道の真ん中にあんなものが生えていれば、いや、見ている前で突き出されたら…
卑猥とか、不気味とか以前になにをすればいいのかわからない。
まさにあの淫魔…忌々しい「それ」を見せつけ喜ぶとされる、カンミカムイ島の淫魔がそれだ。
何の変哲もない道。そこで、私はヤツに出会った。
夏でも涼しく過ごしやすいこの島の朝。
目覚ましがてらの散歩をしていると、大体十数歩先くらいの距離だっただろうか、
地面を割り「それ」が現れた。
女としては、口にするのを憚るべきの「何か」が、突如として地面を割り、見ている前で突き出てくる。
私の腰くらいはあろうかという高さ。
それが脈動しながら、ゆっくりと左右に揺れている。
それを見た私の頭の中は…
頭が真っ白になる、という状況がどのようなものかを身を以て思い知った。
だが次の瞬間には腰の刀に手をかけていた。
そんなもの、ぶった斬ってやるとばかりに。
しかしその手を押さえる者がいた。この島の案内役である。
「斬るな。曲がりなりにも神だ。何よりあれは斬ると増える」
斬ると増えるとは、ウズムシの化け物かこいつは。
ならどうすればいい。引き返そうとしたところで、今度は反対側にあれを突き出し揺らしてきているのだぞ。
「あれはトイポクンオヤシだ。"象徴"を見せつけて喜ぶだけの無害な淫魔にすぎない。
だから…アレを褒めろ。大きいとか、強そうとか、なんでもいい。そうしたら、自分のものはもっとすごいと自慢しろ」
言われたことが全く理解できないが、とにかく、「お前のそれは大きい」とかなんとか褒めてみた。
…嬉しそうに左右に激しく揺らしている。怖いというより、むしろ腹立たしい。
だがそんな気持ちを抑え、私のモノに勝てるかな?と一言付け加えてみた。
するとヤツは、ヤツの象徴は…
一瞬「ドクンッ」と音が聞こえてきそうな程に激しく動いた後、地中にシュルシュルと吸い込まれるように戻っていった。
一体なんなのだ、あれは。正体というよりも感覚が理解できない。
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最終更新:2020年10月17日 01:05