work of Trinity

「ねえっ、リオン兄っ」

俺に話しかけてくる、全身ピンクで固めた少女。
とても無邪気な声だ。そんな子が…

「トドメ、さしちゃっていいよねっ?」

こんな惨劇を起こしたとは思えない。
俺も加担したんだから、文句は言えないが。
無邪気、とは言ったが。
こいつに邪気なんて物は、悪意なんて物は…
有り余るほどある。我ながら恐ろしい妹を持ったものだ。

「兄貴。こんな騒ぎを起こして良かったのか?」

…その騒ぎの半分はお前のせいだが。
目を向けた先にいる白い服を着た俺の弟。
鮮血で、綺麗な絵が完成している。
俺には理解できないが…

「…殺すのはよせ、厄介な事になる」

「なんで?ここは悪者の拠点だよ」

冷静な口調でネツトとピポノーダを抑える。
確かに、ここは黒羊拠点だ。
そこを制圧しただけなら、俺たちは賞賛されるだろうし、ピポノーダやネツトの衝動も抑えられる。
…問題は、そこじゃない。

「…こいつらを殺したら、まずい」

同業者だろう。同じく討伐に来ただろう冒険者が、その地獄絵図に混ざっている。
まったくなんて不運だ。
…俺も、こいつらも。
兄弟との繋がりは感覚で分かる。
だがこいつらは分からない。
不便な身体ってもんだ。
俺は戦闘中、理性的な思考ができない。
…ピポノーダは戦闘中も考えられるようだが、肝心の思考回路が危ない。

「…応急措置をして放置、帰るぞ」

「りょーかい!」

騒ぎを聞きつけてまた誰か来ない事を祈る。


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最終更新:2020年03月10日 06:39