今年は私のような農家にとっては外れの年であろう。
水温が平年よりも高めの年は、手塩にかけて育てた海草を食い荒らす忌々しい害貝が発生しやすい年でもあるのだ。
あの岩にそっくりな貝共は、2~3匹も居れば昆布一本を数時間足らずで食べ尽くす食欲を有している。
そんな奴らが数百匹も湧いてくれば、私の農園で育てている海藻全てが数日足らずで食べ尽くされてしまう事だろう。
動きは緩慢なので見つけ次第捕獲していく事は可能である。
しかしその外見が普通に岩や石と見分けがつかないのが一番の問題なのだ。
たとえ仲間と総出で駆除しようとしても、その作業は永遠に終わらない事だろう…。
だが、この『黒い悪夢』は決して価値がない訳ではないらしい。
どういう訳か人間達はこの害貝を食用としており、目の色を変えて探し回っているようなのだ。
人間の間では一匹で2~3日遊んで暮らせそうな額で取引されているとの事。
我々にとっては単なる害貝でしかないのだが、あれのどこがいいのだろうか理解に苦しむ所である。
今度試しに2~3匹程捕まえて、人間の持つ道具と交換でもしてみよう。
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最終更新:2023年10月31日 04:58