「総員に告ぐ、本艦はこれより半舷上陸に入る」
港に入るやいなや、艦長と上級将校の発した言葉がこれだった。
半舷上陸とは一部のみが上陸し、残りの者は艦で待機と言う事である。
一応ではあるが休息なのは間違いない。
確かにここ暫くは延々と海の上での任務が続いており、まともな休息なんて無かったのも事実だ。
が、艦長達の本心は別の処にあるのは余りにも見え見えであった。
その理由は先程、我々がメルグに引き渡したばかりの
化け物マグロであるのはまず間違いないだろう。
そいつはメルグの
漁師達から海の神と呼ばれ、体当たりだけで船を粉砕するようなヤツであった。
そんな化け物がつい数時間前に漁師によって仕留められ、そして我々の助けによってこのメルグの港に運び込まれたのである。
港街は既に
英雄ランディが
黒滅竜を討ち取り帰還したかのようなお祭り騒ぎとなっていた。
勿論この後に始まるのは、住民総出でアレを捌いて料理しての大宴会だ。
しかしあれ程の巨体を食べ尽くすのは、恐らく『
シュタインザルツを掘り尽くす』に等しい事だと思われる。
もはや近隣住民が寄ってたかって挑もうともその敗北は必須。
ならば我々も掘り尽くすのに協力しようじゃないか。それが艦長達の思惑であろう。
壇上で長々と訓示を述べ続ける艦長達の口元に一筋の光るモノが垂れるのを我々は見逃さなかった。
艦長、ここは我々も共に困難に挑むべきでは?
それが海の男たる我々グルメルグ艦隊の海軍魂というモノでしょう。
つまり我々も連れていけ艦長!
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最終更新:2023年04月13日 05:55