「マゾク捕獲大作戦」
作者: 本スレ 1-200様
402 :オリキャラと名無しさん:2013/12/20(金) 01:12:13
1-200 です。もうすぐクリスマスという事で、ちょっとだけシーズンネタを入れた
小ネタSSを投下です。
※
設定スレ2-014 のキャラクター、シンが、魔族を探して街をウロウロする話
※
クロス設定(設定スレ2-037) の皆様のキャラクターを少々お借りしました
(牧家の人々、魔獣組のうち3人+アルシエルさん、ベルナルドさん、イーグルさん)
※でもほとんどの方は台詞無しです、申し訳ない
※各作者様の設定やイメージからはずれている可能性あり
次からどうぞ~
403 :マゾク捕獲大作戦:2013/12/20(金) 01:15:01
①巨大UMAを捕獲せよ
僕の、ちがう、私の任務は、「マゾク」の捕獲で、ある。
この日本には、未知の生物「マゾク」が、人間に紛れて、ヨナヨナ、闊歩しているのだ。
今日は、その「マゾク」かもしれない、巨大な怪鳥について、調べている。
命令されたわけではないが、独自に、調査を行うのだ。
ここは「マゾク」の目撃情報が多い、とある街なのである。
怪鳥は、このあたりを、目にもとまらぬ速さで飛んでいくらしい。
あんまり速いので、普通の人間の動体視力では鳥と認識するのは難しいらしいけど、
何度もそういう事があれば、ウワサくらいは立つ。
今日はその真相を確かめる為に、このあたりで一番高いビルの屋上に陣取って、
怪鳥の出現を待つのだ。腹が減っては戦はできないので、ちゃんと非常食
(焼きそばパン、玉子サンド、からあげクン、ポテトチップスしあわせバター味、
たけのこの里、ライフガード)も用意した。
この屋上は、一般人は入れないようになっているらしい。でも念の為、
カムフラージュフィールドは張っておく事にする。
拾った雑誌をクッション代わりに敷き、いよいよ見張りを開始。である。
暇だ。
3DSを持ってきたかったけど、ゲームをしているうちに怪鳥が現れたらいけないので、
我慢する事にした。のだ。そして、ポテトチップスしあわせバター味はおいしい。
30分くらい空を眺めていたけど何も現れない。
暇だ。だんだんと空以外のものも見たくなってくる。
下に敷いていた雑誌を広げてみる。聖夜にズッキュン愛されメイク。
敷物にしておこう。
周囲を見渡してみる。まわりにはそんなに大きくないビルがたくさんあって、
中ではいろんな人が働いている。僕、じゃない、私は目がいいから、いろんなものが見える。
パソコンでハムスターの動画を見ているサラリーマン。
パソコンでソリティアをしているサラリーマン。
パソコンを見ながら、なぜか顔を真っ赤にしているサラリーマン。
どうでもいいものを観察したり寝転んで空を見張っているうちに、非常食が尽きてしまった。
もうじき夕方になる。夜行性じゃない限り、鳥は暗くなったら飛ばない。
怪鳥はどうだろうか。本日の任務は失敗だろうか。日報に書いたら怒られるかもしれない。
もう少し上から見張ってみよう。ずっと座ってたからおしりも痛いし。
ビルの屋上から、多分400~500mは上空に来た。寒い。
ぐるりと周囲を見渡したけど、やっぱり何もいない。
しばらく飛び回って、手の感覚が無くなってきた。今日は失敗かな。
諦めて元いたビルへ降りて行こうと高度を下げ始めた、その時。
フジサン方向から、何かがこちらに飛んでくる。すごいスピードだ。
いや、スピードもすごいけど、この距離であの大きさは普通じゃない。
あれはもしや―――
(見つけたーーーーーーーー!!!!)
間違いない、「マゾク」だ。だってあんな大きな鳥がいるわけがない。
マゾクは、白頭鷲が何十倍にもでっかくなったような巨大鷲だった。
絶対つかまえる!
