「結局、何だったんですかねあの戦いって」

孤児院を望む小高い丘の上で、草原が波立つ牧歌的な風景を眺め見つめながら私はふとそんな言葉を呟いた。

雨と日差しを避ける簡素な屋根の下に木製のテーブルとチェアが並んでいる。
空ではゆるやかに雲が流れ、雲の切れ目から降り注ぐ日差しが大地を斑に照らす。
二つ並んだティーカップの湯気が吹き付ける風に流れ、すっかり長くなってしまった髪が揺れた。

ここは多忙な日々に忙殺されそうになった時に私が逃げ込むサボり場である。
最近は仕事にも慣れてきて、ここに逃げ込むことも少なくなってきたけれど、今でもいい気分転換の場として重用していた。

そんな隠れ家で、私は久方ぶりに出会う来客をもてなしていた。
もてなしと言っても、テーブルに並んでいるのは安物のお菓子とお客様が持参したお土産の紅茶だけれど。

太陽の下、対面に座る美女が涼しげな顔をしながら、黒タイツに包まれたスラリとした足を組みかえる。
知性を感じさせる切れ長の瞳を細め、優雅な所作で紅茶を啜ると、ふぅと一息ついてカップから薄い唇を離す。

「あら。どうしたのいきなり」
「どうってことはないんですけど。あれから5年も経った訳だし、ちょっと聞いてみようかなって」

私の言葉に、美女はどこかに思いをはせる様に空を見上げた。
何年経とうとも変わらぬ深く澄んだ蒼い空を見つめ、独り言のように呟く。

「そう、もう5年か…………早いものね」

世間も新らしい年号にも慣れてきた2019年10月。
すっかり秋めいた風が吹く季節の変わり目。

あれから5年の歳月が過ぎた。
未だ世界は終わることなく続いている。

「5年も経ったのだし、社長業も板についてきたんじゃなくて?」
「いやいやぁ、まだまだ慣れない事ばかりで日々勉強ですよ」

そう。私、水芭ユキは正式に悪党を継いだ。
今の私は悪党商会3代目社長としての日々を送っている。

本当に毎日が目が回るような忙しさの連続で、そりゃあお父さんも前線から退き隠居するという話だ。
こうして優雅にお茶を楽しむ余裕が出来たのもごくごく最近の事である。
まあ今だって書類仕事を抜け出してきているのだが。

もちろん、ここに至るまでの道のりは順風満帆とはいかず色々なことがあった。
この5年、それを少し振り返ろう。

――――5年前、私たちは一人の男が計画した殺し合いに巻き込まれた。

振り返ってみれば、何故自分の様な半端な覚悟の小娘が生き残れたのか不思議なくらいの壮絶な地獄だった。
生き残れたのは自分が優れていたから、などと己惚れるつもりはない。
単純に廻り合せがよかっただけだろう。
なにより、その場で出会った仲間の、親友の、父の、あるいは仇敵の、様々な人の助けがあったからこそである。

そうして、元の世界に帰還したものの、戻った世界は混乱の真っただ中に陥っていた。
私たちの巻き込まれた殺し合いは世界各地で同時多発的に行われたワールドオーダーによるテロ行為の一つでしかなかったらしく、世界各地で多くの人間が神隠しとしか言えないような謎の失踪を遂げていた。

巻き込まれた人間の殆どが帰ってくることはなく、むしろ1日で解決をみた私たちの事件こそ珍しい事例だった。
つまり、私たちは貴重な生還者であり事件の詳細を知る希少な存在となった訳である。

その事実が明らかになれば面倒な事に巻き込まれるのは目に見えていたのだが、幸運にも生還者の中にその手の情報操作に長けた人物がいた。
隠すまでなく、その貢献者こそ目の前で紅茶を啜っているこの先輩な訳だが。

先輩の尽力により私たちの事件は表沙汰になることなく処理され、その手の面倒に私たちが巻き込まれることはなかった。
だが、それは同時に、細かい検証をしている余裕がないほど世間が混乱していたという証拠であり、あれほどの事件が有耶無耶になるほど世界が無茶苦茶になっているという証左でもあった。

それに世間的には有耶無耶になったとしても、個人的には有耶無耶にはできない事もある。
生き残った者の責任として、あの地で散って行った者たちの訃報だけは遺族の下に届ける義務があった。
流石に全員とまでは行かないが、せめて親友や仲間の家族には話せる範囲で事情を伝えて回った。

愛する家族の訃報に、皆一様に嘆き悲しんだ。
特に娘と息子を同時に失った尾関姉弟の両親の慟哭は今でも忘れられない。
失われたモノの大きさをまざまざと見せつけられた瞬間だった。

