ハァハァハァ
坑道の中を駆ける一人の影、その影の主の名は時田刻。閉ざされた時間の輪に捕らわれた少女だ。

「どうして…」

564回目の眠りから覚めた彼女を待っていたのは564回繰り返した朝ではなく醜悪な殺し合いゲームの宴だった。
『繰り返す一日から抜け出したい』そんな彼女の願いは最悪な形で叶えられてしまった。
彼女は混乱していた、次に何が起きるのかわからない状況に。

繰り返される日常の中では決まった時間に決まった事が起きた。
同級生からの電話、遅れる通学バス、テレビのニュース…
道を行くネコでさえも定められた神のスケジュールに従って行動していた。

思えば彼女はそんな状況に慣れてしまったのかもしれない。
抜け出したくて溜まらなかった日常だった、だが何回目からだろうか
彼女はそんな日々に安心を覚えていた、自分の行動によって些細な違いが起きる事が楽しかった。
学校をサボって街を散策した時に事件に巻き込まれてしまった事もあった。
殺人事件に立ち会って解決してしまったこともある。
最も彼女自身は、別の周回で偶然居合わせた人物が語った真相をそのまま喋っただけだが。
例えるなら一回見た映画を自分で演じる、といったところだろうか?
とにかく普通の自分にはできない体験ができる事がとても嬉しかった。
辛かったのはどんなに仲良くなった人物とも次の朝には赤の他人に戻ってしまうことだけだ。

彼女が今感じている不安は、次に何が襲ってくるか分からないという不安。
あの一日に慣れてしまった彼女は、通常の人間以上にそれを感じていた。

「ハァハァ…疲れた」
しばらくして彼女は走るのを止めた、目的地についたからだ。
坑道の中、奥深くにその部屋はあった。
《休憩所》 かつて炭鉱夫達が採掘の合間に休憩する為に用意された部屋だ。
彼女は部屋にあった机の上に持っていた二枚の紙を広げた。
一枚の紙の正体は【地下通路マップ】、彼女に支給された品の一つである。
彼女はこの紙を頼りにこの部屋を見つけたのだ。
もう一枚の紙は全員に支給された名簿だ。

「ここなら外にいるよりは安心ね」

そう考える理由は二つあった。
一つ目は坑道の中は蟻の巣の様に入り組んでいて入る人間は少ないであろう点
二つ目は例え坑道の中に入り、進んできた者がいたとしても、
通常の地図には載っていない抗道を進み、自分のいるこの部屋を見つけることは不可能であると考えたからだ。

彼女はまず名簿にじっくり目を通した。
「無い、無い、無い…」
名簿に彼女の知り合いの名前は無かった、
友人や家族が連れられていない事にほっと安心したが、同時に孤独感を感じた。
ここには助けてくれる人が誰もいない。
広間集められた中には人を殺すのに躊躇しない人物
明らかに人間ではない容姿をした者がいた。
普通の女子高生の自分が一人で生き残れるだろうか…

暫くして、一ノ瀬空夜という名前に気が付いた。

「彼は確か…」
何回目の周期からか彼女の世界に割り込んできたイレギュラー
彼にループ脱出のカギが隠されていると思って接触していた時期もあったが…
信頼できる人物とまではいえるだろうか?
それにループの中で出会った人物なので自分の事を知っているか分からない。

落ち着いた彼女は部屋の中を見回すと、ある物を見つけた
外部との連絡用の電話だ、御丁寧に島の施設の電話番号が書かれた用紙も用意されていた

「電話、か…ここに籠っているのもいいけど誰かに助けを求めた方がいいかしら」
そう呟きながら、彼女は受話器に手をかけた…
自分の安全を確保する為に誰か頼れる人物を探す必要がある。
通話先に信頼できる人物がいるとは限らないが試してみる価値はあるかもしれない。

【E-7 鉱山内部 休憩所/深夜】
【時田刻】

【状態】:健康
【装備】:なし
【道具】:基本支給品一式、ランダムアイテム0~2個
[思考・状況]
基本思考:生き残るために試行錯誤する
1:電話をかけてみようかな…
2:信頼できる人を見つけたい
3:次に…次に何が起きるの…?


【地下通路マップ】
島の各地に存在する地下通路を記した地図

通路1 廃校-研究所-地下実験所
通路2 軍事要塞跡-洞窟
通路3 鉱山-工房
それ以外にも西洋貴族館の脱出用隠し通路への入り方も記されている
015.メタ・フィクション 投下順で読む 017.一二三九十九の場合
014.Amantes amentes 時系列順で読む
GAME START 時田刻 エイリアン

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2015年07月12日 02:21