首は縮めて、腕はぴったりと身体につけて。風の抵抗が最小限になる姿勢をとる。
全神経を集中して加速しないと逃げられてしまう。カムフラージュフィールドを解除した。
こんな速度は出した事が無い。背中と翼と胸の筋肉が痛い。
巨大鷲が、横から突っ込む僕に気付いた。でも大して驚かない。
鋭い目でチラっと見ただけだ。僕が小さいからバカにしてるのかもしれない。
「マゾクーーーー!!」
巨体がぐんぐん近くなる。捉えた!巨大鷲の首、ヤキトリで言えばセセリの部分に
(おいしかった。日本という国はおいしいものがいっぱいある)
まず両腕でしっかり掴まって、続いて両足で締め上げる。
―――はずだった。
「うわーーーー!」
僕がその首ねっこに掴まろうとした瞬間、巨大鷲は一度大きく羽ばたいてから
いきなり体を斜めに傾けた。そして胴を軸に回転しながら、螺旋の軌道を進みつつ
一気に高度を下げる。航空機でいえばバレルロールだ。
あっという間に距離を開けられてしまった。
僕は巨大鷲が起した風にあおられ、気流にもまれて空中をくるくると回ってしまい、
やっとの事で体勢を立て直す。
「くっそー…」
巨大鷲は何事も無かったかのように悠々と、工事中のビルに舞い降りて行く。
さらに追いかけようとした時、巨大鷲の身体に変化がおこった。
「……人?」
巨大鷲の身体がすぅーっと縮んだかと思うと、人型に変わったのだ。
人型に変わりながら落下して、ビルの屋上にすとんときれいに降り立った。
背が高くて髪が白い。鋭い目で一瞬だけちらりとこちらを見上げると、
さっさとビルの中に消えてしまった。
あれは…マゾク?それともヘンリーやシルヴィアと同じ、獣化型のバイオロイド?
「………すげーーーー!かっけーーーーー!!!!」
興奮した。すごい、あんなタイプは初めて見た。
僕が知ってる獣化型バイオロイドは皆4本足の猛獣で、鳥型は見た事も聞いた事もない。
しかもあんなにでっかい!
(僕もあんな風に変身してーーーー!!)
この金色の翼は気に入っているけど、やっぱり飛ぶ為には鳥の形が一番理想的だ。
それにあのサイズなら、戦闘機にだってきっと負けない。
フランツ博士に言えば改造してもらえるだろうか?
あのマゾク、また会えるだろうか?
(変身!したい!僕も!でっかいワシ!!)
興奮が冷めない僕は、しばらくの間ビルの上空を意味もなくぐるぐると旋回し、
宙返りし、巨大鷲のまねをして飛び回った。
捕獲任務は…あれはターゲットじゃないから、いっか。
②魔の巣窟に潜入せよ
私の任務は、「マゾク」の捕獲である。
この日本には、未知の生物「マゾク」が、人間に紛れて、夜な夜な闊歩しているのだ。
ついさっきは、巨大鷲に変身するマゾクの姿を捕捉する事に成功した。
残念ながら捕まえる事はできなかったけど、これは大きな進展なのだ。
でも手ぶらでは帰れない。もう暗くなってしまったが、U01、すなわちマゾクの中では
最重要ターゲットが潜む「牧医院」を、偵察する事にした。
私には、姿を隠すカムフラージュフィールドがあるから、簡単には見つからないのだ。
たぶん。
牧医院には、医者のおじさんと、繊という奴と、零という奴の3人が住んでいる。
3人のうち1人がU01、つまりマゾクだ。
医者のおじさんは人間だと思う。理由は…よく分からないけど、あいつは多分、人間。
零という奴は、ヘンリーと同じ金色の目をしている。多分、あいつはバイオロイドだ。
U01は繊って奴だと思うけど、実はまだ完全にはっきりとしているわけじゃない。
もう少し慎重に、様子を見るのだ。
牧医院には、いつもたくさんの人が集まってくるらしい。
今日はシルヴィアと、ET03(エイシア)と、EPS04(アルシエル)が来ている。
繊と零も一緒に、病院の待合室をクリスマス仕様に飾りつけしている。
木に色々な飾りをつけたり、キラキラするモールを壁から下げたり。
繊がツリーの飾りを適当につけて、零がそれに文句を言って、EPS04がなだめている。
キッチンでは医者のおじさんとET01(ウィリアム)が料理をしている。
しばらくしてET01が呼びに来たので、皆準備を一旦やめて部屋に入っていった。
テーブルには大きな鍋が置かれ、シルヴィアとEPS04が料理を運ぶ。
医者のおじさんがビールを開けて、夕飯が始まった。
繊は肉を煮ないで食べてて、それを見た零がまた怒ってる。
うん、やっぱり「マゾク」は繊だ。
映画で見たマゾクも、赤いままの肉をうれしそうに食べてたから。
でも、マゾクは人間を食べたり、町を壊したりする悪い生き物のはずなのに。
繊って奴は、なんで人間と仲良くしてるんだろう。
欧州連合のバイオロイドは、どうしてああやって普通の人間みたいに生活してるんだろう。
医者のおじさんは、シルヴィア達がバイオロイドだって知ってるんだろうか?
