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「-CROSS OVER THE DAY ANOTHER 2-君と眠る-」


作者:本スレ 1-710様

89 :-CROSS OVER THE DAY ANOTHER 2-君と眠る-:2013/02/17(日) 20:43:20

本スレ1-710 です
うちの子(設定スレ1-036)のSSを書きましたので投下します
以下、属性表記です
 ・そんな描写は全くないけど、現代風ファンタジー(獣人変化もの)
 ・-CROSS OVER THE DAY ANOTHER-の2作目ですが、前回のSSとあまりつながりがないwので、
  これだけでも読めるはず
 ・めずらしくウィル一人称
 ・登場キャラクターは、ウィル(20歳)×エイシア(17歳)です
 ・ウィルとエイシアでの遣り取りがメインですが、1-091様のキャラ (本スレ1-866)とも勝手にクロス
 ・でも、牧先生が回想場面的要素でほんの少し、登場する位といったところ
 ・キャラ&設定が1-091様の公式設定から外れている可能性あり
 ・そして微エロ
 こんな感じですが、よろしかったら、どうぞ

90 :-CROSS OVER THE DAY ANOTHER 2-君と眠る-:2013/02/17(日) 20:46:01

朝もとっくに5時を回った。いや、6時近いといった方が正確か。
今は冬場なので、周囲は未だに薄暗いが、朝の気配とでもいうべき、静寂に包まれた澄み
きった空気が辺りに満ちている。

つい先程まで、この高層アパートメントのメゾネットの一室で続いていた宴席の後片付け
と、いつもどおりの朝食の支度を含めた一通りの用事を終えて、俺は軽く溜息をついた。
カフェエプロンを外して、すぐ側の壁際のフックへとそれを引っかける。
たったそれだけの動作なんだが、その動作に合わせて、俺自身の黒く長い髪が肩から胸元
へと滑り落ちる。

後ろ側で軽く結っていてもこれだ。
正直、ここまで伸ばしているのは、自分でも鬱陶しいと思うのだが、これを切ると悲しそ
うな表情をする奴の顔が幾人か浮かぶので、簡単には切れない。

そんな風に意味のない事を考えながら、俺はキッチンを後にして、自分自身のベッドルー
ムへと向かった。
俺のベッドルームには、つい先程、2時間程前に酔いつぶれて、ひとしきり泣いてから眠
りについたエイシアがいる。

あいつはここまで酒に弱くはなかった筈なんだが。
柳との件があって以来、あいつは未だに、不意に年端もいかない少年のように精神年齢を
退行させているにも等しい状態に陥る時がある。
特に今回は、牧や繊を招いてかなり長い時間、飲み明かしていた所為もあるのだろうが。

それに、「これだけ日本に長く滞在する事になったんだから、牧や繊、それにその他数名
の知り合いを招いて皆で食事をしたい」と言ったのは、酔いつぶれたエイシア本人と、シ
ルヴィアだというのが、また芳しくない状況に拍車をかけていた気もする。

加えて、エイシアは何故か、牧には絶対の信頼を置いているようで、彼と接する際には、
何時も甘えにも似た情が幾分か入る。その事は充分に理解していたつもりだ。
だが、今回は酒が入っていた所為で、傍から見ていても、彼に迷惑だろうと思う程だった。
酒が入ってなければ、牧に対しても少し積極的に声を掛ける程度なんだが。

今回ばかりは、エイシア自身も後で思い出した際には、少々落ち込むんじゃないかと思う。
まあ、それも、あいつが思い出せばの話だが。
ただ、多分、あいつには、事の詳細を覚えているだけの余力はない。
なにしろ、一人じゃ眠れないと泣いて訴えたあいつに睡眠導入剤を飲ませた位だから。

そんな奴の事を気遣いながら、俺はベッドルームのドアを静かに開けた。
俺の視線の先には、先程、この部屋を出た時とほぼ変わらない様子で、少し大きめのベッ
ドの上で、眠っているエイシアの様子が映る。
その様子を確認しながら、俺は未だに朝日がほんの少ししか差し込んでおらず、薄暗いま
まの部屋の中へと入り、音を立てないように気を配りつつ、ドアを閉めた。

それからベッドの方へと歩いていき、片膝を付くようにして、ベッドの上に身を乗り出し
た姿勢のままで、奴の身体の上に掛かるダウンフェザーのコンフォーターをそっと外す。
俺は両腕で自らの身体を支え、奴の身体の上に覆い被さるようにした体勢のまま、その額
へと軽く口付けを落とした。

「……ん、……」

腕の下に組み敷くような体勢に置いていた奴の口元からは、むずかるような声があがる。
眠ってからそれ程は経っていないエイシアを起こすのは忍びなかったが、こいつがベッド
の真ん中で眠っている所為で、このままだと俺自身がこの場所で眠れなかったからだ。

「エイシア、悪い、起きて」
「……ん、……ウィル……俺……」

暗がりの中で、アイスブルーの瞳を薄く開いたエイシアは、未だに何処かぼんやりとした
表情で俺の事を見つめていた。

「ごめんね。君の身体の位置を少し動かしたいんだ」
「……ん、」

ベッドに横たわったままの奴の背中へと手を差し入れ、そのまま抱き起こそうとした俺の
所作に従うように、エイシアも俺の背中へと手を廻してくる。
奴の身体を一度、そのまま横抱きにして抱え上げ、少し横に移した場所へと降ろしてから、
俺は再び声を掛けた。

