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「ロクデナシ×謎な人」


作者:本スレ 1-510様

170 :ロクデナシ×謎な人:2013/03/23(土) 15:26:01

毎度すみません、1-510 です
1-510イーグル×グレンで現パロ書いてみた!ので投下させてもらいます

※1-510のキャラで現パロ、ロクデナシ(イーグル)×謎な人(グレン)
※背景に死人有り、あとやや物騒かも?
※なのに大してシリアスでもない
※エロもない
※前作(創作物スレ 2-132)を読んでないと一部意味不明ですが大した意味もない
※この現代パロの設定は 設定スレ 2-022

以上、大丈夫でしたらどぞー

171 :ロクデナシ×謎な人:2013/03/23(土) 15:28:06

「あんた……何しに来た」
何の変哲もないアパートの一室、の、玄関先。
双方強面気味で体格も良い男2人が、緊張感を孕んで対峙している。
片方はニヤニヤと相手を小馬鹿にしたような笑みを浮かべ、
もう片方は込み上げる怒りを抑えるように口元を引き結んでいる。
「あぁ?わざわざ弟のしけた面見に来てやった兄貴に何つー言い様だ」
「ふざけんな。急に失踪しておいて今更、兄貴面とか…!」
「へっ、兄貴が兄貴面して何が悪ぃ。とりあえず中、入れろ」
「嫌だ」
「誰の名義でこの部屋借りてると思ってやがる。入・れ・ろ」
「ぐ……!」
渋々、と言った調子で身体を引かせる弟。
兄はその隙間から室内へと入り、眉尻を微かに上げた。
かつて弟と共に己も暮らしていた部屋だが、当時と比べて随分と整理整頓が行き届いている。
「へぇ。男の一人暮らしにしちゃ、中々小綺麗にしてんじゃねぇか」
「……本当に、何しに来たんだよ。全部、今更だろ…」
「………」
兄は、ニヤついた笑いを引っ込めて、黙る。
そして避けたい問いを避けるための材料を探し、部屋の隅々を見渡す。
と。
「……ん?何だこりゃ……」
小さなテレビの脇に置いてあったものを手に取る。
プラスチック製の乳白色をした薄いケースだ。
中にはDVDらしきものが入っている。
「あ、それは…!」
弟に映画鑑賞なんて高尚な趣味が出来たのか、と、からかう口実に中を見てみて、兄は思わず固まった。
ディスクの表面には、幼女。
やたら目の大きい、キラキラした、幼女が描かれている。
呆気にとられてそれを眺めていると、弟が慌てた様子でそれを引っさらった。
兄の目は、部屋の片隅に整然と積み上げられた、同様のケースの山に向かう。
弟よりも素早く動き、その山に手を付け、表面を確認すると、そこにも幼女。
少年や、犬猫らしき動物が描かれているものもあるようだが、総じて言えば、全てアニメだ。
その事実を噛み締め飲み込んだ兄は、激怒した。
「ザック!テメーしばらく見ねぇ内にオタクに成り下がりやがったか!!!」
「おっオタクじゃねーよ!」
「オタクだろうが!何だこのマンガの山は!!!」
「マンガじゃねぇ、アニメだ!」
「同じようなもんだ!全部捨てろ!こんなもん!!」
兄はそう怒鳴って、手にしていたDVDをぶん投げた。
馬鹿力で壁にぶち当てられたソレは、無惨にもケースの一部が破損してしまった。
兄は、知らなかったが。
レンタルしたものが殆どな中で、そのDVDだけは、レンタルではない。 わざわざ購入されたものだ。
そのタイトルは、『となりのト●ロ』。
弟の大事な大事な、彼との出会いの切っ掛けとなった作品。
手痛い出費を手痛いと思う以上に、手元に置いておきたかった作品。
今度は弟が、激怒した。
「何しやがんだバカ兄貴!!クソ兄貴!!!」
「なっ…」
「出てけ!いいから出てけ!!!とにかく出てけーーーー!!!!」
その剣幕は、思わず兄も引いてしまうほどだった。
引いている内に小突かれ体当たりされ追い立てられ、気が付けば玄関外まで追いやられ。
「二度と来んな!!」
「ぶっ!」
仕上げに靴を顔面に投げつけられて、バタン!と大きな音を立ててドアが締められる。
流石に少々呆然としてしまった兄だが、我に返るとメラメラと怒りの炎が燃え盛り出す。
「テメーっザック!!ここ開けやがれ!!!コラ!!!」
ガンガンと派手にドアを蹴りさくる。
が、鉄製のドアは流石に蹴破れない。 部屋の中は沈黙が保たれている。
しばらく蹴り続けてみたが、うんともすんとも聞こえない。
「こっちです、おまわりさん!」
不意にそんな声が聞こえて振り返れば、近所の住人がどうやら通報したらしい。
ちっと舌打ちして、兄は走って逃げた。
弟は事情を聞かれるだろうが、ザマー見ろだと思った。
しかし怒りは、冷めやらない。
(オタクなんざ、オレは絶対許さねぇぞ!)

