山折神社から下った山道脇には青々とした木々に囲まれた森林地帯が広がっている。
周囲を山々に囲まれた山折村ではあるが、参道へ繋がる道のりであるためかその森はどこか神聖な雰囲気が漂っていた。
それはこの有事においても変わらず、木々の隙間から零れ落ちる柔らかな光が降り注ぎ、静謐な空気を保っている。

山折村の鏖を目論む魔人、八柳藤次郎との激闘を終え、心身ともに疲弊した哉太たちは人目を避けて森林の中を進んでいた。
彼らの姿は深い木々に隠れており、そう簡単には見つけられない、隠れ進むにはうってつけの地形である。
見つけられるとしたら上空を飛び回るドローンか鳥くらいのものだろう。

「ありがとな。とりあえずもう押さえとかなくても大丈夫そうだ」

そう言って先を進む哉太が真後ろにいるアニカに礼を述べた。
その言葉を受けて傷口を固定していたアニカが自らの異能を解く。
異能の精密動作にはそれなりの集中力を要したのか、アニカが息を吐いて首元の汗をぬぐった。

切り落とされた哉太の腕も最低限は繋がった
辛うじてだが指の感覚があるのが分かる。
とは言え、まだ無理に動かせるような状態ではない。
しばらくは安静にしておく必要があるだろう。

薩摩に吹き飛ばされた茶子の左肩も、撒かれた包帯の力によって回復しつつあった。
はすみの異能によって祝福された包帯は回復を促進する。
欠落した肉が蠢いているのが感覚的に分かる程だ。
殆ど千切れたも同然だった左腕が快復しつつあった。

いずれも現代医学をもってしても回復するかも怪しい重症だった。
それがこれほど短時間で快復するなどありえない事だ。
異能とは常識を覆す力であると改めて実感させられる。

アニカもしばらく安静にしていたおかげで夾竹桃の毒による中毒症状もそれなりに回復してきたようだ。
全員の状態がある程度落ち着いたところで、アニカが足を止める。

「そろそろ聞かせてもらうわよ。Ms.チャコ。あなたからは聞きたいことが山ほどある」

その言葉に全員の足が止まる。
アニカがまるで敵でも見るような鋭い視線で茶子を睨み付けた。
疑いを持っている事を隠しもしないその様子に、闘争でも始めるかのような剣呑な気配が漂う。

「…………けんか?」

不安そうな声でリンがきょろきょろと二人を見つめる。
周囲の気配に子供は敏感だ。
特にリンは大人にとって都合のいい子供として調教された少女である。
大人の機微を読み取ることに関しては天才的と言っていい。

「大丈夫よ、リンちゃん。心配しないで」

不安を滲ませるリンを安心させるように柔和に笑い優しい手で頭を撫でる。
そして厳しい視線を向けるアニカを受けて立つように向き直る。

「いいわよ。答えましょう。何なりと聞いて」

質問に応じるのは包帯を貸与する条件である。
包帯の効果は本物だった以上、この申し出を拒否もできまい。

「I'll listen to you.アナタは研究所とどういう関係なの?」

探偵は重要参考人に向かって直球に質問をぶつける。
山折村を襲ったバイオハザード。
元凶たる研究所の一端にようやく手がかかった。

「私は、未来人類発展研究所に雇われたアルバイトよ。
 研究所を探る外部からの人間を調査して報告するのがお仕事、草の者ってやつね」
「なんで、茶子姉がそんな事……」

哉太が痛みを堪える様に表情を歪め絞り出すように問う。
分かっていた事とは言え、慕っている姉弟子の口から村をこんなにした連中との繋がりが語られるというのはやはりショックが大きかったようだ。

「目立たないと言う意味で地元民が都合よかったんでしょうね。その上腕が立って有能な人間なんて私しかいないでしょう?」
「Just a second.それは研究所側の事情でしょう? アナタが研究所に協力している理由は何?」

自らを持ち上げ茶化した様子で茶子が言うが、アニカはそのノリには付き合わず冷静に問い詰める。

「そりゃあもちろん、公務員の副業も解禁されて、ギャラもよさそうだったから」
「茶子姉…………」

なおも軽い調子で続ける茶子を哉太が縋るような子犬のような瞳で見つめてくる。
流石に哉太も茶子が質問を曖昧に煙に巻こうとしているのに気づいたようだ。
その視線に、ため息交じりに茶子が呟く。

