アットウィキロゴ

誓いと笑顔と砕けた絆 ◆qp1M9UH9gw


【1】

ホールで殺された少女は、間違いなく箒だった。
彼女専用のISを、教師である自分が見間違えるものか。
素直に大人しくしていれば、あんな場所で殺されなどしなかったものを。

「……馬鹿者が」

拳を握り締め、そう呟いた。
織斑千冬の教え子であり、彼女の親友の実の妹。
決してこんな場所で、しかもあんな無残な方法で殺されるような人間ではない。
この地に連れてこられたIS学園の生徒達も同様だ――真木達の自分勝手な思惑で潰えていい命ではない。

「……良かろう、戦ってやるとも。尤も、私が剣を向けるのは貴様だけだ――真木清人」

千冬の胸中で沸き立つのは"怒り"のみ。
いとも容易く教え子の命を奪ったあの男達には、それ相応の罰を下さねばならないだろう。
自身の犯した罪の重さを、その身を以て教えてやらねばなるまい。
支給品として送られた西洋剣の切っ先を、前方にある一本の木に向ける。
そして、一閃。
世界最強のIS使いの名に恥じぬその一太刀は、木をさながらバターのように一刀両断した。
この行動は、彼女にとっての「儀式」であった。
死した者の無念を、生徒を弟をこの地に呼んだ者への怒りを晴らすべく、
殺し合いの首謀者を打倒する決意を固める為の「儀式」である。

「……やはり日本刀の方が馴染むな」

鞘のない西洋剣をデイパックに戻しながら、一人ごちた。

【2】

目の前で命が消えていくのを、ただ見ている事しかできなかった。
それが、小野寺ユウスケには堪らなく悔しい。
もしもあの時、自分が止めに入っていれば、少なくとも黒髪の少女は救えたかもしれない。
しかし、その可能性があっても彼は動けなかった。

「ゴメン……助けられなくて……」

謝罪の言葉を並べた所で、何の意味もない事くらい分かっている。
だがそれでも、一度は彼女達に向けて謝りたかった。
「笑顔」を守れなかった罪悪感と、命を救えなかった後悔が入り混じった言葉が、
紡がれては青空へ浮かび、そして霧消していく。
「まゆり」と呼ばれた少女が死んだ直後、白衣の青年は呆然とした表情でその亡骸を見つめていた。
「箒」と呼ばれた少女が死んだ時、同じ様なデザインの制服を着た青年が怒りに身を震わせていた。
きっと、その人にとっては掛け替えの無い存在だったのだろう。

「真木清人……オレはお前を許さない……!」

自分の身勝手な都合だけで、誰かが犠牲になっていい訳がない。
例えそれにどんな意図が隠されていたとしても、他人から「笑顔」を奪うのならそれは全て「悪」だ。
絶対に打倒しなければならない――もうこれ以上、誰かの「笑顔」を奪わせない為に。

「必ずお前を倒す!"クウガ"として――"仮面ライダー"として!」

何処に居るかも分からない主催者に向かって宣言する。
自分の力を、誰かを守る為に使う事を。
そして、誰かが大切な人を喪う悲しみを背負わせない事を。
正義の「仮面ライダー」として、この殺し合いで戦い抜く事を、今此処で誓ったのだ。

「その声……ユウスケか?」

それに応えるかのように聞こえてきたのは、共に世界を旅してきた友人の声。
間違いない、この声は「門矢士」のものだ。
こんな早くに仲間と出会えるなんて――ユウスケは頼りになる友人との合流に歓喜しながら、声の方向に振り向く。
ユウスケの予想通り、声の主は士だった。
彼がいれば百人力だ、この殺し合いも絶対に打破できるだろう。
そう胸に期待を込めながら、士の方に駆け寄った。

「――がッ」

士の目の前に立った、その直後。
腹部に衝撃を感じ、一瞬遅れて痛覚が刺激される。
何事かと思った頃には、既にユウスケは跪いていた。
そしてその直後に、前方から蹴りが襲いかかり、直撃を食らった彼は地べたを転がる事となる。
痛みを堪えながら視線を上げると、士が冷徹な目でユウスケを見つめていた。

「本当に久しぶりだな、ユウスケ……いや、"仮面ライダークウガ"」


【3】

痛みを引きずっている腹部を押さえながら、ユウスケは立ち上がり、士を見据える。
士の方は未だに、冷ややかな視線をこちらに浴びせている。
目の前にいる男は、本当にはあの「門矢士」なのだろうか。
ユウスケの知っている彼は、こんな冷徹な目をする男ではない筈だ。
周囲に殺気を撒き散らす彼の姿なんて、まるでユウスケが今まで倒してきた怪人のそれではないか。
もしやこの男は、彼に擬態したワームではないかと一瞬疑ったが、
彼の手の中にあったディケイドライバーが、その発想が間違いである事を教えている。
本人が所有している変身アイテムは没収されない――ルールブックには、そう書かれていた。

