僕の名前は宇野和義。
この山折村でしがない農家をやってます、まあどこにでもいる農民Aですわ。
若い頃にはまあやんちゃしてましたが、今ではすっかりこの村に馴染んで。
嫁もでき、子供もできて、順風満帆。
幸せ太りって言うのかな、最近は腹も出てきちゃって。
昔の事なんて、あの頃の自分の性癖なんて、すっかり風化したものだと思ってましたが。
いやあ、幾つになっても、生まれ持った性(さが)って奴は変えられないものなんですねえ。
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「それで閻魔さん、これからどこに行くつもりなのですか?」
朝影礼治の別荘を後にしてしばらく歩き、高級住宅街に足を踏み入れた頃。
特に迷いもなくずんずんと歩いていく木更津閻魔の背中に、月影夜帳は声をかける。
「ああ?別にどこだっていいだろうが。歩いてりゃ誰か見つかるだろ」
「リンはエンマおにいちゃんが行くとこならどこだってついていくよ!」
「はあ…しかし、あてもなく歩き回るのも効率が悪くありませんか?48時間という時間制限もあることですし」
適当すぎる閻魔に呆れ、そんな閻魔にリンが懐いていることに嫉妬を覚えつつも、夜帳はとりあえず自身の考えを述べる。
「学校の方へ行ってみてはどうでしょう?あそこは確か避難所に指定されていたはずですから、地震で人が多く集まっているはずですし、リンちゃんのお友達もいるかもしれないですし」
夜帳の主張は特に問題があるわけではないし、嘘も言っていない。
しかし、夜帳には個人的な思惑もあった。
学校…若い子供たちが集まる場所。
きっとそこには、リンのようなおいしそうな女の子が集まるだろう。
あそこの小中高校は、生徒数こそそれほど多くないが、女子生徒は多めだったと記憶しているし。
「『がっこう』ってなあに?」
リンが、不思議そうに夜帳に聞いてくる。
そんなリンに可愛らしさを感じつつ夜帳は不思議に思う。
学校を知らない?
「君みたいな子供が通う場所だよ。リンちゃんも、学校行くだろ?」
「知らない。リンはお家で毎日おじさんや、たまに帰ってくるパパといたから」
「外には出たことないのかい?」
「いい子にしてたら、たまにおじさんが夜のお散歩に連れていってくれるの!」
「…そうですか」
彼女の置かれていた環境をそれとなく察した夜帳は、彼女に同情を寄せるとともに、彼女を閉じ込めていた『おじさん』や『パパ』に憤る。
(許せませんね…こんな可愛い子を独占していたとは)
非情にずれた憤りではあったが。
「ともかく私は、学校に行くべきと思います」
「でもよ、人が多いってことはゾンビになってる奴が多いんじゃねえか?」
夜帳の意見に対し、閻魔がわずかに怯えを含んだ表情で反論してくる。
ったく、ヤクザの息子のくせにとんだヘタレだなこいつ。
そんな内心を隠して夜帳は穏やかに説得する。
「確かにゾンビになってしまった人は多いでしょう。ですが、ゾンビにならずに済んだ人も多いはずです。協力者を見つけるためにも、行ってみる価値はあるのではないですか?」
「…ちっ、分かったよ。んじゃ、行くか」
「いえ、待ってください」
学校へ足を進めようとする閻魔を、夜帳が呼び止める。
「なんだよ?学校に行くっつったのはお前だろ」
「私達、見られてます」
夜帳の言葉に閻魔は驚き、周囲をキョロキョロと見回す。
そんな閻魔を呆れたように見つめながら、夜帳は近くの建物に向かって声を張り上げた。
「そこにいるのは分かっています!出てきてもらいましょうか!」
夜帳がそう言うと、やがて建物の影から一人の中年の男が現れた。
この高級住宅街にはあまり似つかわしくない、いかにも農夫といった感じの男だ。
「こ、こんばんは。僕は、宇野和義といいます」
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閻魔たち3人は、和義の話を聞く。
和義は、趣味で普段からこの辺りを散歩していて、その散歩中に地震に遭ったらしい。
閻魔たちに出会う前に出会った人がゾンビだったので、警戒して様子をうかがっていたらしい。
「しかし良かったです、無事な人に3人も会えて。それに…この子がゾンビにならなくて」
そういって和義は、リンを愛おしげに見つめる。
そんな和義の様子に、夜帳は警戒を含んだ目で彼を睨みながら言う。
「この子…リンちゃんがなにか?」
「え?ああいや、深い意味はないですよ。私にも二人の子供がいるので。2児のパパとしてこういう子供は放っておけないんです」
「…そうですか。ところで和義さん、私達は学校に行くつもりなのですが、あなたは一度家に戻って家族の安否を確かめてはどうでしょうか」
「え…それは…」
「地震より前にこっちの方に来ていたということは、ご家族の安否を確かめられていないんですよね?ご家族が心配でしょう?」
にこやかに問うてくる夜帳だが、その目は全く笑っていない。
言外に、お前は邪魔だと言われているのだ。
「こ、こんなゾンビがうろついてる場所で、一人で行動なんて!僕も、あなた達と行きます!」
「そうはいってもねえ…私達も暇ではないんですよ。あなたの家に寄り道してる暇など…」
「僕の家は古民家群の方にあります!方向的に途中で立ち寄れる場所なんですから、一緒に行ったっていいでしょう!」
「それは…そうかもしれませんが…」
夜帳は心の内で舌打ちする。
彼は、できれば和義を同行させたくなかった。
彼をリンから引き離したかった。
先ほどリンを見ていた和義の目に…自分とよく似た、怪しい光を見たから。
「俺の手足として動いてくれるなら、構わねえぜ」
「エンマお兄ちゃんがいいなら、私もいいよ!」
しかし、夜帳のそんな考えとは裏腹に、閻魔もリンも、和義の同行に異議はないようである。
ここで夜帳一人が突っぱねても、自身の立場が悪くなるだけだろう。
表向きのリーダーである閻魔の不興を買い、自分の方が追い出されることになりかねない。
「…分かりました、一緒に行きましょう」
こうして木更津閻魔一行は、新たな仲間を増やし。
途中、古民家群の和義邸を経由して学校を目指すことになるのであった。
「いいかデブ!俺のことは閻魔様と呼べ!」
「は、はい!閻魔様!」
「よしよし、生意気なヒョロガリより素直じゃねえか」
閻魔にペコペコしつつ、和義は彼らと同行できたことに安堵した。
いや、彼ではなく彼女と同行できたことに。
ちらりと、リンの方を見る。
するとリンは、ニコリと可愛らしい笑みを浮かべて。
それだけで和義は、胸が締め付けられるように苦しくなり、幸福な気持ちになる。
(ああ…リンちゃん。近くでじっくり見ると、なおさら魅力的だなあ!)