……ザックの兄であるイーグルは、現在無職だ。
というのも、つい先日まで海外にいた。
某国の外人傭兵部隊に所属していたのだ。
数年間そこで戦場を渡り歩く日々を送っていたが、ある日、戦友が一人死んだ。
戦友には身内がいなかった。
書類一枚が発行され、共同墓地の片隅に埋められる、淡々とした事務的な死。
それに直面したイーグルはふと、弟は元気だろうか、と思った。
思い立ったら即行動、そうしてたった一人の身内である弟を残して突然失踪した前科を持つイーグルは、
すぐに傭兵稼業を辞めて国に帰ってきた。
そして、大喧嘩。
(オレの気持ちも知らねーで…!)
そうイーグルは憤るが、知らせる努力をしていない上に自分も弟の気持ちを知らない事には気が向かない。
イライライライラ、市街地を練り歩く。
取るモノ取らず身一つで帰国したイーグルには、今日の宿すら無い有様。
多少の金なら手元にあるが、職も決めていない今は節約しておかねば、と考える程度の計画性はある。
かといって、今は弟の…というか、元はと言えば自分たちの部屋なのだが、あの部屋に戻ろうとも思えない。
(仕方ねぇ。手っ取り早く、稼ぐか)
弟と二人でいじましい生活をしていた頃、新聞配達より土建仕事より簡単に稼げる方法があった。
繁華街の裏の方、後ろ暗い男と夜の女が集う街。
夜を待ってそこに立ち、獲物を探す。
小金を持っていて、粋がっていて、街の小蝿にしかならないようなチンピラが良い。
それに因縁を付けられるように仕向けて、ちょっと退治してやって、迷惑料を巻き上げる。
いわゆるカツアゲの一種だったが、そうしている内に極道者の目にでも留まれば、もっと金の良い仕事が舞い込む
こともある。
昔から血気盛んだったのに加えて傭兵稼業ですっかり荒事に慣れきってしまったイーグルは、
ヤクザな仕事で食って行くのも悪くないかもな、と思っていた。
そうして、街灯の光も届かず薄暗い街角に立って獲物の品定めをしていると。
「ちょいと、そこのオニーサン。寄ってかないか?」
「ん…?」
脇から声を掛けられて、イーグルは振り向いた。
小さなテーブルとイス、そこに貼られた「運勢占います」の紙。
易者だ。
この街では昔からよく見るが、しかしそれにしても、易者は大概年寄りか中年の女というのが相場なのだが。
イーグルはその易者を観察する。
自分の同じくらいの年頃の男。
およそ易者らしくないラフな格好で、だるそうに姿勢を崩して座っている。
よくよく見れば割と整った顔をしているが、世の中を斜めに見たような薄ら笑いが胡散臭い事この上無い。
「…他を当たりな。オレは金がねぇ」
「タダで良い。面白そうな奴を見るのは好きなんだ」
「………」
タダで良い、と言われれば、ますます胡散臭い。
が、まぁ良いか、とイーグルは思った。
チンピラではないが、小金は持っていそうだし、迷惑料を取るにも都合が良さそうだ。
そんな物騒な思惑から、イーグルは易者の前にドカっと座った。
易者は満足そうに頷く。
「さて……オニーサン。どうやら家族の事で、お悩みがあるようだ」
「…!」
イーグルは、ドキっとした。
思わず顔に出たらしい。
易者はしたり顔で木切れの束を弄びながら、続ける。
「家族……弟さんか。久々に会ったようだ。しかし、解り合えていない」
「……………」
「2人とも我が強いな。意地もある。関係の修復には、時間が掛かりそうだ」
「……………」
「まずは、弟さんを認めてあげることか」
「……………」
「まぁ、アニメも捨てたもんじゃな……っ」
そこまで聞いて、イーグルは易者の胸ぐらを掴み上げた。
易者の貧相な体躯は片手で容易に宙に浮く。
それをぶら下げたまま、路地裏の暗がりへ連れ込んで、壁に押し付ける。
「テメェ…何モンだ。どっかから見張ってやがったのか」
「ゲホっ…くる、し、……っ!」
「何が目的だ。答えろ」
「……っ!」
ギブギブ!と言わんばかりに腕を叩かれて、イーグルは少しだけ胸ぐらを掴む手を緩めてやると、
易者は苦しげに咳き込みながら、しかしすぐに薄ら笑いを取り戻す。
イーグルはますます睨み付ける眼光を強めたが、易者は何処吹く風といった様子で言った。
「すまなかった、悪ふざけが過ぎたな…」
「あぁ?」
「まぁ、種明かしは単純だ。俺は、弟さんの隣の部屋を借りてる者でね」
「……………」
「ついでに言うと、易者でもない。
 場所だけ借りてみたんだが、これが中々楽しい」