ただ、両親を失い天涯孤独の身である朝霧舞歌の訃報だけは誰にも届ける事は叶わなかった。
孤児院の裏にある広場に括り付けられた色あせたリボンだけが彼女を弔う墓標である。
吸血鬼の墓にしては、少し日当たりがよすぎるけれど、そこは許してほしい。

そして、偉大なる大悪党の死を伝えるのも、私の役目だった。
父からは事実を伝えるだけでよい、と言われているがそう言う訳にもいかない。
彼の大悪党の死には私にも大いな責任がある。
どのような理由があれ手にかけたのは私だ。その事実から逃げることだけは許されない。

通いなれた別邸を訪ね、よく見知った面々に頭を下げながら、真実を打ち明け訃報を届けた。
父の見立て通り、大悪党の妻はその事実を取り乱すでもなく粛々と受け入れた。
常より覚悟していたのだろう。それでも辛くないはずがないのに。
家族の誰もが一言もこちらを責めることなく、むしろこちらを気遣う様子すら見せた。
だからこそ、私にとっては辛かった。

大悪党の実子たちは全員が裏稼業から切り離されてた生活を送っている。
悪党商会の後継者争いは幹部たちだけで行われてきたのはそのためだ。
それが大悪党の望んだ世界であり、彼らの生きる表と自分の生きる裏、全ての世界を護ろうとしていた理由の一つなのだろう。
その役割を継ぐという決意を、改めて強く固めさせらた。

だが、悪党商会を継ぐと言っても現実的な障害は大いにあった。
前社長に託されたと言え、全ては誰も知らない世界での当人通しの口約束に過ぎないのだ。
証人がいる訳でもなく、念書がある訳でもない、誰が信じてくれると言うのか。

しかし、そんな弱音を吐いていても仕方がない。
半ばどうにでもなれと言う気持ちで、父の遺言に従い寮母さんに相談して引き出しを漁り資料を確認したところ、そこで意外な事実が判明した。
一応私も末席ながら相続候補の一人ではあったらしく、こういう事態も想定していたのか手筈は既に整えられていた。
おかげで拍子抜けするほど簡単に書類上の相続は完了したが、問題は相続してからである。

悪党商会新社長の最初の仕事として、内外に社長と三幹部の失踪と新社長就任を発表する必要があったのだが。
これを受け、社長を含む上層部の一斉失踪を不安に思う声も当然のように少なからず湧いた。
そして、その後釜がこんな小娘である事に納得がいかない者も多数いた。
その結果、この政変で多くのモノが悪党商会を離れた。これは完全な私の力不足である。

かつての悪党商会といえば裏表問わず双方に多大な影響を持つ巨大組織だったが、それも昔の話。
圧倒的カリスマと決断力を兼ね備えた社長の消失、のみならず組織の中核をなす幹部を失った影響は大きく、加えて社員も大幅に減少。
事業規模は大幅に縮小され大規模な方向転換を余儀なくされた。

「けれど、よくやったものね。最近の悪党商会の活躍は国外に届いてるわよ。思い切ったことをしたわね新社長さん」
「まあ、先代の遺産みたいなものですけどね。今じゃそのパテント料が主な収入元になってますし、まだまだ赤字続きですよ」

私は秘匿されていたナノマシン技術の公開に踏み切り、外部からの技術開発を積極的に受け入れていく方針を打ち出した。
利権の根っこだけ抑えて後はご自由にという事だ。
これによりナノマシン技術の研究開発は加速度的に発展してゆくこととなる。

ナノマシン関連の使用料は今の悪党商会を支える大きな収入元になっているのだが、前時代の遺産で食いつないでいる状況だと言える。
この先代に負んぶに抱っこの情けない状況を早急に打開するのが今の目標だ。
その為に、兵器開発により培われた技術を転用して医療方向に力を入れている。
悪党商会はここから盛り返していく、予定だ。

「それでよくこれだけの土地を維持できたわね。市外から外れているとはいえそれなりのモノでしょう?」
「まあ、それなりに悪どい手も使いましたからねぇ。ここだけはどうしても維持したかったので」

事業縮小に伴い維持できず、切り捨て無くなってしまったものは色々とある。
それでも何とか、この孤児院だけは維持する事が出来た。
思い入れのあるこの場所を守りたいという、これは完全なる私の我が侭だ。

そのために先代からの伝を使った裏取引や妨害工作、ちょっと表立って言えないレベルのあれやこれや、などなど手段を選ばない方法も使った。
守るべきを守るためならば『悪』にでもなる。
我らの掲げるその信念は変わらない。
故に、どれほど事情方針を転換しようとも『悪党』の名だけは掲げ続けるのだ。

「そういう先輩は、先輩は今回なんで帰国したんです?
 まさかまたこの国にワールドオーダーがいるとかですか?」

音ノ宮亜理子。元・女子高生探偵。
今は世界中を飛び回り活躍する、ワールドワイドなキャリアウーマンだ。
彼女とは定期的にメールで連絡は取り合っていたが、直接会うのはあの事件以来5年ぶりとなる、