それはそうと、なんだかおなかが減ってきた。
とりあえずマゾクは繊らしいというのが分かったし、今日のところは引き上げるのだ。
引き際は肝心なのだ。早く帰って僕もごはん食べて…。
…なんでだろう。帰りたくない。雑用係の人が作る料理はあんまりおいしくない。
ヘンリーが厳しいから多分上手なんだと思うけど、おいしいって思った事がない。
ポテトチップスしあわせバター味の方がおいしい。
シルヴィア達は楽しそうだ。医者のおじさんとET01は、きっとすごく料理が上手なんだろう。
その時、僕の方には背中を向けて座っていたシルヴィアが、急に振り向いた。
僕の姿は見えないはずだけど、こっちの方を見てる。
ET03とET01もこっちを見た。つられて他の奴らも見ている。
(繊だけは生肉に夢中だ。というよりこっちに興味が無いみたいだ)
見つかった!?まずい、逃げなくちゃ。ET01やET03に捕まったら、きっと殺される。
それに騒ぎになったらまたあいつ、主任が怒ってめんどくさい。ヘンリーも怒るかもしれない。
大急ぎで飛び立った。窓が開く音がしたが、怖くて振り向けなかった。
途中にあった公園の遊具の影で、カムフラージュフィールドを解除する。
回転式ジャングルジムのてっぺんに座って、なぜばれたのか考えてみた。
僕は訓練を受けている。気配は消していたし、音だってたてないように注意を払っていた。
羽ばたく時も、僕の翼はほとんど音をたてないようにできている。
それにカムフラージュフィールドは光学処理されてるから、たとえバイオロイドといえど
簡単には見破れないはずなのに。
やっぱりハーグ博士が作ったバイオロイドは性能が違うのかもしれない。
「こんな時間まで遊んでいてはいけないぞ、少年」
背後から声がして、僕は振り向きつつ反射的に戦闘態勢をとった。
真っ赤な髪で片目に眼帯をした男が、山型の遊具の頂上からこちらを見ている。
敵意は無さそうな雰囲気だけど、でも油断はできない。
考え事をしていたとはいえ気配を察知できなかった。絶対に一般人じゃない。
「俺は子供に危害は加えない。安心したまえ」
眼帯男はそう言うと、山の頂上から軽やかに飛び降りた。
低い位置に移動する事で敵意が無い事を示しているのだろう。
身のこなしはやっぱり普通の人間じゃない。でも仕草がいちいち芝居がかっている。
僕は戦闘態勢を崩さずに男を観察した。
この寒いのに上着を着ていない。服は汚くはないけど、よく見ると毛玉が出来ている。
もしかしたらビンボーなのかもしれない。手には小さなコンビニの袋を提げている。
別に害は無さそうだ、今のところ。
とりあえず探りを入れる必要はある。戦闘態勢を解いて地面に降り、
僕は男に話しかけてみる事にした。
「お兄さんはこんな所で何をしてるの?」
「今夜はここで寝ようと思ってね」
ここで?公園で?いわゆるホームレスってやつ?