どこを取っても怪しい男は、グレンと名乗った。
何でも隣の部屋にいたところ、イーグルと弟の会話、というか、大喧嘩が聞こえたらしい。
更に言うなら、警察を呼ばれて逃げるイーグルの姿も目撃したという。
「ぶっちゃけ、爆笑した」
心底おかしげに笑われて、イーグルは苦虫を噛み潰したような顔をした。
誰に聞かれようと見られようと構わなかったが、こうやって面と向かって笑われるとは思っていなかった。
というか、強面が過ぎるイーグルを真正面から笑う人間など、これまでそうはいなかった。
笑われ慣れていないイーグルは若干面食らいつつも、コイツぶん殴って良いか、ぶん殴って良いんだよな、と自問して
拳を固める。
が、それを止めたのは彼の言葉だ。
「さて。本題だが。
 笑わせてもらったお礼に、良ければ住居と職を提供したいと思ってね。
 こうしてお近づきになってみたんだ。
 どうせ無職なんだろう?あと、住処もないと見た」
「あ、あぁ…?」
全て図星だ。
しかし、突拍子がなさ過ぎる。
何なんだコイツは、とイーグルは警戒するよりも混乱した。
「君さえ良ければだが。立地は良いぞ。
 弟さんの隣の部屋だ。目を掛けるには絶好のポジションだろう?
 家賃も差し当たり保留でいい」
「テメー、そりゃ……」
さっきこの男は、弟の隣に住んでると言わなかったか。
質問をしようにも、男の言葉は止まらない。
「職の方は、多少ブラックかな。勤務形態は。
 だが金払いは良い。知り合いの会社が、人手を欲しがってるんだ。
 体力のあって、活きが良い男の人手を。
 …誤解の無いように言っておくと、一応は合法的な事業をしている会社だぞ」
ちょっと待て、とイーグルは言いたい。
だがわざとか否か、考える間も与えず男は立て続けにつらつら話す。
「ヤクザ稼業は、止めておけ。
 以前はどうだか知らないが、今は相当頭を使わないと稼げない。
 つまりは、面倒でアコギなシノギが多い。 
 それじゃあ、つまらないだろう?
 どうせつまらないなら、まともな職に就いておく方が良い。
 弟さんに真っ当な道を歩んでほしいなら、尚更な」
うぐぐ、とイーグルは唸った。
突っ込み所は多い気がしているが、どこから突っ込んでいいのか分からないし、そのタイミングも見当たらない。
それすら見透かしたように男は笑う。
「まぁ、今すぐにとは言わないが。 いつでも来るといい。
 弟さんの、向かって左隣の部屋だ。鍵を渡しておく」
そう言って、ぽんと鍵を渡してきた。
イーグルは目を剥いた。
ついさっき会ったばかりの他人に、部屋の鍵を渡すなど。
というか、この鍵は本物か?
真に受けて行ってみたら、鍵が合わずに入れない、なんて事になるんじゃないか。
そして、この男にまた笑われる羽目になるんじゃないか?
そんな事を考えながら、イーグルは手の内にある鍵を見つめて立ち尽くす。
そうこうしている内に、男はクスクス笑いながら去っていった。
何なんだ。
本当に何なんだあの男は。
イーグルは、怒ろうにも怒れない。何だか疲れてしまった。
カツアゲする気も失せてしまって、ふらふらと街を彷徨い、目に付いたカプセルホテルで寝た。
節約計画が台無しだ。
しかし。
(弟に真っ当な道を歩んでほしいなら、か…)
男の言った言葉が、脳裏を巡る。

