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「-CROSS OVER THE DAY ANOTHER 3-君と眠る 2-」


作者:本スレ 1-710様

212 :-CROSS OVER THE DAY ANOTHER 3-君と眠る 2-:2013/04/23(火) 21:03:23

本スレ1-710 です
うちの子(設定スレ1-036)のSSを書きましたので投下します
以下、属性表記です
 ・そんな描写は全くないけど、現代風ファンタジー(獣人変化もの)
 ・前作( 創作物スレ 2-089 )の続きですが、一応、これだけでも読めるはず
 ・めずらしくエイシアさん一人称
 ・登場キャラクターは、ウィル(20歳)×エイシア(17歳)です
 ・ウィルとエイシアでの遣り取りがメインですが、1-091様のキャラ (本スレ1-866)とも勝手にクロス
 ・でも、牧先生の名前が出てくるだけ(申し訳ない…)
 ・そして微エロ(エロ未遂)
 こんな感じですが、よろしかったら、どうぞ

213 :-CROSS OVER THE DAY ANOTHER 3-君と眠る 2-:2013/04/23(火) 21:07:48

カーテンの隙間から、明るく優しい午前の陽光が差し込んでいる。
時間は、もう午前10時を廻った頃になるだろうか。

「ん……」

自分の口元から溜息にも似た吐息が漏れるのが解る。
朝の光と不意にほんの少しの肌寒さを感じて、俺は自らの額に手を遣りつつ、瞳を薄く開
けた。

俺が眠りに就くまで、傍に居た、墨色の長い髪とトパーズブルーの瞳をした、あいつ――
ウィルは、もう、この部屋には居ない。
一人で眠るには、幾分大きすぎるベッドの上に、俺はたった一人で横たわりながら、再び
大きな溜息をついた。

「……起きたら、するって、言ったのに……」

何故だか解らないけれど、俺は無意識のうちに小さな声で、そんな言葉を口にしていた。
ほぼ同時に、自分自身のアイスブルーの瞳から、不意に一筋の涙が零れる。

まただ。近頃、いや、正確には、柳と寝てからなんだが。時折、こんな風に自分自身の感
情が上手く抑えられなくなるのだ。
酷い時には、年端のいかない少年のように精神退行がかかる。
解ってはいるのだが。この状態に陥る事を未だに上手く抑え込めない。

おまけに今朝は、頭が割れるように痛い。きっと昨晩、夜中まで、深酒しすぎた所為だ。
吐き気がしないだけマシといったところか。
でも、これだけ頭が痛いってことは、きっとまた何か、やらかしてる。
アルとウィルに……下手喰うと牧先生にも……また迷惑かけてるんだろうな……と思うと、
余計に気が滅入った。

それでも、気だるく重い上半身を無理矢理起こすようにして、起き上がることにする。
自らの身体の上に掛かる柔らかなダウンフェザーのコンフォーターを外し、ゆっくりと起
き上がりながら、自分自身の服装も確認してみたが、こちらは思った程、乱れていない。

眠る前に着ていた、オックスフォード地の白いボタンダウンシャツもそれ程、肌蹴ていな
いし、ジーンズのボトムのフロントボタンも外れていない。
あいつと一緒に眠ったのに、珍しく、本当にそういう事をしなかったわけだ。

そんな事を考えている自分自身に少し呆れながら、俺は自らの白い前髪を後ろへと掻き上
げ、ベッドの淵に改めて座り直した。
その直後に、この部屋のドアを静かに開ける音がした。

今、この時間帯に、この高層アパートメントのメゾネットに居るのは、俺以外に一人しか
いない筈だ。だから、敢えて相手を確認する必用は無い。
でも、俺は無意識のうちにドアの方へと視線を向けていた。

「そろそろ起きる頃だと思って。酔い覚ましを持ってきたよ」
「相変わらず手際が良いな」

俺が返事を返した相手は、もちろんウィルだ。
奴の手元には、アルコール抜きのミントジュレップと、ミントの葉が添えられたレモンシ
ャーベットを乗せたシルバーのトレイがあった。
他愛もない飲み物とデザートのようにも思えるが、それらは、どれも、こいつ自らが作っ
たものだ。

