ソードアート・オンライン (アニメ版第1期)の第14話

アイングラット第七五層ボス、ファントム・リーパーと攻略組の戦いは続いていた。
ファントム・リーパーの攻撃を受け、また一人のプレイヤーが倒され、消滅した。

ヒースクリフがファントム・リーパーの爪を盾で弾き、
そこへ、キリトやアスナ、クラインやエギル達が攻撃する。
ファントム・リーパーもHPは後僅かになっていた。
ヒースクリフ「全員突撃!」

プレイヤーたちの一斉攻撃を受け、ファントム・リーパーは消滅した。

世界の終焉

ボス戦は終わったが、プレイヤーたちは力無く座りこんでいた。
クライン「何人やられた・・・」
キリト「14人死んだ・・・」
エギル「嘘だろ・・・」
クライン「後25層もあるんだぜ・・・」
エギル「本当に俺たちゃ、てっぺんまで辿り着けるのかよ・・・」

プレイヤーたちが絶望しかける中、ヒースクリフは一人立っていた。
HPゲージもギリギリでグリーンゾーンだった。
その様を見て、キリトが彼とのデュエルを思い返し―――
キリト「あっ・・・」
キリトが自身の剣、エリュシデータを拾い、立ち上がった。
アスナ「キリト君?」

キリト「はっ!」
キリトがエリシュデータでヒースクリフを突こうとしたが、
その剣先は、首元で止まった。
アスナ「キリトくん!何を・・・!?」
ヒースクリフの前に、「imporyal object」というウィンドウが出ていた。
アスナ「システム的不死・・・・って、どういう事ですか、団長?」
キリト「この男のHPはどうあろうとイエローにまで落ちないよう、システムに保護されているのさ」
「この世界に来てからずっと疑問に思っていたことがある。
あいつは今、何処で俺を観察し、世界を調整してるんだろうってな。
でも俺は単純な心理を忘れていたよ。どんな子供も知ってることさ。他人のやってるRPGを傍らから眺める事ほどつまらない事は無い!そうだろ・・・茅場晶彦」

プレイヤーたち「「「!」」」

ヒースクリフ「何故気づいたのか、参考までに教えて貰えるかな」
キリト「最初におかしいと思ったのはデュエルの時だ。最後の一瞬だけ、あんた、あまりにも速すぎたよ」
ヒースクリフ「やはりそうか。あれは私にとっても痛恨事だった。君の動きに圧倒されてつい、システムのオーバーアシストを使ってしまった」
「確かに私は茅場晶彦だ。付け加えれば最上階で君達を待つはずだったこのゲームの最終ボスでもある」

プレイヤーたち「「「!!」」」

キリト「趣味がいいとは言えないぞ。最強のプレイヤーが一転、最悪のラスボスか」
ヒースクリフ「中々良いシナリオだろ。最終的に私の前に立つのは君だと予想していた。
二刀流スキルは全てのプレイヤーの中で最大の反応速度を持つものに与えられ、
その者が魔王に対する勇者の役割を担うはずだった。
だがキミは私の予想を超える力を見せた。まあこの想定外の展開もネットワークRPGの醍醐味と言うべきかな」

団員「俺達の忠誠・・・希望を・・・よくも、よくも、よくも―――!!」
一人の血盟騎士団団員が飛び上がり、ヒースクリフに斬りかかった。
しかし、ヒースクリフがメニューを操作するとその団員は動きを止め、地面に落ちた。

キリト「麻痺・・・」
ヒースクリフは他のプレイヤーも麻痺させていき、キリト以外の全てのプレイヤーが動きを止めた。

アスナ「キリト君・・・!」
キリト「どうするつもりだ・・・この場で全員殺して隠蔽する気か・・・」
ヒースクリフ「まさか、そんな理不尽なまねはしないさ。
こうなって致し方ない。私は最上層の紅玉宮にて君達の訪れを待つことにするよ。
ここまで育てきた血盟騎士団並びに攻略組プレイヤー諸君を途中で放り出すのは不本意だが、なあに。君達の力ならきっと辿り付けるさ。だが、その前に・・・キリトくん!君には私の正体を看破した報酬を与えなくてはな。チャンスをやろう」
キリト「チャンス?」
ヒースクリフ「今この場で私と一対一で闘うチャンスだ。無論、不死属性は解除する。私に勝てばゲームはクリアされ全プレイヤーがログアウトできる。どうかな?」