翌日。
結局イーグルは、腹を立てながらも、男の言葉に乗ってみることにした。
元よりそうと決めたら即行動が己の主義、弟の部屋の左隣の部屋、その扉の前に立つ。
多少意気込んでその鍵穴に鍵を差すと、何の抵抗もなく回った。
「来たか。待ってた」
室内には、真昼間にも関わらず、昨夜の男がいた。
相変わらず胡散臭そうな笑みを浮かべている。
警戒して部屋を見渡してみると、弟の部屋と同じくシンプルな1Kではあったが、何というか、とにかく生活感が無い。
家具家電の類は揃っているものの、それ以外はゴミの一つも無かった。
「一応、ハウスクリーニングを入れてみたんだ。
 弟さんは綺麗好きなようだから、君もそうかと思って」
「…そりゃ、どーも」
「物が溢れてる方が俺は好きなんだがな。
 空間が広いと、妙に落ち着かない気分になる」
「……テメェも一緒に住むのか?」
「嫌か?」
嫌、とは流石に言いにくい。
元より転がり込もうと思ってここへ来たのはイーグルだ。
金が無いのもあるし、何より弟には真っ当な道を歩いてもらいたいのだ。
…まともに働いて、いつか家族を作って、死ねば誰かが泣いて送ってくれるような、そんな道を。
その為には、身内が無職の宿無しでは駄目だろう。
そしてそれよりも何よりも、アニメにハマっているようじゃ駄目だろう、とイーグルは思っている。
身近な所に住んで、オタクに成り下がった軟弱な弟を日々鉄拳にて指導してやろうと。
そう思えば、見知らぬ男との共同生活くらい何だ、と開き直れた。
海外にいた頃はそれこそ、その日限りの男所帯で雑魚寝していたものだった。
物を盗られそうになった事もあるし、ケツを狙われたこともある。
そんな連中に比べれば今目の前にいる男は、胡散臭いとはいえ貧弱そうだし、強欲そうにも見えない。
平和なこの国で命を狙われるような事も、まだ特にはやってない。
考えれば考えるほど、安全極まりないように思えた。
「別に。嫌じゃねぇよ。…世話になる」
「ああ。じゃあ改めまして…俺はグレン。君は?」
「イーグルだ」
「……イーグル?」
彼は少し怪訝そうな、おかしな顔をした。
と思いきや、いきなりケラケラ笑い出した。
「い、イーグル…っ……お前、イーグルって……!」
「な、何だ?何がおかしい!?」
「いや…何でも……ククク……」
「何でもねぇなら笑うな!何なんだテメーは!」
「そんなに吠えるな、吠え……ぷっ……あはははは!」
「クソっ、何だか知らねーが取り敢えず殴らせろ!」
…とまぁ、そんな感じで、イーグルと謎の男・グレンの共同生活が始まった。
始まって、しかしそれも1日足らずで終わったのだが。