曰く、世界に蔓延る癌を一つ一つ潰していくお仕事をしている。
主な活動は残党狩り。世界中に蔓延るワールドオーダーの残滓を狩っているらしい。

何でも、この5年間で8人のワールドオーダーを倒したらしく。
今回もそれを解決した折に帰国したとうい話らしいが、ワールドオーダーの専門家が来たという事は逆説的にこの国にワールドオーダーがいるという事ではないか。

あの悪夢の再来が繰り広げられる可能性に僅かに緊張が走った。
だが、こちらの緊張とは対照的に、専門家は優雅な所作で紅茶に口を付ける。

「違うわよ。今回はあなたたちの顔を見に来ただけ」

国外からわざわざ私に会いに来たと言うのは大した殺し文句だが、この人に言われると警戒心が先に立ってしまう。

「……そんな仲でしたっけ? 私たち」
「あら。心外ね。同じ地獄を潜り抜けた仲でしょう? 私たち」

行動を共にしていた時間こそ少ないが、あの殺し合いを生き残った仲間である。
同じ地獄を見た者同士、私の中にも同族意識のようなものがどこかにあるのは否定しない。
無駄なことをする人ではないので、帰国した目的はそれだけでもないのだろうが、この人にもそんな感傷で動くこともあるのかもしれない。

「前の事件が東南アジア方面で、久しぶりにアジア圏に来たからと言うのもあるけどね。
 懐かしい顔を見ておきたいと足を運んだわけよ」

事もなげに言うが、東南アジアと日本じゃ結構な距離があるのと思うのだが。
価値観がワールドワイドすぎて小市民には理解しがたい。

「よくそんなポンポン世界中飛び回る資金がありますよね先輩」

その活動は世界平和に大いに貢献しているのだろうが、ワールドオーダー狩りとは果たして仕事として成り立っているのだろうか?
どこから世界中を飛び回る資金が出てきているのか、謎である。

「資金に困ったら適当にその辺の困っていそうな人間を見繕って、辻推理をして報酬を得ていたのよ。
 今のご時世困りごとには事欠かないものね。それなりの資産ある人間を選んでるおかげで解決後に請われちゃって。
 コンサルだの相談役だの肩書ばかりが増えるのは面倒だわ」

言いながら、ぱらぱらと多種多様な言語で書かれた名刺をテーブルに並べて行く。
そんな大道芸人の投げ銭みたいな調子で大金が稼げるのだから、真面目に働いてる人間に謝ってほしい。
そもそも辻推理ってなんだ。

「資金はともかくとして、治安とか大丈夫なんですか?
 まだまだ事件の影響で荒れてる国もあるって聞きますけど」

ワールドオーダーの起こした事件の余波で世界的に治安は悪化していた。
それこそ未だに戦時の様な状況になっている国も少なくないと聞く。

「心配しなくとも戦場の歩き方くらいは心得てるつもりよ。
 5年経っても相変わらずなところもあるし、ある程度は安定している所もあるわ。その辺はもろに国力が出てる印象ね。
 けど被害って意味じゃこの国が一番だと思うけど、その辺はどうなの?」

ワールドオーダーの引き起こした一連の騒動において最大の被害をこうむったのは我が国である。
各所に影響を与える大物がごっそりと消えたお蔭で、帰った直後の国内情勢は本当にひどい物だった。

「国内の混乱も流石に収束してきましたよ……おかげで別の混乱が生まれつつありますが」
「別の混乱…………ねぇ」

その反応からして、どうやら国外を拠点としている彼女の耳にもその噂は入っているようである。
先輩は眉根を寄せ、頭痛を堪える様に頭を押さえて首を振った。

「ホント…………なんで生きてるのかしらね、あの人。
 一時的とはいえ、所属していた身としては頭が痛いわ」

近年になって国内の情勢をにぎわすのはネオ・ブレイカーズの台頭である。
その頂点である大首領は、なんと、あの殺し合いで死亡したはずの剣神龍次郎だった。
訳が分からない。
仮に生きていたとしても世界崩壊に巻き込まれたはずなのだが、数年の沈黙を経て何故か普通にパワーアップして戻ってきた。
本当に何なんだあの男は。

そのおかげ、というのも本当になんなのだが。
無秩序に暴れる勢力はその圧倒的統率力の下に統一され、ネオ・ブレイカーズの台頭により皮肉も治安は少しだけ安定した。
といっても無秩序が秩序立った無秩序になったというだけで、傍迷惑が服を着て歩いているような男の存在はやはり迷惑千万に違いはないのだが。

「けど大丈夫なの? JGOEも解散したって話だけど」
「あー、なんか大丈夫みたいですよ? 国の主導でヒーローも働いてますし、一応新組織も台頭してきてるみたいですから」