アスナ「ダメよ、キリトくん・・・今は、今は退いて・・・」

キリトがこれまで死んでいったプレイヤー達を思い返す。

第一層ボス戦で、自分にボスへの止めを託して死んだディアベル。
自分の行動が原因で死なせてしまった、サチ達月夜の黒猫団。
ボスに無謀な挑戦をして死んでしまったコーバッツ。
自分を怨むグラディールの罠にかかって殺されたゴドフリー。
そして、自らの手で殺したグラディール。
更に、短い間ながらも自分とアスナの娘として暮らしたユイと
この戦いの前に、現実世界で自分と共に生きたいと涙ながらに言ったアスナ―――

キリト「ふざけるな・・・・」
アスナ「・・・・」
キリト「「いいだろう、決着を付けよう」
アスナ「キリト君!」
キリト「ごめんな、ここで逃げる訳にはいかないんだ」
アスナ「死ぬつもりじゃ、ないんだよね・・・」
キリト「ああ。必ず勝つ。勝ってこの世界を終わらせる」
アスナ「信じてるよ、キリト君」

クライン「キリト――――!!」
キリトがエリシュデータとダークリバルサーを抜き、ヒースクリフに向かう。
キリト「エギル、今まで剣士クラスのサポート、サンキューな。知ってたぜ。お前が儲けの殆ど全部、中層ゾーンのプレイヤーの育成につぎ込んでたこと」
エギル「・・・・!」
キリト「クライン。お前をあの時・・・置いていって悪かった・・・」
クライン「て、てめえ!キリト!謝ってんじゃねえ!今謝るんじゃねえよ!
許さねえぞ、ちゃんと向こうで飯の一つも奢ってからじゃねーと絶対許さねえからな!!」
キリト「分かった。向こう側でな」

キリトとヒースクリフが相対する。
キリト「悪いが一つだけ頼みがある」
ヒースクリフ「何かな?」
キリト「簡単に負けるつもりは無いが、もし俺が死んだら、しばらくでいい。アスナが自殺出来ない様に計らって欲しい」
ヒースクリフ「ほう。よかろう」
アスナ「キリト君ダメだよ!そんなの・・・そんなの無いよ!」

ヒースクリフがメニューを操作し、不死属性が解除され、HPがイエローゾーンになった。
そして、キリトの前に「完全決着」モードのデュエルの合図が出された。

アスナ「キリト君!!」

キリト(これはデュエルじゃない・・・単純な殺し合いだ・・・そうだ、俺はこの男を・・・殺す!)
「うおお――――!」

キリトとヒースクリフの戦いが始まった。
キリトの攻撃をヒースクリフは聖騎士の盾で凌ぎ、
ヒースクリフは聖騎士の剣で斬り返すも、キリトもかわしていく。

キリト(二刀流スキルをデザインしたのは奴だ。システム上の連続技は全て読まれる!
ソードスキルに頼らず、自分だけの力で倒すしかない!もっとだ・・もっと速く!)

キリトは攻撃し続けるも、全て盾で防がれ、やがて聖騎士の剣の一撃がキリトの頬を掠めた。

キリト「・・・はぁ!」

キリトは二刀流ソードスキル「ジ・イクリプス」を発動、させてしまった。
先程の懸念通り、その攻撃も全て聖騎士の盾で防がれていく。

キリト(ごめんアスナ・・・君だけは生きて・・・!)

やがて、ダークリバルサーの刃先が折れてしまった。
ヒースクリフ「さらばだ、キリト君」
聖騎士の剣が紅い輝きを纏い、それがキリトに向かって振り下ろされた。
その一撃は、キリト―――の前に割って入ったアスナを切り裂いた。

アスナのHPが0になった。
キリト「嘘だろアスナ・・・こんなの、こんなの・・・」
アスナ「ごめんね・・・さよなら・・・」
アスナが消滅した。
キリトは消滅したポリゴンの欠片をかき集めようとするも、叶わなず、膝を付いた。

ヒースクリフ「これは驚いた。自力で回復する手段は無かったはずだがな、こんな事も起きるものかな」
キリトが剣を拾い、ゆっくりと立ち上がった。
ヒースクリフ「ん?」
キリトが力無くヒースクリフに斬りかかるも、たやすくかわされる。
ヒースクリフがため息をついてから、聖騎士の剣でエリュシデータを弾き飛ばした。
そして、無防備になった所を聖騎士の剣でキリトの腹を貫いた。

キリトのHPがとんどん減っていき――――
キリト(これでもう・・・)
アスナ(信じてるよ、キリト君・・・)

