットのスキンシップのようなものなのだろうと彼は思った。
彼の意識が次第に薄れていく。
当然だ。無残にも食いちぎられた右腕からは随分血が流れてしまった。
多分彼は助からないだろう。
「…最後に質問というか突っ込ませてもらうけど」
「…なに?」
「鮫って飛ぶもんじゃないだろ」
「…」
「…」
それが笹塚衛士最後の言葉だった。
そして同時に思い出すのだった。
彼女の感覚。それは今まで対峙して来た犯罪者によく似た物だと。
その中でも特にあの『シックス』を妄信している選ばれし血族の連中とよく似た雰囲気だった。
(ヤコちゃん、気を付けて…)
そう思いながら彼は目を閉じた。
○○○
一人の女性が佇んでいる。
彼女はつい今しがた殺した男の支給品を品定めしていた。
三分ほど迷った挙句結局全て持っていくことに決め自分のデイパックに詰める。
それが終ると近くで満足そうにぷかぷかと漂っているミラーモンスターに近づき頭を撫でる。
「…いい子」
アビスドンは甘えるように顔を近づける。そして口からポロっと男の持っていた銃を彼女の手の上に出した。
一分ほど撫で回した後アビソドンは彼女から離れる。
そして鮫を模した二匹の人型ミラーモンスターへと姿を変える。
するとなぜか彼女の表情が険しくなる。二匹は突然態度を変えた主に不安を覚え近づこうとする。
だがその途端彼女が二匹に銃を放つ。さらに戸惑う二匹に向かって彼女はまるでペットを叱り付ける様に言った。
「…それはかわいくない!」
叱り付けられた二匹は嫌々元のアビソドンへと合体する。
それを見ると彼女の顔は元通り優しげに微笑みかける。
そしてアビソドンに近づき頭を撫でながらまるで母親が子供に言い聞かすような優しい声で語りかける。
「…あれは駄目、分かった?」
アビソドンは彼女の目を見ながらまるで肯いている様に頭を動かす。
それを見て彼女はまたいい子だねと言いアビソドンの頭にチュッと軽く口付けをする。
アビソドンはうれしそうにクルクルと彼女の近くを回る。
その姿を見て優しく微笑みながら彼女はポケットから自分の支給品である携帯電話を取り出してメールを打つ。
『FBへ』
『言われた通りに一人殺しましたよ』
『私はこの後は何をすればいい?』
○○○
IS学園の屋上に一人の男性が日光浴を楽しんでいた。俗に言うひなたぼっこである。
格好こそ今風の若者であるがその只者ならざる雰囲気は彼が常識では計り知れない何かだと物語っていた。
彼の名は
カザリ。黄の陣営のリーダーにして五人のグリードの一人でもある。
彼は他の参加者と違い今の状況を楽しんでいた。
真木博士も面白いゲームを思いついたものだ、とカザリは思う。
限られた敷地内での殺し合い。陣営通しの潰し合い。なるほどとても楽しそうだ。
何人かのグリードと組んで特定の陣営を集中的に潰すのもいい。
オーズと組んで他の陣営を敵に回すのもいいだろう。
コアメダルを奪い合うだけではなくこのようなゲームにするなど自分たちグリードでは考え付かない事だ。
やはり博士はボクたちとは少し違うね、と独り言を呟いていると何処からか音が鳴った。
思わず身構えるカザリだったが鳴ったのは自分の支給品の携帯電話だった。
彼はデイパックから取り出し使い慣れぬ感じで携帯を開く。
送られてきたのは一通の写真付きメールだった。
「へぇ~、中々期待してなかったけど使えるね
桐生萌郁」
彼女から送られてきた写メールを見ながらカザリは彼女への評価を改める。
今より少し前支給品のチェックをしていた時にその一つ携帯電話に有り得ない量のメールを送りつけられた時は流石のカザリも困惑したものだ。
送り主が誰だかはすぐ分かった。グリード用の名簿には参加者の軽い説明が載っているからだ。
【桐生萌郁】
年齢:20歳。生年月日:1990年6月6日(ふたご座)。血液型:B型。身長:167cm。体重:54kg。3サイズ:B88/W59/H88。
未来ガジェット研究所のラボメンNo.005だがラウンダーでもある。また極度の携帯依存症でメール魔。
あだ名は『閃光の指圧師(シャイニング・フィンガー)』
ラボメンやらラウンダーやらが何かは分からなかったが彼女がこの携帯の正式な持ち主である天王寺と言う男性に忠実であると言う事はわかった。
カザリはこの『FB』に成りすまして精々利用してやろうと思った。
参加者減らしの捨て駒。しかも自分の陣営ではなく
メズールの陣営である。もし死んでもこちらの陣営には損害は一切無い。
結果は予想外だった。彼女は見つけた相手を無傷で倒したのだ。
「手駒は従順で有能な方がいいよね
ま、これからもよろしく頼むよ桐生萌郁」
そうだ指示を考えなきゃ、と言いながら猫科の王は無邪気に笑う。
ゲームはまだ始まったばかりだ。焦る必要など無い。
出来るだけゲームを面白くするよう知恵をめぐらす事だけを考えればいい。
そう考えながらなぜかふとこうも思った。
あだ名に『閃光の指圧師(シャイニング・フィンガー)』はないだろうと…
【一日目-日中】
【G-7/IS学園屋上】
【カザリ@仮面ライダーOOO】
【所属】黄
【状態】健康
【首輪】100枚:0枚
【装備】なし
【道具】基本支給品、天王寺裕吾の携帯電話@Steins;Gate、ランダム支給品1~2(確認済)
【思考・状況】
基本:黄陣営の勝利、その過程で出来るだけゲームを面白くする
1.桐生萌郁への指示を考える
2.『閃光の指圧師(シャイニング・フィンガー)』(笑)
【備考】
※参戦時期は本編終盤からとなります。
【G-6/舗装された路上】
【桐生萌郁@Steins;Gate】
【所属】青
【状態】健康
【首輪】99枚(増量中):0枚
【装備】44オートマグ(残り6発)@現実
【道具】基本支給品、桐生萌郁の携帯電話@Steins;Gate、アビスのカードデッキ@仮面ライダーディケイド、ランダム支給品0~1(確認済)、笹塚衛士の支給品1~2(確認済)
【思考・状況】
基本:FBの命令に従う
1.FBの指示を待つ
2.アビソドンはかわいい
3.アビスハンマとアビスラッシャーはかわいくない
4.上記の姿に成らないよう厳しく躾ける
【備考】
※α世界から参戦
※FBの命令を実行したためメダルが増えています。
※どの程度増えたかは次の人に任せます。
【笹塚衛士@魔人探偵脳噛ネウロ 死亡】
最終更新:2012年02月17日 20:27