イーグルは現在、建設現場で働いている。
グレンが紹介したのは、しばらく国を離れていたイーグルでも知っている大手建設会社だった。
彼の言った通り、勤務時間は長いし休憩時間は少ないというブラックさだったが、代わりに確かに金は良い。
若い時分に経験していた事もあり、元々体力仕事は得意なイーグルはすぐに慣れた。
現場の監督らも、イーグルの強面に恐れを為してかあまり強い事を言ってこず快適だ。
生活基盤を作る事においては、概ね順風満帆と言って良い。
が、気がかりな事がある。
弟のこともそうなのだが、それは気長に解消するとして。
同居人が、いきなり行方不明だった。

共同生活初日の夜、彼は引越祝いに手料理を振る舞うといって謎の闇鍋を作った。
それが、もの凄くマズかった。
盛大に顔を顰めたイーグルに、「困ったな」と言って全然困って無さそうな顔をする彼。
ツンツンと物珍しそうにドス緑色い鍋をつついている。
聞けば、料理など未だかつて作った事がないのだという。
アホかと思った。
何にせよ腹は減っているし、食材を無駄にするのも面白くない。
イーグルが傭兵時代に培ったサバイバル技術でもって、何とか食べられる味にまで作り直すと、彼は素直に感心した素振り
を見せていた。
「食事の心配はしなくて良さそうだな」と彼は笑う。
彼に感心され、見直されるのは悪い気がしない。
なので「仕方がねぇから、たまにだったら作ってやってもいい」と、そんな事を言ってやった。
対して、彼は軽く礼を言った後。
少しはにかんで「…2人だと、すごく楽しいな」、と。
そんな事を妙に噛み締めるようにして呟いたのを、イーグルは覚えている。
何だ、そういう可愛げもあるんじゃねーか、と思ったのだ。
案外悪くないかもしれない、とか。
そんなことを。

その次の朝、彼に連れられて建設現場に来た。
当日から働いて、部屋に戻れば彼の姿は無い。
深夜になっても帰ってこなかった。
用事でもあったのかと気にも留めなかったが、それから3日、4日、5日…
もうかれこれ2週間、彼の姿を見ていない。

イーグルは。
探す義理など何処にもない、と思った。
自分は、彼の部屋に転がり込んでいるだけだ。 彼の事情も知りはしない。
家賃が払われていない、部屋を立ち退け、という事態になれば別だが、それ以外で困っている事は何もない。
一人で悠々と部屋を使えて、有り難いくらいだ。
ただ。
……あんなクソマズイ闇鍋の後処理でなければ、オレはもっと美味いメシを作れる、と思った。
笑われてばかりでは納得がいかない、もっとオレに感心して見せろ、と。
料理だけではない、あらゆる面で自分の凄さを思い知らせてやらなければ気が済まない、と。
そんな事を思いながら、イーグルは酒を買うだの何だの理由を付けて、毎晩のように街に出た。
街へ出ると、つい視線は彼の姿を探してしまう。
義理など無いのに。 またフザけた易者のフリでもして、妙な輩に捕まったりしたんじゃないかと心配すらした。
しかし、見つからない。
行方不明。
イーグルは、ふと、自分が姿を消した時も、弟はこんな気持ちになったんだろうかと思った。
手がかりもなく夜な夜な街へ出て、その姿を探しては、見つからずに溜息を吐いて。
もし、そうなら。
詫びを入れてやってもいいかもしれない、と思った。
心配掛けて、悪かった、と。
弟がどんな顔をして見せるか想像は出来ないが、まずは彼を、グレンを探し出して、それからだ。
イーグルがそう心に決めた、その翌日。

「イーグル!」
呼ばれて振り向くと、彼の姿があった。
公園側の現場付近にて。
憔悴した様子は見られない…というか、呑気に平和に、小さな犬を連れて歩いている。
しかも、自分で呼んだくせにこちらを見向きもしていない。
イーグルは心配していたのも忘れて、頭に来た。

