いんふ…れんざ?
「私の元々いた世界ではそう呼ばれている。
向こうでもナントカかぜと呼ばれる事のある病だが、厳密には異なる病だ。
この"
帝国かぜ"というのも恐らくはインフルエンザ、もしくはそれに類似したモノだろう」
それで、この"風邪"を引き起こしているのは呪い魔法などではなく、目に見えない程に小さな生き物、というのか。
確か…いーるすとか言ったな?
「そうだ。ただしこれも厳密には生物ではない。
私の世界でも、これを含めたウイルスは生物なのか、それともただの物質なのか学者達を悩ませている。
何しろ、言ってしまえば生命の設計図のようなものだからな。これだけでは息をする事すらできない」
目に見えぬ、正体すら掴めぬ悪魔、というところだな。
「ああ。こいつらは生物かどうかすら曖昧だから細菌…こっちはれっきとした生物だ、その細菌を退治する為の手段が基本的に通じない」
仮に今の世の中でこの帝国かぜのイールスが復活し、やられてしまったら、治す方法は無いというのか?
「心配するな。生き物の身体というのはよくできていてな。
身体の中にも邪悪な細菌やウイルスを撃退する、目に見えない軍隊がいるのだ。
仮に邪悪な存在が体内に進軍してきたとしても、目に見えぬ"帝国兵"がそれらを討ち、或いは侵された部分を破壊する事で人体と言う帝国を守るようにできている」
侵された部分を破壊?それは、防衛とは真逆ではないのか?
「ウイルスのような病原体は体の部品を乗っ取るという形で増えて悪さをする。
そうなれば、乗っ取られた部分はもう帝国の領地とは見做さずに破壊するという形で全体を守るという選択をする。
言うなれば、
魔界に行って魔物になった人間…
人鬼と言ったな、あれを討つようなものだ」
そう考えると帝国の人間としては理解しやすいな。
しかし、薬も通じない奴らとどうやって戦えというのだ?
「直接治すのでなければ、手段は無いわけではない。
そいつらを材料にして作った薬を、帝国かぜに感染する前に与えておくという方法がある。
これは病原体を倒す援軍というよりは、相手の特徴をまとめた指名手配みたいなものという方が近いな。
その"指名手配"を帝国軍に配る事ですぐに見つけて対処できるようになるという考えだ」
…しかし、その"指名手配"を作る方法については、この世界ではまだ無理としか思えないな。
「何、一番の防衛法は身体をよく鍛えて、清潔を保ち、しっかり疲れを取る事だ。
それだけはいつの世でも、どの世界でも変わりはしない」
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最終更新:2020年11月01日 10:19