休戦閑話(2)
574 :オリキャラと名無しさん :2015/04/26(日) 21:29:45
こんばんは、
1-200です
以前投下した小ネタSS(ありえないメンバーで遠足に行くやつ)の続きを持って参りました
※以前投下した「休戦閑話(
創作物スレ 2-534)」の続き
※お借りしたキャラクターに意図的な改変は施しておりませんが、筆者の想像が多分に含まれます
※801成分、盛り上がり、オチなし
※ifですらない、ありえない話
※実在の場所をモデルにしていますが、あくまでもモデル
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休戦閑話(2)
「これで100円か。いい商売だよなあ」
「ちょ、このインコ、頭の毛がほとんど抜けてる!ハゲちゃってるよ」
「うわ、もしかして病気?!」
「いや…なんか毟られたみたいな?」
「あー。きっとインコにも順位があるんだろうな。ほらあそこでケンカしてるし。
底辺なんだろうなそいつ」
「大変だねぇ…」
色んなインコが放し飼いにされている広い温室。
ダニーとキリアンの兄弟が、頭や肩に沢山のインコを乗せてエサをあげている。
可愛いインコに囲まれているのに、会話の内容はなんだか微妙だ。
ひとつ百円の小さなカップには刻んだ果物が入っているけど、量が少ないのですぐになくなってしまう。
インコ達は人馴れしていて、びっくりする程図々しい。しまいにはカップごとエサを持っていかれて、
二人で素頓狂な声をあげている。
「臭い!くさいですわねディオス様!」
「うむ…」
「入ら、イテテ足踏むな!ないのか?」
「こんな野蛮な鳥の群れの中に入ったら、服が汚れてしまいますわ!」
ディオスとダフネは、エミュー牧場の柵の前で揃ってしかめ面だ。確かに結構くさい。
でも興味はあるみたいで、柵のまわりをウロウロしながら隙間から羽にさわったりしている。
二人に付き添っているおじさんだけが、柵の中に入ってエミューにエサをあげていた。
エミューは別に凶暴なわけじゃないけど、差し出されるエサを先を争って食べるから、
結果的にどつかれたり足を踏まれたりする。だからちょっと怖いのかしれない。
僕は全然平気だけどね!
鳥ばかりを集めたこのテーマパークには、エミューやインコだけでなく白鳥やペリカンや…
とにかくいろんな鳥がいる。もちろん僕の大好きな猛禽もいる。
前に見たマゾクみたなでっかいのはいないけど。
「あ、キンケイだ。僕の羽にはこの鳥の遺伝子が入ってるんだよ。僕のがきれいだけど!」
「そうなんだ」
「っヘ~」
「エイシア、おまえには言ってないよ!」
「あ、シン君見て見てミミズクだよ。可愛いね」
「…あれ?」
ケージが無い代わりに足を止まり木に繋がれた小さなその鳥は、僕らが目の前に来た途端に
明らかに様子が変わった。
「あはは、なんだこれー。細くなっちゃった!」
「…これもしかして、怖がってるんじゃない…?」
「うん…」
数秒前までふわふわだったのに、僕らが来た途端、きゅーっと羽毛をすぼめて棒のようになってしまった。
シルヴィアとアルシエルが顔を見合わせる。
一方エイシアは少し離れた所にいるメンフクロウに興味を持ったらしく、ミミズクの前を離れた。
「あ、もどった」
「かわいい!写真撮ろう」
僕らが来たら細くなって、エイシアが離れたら元に戻った。つまり、怖がらせていたのはエイシア。
そうだ、あいつヒョウだし!ネコは鳥の天敵だから、人間の姿をしてても鳥達には分かるんだ!