「……わかったわよ」

茶子の中には哉太に対する罪悪感がある。
アニカが論理的に詰めて、哉太が感情的に訴えかけてくる。
哉太は意図していないだろうが厄介な連係プレーだ。
元より誤魔化しきれるとも思っていなかったが、茶子は諦めたように佇まいと振舞いを正した。

「心配しなくとも別に研究所に賛同して協力してたという訳ではないわ。
 研究所に近づいたのはあくまで私の目的のために研究所を利用できると思ったからよ」

それを聞いて哉太がひとまず胸をなでおろす。
少なくとも心から研究所に付き従っていると言う訳ではなさそうだ。

「つまり体だけの関係、心まで預けたわけではないってことよ」
「茶子姉。言い方」

真剣な表情のままふざけたことを言う、いつもと変わらない哉太の知る茶子だ。
だが同時に、先ほどの魔での藤次郎に憎悪をぶつけた時のギャップに複雑なものを感じてしまう。
何が彼女をあそこまでの憎悪に掻きたてたのか。

「in the first place.アナタはどうやって研究所の存在を把握したの?」

村民には秘密裏に行われている研究である。
接触しようにも権力者か関係者以外はそもそも知りようのないはずだ。

「元々役場勤めで村に出入りする人間や不審な物資の輸送なんかはある程度把握できたからね。
 そこから仲介屋に当たりを付けて接触したの」

村の人流や物流を管理する役所勤めの強みだ。
表ざたに出ないような不自然な動きがあればすぐに察せられる。
だが、それで正体不明の組織に接触するなど、傍から見てもかなりリスキーな行動だ。

「教えてくれ、そこまでして成し遂げたい茶子姉の目的って何なんだったんだ?」
「この村をよくしたい、それだけよ」

淀みなくハッキリと答える。
それは茶子の偽らざる本音である。

鋭い洞察力を持つアニカから見ても今の発言に嘘は感じられない。
だが、アニカの中に僅かな違和感があった。
嘘はないが、小さく何かが引っかかる。

「よくするって、どうやってだよ?」

目的は手段を正当化しない。
目的がどれだけ素晴らしくとも、問題はその手段だ。
藤次郎のように、その方法が全てを穢れとして滅するなどと言う強硬策であったとしたらとても容認できない。

「大丈夫よ。あの爺みたいに何もかも滅ぼす何て極端な真似はしないわ」

もはや茶子は藤次郎への憎悪を隠しもしない。
実孫の哉太としては辛いところだ。
祖父の凶行を目の当たりにした今となっては弁明の言葉もないが、同時にあれほどの狂気に捕らわれた祖父を哀れに思う心もある。
だからこそ、祖父が何に捕らわれ、祖父と姉弟子の間に何があったのかを知りたい。

「この村を食い物にする闇や腐敗を撤廃する。そいつらを見つけ出して叩き潰すだけ。
 私はこの村が好き。お義父さんやお義母さん。哉くんや碧ちゃん、はすみたちのことを愛しているわ」

茶子はこの村を深く愛している。
助けてくれた虎尾家の両親には感謝しているし、共に育った友人たちや、かわいい後輩たちが好きだ。
育んでくれたその土地への感謝。四季折々の美しい風景。互助関係から成り立つ田舎ならではの温かい人々との交流。
自分を受け入れてくれたこの村を愛している。

「けどね。だからってすべてを受け入れられるわけじゃないの。
 嫌いなところはあるし、許せないこともある」

茶子はこの村を深く憎んでいる。
救われない子供たちを産み落とし、多くの罪なき者を蹂躙し闇に沈めた。
周囲から隔絶されたこの土地は様々な犯罪の温床なり、多くのモノを喰い物にする人ならざる悪鬼どもをのさばらせている。
自分を壊して穢したこの村を憎んでいる。

彼女の中には山折村に対する狂おしいほどの愛憎があった。
悪性の腫瘍だけを排除して憎悪の根源を一掃すれば、愛するだけの村になる。

「ほら、好きな男には悪いところを直してほしい物でしょう。私のがしたいのはそういう事」
「I mean, isn't it a woman's magnanimity to love even the imperfect parts?」
「あら、言うじゃない。けどそれも限度があるって話よ」

珍しくアニカが全文英語で反論している、哉太には意味は理解できなかったが、何か当て擦りが行われている事だけは分かった。
目の前で繰り広げられる気の強い女の攻防に、少年は黙るしかない。