複数の主力が抜けたJGOEは程なくして解散を余儀なくされた。
入れ替わりに立ち上がった新組織は尽くが時代の波飲まれて消えて行ったが。
近年、新進気鋭の48人のヒーローを集めたJKH48とかいう質より量だと言わんばかりのふざけた組織が立ち上がった。
そんなでも、どこかしこで事件が頻発する混沌とした時代の需要にはあっているらしく、それなりに活躍しているらしい。

「他人事のように言うけど、そう言うあなたはどうなのかしら?」
「どうって……何がです?」
「ブレイカーズよ。悪党商会(あなた)は戦わないの?」

酷薄で意地悪い笑みを浮かべた美女が、こちらを試すように問いかける。
それは、かつての復讐に囚われていた生き方をしていた私に問いかけているのだろう。

「なんてたって最強のヒーローを退けた大悪党ですもの。
 正直な話、今のあなたなら大首領以外なら相手にしたところで負けないでしょう?」
「…………うーん。そーですねぇ」

自分でも驚くほど呑気な声が出た。
この話題に対してこれほど穏やかな心持で応じる事が出来るだなんて、5年前の私なら信じられらないだろう。

「ま、今は仕事が優先ですかね」

目に余る様なら対処しますけど、と付け足して少しだけ温くなった紅茶に口を付ける。

私の中でブレイカーズに対する復讐心が無くなった訳ではない。
不幸な子供を産み出す存在を許せないという思いは今だって変わらない。
だが少なくとも、ブレイカーズの存在によって国内の情勢が安定しているのは事実である。
必要『悪』として認める、それくらいの度量は持てるようになった。

復讐に人生すべてを捧げるのではなく、復讐心を忘れるのでもなく、復讐心は私を構築する一つの要素でしかない。
そう受け入れることができた。
これもまた一つの成長なのだろう。

「そう。それで、何の話だったかしら?」
「と、そうでしたそうでした。5年前の話ですよ」

横道もひと段落したところで、すっかり逸れてしまった話を戻す。

「結局、あの戦いって何が目的なんでしたっけ?」
「そこから?」

少し呆れた様な声で、頬杖をついた先輩が嘆息を漏らす。

「いやまあ、私その場にいなかったので、九十九からあらましは聞いてますけど………」

あの事件の最終局面に、私は立ち合う事は出来なかった。
何でも世界の大事な謎が暴かれたらしいが、九十九の要領を得ない説明では雰囲気だけはなんとなくつかめたが、具体的な所はよくわからなかったのである。

「『世界を終わらせる』ため、だったそうよ」
「えっと……あの殺し合いがそこにどうつながるのか、よく分からないんですけど…………?」

私達が殺し合ったところで、世界がどうなるとも思えないのだが。

「それでいいのよ。あの男に言わせれば、この世界を観測する神様の見る物語を終わらせるって事だったようだけど。
 結局のところそれが何であったかなんて理解する必要はないの、私だって理解してないんだから」
「え、そうなんですか?」

音ノ宮先輩の推理劇は快刀乱麻の一太刀だったと聞いたが。
大袈裟に九十九が話を盛ったのだろうか、奴はそういう所がある。

「私があの男に突き付けたのはあの男が信じていた真実よ、それが普遍の真実だなんて端から思っちゃいないわ。
 少なくとも、あの男は自分が成功したと確信して死んでいった。
 だから見ようによってはあの男の目論見は成功していたと言えるかもしれないわね」
「それって、大丈夫なんですか?」

多くのモノを喪ったあの戦いが勝利だったとは思わないが、あの戦いが敗北だったとも思いたくない。
全ての元凶であるあの男の目論見が成功していたと言うのならそれは受け入れがたい事である。
僅かに語気を強めたこちらの態度とは対照的に余裕を湛えた上品な所作でコンビニ売りの安いクッキーを齧った。

「大丈夫よ。その結果をあなたが気にする必要はないわ。奴の勝利は私たちの敗北はイコールじゃない、というだけの話よ」

その態度を見て、熱しかけた頭が冷めた。
この人が焦っていない以上、慌てるような事態ではないのだろう。

互いの勝利条件は両立する。
そもそも私たちにとって何が勝ちで何が負けなのか。
巻き込まれた側の私たちの条件は曖昧だ。

「言ったでしょう、気にする必要はないって。
 今こうして私たちが生きていて、世界はある。それが全てよ。
 仮にあの男が正しくて神様が世界を見放したところで、私たちの生活には何の影響もないわ。
 神様だろうとなんだろうと、誰の世界が終わったってあなたの世界は勝手に続く、そういうものでしょ?」
「そういうもの、ですかね?」
「そういうものよ」