「士、なんで」
「それはこっちの台詞だ。どうして"仲間みたいに"俺に話しかける?」

その発言に、ユウスケは唖然とせざるおえなかった。
今まで彼の口から、そんな冷徹な――それこそ悪人のような――言葉が飛び出す事などなかったのに。
仲間の存在を消し去ろうとする彼の意図が読めなかった。
一体全体、何が士をここまで豹変させたのだろうか。

「どうしちゃったんだよ士……なんでこんなこと!」
「俺は自分の義務を果たしているだけだ。お前に文句を言われる筋合いはない」

士に課せられた「義務」なんてもの、ユウスケは聞いた事がない。
きっと、彼以外の仲間――光夏美や彼女の父親にすら、明かしてはいないだろう。
時間が経てば経つほど程、両者の溝は深まっていくように感じられた。

「――まあいい。どちらにせよ、お前は此処で破壊する」

そう言いながら、士は手に持ったディケイドライバーを腰に当てる。
バックルの側面部から伸びたベルトによって、それは自動的に装着された。
仲間であるユウスケに向ける事はないとばかり思ってきた敵意が、今は彼を射ぬ射ている。

「変身」

――KAMEN RIDE DECADE――

そしてユウスケの目の前に君臨するのは、世界の破壊者「ディケイド」。
激情態への変化によって禍々しくなった複眼が、未だ戦意を見せないユウスケの姿を見据える。

「どうした?変身しないのか」
「……嫌だ。お前とは、戦えない」
「――そうか」

その言葉と同時に、ユウスケは再び地に伏せる事となった。
ディケイドの拳が、彼の肉体に直撃したのである。
この時、破壊者は僅かな力でしか攻撃していないが、
それでも士は「仮面ライダー」に変身しているのだ――生身の人間には、十分すぎる威力を有していた。

「変身しろユウスケ。このまま殴り殺されたくはないだろ」

ディケイドは、ユウスケをクウガに変身させようと、彼をいたぶり続けるだろう。
「仮面ライダークウガ」を破壊する為に、悪魔はユウスケを蹂躙する。

【4】

悪魔は足を、腕を、背中を、腹を、骨折しない程度の力で攻撃し続けた。
その度にメダルが宙を舞い、それがディケイドの首輪に吸収されていく。
しかし、いくら傷つけても、ユウスケがアークルを出現させる気配は一向にない。

「……何時まで意地を張るつもりだ」
「言っただろ……お前とは……戦えない!」

世界を巡る旅を終えた彼に、何が起こったのかをユウスケが知る由はない。
だが、どんなに急激な変化をしようが、門矢士は仲間なのだ。
彼と戦うわけにはいかない――そんな事をしても、誰も「笑顔」にはなりはしないから。

「この力は……そんな事の為に……使うものじゃないんだ!」

「命」と「笑顔」を奪われ、誰かの心が涙を流す瞬間が、ユウスケの脳裏に過る。
これ以上誰かが泣き叫ぶ姿を見るのは、彼には耐えられない。
だからこそ、ユウスケは「笑顔」を護る為に戦う事を誓ったのだ。
断じて、仲間同士で滅ぼし合う為に使うのではないと――!

「笑顔を……守るんだ……!もう二度と……あんな思いを……させないために……!」

その言葉を言い放った直後、ディケイドは手を止めた。
何を思ったのか、バックルからカードを抜き取り、変身を解除する。
彼の表情は、変身する前となんら変わってはいない。
人間らしい感情を失った、まるで戦う為に生まれた兵器の様であった。

「今回だけは見逃してやる……次は無いぞ」

それだけ言うと、士は踵を返して歩き始めた。
ユウスケは、彼の姿を目で追う事しかできない。
それ程までに、彼はディケイドの攻撃によって消耗していたのだ。
士の姿が遠くなっていくのに比例して、視界は黒で埋まっていく。
彼が完全に消失した頃には、既にユウスケの意識は闇の中に消えていた。


【4】

千冬が最初に発見したのは、倒れている青年一人である。
全身に暴力の跡があり、彼がそれによって意識を失ったのは明白であった。
彼のデイパックが見当たらないが、恐らくは加害者に奪われたのだろう。
此処で何があったのかを知る必要がある。
その為には、まず彼を介抱してやる必要がありそうだ。
安全な場所は何処だろうかと考えた結果、中央部の都市が最も近場な安全地帯という結論に至る。

(……意図が読めんな。何故殺そうとしなかったのだ?)