「思ったよりも辛くなさそうだね」
「そうでもない。結構、頭が痛い」

ウィルは、いつもと変わらない、落ち着き払った表情のまま、穏やかなトパーズブルーの
瞳で、俺の方を見ていた。
奴の視線は、何処か暖かい優しさに満ちているようにも思える類のものだ。

そんな視線を奴から向けられていた事を改めて意識した俺は、ほんの少しだけ、気恥ずか
しさにも似た感情を覚えた。
だから、俺は思わず、その場で奴から視線を逸らすようにして俯いた。
ウィルは俺の様子に構う事なく、こちら側へと向かって歩いてくると、シルバーのトレイ
をベッドサイドテーブルへと置く。

「これ、置いていくから。大丈夫なら口にして」

謝る事さえも出来ずに、ただ俯いたままでいた俺に、ウィルは、そう声をかけた。
それ以上の言葉をかける事もなく、奴は俺から背を向ける。

「……するって……言った」

背中を向けた奴に対し、俺は呟くように、小さな声で言葉を返す。
奴に対して、そんな言葉を掛けるなんて、不本意な気がしないでもなかったが、俺はただ、
その時の自分の気持ちに正直に応えただけだ。
俺の言葉を受けて、ウィルはこちら側へと軽く振り向くと、普段と何ひとつ変らない表情
で、至極真っ当な返事を返してきた。

「吐きそうな奴とする趣味はないよ。それ食べたら、少し横になった方がいい」
「欲しいって言ってるんだよ!」

奴の返答を耳にした瞬間、俺は直情的にも思える口調でそう返していた。
嫌な事に、涙が自分の頬を伝うのが解る。また感情が昂れしている。そう思っても、その
言葉が口から出るのを止められなかった。
そんな俺の様子を目にした奴は、改めて此方の方へと歩いてくると、その場で身を屈める
ようにして、ベッドの淵に座りっぱなしでいた俺の事を抱きよせる。

俺が奴を抱き返そうとするのを見計らったかのように、そのまま、ただ言葉なく、手慣れ
た所作で、俺の事をベッドの上へと押し倒してゆく。

「……ん」

一連の所作に対して、俺はただ、受け身になって、肯定も否定もせずに応じる。
ほかには何の意図もない筈なのに、俺の口元からは、熱を帯びた小さな吐息が零れてゆく。
奴の体温を間近に感じている所為か、自分の身体が急速に火照っていくのが解る。

欲しい。ただ、それだけだ。他の事なんて、何も考えられなかった。
俺の感情の昂りを何処まで解っているのか知らないが、奴はまるでこちら側の気持ちを見
越したように、俺の顎の辺りに片手を添える。
その所作に抵抗する事も無く、俺はただ、奴の方を見据えていた。
それを肯定と受け止めたのか、奴の方もそれ以上、何も言わずに、そのまま俺に口付けた。

「……っは、ぁ!」

一度、軽く口付けられてから、それを外される。
それだけの事なのに、先程よりも更に熱を帯びた吐息が零れる。
奴はそれを待っていたように、俺の唇を割って、更に深く口付けてきた。
口腔内に舌が深く差し込まれる。それを迎え入れてやるように、俺は、自分の舌を奴の舌
に絡めた。

それを受けて奴は逆に俺が絡めた舌を外し、此方の反応を愉しむように、口付けを深める
のを一旦、止める。
直後に、奴は少し口元をずらすようにしてから、再び口付けを深め、自らの舌で俺の歯列
を軽くなぞる。
そんな所作を施され、受け止めてゆく度に、互いの口元からは、くぐもった吐息とともに、
濡れた水音が小さく響く。

「……っ、ぅ!」

やがて、前触れも無く、その口付けを外された瞬間、再び急に抑える術を失った所為で、
俺の口元からは堪え切れなかった吐息が零れる。
自然と奴から顔を叛けるような格好になった、俺の首筋に添って、再び奴からの口付けが
施されてゆく。
幾分荒くなり始めた自らの呼吸を整える間も無く、新たな感覚を伴う行為が施され始める。