キリトのHPが0になった。
キリト(・・・・!)
キリトが倒れ、消滅―――した筈が、そのポリゴンの欠片が集結し、
半透明になりながらも復活した。

キリト「まだだ・・・」
ヒースクリフ「?」
キリトが聖騎士の剣に貫かれたまま、ヒースクリフに近寄っていく。
キリト「まだだ・・・」
ヒースクリフ「!」

キリト「おおおおおお!!」
目を黄色く輝かせたキリトがヒースクリフ目がけてダークリバルサーを突き出した。
それを見たヒースクリフは微笑を浮かべ―――
ダークリバルサーにその身体を貫かれた。
キリト(これでいいかい・・・・?)
ダークリバルサーの柄が光った。
そしてキリトとヒースクリフが共に消滅した。
そのポリゴンの欠片は迷宮区を抜け出し、アイングラッド中に飛び散っていった。
キリトがこれまで関わってきたプレイヤー達もそれを見た。

アナウンス「11月7日14時15分、ゲームはクリアされました。ゲームはクリアされました・・・」


キリトが目覚めた場所は、夕焼けの空の上だった。
キリト「ここは・・・」
キリトがメニューを開くと、「最終フェイズ実行中」と表示されていた。
アスナ「キリト君・・・」
キリト「・・・・!」
アスナもそこにいた。
キリト「ごめん、俺も死んじゃったよ・・・」
アスナ「バカ・・・!」
アスナが駈け寄り、キリトを抱きしめた。
そして、唇を重ねた―――
キリト「ここはどうだろう・・・」
アスナが下を指差す。
そこではアインクラッドが崩壊していた。
アスナ「あっ・・・」
22層の、キリトとアスナが暮らしていた家も崩壊に巻き込まれていった。

茅場「中々の絶景だな」
茅場もそこにいた。
キリト「茅場晶彦・・・」
茅場「現在、アーガス本社地下五階に設置されたSAOメインフレームの全記憶装置のデータの完全消去を行っている。後10分ほどでこの世界の何もかもが消滅するだろう」
アスナ「あそこにいた人達は、どうなったの・・・」
茅場「心配には及ばない。先程生き残った全プレイヤー、6147人のログアウトを確認した」
キリト「死んだ連中は、今までに死んだ四千人はどうなったんだ・・・」
茅場「彼らの意識は帰ってこない。死者が消え去るのはどこの世界も一緒さ」
キリト「なんで・・・なんでこんなことしたんだ・・・」
茅場「何故、か・・・私も長い間忘れていたよ。何故だろうな・・・フルダイブ環境システムの開発を始めた時、いや、その遥か以前から私はあの城を、
現実世界のあらゆる枠や法則を超越した存在を作り出すことだけを欲して生きていた。そして私は、私の世界の法則をも超えるものを見る事が出来た」
「空に浮かぶ鋼鉄の城の空想に私が取り付かれたのは何歳の頃だったかな?
この地上から飛びだって、あの城へ行きたい。長い長い間、それが私の唯一の欲求だった。」
「私はねキリト君、まだ信じているのだよ。何処か別の世界には本当にあの城が存在するのだと」
キリト「ああ、そうだといいな・・・」
アスナも頷いた。

茅場「言い忘れていたな。ゲームクリアおめでとう、キリト君、アスナ君。さて、私はそろそろ行くよ」
茅場が二人に背を向けた。次の瞬間、その姿は消えていた。

アインクラッドは完全に崩壊した。

キリトとアスナが寄り添う。
キリト「お別れだな」
アスナ「ううん、お別れじゃないよ。私達は一つになって消えていく。だからいつまでも一緒。ねえ、最後に名前を教えて。キリト君の本当の名前」
キリト「・・・桐ヶ谷、桐ヶ谷和人。多分、先月で16歳」
アスナ「桐ヶ谷、和人君・・・年下だったのか・・・私はね、結城明日奈。17歳です」
キリト「結城、明日奈・・・結城明日奈」
キリトが涙をこぼし出した。
キリト「ごめん・・・ごめん・・・キミをあの世界に帰すって、約束したのに・・・俺は、俺は・・・」
アスナ「いいの、いいんだよ。私、幸せだった。和人君と会えて、一緒に暮らせて、今まで生きてきてずっと幸せだった。ありがとう、愛してます」

キリトとアスナが抱き合う。
そしてその空間諸共二人は白い光に包まれていき―――

アスナ「愛して、愛しています・・・」


キリト、いや和人が見たものは、病室の天井だった。
和人は視線を動かし、自分のやせ細った右手を見てもベッドに横たわったままだったが、
アスナの事を思い返し、涙を浮かべながら身体を起こした。

そして、ナーブギアを外した。

和人はよろけながらも立ち上がり、点滴の用具を杖代わりにして、歩き出した。
和人「あ・・・す・・・な・・・」
体から心電図のコードが外れ、心電図の値が0になり、ブザーを鳴らしたが、
構わず、病室の外に出て行った。

和人「あ・・・す・・な・・・」

続く

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最終更新:2018年08月11日 23:57