どこかで誰かに語りかけるグリム
『私はね、彼の事を敬愛していたんだよ。
共に魔界へと落ちる前からずっとね。
彼の名は「エルメニス」。
数多の本を読み漁り
数多の物語を嗜み
数多の物語を書き連ね続けるといった
この人生において彼のような登場人物はどんな物語や御伽話にも存在しなかった。
勿論、描く事すら出来なかった。
あまりにも彼が美しすぎて完璧すぎて
私如きが彼の様な人物を描くことがまるで彼に対する「冒涜」であるとしか思えなかったんだ。
でもそんな彼ですら最後は人間達に負けた。
勿論私も戦ったが腕と半身は泣き別れ。
彼と共に私もあの場所で死ぬべきだったんだろうが…運悪く生きながらえてる。
人間である事を捨てたのがいつだったのか
すら忘れてしまった。
私の真の名が「
ブレイン」であるということを忘れずにいられたのは救いではあるかな。
彼と共に戦い続けた誇り高き名前だよ。
でも彼がいない今、その名前を未練がましく抱えていても虚しいだけ。あの日から私は「
グリム・グリモワール」に生まれ変わったんだ。
そしてあの日、私は決意したんだ。
この忌々しい世界の全てを私の「物語」として書き換えてしまおうと。
全てを「物語」にしてしまえば何もかも私の掌の上。なんて素晴らしい事だろう。
当然、長い道のりではあるが苦ではない。
「物語」の完成まで先は長いが筆が止まらない。やはり本を書くのは楽しいものだね。』
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最終更新:2021年05月29日 16:05