「起こしてしまってごめん。もう良いよ」
「ウィル……俺……」
「何?」

俺がその場で、エイシアの隣に片肘を付いて横たわりながら、奴の方に改めて視線を向け
ると、視線の先に写る相手の表情が明らかに憂いを帯びる。
恐らく、俺やアルにまた迷惑を掛けたと、自覚しての事なのだろう。
それは俺やアルにとっては、迷惑という程の事ではないのだが。
あの時以来、こいつが抱え込み、堪えてきた感情を想えば、この程度は全くの許容範囲だ。

「……また、迷惑、かけた? ごめん……」

エイシアはアイスブルーの瞳から溢れるように涙を零して泣いていた。
こいつ自身は相変わらず、酒の所為とはいえ、そんな風に崩れる自分が赦せないのだろう。
無理もない。エイシアには、今までずっと、精神的な意味では一番タフだと、自他ともに
認められているという自負があったのだろうから。
だからこそ、こんなにも脆い一面が自分自身にあった事が認められないのだろう。

「迷惑だなんて事は何も無かったよ。
 ただ、いつもより、ほんの少し、君が可愛らしかっただけだ」
「……普通、それを迷惑っていうんじゃないか?」

俺が軽口を利くように返した言葉につられるように、エイシアは目元を拭い、少し微笑み
ながら、そう言った。
そんな風に、いつもどおりの気丈な様子を見せようとするエイシアの事が、その時の俺に
は、何故かとても愛おしく思えた。
だから、俺は、自分自身の感情に正直に、エイシアの身体を引き寄せ、抱きしめる。

「……ん、ウィル、だめだ。もう、朝なんだろ」
「牧と繊はもう帰ったよ」
「ちが……皆、起きてくる……から」

奴の身体を俺が抱きしめた意図を察したように、当然ながらエイシアの口からはそれを拒
む声があがる。同時に奴は俺の腕の中から逃げを打つように、軽く身を捩る。
それを赦さないように、俺はエイシアの身体を一層強く抱きすくめながら、奴の耳朶を甘
く噛んだ。途端に腕の中の奴の身体が小さく震えた。

「……っ! や、だ……声、抑えられない……」
「さっきは眠る直前まで、俺が欲しいって、言ってたくせに」

顔を横に叛けたまま、既に目元から涙を零して訴えるエイシアの耳元に、俺は囁くように
声をかけた。
続けて奴の首筋へと短い口付けを落とし、一度、舌を這わせてから其処を軽く噛む。
そうされるだけで、エイシアが酷く感じると知っているからだ。

「……ふ、あ、ぁっ! 本当に駄目……だから……」

エイシアがそんな風に声を上げながら、俺の背中へと再び自ら手を廻してきた事に応じる
ように、幾度か甘く噛み、舌を這わせていた、奴の首筋を解放してやる。
直後に叛けていた顔を此方側へと向けたエイシアは、そのまま俺の肩口の辺りへと顔を添
える。
俺はそれを見届けてから、片方の手で奴の脇腹の辺りを撫でるようにして、そっと触れた。
次の瞬間に、エイシアの身体が先程よりも大きく跳ねた。

「……んっ、あ!」
「本当は俺が欲しい?」

再び小さく声をあげたエイシアに対して、俺は短く、そう声をかける。
奴に対して、少々意地の悪い事をしたという自覚はある。
でも、この時、俺は、あれ以来、そういう直接的な言葉を滅多に口にしなくなった、こい
つの気持ちを確認しておきたかった。だから、その自分自身の感情に素直に従ったまでだ。

俺の声に応じるように、エイシアの方も、肩口に添わせていた顔を上げ、涙に濡れた顔で
此方側を見つめていた。
それからあまり間を置くことなく、エイシアは一言も発さずに俺の背中に廻した掌により
一層の力を入れながら、ただ小さく頷いた。
そうして、何時もと変わらない、強い意思を宿す瞳で此方の事を見つめていたエイシアの
唇へと、俺は軽く口付ける。

「解った。君を試すような真似をして悪かった。もう少し眠ろうか」
「……でも、……後で起きたら……して……」

エイシアの小さな声に応じるように、俺はこいつに深く口付けた。
それを切っ掛けに、奴と俺は互いの唇を貪るように、口付けを交わし合った。
まるで、深い眠りに落ちる前に必要な儀式のように。

ほんの少しの間を置いて、どちらからともなく唇を離すと、エイシアは、俺の方へと更に
身を寄せるように此方側へと身体を預けてくる。
そんな所作を取ったエイシアの身体を腕の中に抱き留めながら、俺は自由になる片方の腕
で、側に置いたままにしていたコンフォーターを引き寄せた。
エイシアと自らの身体の上に、それを掛け直してから、俺は眠りに就いた。

再び俺等が起きる頃、このメゾネットには、ほかに誰も居ないだろう。
愉しみはそれからだ。

【END】

今回、ウィル一人称の割には、何だが詰めが甘い感じが……
そして皆様、酔うと誰にでも構わず絡むエイシアさんに懲りずに
また彼等の仮住まいに遊びに来ていただけると幸いですw

※wiki収録後に、一部修正を加えました。
※続きは 創作物スレ 2-212



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最終更新:2013年04月23日 22:24