魔王メル・プリクディア

狂気に堕ちた錬金術師がガラス瓶の中で育て上げたホムンクルス
その製作には歴代魔王や魔王候補の遺骸の一部、さらに勇者やその候補までもが素材として使われたらしい。

数多の失敗の末、最後に生まれた"彼女"に魔王としての力が宿る事となる。
だが育成過程の交流を繰り返す内に狂気が薄れていく錬金術師の姿に彼女は己が魔王である事を隠し、『寿命』が尽きるその時まで彼のホムンクルスでいる事を選んだ。

やがて時が過ぎ、彼女の寿命が訪れようとしたその日。
名声と称賛を欲した自称勇者候補が館を襲撃、錬金術師を斬り捨てたのである。

死の闇に飲まれる寸前、錬金術師の目に映ったのは、その胸元に黒き紋章を浮かび上がらせた“魔王の誕生”。
爆発的に溢れ出した怒りと膨大な魔力の激流に自称勇者候補は一瞬で消し飛び、周囲一帯を灰塵へと変えていく。
やがて彼女の眼差しに宿る怒りと憎悪が、悲哀と虚しさへと移る頃には、胸元の紋章も静かに薄れ消えていた。
そうして彼女は錬金術師の遺体を抱きかかえると、そのまま何処かへと飛び去って行った。

今も彼女は世界の何処かで錬金術師の遺体を抱きかかえたまま、ひっそりと眠り続けているらしい。


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最終更新:2024年02月24日 14:44