親友が死のうが親が死のうが、残酷なまでに人生は続く。
人生が続く限り、私の世界は続いてゆく。

「結局のところ、世界なんて人それぞれでしかない、なんてありふれた結論でしかないの。
 そういうものだし、それでよかった。それなのに、あの男はその定義を神様なんてモノに丸投げした。
 それがあの事件の全てであり、最大の過ちだったのよ」

そう結論を述べる様に探偵は締めくくる。
私はその言葉を噛みしめる様に、すっかり冷めた紅茶を一気飲みする。

「分かりました。よく分からないですけど、分からなくていいことは分かりました」

結局、話は全く分からなかったが、それでいいのだろう。
多分。

「ま、真実なんてそんなモノよ。
 知れば幸福になれるなんてものではないし、何を知るべきかは人によって違う。
 むしろ知らなければよかったなんて事も多分にあるし、知ったところで意味のないモノもある。これはそういう類のモノよ。
 証明の仕様がないのだから、自分にとって都合のいい真実を決めつけて選んでしまいなさい」

真実なんてその程度の曖昧なモノだと。
真実を解き明かすはずの探偵はそう告げていた。

「知る必要ない真実を知って生き惑う。思えば、あの男もそうだったのかもしれないわね」

私にはその意味を推し量ることはできなかったが。
さらりと吐き出された言葉は同情でも憐憫でもなく、ただそうであったのかという事実を確かめるような言葉だった。

「だからこそ重要なのは、あなたにとってどうだったかよ、水芭ユキさん。
 あなたにとって、5年前のあの事件はどういう物だったの?」

質問の矛先がこちらに向けられる。
私にとってのあの事件とはなんだったのか?

両親を失って以来2度目の人生の転換期。
あの事件がなければ確実に私が悪党商会を継ぐなんてことはなかっただろう。

「そうですね。私にとって、いえ、巻き込まれた誰にとっても最悪な事件だったと思いますよ。
 あの日から、あんな事件がなかった事になったらいいのにって、そう願わなかった日はありません」

悲しい出来事だった。
多くの人が死んで、多くのモノが失われた。
絶対許してはならない、絶対に忘れてはならない出来事だった。

「けど、どれだけ願ったって時間は戻らないし、なかったことになんてならないから。
 あの出来事があったから今の私があるんだって思える様に、これからを頑張っていこうって思えるようになったから。
 きっと私にとっても意味はあったんだと思います」

けれど、そこで得たモノが何もなかったなんて、それこそ悲しすぎる。
失ったモノばかり数えるよりも、得たモノを大切にしたい。
それがきっと失われたモノに報いる唯一の方法だと信じているから。

「それにほら、こうして私たちがお茶してるのもあの事件があったから、でしょう?」

これもまたあの日が生んだ成果のひとつ。
こうやって、少しずつあの日の意味を見出して行けばいい。
私の答えを聞き届け、先輩は満足そうに頷くと、空になったカップを机に置いて立ち上がった。

「飛行機の時間もあるし、そろそろ行くわ」
「そうですか。名残惜しいですけど、次はどちらへ?」
「南米ね。日本に戻るのはまた数年後になるかしら。
 だから、九十九さんたちとも会っておきたかったのだけど」
「あぁ、九十九は最近忙しいみたいですからね。今は京都で、戻りは明日だったかな?」

九十九は高校卒業後、お祖父さんが体を壊したため(腰をやってしまったらしい)、「旅は終わったぜ……」という謎の言葉を残し一二三鍛冶の十七代目刀匠となった。
元よりその腕前に疑問の余地はなく、世間の刀剣ブームとやらも相まって、美しすぎる刀鍛冶として一躍メディアの注目の的となったのである、
今や私たちの中で一番の有名人だ。

かくいう私も取引先として贔屓にしている。
取引と言っても、買い求めるのは刀剣類ではなく彼女の打つ良質な鉄製品だ。

「そうなの、それは残念ね。そんなに忙しいようなら、あなたもそんなに会う機会はないの?」
「いやぁ…………私は割と頻繁に会ってますよ。よくウチに泊まりに来ますから」

仕事だけじゃなく、九十九との個人的な親交も続いている。
忙しさの中で余計なことなど考える暇などなく、この5年間を駆け抜けるように過ごした。それはある種の救いだった。
ただ、何もない一人の時間にはどうしようもなく喪失に震えそうになる。
その隙間を埋めてくれたのが九十九の存在だった。

彼女は一人暮らしを始めた私の家に足繁く通い、慣れない仕事に振り回され疲れ果てた私の世話を焼いてくれた。
今になって思えば、それは私への気遣いであり、彼女なりの振り払い方だったのだろう。

彼女も家業を継いでからは互いに忙しく疎遠になるかと思いきや、むしろ泊まる頻度が増えた。
一度距離を詰めると遠慮しない女である。
今となってはすっかりそれが習慣になり第二の家と言わんばかりに泊まりつめているのだが。
何だったら今朝もウチから京都に出てったくらいである。

