科学技術の発展は、我が王国に新たな力を齎したのは確かである。
しかし、我々の叡智が生み出せし蒸気機関とそれを動力とする各種の機器は無償で動く新たな魔法ではない。
我々や牛馬と同じく、糧を消費するものには変わりないのだ。
蒸気機関における糧とは、大地に眠る燃える石『石炭』であるのは周知の通りだろう。
そしてこの蒸気機関の糧となる石炭を掘り出す為、信じがたい数の馬や子供達が坑道での活動を強いられているという事実がある。
坑道内で使役される馬である
マインポニーはその名が示すとおり、鉱山内で労力として利用される馬である。
しかし現状、彼らの扱いは動物ではなく鉱石を運搬するための「物」と言ってもいいだろう。
また本来なら然るべき教育を受けなければいけない児童達も、労働に駆り出されるのは珍しくない。
大人では通れないような閉所に子供を向かわせる場面も多く、鉱山を運営する個人や組織は積極的に児童を募集するのがもはや当たり前となっているようだ。
必要な教育を施す為の期間を労働に奪われる。
これが何を意味するかは、少し考えればわかるはずだろう。
しかし児童労働への依存は改善されるどころか、蒸気機関の発展と普及に伴い「動力源」確保のために拡大を続けている一方である。
蒸気機関は、そして科学技術は万人に力と富をもたらす。
誰もが辛い労働を蒸気の力に任せ、王侯貴族の暮らしを享受できる。
技師や商人達はこう吹聴しているが、本当にそうなのだろうか?
その「機械の奴隷」は、いわば子供とポニーを糧として稼働している、とも言えるのだから…。
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最終更新:2020年10月24日 18:19