灼熱など、生易しい表現すら感じる広漠の大地。
そこは『ベコ』と呼ばれる砂食動物が生息し、日中は酷暑、夜中は酷寒。適応できないものは容赦なく淘汰される。名を『
ベコ砂漠』という。
この地では、かつて繁栄をきわめたぺトラマイヌス朝時代のと思しき遺跡が現存しており、その発掘調査は私の知るところ放ったらかしである。
黒曜石の三角錐が顔をのぞかせている以外は埋れている状態なのもあり、未踏という話も聞くが、実際は不明である。
遺跡というのは墓荒らしが世の常であり、知らず識らずがあるものだ。
さて。そんな古代遺跡など眼中にはない、砂の民がこのベコ砂漠でも暮らしている。
ガラスの国を訪れた時もそうだったが、彼らはなんと頼もしいことか。
砂の民を問わず、その地に順応し、集落を形成して暮らす者たちとの交流を図ることは、旅人の私にとって良い経験だ。
わかり合えない部族も存在したが、無論それも含める。
…それでだが、この過酷な状況をくぐり抜けるには、何日必要だろうか。
今は砂丘に潜む生物がとても恐ろしく感じる。以前とは違い、砂の民の案内がない。どうか察してほしい。
この先を越えた、リウス平原から
アールコル市国までが、次の題材だと記しておこう。
乾涸びていなければの話だが。
:『フォールドの旅行記』より。
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最終更新:2022年09月12日 11:39