「グレン!テメェ、何してやがる!!」
運んでいた鉄骨も茶が入ったヤカンも全部放りだして、彼に迫る。
彼はようやくこちらに気付いたような、驚いた顔をしていた。
「…イーグル?この近くの現場なのか?」
「んなこたぁどーでも良いんだよ!テメー、今までどこで何してやがった!」
「どこで何を、と言われても……普通に、過ごしてたが」
「普通にって…!」
グレンが言うには。
イーグルに部屋を提供し、仕事を紹介した後。
普通に自宅に帰ったのだという。
そして普通に自宅で暮らしていた、と。
「じ、自宅って、お前…あそこに住んでんじゃねーのか…?」
「あそこ?…ああ、あのアパートか。アレは別宅にしてたんだ。
 狭くてゴミゴミした所でウダウダしたい時用の」
「……一緒に住むのは嫌か、とか…」
「聞いたな。聞いたが、一緒に住むと言ったか?」
イーグルは、唖然とした。
だって、お前。
それは誤解するだろ。
それに、お前。
「2人だと楽しい」とか言ったじゃねーか。
あの、ちょっとイイ感じに笑った顔。
オレは、覚えてるんだぞ。
「……なんだ。お前、俺と一緒に暮らしたかったのか」
「ばっ…んなわけあるか!一人で清々してらぁ!!」
「ははは。なら良かった。あそこはペットが禁止だからな。
 この子がいるから、都合が悪いんだ」
この子、と言って、グレンの目線が下に降りた。
犬だ。
小さい犬。
胴が長くて手足の短い、見れば見るほど間抜けな姿の。
それが、今にも噛み付きそうな不細工面でこちらを見上げて唸っている。
「Mダックスのビーグル君だ。可愛いだろう?」
「…………」
「お前、この子に少し似てるかも、と思ったら名前まで似てて驚いたな。
 というか、えらく笑えた」
「…………」
「…2人並んでると、本当に似てるな…わ、笑える…っ」
ついにケラケラ笑い出したグレンを見て。
イーグルは、もう限界だと思った。
殴ろう。
泣かそう。
イーグル様申し訳ありません今後は貴方のシモベになります何でもお申し付け下さい、くらい言わせよう。
そして。
……オレのメシを、食わせたい。
イーグルはどこからか沸いた己の発想に、苦虫を5万匹くらい噛み潰して擦り潰して口内中に広げたような顔をした。
「……おい」
「ん…?」
「たまには、メシ食いに来ても良いぞ」
「ああ、ありがとう。今度お邪魔しようかな」
「今度じゃねぇ。今日来い」
「今日か?今日は……まぁ、良いか。分かった」
イーグルは、うむ、と頷いて見せるとグレンに背を向けた。
放り出してきた鉄骨と、茶が零れまくって空に近くなったヤカンを拾い上げ、現場への道をすたすた歩いた。
傍からは平静に見える動きだが、脳内はとことん渦巻いている。
(馬鹿かオレは馬鹿かオレは馬鹿か!オレは!!)
泣く子も更に泣き叫ぶような形相で、イーグルはとにかく歩く。
…弟に謝る、なんて殊勝な考えは当然の如く飛んでいる。
かくして彼らの平穏は波乱に満ちながら、いつまでも続いていくのである。

【END】

うっかり長くなっちゃいましたが、お付き合いありがとうございました!

絵茶で頂いたネタで妄想現パロ自カプ3組で連作?これにて終了でございます
世界観を変えてみるとキャラの性格特性を見つめなおせて良いですねw楽しかったー!
ネタをお授け下さった皆様、本当にありがとうございました!

あと一応SSにした現パロの設定を、設定スレの方に投下させてもらおうと思います
良かったらそちらも見てやってくださいませー( ⇒ 設定スレ 2-022 へ )
反映したかったけど出来なかった妄想ネタの未練供養であります、精進いたしまする



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最終更新:2013年03月23日 22:14