「『
絶撃』ってのは、お前が思っているほど便利、あるいはかっこいいスキルじゃない。
相手を一瞬で確実に殺すっていうのは、それ相応の知識と鍛錬が必要だ。
しかもこれすら『その機を逃さない為のもの』に過ぎない。最終的に物を言うのは運だな。
何事でも一瞬の隙きが出来るものだが、その一瞬を逃さず捉える事が出来なければ絶撃は確立しない。
大博打の中の大博打みたいなものだ」
-へえ、俺が考えていたよりもずっと頭と腕が要求される技なんスね。
俺たち
盗っ人じゃなくて、
密偵が備えるスキルみたいなものじゃないですか。
「まあな。本来は密偵とか、
シノビとかのスキルだったからな」
-でも、そんな高度なスキルをなんであんたなんかがモノにしているんスか?
それだけの腕と頭がありゃ…盗っ人じゃなく密偵として国に仕えたほうがいいと思いますけどね?
「俺のは、流派や技術として体系化されたスキルじゃなくて、独学のものだからな。
そういった方面にはおそらく使えないだろう。俺の適当な絶撃よりもよっぽど洗練されているはずだからな。
それに…」
-それに?
「絶撃ってのは、どれだけ大博打だ、スキルの一つだともっともらしいことを言いはったところで、誰かを殺すのが目的なのは覆せない。
独学でも誰かを殺す技を手に入れた時点で、人として超えちゃいけない一線を超えてしまったと言えるからな。
俺なりの、"ワルモノ"としての覚悟の一つだって位置づけている。
…これも、その覚悟の表れだ」」
-これって…ただの短刀じゃないですか?
「ああ、そうだ。但し俺が
ジャスティスブレイカーをこうやって懐に入れている理由は、クズ勇者を始末する為じゃない。
クズでない勇者、官憲、その他『正義』がワルモノである俺の前に立ちはだかるなら、俺は躊躇なくそいつをぶち殺す。
邪魔をする正義は戸惑いなくぶち殺すワルモノになってしまった、そういう事を常に心のどこかに置いておくための象徴として持っているつもりなんだ。
盗っ人になった時点でもう表には戻れないワルモノだ、なら開き直って両足ともワルモノの世界に突っ込んで、頭の天辺まで浸かってやろう。
それが…カッコつけた言い方かもしれないが、俺の信念ってところだな。
ともかく、俺としてはワルモノになりきれる覚悟のない奴に、絶撃含めて殺しのスキルを教える事は出来ない。
長ったらしく話してしまったが、結局言いたい事はそれだけだ」
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最終更新:2022年03月21日 16:35