「仲のいいことね。羨ましいわ」

何の気ないような呟きだったが、案外それは本音だったのかもしれない。
本音の分かりづらい人なので真相は分からないが。友達いなさそうだし。

「それで、“彼”の方はどうなの?」
「ぶッ…………!?」

唐突にそんな話題になる。
いや、彼女の話題から彼の話になるのは自然流れと言えば流れなのだが。
にやつき顔で振られたその話題に、私は努めて平静を保って返す。

「彼も彼で忙しいみたいですよ。4年生ですし」
「そう。意外と言えば意外よね、進学したのが彼だけって言うのは」

多くの生徒が失踪を遂げた神無学園は、保護者達に責任を追及された。
中でも大口の出資者であり、一人娘を失った白雲家が特に強く憤慨し、説明責任を持つ理事長も消えたらしく、事態は収拾することなく神無学園は廃校を余儀なくされた。
生徒たちはそれぞれ近隣の高校へと転校する運びとなったが、私と先輩はそのまま高校を中退。
九十九は高校卒業後に家業を継いだため、大学にまで進学したのは『彼』だけとなった。

「それで、どうなの彼との進展は?」
「ど、どうとは……?」

先輩がズイと距離を詰めてくる。ちょっと怖い。
誤魔化すように目を逸らし続ける私に、呆れたように溜息をもらす。

「じれったいわね、あなた達。あんまりもたもたしてるようなら私がもらっちゃおうかしら」

女の私ですら赤面してしまいそうな色香を感じる妖艶な笑みを浮かべ、細くスラリとした人差し指で自らの唇を抑える。

「彼とはキスした仲だし」
「ッ!?」

言葉を詰まらせているこちらの様子をみて、からかうようにクスリと笑った。

「――――冗談よ。私、知的な人がタイプなの」

彼はちょっとね、と素っ気なく呟いて、深い青空を見つめた。
遠くにいる別の誰かを思い浮かべるように。

「じゃあ、そろそろ本当に行くわ。お互い生きていたならまた合いましょう」

まるで明日もまた会えるかのように軽やかにひらひらと手を振って、振り返る事なく最後までスマートに去って行った。
小さく手を振り返して、その背を見送る。

秋の訪れを感じさせる冷えた風が吹いた。
先輩が立ち去った丘の上に一人取り残される。

「っ…………ぅ~ん」

そろそろ仕事に戻らねば。
書類仕事を押し付けた新幹部の子から鬼電が来る頃合いである。
一つ伸びをして、ティーセットの片づけ始めようとしたところで、

「――――よっ」

背後に声がかかった。
不意を突かれて僅かに心臓が跳ねる。
振り向けば、そこに一人の精悍な青年が片腕を上げて立っていた。
パタパタと駆け寄りながら、すっかり慣れ親しんだその名を呼ぶ。


「――――――――拳正くん」


5年前の地獄から生き残った『生還者』の一人。
風で波立つ草原の中心に、新田拳正が立っていた。


――――あの世界で新田拳正は確かに死んだ。

それがあの世界における結末であり、世界の法則に従った結論だった。

世界の支配者が描いた物語はそこで終わり。
だが、彼女たちは、その終わりを良しとしなかった。
目指したのは、結末のその先である。

ワールドオーダーの敷いた世界は彼の死を決定付けた。
だが逆に言えば、決まっているのはそこまでだ。
死亡した彼を『蘇生』できないとは決まってない。

蘇生などと大袈裟に言ったが、なんてことはない。
施されたのは人工呼吸と心臓マッサージという、ごくごく一般的な心肺蘇生法である。
最終決戦の地に辿りつき、その扉を開いた私が見たのは正しくその処置が行われている瞬間だった。

私たちは自分たちの意思で未来を選べる。
世界に決められた未来など、その程度の事で覆せるのだ。

「さっきまで先輩が居たんだけど、入れ違いだったね」
「センパイってぇと、どのセンパイだ?」
「ほら、音ノ宮先輩だよ」
「…………ああ、アリス先輩か」

微妙に苦い表情をする。
苦手なものなどなさそうな彼も、あの人だけは苦手らしい。
まあ気持ちは分からなくもないが。

「いや。久しく会ってねぇし、ツラくらいは拝んどきたかったな」
「そっか。拳正くんは入院してたもんね。じゃあ本当に事件以来会ってないんだ」

あの事件で意識のないまま先輩に担がれ帰還を果たした拳正くんは一番重症だった事もありそのまま病院に担ぎ込まれた。
私の場合は疲労が極限にまで溜まっていたものの、入院するほどの傷は負っていなかったため悪党商会お抱えの闇医者に診てもらうだけで事足りたが。