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それは一月ほど前のこと。
僕、宇野和義は、公民館に用があって、高級住宅街の近くを歩いていました。
それにしても、人口も少ない寂れたこんな村に、高級住宅街って。
村の中に街って。
まあでも、金持ちの気持ちも分からなくはない。
自分は彼らみたいな金持ちではなくただの農民ですが、22年前ここに逃げ込んでから、すっかりこの村に馴染んだ身ですから。
ここは色々変な人は多いけど、不思議と居心地がよくて、そういう空気が、風変わりな富裕層を引き付けるのだろう。
そんなことを考えていると、一組の親子(?)らしき人が少し離れた場所を歩いているのを見つけて。
僕は、子供の方…7歳くらいの小柄な女の子と目が合った。
(!!!!!)
その瞬間、僕の中で…雷に打たれたような衝撃が走った。
彼女たちが去った後、僕はその場に崩れ落ち。
胸を抑えてうずくまっていた。
「はあ、はあ…」
なんだ、あの少女は。
目が合った瞬間、心が奪われたのを感じた。
かつて自分が犯した監禁事件。
その時に監禁したどの少女たちよりも、今の子は魅力的だった。
和義が調教したどの少女たちよりも、洗練されていた。
そう、彼女はまさに…監禁少女の鑑。
クイーンオブコンフィメント。
「はあ、はあ、はあ…♪」
和義の中で封じられていた欲望が…今再び、芽吹いた瞬間だった。
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(木更津閻魔と月影夜帳…なんとかこの二人を振り切って…僕はリンちゃんと生きる)
(48時間?証拠隠滅?そんなこと知るものか)
自分はこの村で、十分すぎるほど人らしい幸せを享受してきた。
かつて自分が犯した罪なんて、ほとんど忘れかけるくらいに、平凡に過ごしてきた。
だけど…あの日この子…リンに出会ってから封じたはずの性癖はこじ開けられて。
自分はもう、平凡な日常に戻れないだろうと感じていた。
あの日以来、時間を見つけてはリンと出会ったあの周辺を歩き回りリンのことを探していた。
妻や、近くの高級住宅街の住民には不審がられたものの、ダイエットを兼ねた散歩をしているのだとごまかして。
そして…今日もリンを探してこの辺りを歩いている最中、VHという未曽有の災害に巻き込まれ、ようやく見つけることができた。
自分は、この少女を監禁して欲望を満たすことで、自分の人生に終止符を打つ。
タイムリミットが訪れるその瞬間まで、リンと生きるのだ。
自分の欲望のままに生きて最期を迎えられるのは、きっと最高だから。
(妻も子供も…どうだっていい。僕は…この子と一緒に生きて、死ぬんだ)
失ったはずの若き日の情熱。
再び胸に灯った己の性(さが)。
それらを胸に、宇野和義は破滅の道を目指して進む。
【D-3/高級住宅街/一日目・深夜】
【木更津 閻魔】
[状態]:健康
[道具]:トカレフTT-33(0/8)
[方針]
基本.木更津組次期組長として指揮を取って事件解決を目指す。
1.古民家群の和義邸に寄ってから、学校の方に向かい、使えそうな子分を探す。
2.極道モンの仁義としてリンは保護してやろう。
※リンの異能の影響で無意識に庇護欲を植え付けられています。
【リン】
[状態]:健康、
木更津 閻魔への依存。
[道具]:無し。
[方針]
基本.エンマおにいちゃんのそばにいる。
1.やさしいエンマおにいちゃんだいすき♪
2.リンをいっぱいあいして、エンマおにいちゃん。
※異能によって木更津 閻魔に庇護欲を植え付けました。
リンは異能を無自覚に発動しています。
【
月影 夜帳】
[状態]:健康
[道具]:医療道具の入ったカバン
[方針]
基本.この災害から生きて帰る。
1.木更津組を敵に回すのは面倒なので今は閻魔に従おう。
2.リンはこの手で殺害する。
3.和義を警戒、彼もリンを狙っている気がする。
※自身の異能は吸血行為に関連するものと目星を付けています。
【
宇野 和義】
[状態]:健康
[道具]:なし
[方針]
基本.リンを監禁し、二人でタイムリミットまでの時間を過ごし、一緒に死ぬ。
1.閻魔たちに表向き従いつつ、目を盗んでリンと二人っきりになって身を隠す。
最終更新:2023年01月30日 22:35