「エイシア、ここの鳥は食べちゃいけないんだぞ!」
「何だよ急に」
メンフクロウを興味深そうに眺めていたエイシアは、鬱陶しそうに眉をしかめる。
「鳥達がお前を怖がってるんだよ!あのミミズクとか!」
「はぁ?今までそんな事なかっただろ。こいつだって普通だし」
「寝てるんだから当たり前だろ!」
「じゃああれの他にどの鳥が怖がってたっていうんだよ」
「ペンギンは寄ってこなかったし、カモも騒いでた!」
「ペンギンはエサやりイベント中だったし、カモは元々うるさいだろ。適当な事言ってんなよ!」
「とにかく!ネコ科はネコカフェ行けー!」
「あー五月蝿い!お前こそここで世話してもらえ!」
「おーいお前ら、ケンカするなら帰るぞ」
おじさんとディオス達とダニー兄弟がやってきた。しょうがないからこの場は一旦引いてやる事にする。
「えっ、ダニーって大学生なの?!?!」
「そうです…」
「俺と同じ、二十歳」
「年上だぞ、さんを付けろよ?」
花がいっぱい植えてある休憩所。キリアンと、それにダニーが缶入りのカクテルを開けている。
ダニーは大学二年生だった。確かに小二にしては少し大きい。キリアンとは兄弟ではなく同級生らしい。
二十歳というと、ヘンリーよりひとつ上だ。人間ってなんかすごい。
「僕もカクテル飲みたい!」
「ガキがそんなの飲んだら脳みそが溶けるぞ」
「ウソつくなよ!」
「溶けるという言い方は正確じゃないが…子供が酒を飲むと、せっかく育っている脳神経の細胞が
死んでしまう。そして脳の前頭葉という部分が縮んで、学習能力や記憶力が低下するんだ。
それでも飲むか?」
「…ジュースでいい」
「エイシア、お前も気をつけるんだぞ」
「う…ハイ」
エイシアはおじさんのいう事はよく聞く。いじめられたらこのおじさんに言おうっと。
「あ、シルヴィア!それなに?」
「ロールケーキだよ、みんなで食べよう」
買い物をしに行っていたシルヴィアとアルシエルが戻ってきた。
アルシエルは鉢植えの花を、シルヴィアは顔がかかれたロールケーキを持っている。
「ふくろうロールケーキだって。はい」
「まあ、フクロウの顔ですのね。可愛らしいですわ!」
「うむ。だがダフネよ、そなたの方がずっと愛らしいぞ」
「ディオス様…!」
学校でもそうだけど、ディオスとダフネの二人はすごく仲がいい。同級生達はコドモだから
からかう奴もいるけど、二人は気にしない。ここにいる人達はみんな大人だから(エイシア以外)、
勿論二人をからかったりしないけど、キリアンだけが時々なんとも言えない顔をしている。ように見える。
「シュールだな」
「シュールだね」
「写真切り抜いて加工してスタンプでも作るか」
「絶対売れない」
「あ、でも結構うまい」
キリアンとダニーは、顔の形をしたケーキを見ても特に嬉しくないみたいだ。
「アルシエルは花を買ったのか」
「はい。この園で交配した珍しいお花らしいです。メサイアにお土産にと思って」
「新種?見せて見せて!」
「新種…とは違うと思うけど」
テーブルの下に置かれた花は、ここだけのものらしい。花にはあんまり興味が無いけど、新種なら別だ。
僕達バイオロイドは、色んな知識を蓄えなければならないのだ。
「おい、乱暴に扱うなよ!」
「乱暴じゃないよ!エイシアはいちいちうるさいよ!」
「きれいなお花ですわねディオス様!」
「うむ、だがダフネそなたの方が」
「においはどんなかな?」
「引っ張るなよ!」
「…気をつけた方がいいな」
「…はい」
「カバーかけといた方がいいかも…」
「箱の方がいいんじゃ」
おじさん達はちょっと心配しすぎだと思う。
その後はバードショーでヘビクイワシとか見て、ペリカンに魚をあげて、フクロウと記念写真を撮った。
他の鳥ともいっぱい遊んだ。
最後にお土産屋で、みんなそれぞれ家で待ってる人の為にお土産を買う。
おじさんは蕎麦。キリアンとダニーはクッキーとワサビサイダー。アルシエルは鳥の羽のストラップを二つ。
ディオスはダフネの為にペンギンのぬいぐるみ。シルヴィアはエイシアと一緒に特産のお酒を見てた。
僕がお土産を買うのはもちろんヘンリーにだ。でも、ヘンリーは高くてかっこいいものが好きだから、
こういうのは嬉しくないかもしれない。
「そんな事ないと思うよ。お土産はね、その人の為にって選ぶ気持ちが大切なんだ。
ヘンリーさんも、それは分かってると思うよ」
シルヴィアがそう言ってくれたから、僕は小さな木彫りのミミズクを選んだ。
夕飯はおじさんがご馳走してくれた。
駅近くの回るスシ屋で、みんなでワイワイおスシを食べる。僕は初めてだ。
スシがコンベアに乗って運ばれてくるなんて面白すぎる!一体誰が考えたんだろう?
僕は玉子やエビやハンバーグ、全部で10皿食べた。
そして新幹線。
行きとは違って静かだ。みんな疲れたのか、眠ってしまったからだ。
おじさんとエイシアは起きてるけど、眠そうにしている。
僕はシルヴィアに寄りかかり、暗くなった窓の外を眺めた。僕も眠い。
こんな風に大勢で遊びに行ったのは、学校行事以外では初めてだった。
あっという間すぎて、夢みたいだった。このまま眠って目が覚めたらまたあの駅で、
またみんなと遊びに行けたらいいのに。
でももしかしたら、目が覚めたらいつものベッドの上なのかもしれない。
これは本当に夢だったのかもしれない。だってここにいる人達は本当は僕にとっては…。
僕にとっては…なんだっけ?眠くて頭が混乱している。いいや、もう寝ちゃおう。
考えるのは目が覚めてからにしよう。
隣のシルヴィアの体温があったかくて心地いい。
やらなくちゃいけない事があった気がするけど、今は忘れた事にして、僕は眠りについた。
【end】
最終更新:2015年04月30日 00:29