「ぅ、ぁ! ……や、……」

其処は思ったよりも感じるから。今、この時点で、そうされるのは、本当は嫌なのに。
きっと奴は、それを解っているくせに、それでも、なお、そういう事をしてるんだろう。

「っあ!」

首筋に口付けを施され、其処を軽く咬まれているだけなのに、甘さと、鋭さをも帯びた感
覚が全身へとはしっていく。
その感覚に耐えきれなくなって、俺は、奴の腕に組み敷かれた体勢のまま、僅かに軽く身
を捩る。
そうした動作を終えたのとほぼ同時に、一瞬の眩暈を経た後で、重く痺れるような、それ
でいて、鋭い痛みをも伴った頭痛が俺を苛んだ。

「……い、痛……ぅ!」
「ほら、やっぱり辛いんだろう?」

直後に、ウィルは俺に施していた行為を止めた。
俺が、先程までとは異なる性質の辛さを自らの表情に、明らかに滲ませていたからだ。
普段なら、こんな事は全くない筈なんだが。やっぱり、酷く飲み過ぎていた、昨晩の酒の
所為だろうか。

「……ぅ……」

小さな吐息を零しながら、手許のシーツを掴んで、酷い頭痛をやり過ごそうとしていた、
此方の様子を見かねたウィルは、一度、俺の頭の上に軽く手を置いた。
それから、あまり間を置かずに、その手を自らの許へと戻し、ウィルはそのまま、自分自
身の上半身を起こす。

「というか、ごめん、歯止めが利かなかった」

そう言って、ウィルは、再び俺の頭を幾度か軽く撫でた。
俺はベッドの上でうつ伏せに近い状態のままだったが、それでも、その所作で、ウィルが
ベッドの上から去ろうとするのが解る。

「……嫌だ……何処にも行くなよ」

相手の所作を感じ取った瞬間、俺は横になったままの体勢から、その場で寝返りを打つよ
うにして、奴の手首を軽く引いていた。
そうなのだ、この時点で、俺は漸く、自分の気持ちに気付いた。俺はただ、単純に、こい
つに、傍に居て欲しかったんだ。

「何処にも行かないよ。大丈夫、ちゃんと君の傍に居るから」

ウィルは、その言葉とともに、奴の手首を掴んでいた俺の手を軽く振りほどいた。
同時に、もう片方の手で手近にあったコンフォーターを引っ張って、俺と奴自身の身体の
上に掛け直してから、ウィルは再びその場で横になる。
そうして、その場に横たわったまま、ウィルは間を置くことなく、俺のことを再びそっと
抱き寄せた。
自分から切っ掛けを作っておいて、どうかとも思うが、その間ずっと、俺は気恥かしさで、
奴の顔をまともになんて、全く見ることが出来なかった。

「ごめん」
「いいさ。また少し眠ろうか。たまにはこういうのも悪くないだろう」

やっとの思いで小さな声で、詫びの言葉を口にした俺に対して、ウィルは穏やかな口調で
言った。
それから、俺の背中に手を添えながら、そう言ってくれたウィルの言葉に応えるように、
奴の口元へと一度、軽い口付けを贈ってから、こいつの肩口へと顔を埋める。

ウィルが両腕で先程よりも強く抱き留めてくれた所為もあって、俺は奴の心音をより間
近に感じつつ、再び心地良いまどろみの中で眠りに就いた。
再び起きた暁には、普段どおりの俺で、君に再びしっかりと応じられる事を願って。

――この後、再び目を覚ました俺は、奴を散々焦らすような真似をした件と、奴の持って
きた酔い覚ましを無駄にした件について、しっかりと責任を取らされた。

そうした結果になったのは、今、この時点で、そう、後から考えても、甚だ不本意な気も
するが、たまにはそういうのも悪くないだろう、と思い込むようにしておく。

【END】

お付き合いいただきありがとうございました!
これ、当初、途中まで書いたはいいけど、ウィルさんがあまりにそっ気なくて、かたちにならないかも…と、
あきらめ気味だったんですが、絵茶で皆様と交流させていただいた際の彼等のやり取りをもとに、何となく
形になりましたw皆様ありがとうww

そして、今回のSSの裏ミッションは、前回のウィル(攻め視点)と限りなく同じ流れで、エイシアさん視点
(受け視点)で書いてみるwという感じでしたw二人の視点や感覚の違いなどもお楽しみいただけると幸いですw
またそのうち……? 完遂版も書けると良いなwと思っておりますw今後ともどうぞよろしくお願いしますw

※wiki収録後に、一部修正を加えました。



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最終更新:2013年04月29日 14:54