瀕死の重傷(というか1回死んでる)だった彼は全治3か月と診断され入院生活を余儀なくされたが、驚異の回復力を見せ僅か1か月で退院を果たしたのだった。
だが、その頃にはすでに先輩は全ての事後処理を終えて海外へと旅立っていたため、彼が先輩と顔を合わせたのはあの殺し合いの舞台が最後だったという事になる。

「それで、今日はどうしたの? 定期検診の日じゃなかったよね? なんか調子悪かった?」

そう言って下から彼の顔を覗き込む。
私と大して変わらなかった彼の視点も目線一つ分上がっていた。

現在の悪党商会における主な事業の一つが義肢の開発である。
ナノマシンによる神経接続により、生身と変わらぬ動作性を生身以上の性能を提供するというのが売りだ。
技術公開による研究の進歩は目覚ましく、副作用もある程度抑えられるようになったからこその実験的商品なのである。

あの戦場で片目を失った彼に義眼を提供し、モニターと言う名目で定期的に調整のためこちらに通ってもらっていた。
いらないと固辞されているが、バイト代だって出してる。

「いんや。むしろ良すぎる。ズーム機能とか赤外線センサーとかいらねぇから、取り外してくれ」
「うーん。九十九の意見を取り込んでみたんだけど、ダメだった?」

競合他社も多いので、売りになると思ったんだが貴重なモニターからは不評のようだ。

「あいつの意見は聞かないでくれ、頼むから。危うくカンニング扱いになるとこだったぜ」
「あれ、大学って今テストの時期だっけ?」
「テストつーか、採用試験だな。卒論も書かなきゃだし、忙しいよまったく」
「そっかそっか、大学生も大変だねぇ」

忙しさなら負けちゃいないが、こちとら中卒なんでその忙しさもどこか羨ましい。
後悔はないが、一瞬、親友たちと過ごしている学生生活を夢想した。

「そう言えば、聞いたことなかったけど、拳正くんって就職どこ目指してるの?」

何気ないその問いに、彼は珍しく少しだけたじろく様を見せた。
その様子を首をかしげ見つめると、照れくさそうに頬を掻いて一言。

「警察官」
「――――ぷっ」

思わず噴出してしまう。
交番のお巡りさんをやってる彼を想像してみて、あんまりにもハマりすぎてて笑ってしまった。

「んだよ。似合わねぇのは自覚してんだよ」

拗ねたように視線を逸らす。
その様子がかわいらしくて、更に口元が緩んでしまう。
目端をぬぐって緩んだ口元を抑えながらも機嫌を損ねた彼をとりなす。

「ごめんなさい。似合うと思うわ、警察官」
「そういう世辞はいいんだよ」
「本音だって。機嫌直してよ、もう」

本当に拗ねてしまいそうだから、それ以上は取り成さず話題を変える。

「けど何で警察官なの、昔からなりたかったとか?」
「そういうわけじゃねぇけどさ。つかそんな風に見えるかぁ?」

自嘲するような笑みを浮かべる。
見えなくもないと思うんだけどなぁ。

「ま、俺にも思うところがあってな」
「思う所って?」

誤魔化すような言葉に踏み込んで問いかける。
拳正くんは少しだけ考える様に視線を巡らせ、仕方ないと言った風に話し始めた。

「ま、師匠もいなくなっちまったし、俺なりにできる事を考えた結果ってやつだ」

彼の師匠。
あの世界から還った直後、意識のない彼を家に運び込んだ時に一度だけ会ったことがある。
救急車の到着待っている間、部屋に寝かされた片目を潰し、瀕死になっている愛弟子を見てカカッと笑って一言。

『男前が上がったな、拳正』

師匠さんが姿を消したと聞いたのはその直後だと九十九から聞いている。
だから彼が退院した時には既に師匠さんは影も形もなくなっていた。別れの言葉もなく。

「俺は腕っぷしくらいしか能がねぇからな。無い頭でそれを生かせる仕事は何かって考えた訳だ。
 それに、昔の俺ぁロクでもないバカなガキだったからな。分かり易く世間様の役に立つ仕事に付きたかったんだよ」
「なにそれ。不良の更生物語?」
「かもな」

そう言ってカラカラと笑う。
その笑みはかつて見た老師のようだった。

「ねぇ―――――――」

ふと、先ほどの先輩とのやり取りが思い返された。
一瞬その話題に踏み込んでいいのか逡巡したが、思い切って問うてみた。

「――――拳正くんにとってあの事件ってどういう物だった?」

唐突な問いに拳正くんは少しだけ目を丸くした。
だが、驚きはしたものの気分を害した訳ではなさそうである。

私たちはあまりあの日の話をしない。
事件の直後は思い出したくもなかったし、ようやく落ち着いて考えられるようになった今でも好んでするような話もなかったからだ。
だから、彼にとってあの出来事はどういう物だったのかを聞いたことはなかった。