「寒くない?」
「トンネルの中は案外暖かいんだよ」
そうか、あの遊具のトンネルの中で寝るのか。慣れてるっぽいな、そういう生活に。
「お兄さんてさ、普通の人じゃないでしょ?」
「ヒーローは正体を明かさないものなのさ」
ヒーロー?テレビでやってる戦隊ものとか、ああいうやつの事?
ヒーローもコンビニおでん(全品70円セール中)を食べたりするのだろうか?
でも、この人普通じゃない。もしかしたら…
「もしかして…
お兄さんはさ、『マゾク』なんじゃないの?」
眼帯男は笑った。
「魔族は市民に危害を加えるものだ。
そういう悪党を成敗するのが、俺の勤めなのだよ」
「じゃあマゾクを見た事、ある?」
「魔族は簡単には姿を現さない。正体を隠し、闇にまぎれて、
こっそりと悪事を働くんだ」
正体を隠してて怪しいのはこの人も同じだと思う。
「だがこの国には今、魔族以上に巨大な悪がはびこりつつある」
「巨大な悪?」
「人々の日常を脅かし、平和を乱す巨悪の影が、この国を覆いつつあるのだ」
「それはどんな奴らなの?」
「それはいずれ君にも分かるだろう。
ところで少年、もう遅いから家に帰りたまえ。家族が心配しているぞ」
眼帯男はそう言うと、とうっ、と跳びあがって、ジャングルジムのてっぺんに立った。
月を背に髪をなびかせ、確認するようにおでんのカップをさわっている。
多分これ以上喋ってると冷めちゃうから面倒になったんだと思う。
「近頃この辺りでは、巨大鳥や妖怪猫男など、様々なUMAが目撃されている。
君も気をつけたまえよ、空飛ぶ少年」
「!!」
そう言うやいなや、眼帯男はジャングルジムから一気に近くの街灯の上まで跳躍した。
更に民家の屋根に跳び移り、アパートの屋上へ跳び上がり、家々の屋根を伝って、
あっという間にどこかへ消えてしまった。
追いかけようと飛んだけど、既にその姿はどこにも無い。
あの自称ヒーローの眼帯男(名前を聞くのを忘れていた)は、僕を見ていたんだ。
いつ、どこで?
悪い奴では無さそうだったけど、あの素早さ、身のこなし、やっぱりマゾクかもしれない。
ヘンリーに報告しよう。
この国にはおかしなもの、おいしいもの、不思議なもの、いろいろ、いっぱいある。
冒険には事欠かない、面白い国だ。
もう少ししたら学校にも行く。そしたらシルヴィアに会えるし、友達もできるかもしれない。
眼帯男が言ってた「巨悪の影」は気になるけど、もしそれが僕らやシルヴィアに悪さをしたら、
全力でぶっとばしてやる。
遅くなっちゃったから怒られるかもしれないけど、帰ろう。
帰ってごはんを食べて、明日もマゾクをつかまえる為に頑張ろう。
クリスマスを数日後に控えた街は、いつもより灯りの数が多い。
空から眺めていると、へこんだ気持ちもちょっとだけ明るくなるような気がした。
【end】
以上、おつきあいいただきありがとうございました
本文中で自分でもちょっと引っかかった点があったので補足
①イーグルさんは暁の翼メンバーと顔合わせをしているはずなのに、
なぜシンはイーグルさんを知らないのか?
→子供だから顔合わせの現場にはいなかった。のかもしれませんw
またはこの時は顔合わせ前なのかもしれません(ゆるゆる)
②なぜ繊さんをすぐに捕まえようとしないのか?
→暁の翼は魔族が牧医院に潜伏しているという情報は持っていますが、
繊さんがそうだとは断定できていないようです(少なくともこの時点では)
③牧医院での夕飯シーンにアルさんがいない、ハブいくない
→フィクス社か別の場所でお仕事中かもしれません
④牧医院でシンは見つかったのか見つかってないのか?
→シルヴィアさんは本当にシンを見つけたのか、他の人も気付いていたのか、
それとも何となく怪しい気配を感じた程度の事だったのか、そのあたりは不明な感じです
⑤ベルナルドさんがすごく偽者くさいです
→ごめんなさい
最終更新:2013年12月20日 21:31