それにしても、どうしてこの青年は生かされたのだろうか。
殺し合いに乗っている者の犯行ならば、既に彼は殺されている筈だ。
彼一人だけが、この場で倒れ伏していた理由が全く分からない。

(まあいい。そんな事はこいつから聞けばいい話だ)

初の遭遇者でもあるのだ――聞きたい事は山ほどある。
だからこそ、青年には生きてもらわなければならない。
青年をおぶり、千冬は都市部へと足を進めた。
大の男を背負う事に、少しばかりの疲労感を感じながら。


【5】

ユウスケのデイパックに入っていた青色のコアメダル。
本来ならば、この殺し合いで重要な要素を含んでいる支給品の一つなのだが、
主催者も破壊の対象にしている士にとっては、こんなものを手に入れても嬉しくも何とも無い。
これを道端に捨てないのは、一応「セルメダルの代用」という使い道が残されているからに過ぎなかった。
しかし士は、その事実に対してそれ程落胆はしていない。
何故なら、これ以外にもユウスケの支給品は存在しており、それらは捨てるべきものではない代物だったからだ。
彼からデイパックを強奪したという選択は、間違いなく正しい。

気に掛かる事がある。
どうしてユウスケは、さも友人の様に接してきたのだろうか。
あの時の彼は、まるで士が「世界の破壊者」になった事を最初から知らないような態度だった。
お互いを信じ合い、これからも旅を続けるのだろうと思っていた頃のユウスケの姿。
もう見る事はないだろうと思っていた、彼の笑顔。

「……成程、時間のズレってヤツか」

どうやら真木は、空間を渡り歩くだけではなく、時間すら飛び越えられるらしい。
「電王」と「ディケイド」の固有能力を兼ね備えているとは――想像以上の強敵になりそうだ。
だからと言って、それが士の戦意に関わる事は決してない。
「全てを破壊する」という彼の決意は不動のものである。
全ての仮面ライダーを破壊し、全ての世界を救済するのが彼の使命。
どんな場所にいようが、どんな状況であろうが、彼はその目的を果たすべく悪魔となる。

その為に、全ての世界を捨てる為に、今まで背負ってきた全てを捨てた。
誰かを思いやる優しさも、誰かと支えあう友情も、誰かと喜びを分かち合うための笑顔も。
全てを遠い所に置いてきた……筈だった。
だが、ユウスケのもう見る事はないとばかり思っていた信念によって、悪魔の心は僅かながらも揺れてしまったのである。
自分の中に、まだこんな感情があったとは。
こんなものは不要だ――あっても戦いの妨げにしかならない。

「次は今度こそ破壊する。絶対にな」

覚悟を決めた。
もう二度と心を揺り動かしはないという、絶対の覚悟を。
それが誰であろうが、どんな表情で詰め寄ろうが、仮面ライダーなら問答無用で破壊する。
もう決して、情など見せるものか。

全てを破壊し、全てを繋ぐ為に、ディケイドは本当の悪魔となる。
それが門矢士に残された、唯一にした最良の選択肢。


「待っていろ"仮面ライダー"……お前達は――俺が潰すッ!」



【一日目-日中】
【C-5/平地】

【門矢士@仮面ライダーディケイド】
【所属】無
【状態】健康
【首輪】115枚:0枚
【コア】シャチ:1
【装備】ディケイドライバー&カード一式@仮面ライダーディケイド、
【道具】ユウスケのデイパック(基本支給品一式、ランダム支給品0~2)、基本支給品一式、ランダム支給品1~3
   (これら全て確認済み)
【思考・状況】
基本:「世界の破壊者」としての使命を全うする。
 1:「仮面ライダー」と殺し合いに乗った者を探して破壊する。
 2:邪魔するのなら誰であろうが容赦しない。仲間が相手でも躊躇わない。
 3:セルメダルが欲しい。
 4:最終的にはこの殺し合いそのものを破壊する。
【備考】
※MOVIE大戦2010途中(スーパー1&カブト撃破後)からの参戦です。
※ディケイド変身時の姿は激情態です。
※所持しているカードはクウガ~キバまでの世界で手に入れたカード、 ディケイド関連のカードだけです。


【一日目-日中】
【C-4/平地】

【小野寺ユウスケ@仮面ライダーディケイド】
【所属】赤陣営
【状態】ダメージ(大)、気絶
【首輪】80枚:0枚
【装備】なし
【道具】なし
【思考・状況】
基本:笑顔を守るために、真木を倒す。
 1:???
【備考】
※九つの世界を巡った後からの参戦

【織斑千冬@インフィニット・ストラトス】
【所属】赤陣営
【状態】健康
【首輪】100枚:0枚
【装備】シックスの剣@魔人探偵脳噛ネウロ
【道具】基本支給品一式、ランダム支給品0~2
【思考・状況】
基本:殺し合いには乗らない。真木に制裁する。
 1:倒れている青年を介抱する。
 2:生徒と合流する。
※参戦時期不明

【シックスの剣@魔人探偵脳噛ネウロ】
ネウロとの最終決戦の際にシックスが使用した西洋剣。
(シックスが使用したとは言え)一突きで戦闘機の翼を貫いていた事から、相当な切れ味を持つと思われる。



016:ゲームスタート 投下順 018:恐れを知らない戦士の様に
016:ゲームスタート 時系列順 018:恐れを知らない戦士の様に
002:セカイノハカイシャ 門矢士 037:破壊者と守護者と貫く正義(前編)
GAME START 小野寺ユウスケ 035:意志
GAME START 織斑千冬


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2013年11月01日 15:27