「んだよ、いきなりだな」
「いや、さっき先輩とそう言う話になったからさ」

日常的に会っている私たちと違って、久しく出会った『私たち』が出会えばそういう話になるのもまた必然である。
それは拳正くんも理解ているのか、それもそうかと納得を示した。

「つってもなぁ。確かに胸糞悪い騒動だったが、野郎に一発叩きこんだ時点で俺ん中でケジメは付いてんだよ、死んじまった奴らにぁ悪ぃがな」

既に決着した出来事。
その割り切りは彼らしい明快さだ。
彼にとってあの事件は思い返す事もない過ぎ去った過去なのだろうか。

「じゃあもう関係ない話だって思ってる?」
「んなこたねぇさ。どんなものだってそいつを作る一部だろ、無関係にはならねぇよ」

全ての出来事を己の血肉として生きる。
私が5年かけて出した結論を彼は既に持っていた。

「俺は"また"死にぞこなっちまったけれど、生き残っちまったからには生きなきゃならねぇ。ただ、引きずったってどうしようもねぇって話だ。
 結局のところ死んだ人間のために出来る事なんてないんだ。そんなのはただの自己満足でしかねぇ。
 出来る事なんて生き残っちまったテメェの事を、精一杯やってくしかねぇのさ」

それは自分本位の冷たい言葉ではない。
それだけしかできないと言う諦念の言葉でもなく、ただそれだけでいいのだと言う許しの言葉だった。

「死んでいった人たちに報いたいと思うのはいけないことだと思う?」
「言ったろ。自分が満足できるんならいいんじゃねぇの。そうじゃねえなら辞めとけって話だ。
 望んでもないことをする言い訳にされても死人としても迷惑だろ」

その言葉にはどこか実感がこもっていた。
こうして達観した彼にも、そんな時期があったのだろうか。

「そうだね。その通りだ」

お父さんの意思を付いで会社の運営を頑張っているのも、訃報を遺族に届けたのも。
どちらも辛い役割だったけれど、自分がそうしたかったからしただけだ。
誰のせいでもない。

「だいたい俺の場合は、あの先輩とかと違って生き方を選べるほどたいそうな人間じゃねえからな。必死でやるしかねぇのさ。
 警察だって俺なりに頑張ってはみたものの、試験の結果がどうなるかなんてまだわかんねぇしよ」

強がるように笑うが不安そうな表情は隠しきれていない。
どれほど強大な的にも怯まなかった彼も、試験と言う壁は恐ろしいようだ。

「仮に受かってたら警察学校に半年だ。そうなったらしばらく会えなくなるかもな」
「そう…………なんだ」

半年も会えなくなる。
決して彼の失敗を望む訳ではないけれど、それは、寂しい。
ただの友人でしかない私に言えるは言葉ないのだけれど。
寂しいと。彼も僅かでもそう思ってくれているのだろうか。

窺うように彼を見る。
すると、彼もまた私を見つめていた。
視線が絡まり、心臓が高鳴る。
まるで戦う前の様な真剣な瞳に吸い込まれそうになる。

「俺ぁ半端な野郎だから、色々とケジメ付けてからって思ってたんだが。
 だから、合格して、帰ったらお前に話が、「たッ……だいまあああぁぁぁl ユッキーッ!!」

拳正くんの言葉は途切れ、背後から勢いよく突撃してきた謎の影に踏み潰された。

「いやぁ! 公演終わって後はゆっくり泊りの予定だったけど、一人で旅館に泊まるの寂しくて新幹線でとんぼ返りして来たよぉ!」

物凄い息を出で捲し立てながら、私に抱き着いてくるのは、言わずもがな、我が親友一二三九十九である。
しばらく九十九は私に抱き着き続けるが、恒例行事なので私はなすがまま、どうどうと背を撫ぜた。
そうして堪能したのか、ようやく九十九は足元に注意を向けた。
踏みつけていた存在に今気付いたとばかりに言う。

「あれ? なんで拳正がいるの?」
「九十九……テメェ」

下敷きになっていた拳正くんが勢いよく立ち上がる。
九十九も慣れたモノで、しがみついた私を軸にそのまま飛び退いた。

「ほれほれ。羨ましいか? お? おぉん?」
「このアマ…………ッ」

そして見せつける様に私に頬ずりしてくる。
もう。この二人は5年経っても相変わらずだ。
変わった物もあれば、変わらない物もある。

「九十九、拳正くん」

仲良くケンカを続ける二人の名を呼ぶ。
呼びかけに、二人が同時に振り返った。

人生は続く。
神様が去った終りの後の物語を私たちは生きる。

その道のりを共に歩む、愛すべき人たちに向けて。
私はありったけの笑顔と心を込めて。


「これからもよろしくってこと」


【オリロワ2014 完】

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最終更新:2019年10月19日 22:09