「So? その目的と研究所のpart timeがどう繋がるのかしら?」

アニカが話を戻す。
むしろ研究所は村をこんな惨状にした排除すべき邪悪だ。
そこに属することはむしろ目的に反しているようにも思える。

「その辺の監視も含めて、よ。まあ……こうなるのを防げなった時点で説得力はないかもしれないけど」

つまり茶子は研究所のために不穏分子を監視すると同時に、研究所が不信な動きをないか監視るための二重スパイのような物だった。
研究所の研究成果が村に被害をもたらすのを防げなかったのは茶子からしても忸怩たる思いである。

「含めて、という事はprimary purposeは別にあるのでしょう?」

アニカは細かな言動を見逃さず、追及を続ける。
何より、研究所の監視と言うのは自分の目的のために利用するという最初に語られた話と一致しない。
自ら接触するに足る別の目的があるはずである。

「ええ、そうね。私が研究所に接触したのは、奴らがそれなりに巨大な組織だったから。
 村の闇を一掃して綺麗にするには、まず村のゴミの散らかり具合を把握しないといけないじゃない?
 けれど、それがどこまで根深く、どこまで広がっているのか私個人では調べようがなかった」
「I see.個人で調べられないのなら、すでに知っている可能性の高い組織を利用しようと考えたのね」

この村に蔓延る闇の根は深く個人で調べるには手に余る。
ならば、蛇の道は蛇。その闇に近く、力のある組織を利用すればいい。
研究所がこの地に根を張るのならば、その地に纏わる厄ネタを事前に調査しないはずがない。

村内の知っていそうな人間に尋ねるという手もあったが。
老人連中は闇の当事者である可能性があったため迂闊に尋ねる訳にもいかなかった。
藤次郎は元より、村長を筆頭とした村の重鎮たちも何に足を踏み込んでいるか分かったものではない。
その点、研究所は新興組織、少なくともこの村に対するしがらみは少ない。

「もちろん私も研究所が全てを知ってるとは思ってないわ。あくまで情報源の一つとして利用していると言うだけよ」

闇を探る茶子の手は多方面に伸ばされている。
研究所だけではなく役所勤めもの一環だ。

「…………convinced.アナタが研究所に同意して付き従っている訳ではないことは信じましょう」

アニカはそう言う。
心の底から信用したというより話を進めるために必要だから認めたという風だ。
それはお互いに分かっている。だからこそ口にはしない。

「当面の私たちの目標はこのZombie panicの解決。そこに関してはobjectionないわね?」
「ええ。そうね」

このバイオハザードの解決。
それは村の壊滅を目論む藤次郎や、混乱を利用して己の欲望を満たさんとする気喪杉のような例外除けば巻き込まれた人間全員の共通目標だろう。
そこは茶子としても同じである。

「それじゃあ、アナタが研究所から得たその情報を教えてもらうかしら」

そしては聞き取り調査はここからが本題だ。
彼女が得た情報の中に、事件解決に繋がる何かがあるかもしれない。

「今更機密保持もないけど、その辺は私としてもそれなりに苦労して手に入れた情報なんだけど」

情報を得るために1年間。
自分の有用性を売り込むために雑用から用心棒まで、それこそ声高にはできない非合法な事だってやった。
この村の闇を払うためにより深い闇へと足を踏み入れて、信頼貯金を貯めてようやく得た情報である。
包帯を貸与された対価としては些か払い過ぎな気もするが。

「あら。アナタは私のbrainを利用したいんでしょう? そのためにはInputが必要だと思うわよ」

アニカたちを利用しようとしている茶子の思惑など見抜いといるぞと告げると同時に、自らそれを利用してきた。
恐るべき機転のよさ。それこそが、アニカが茶子にとって有用であるという証明である。
互いの利害は一致した以上、話さざる負えない。

「……わかったわ。けど、ここから先は、哉くんは聞かない方がいいかもね」

そう言って、警告するように哉太に視線を移す。

「どういう意味だ……?」
「哉くんが今の学校を卒業してどうするつもりかは知らないけど。
 もし、この村に戻って生きていくつもりなら、知らない方がいい事実もあるって事よ」
「聞かせてくれ」

哉太は迷うことなく即答した。
そもそも迷う余地などない。

「茶子姉が何を抱えているのか、爺さんがどうしてああなったのか。俺は知りたい、知らなくちゃダメなんだ!」

強い決意をもってそう宣言する。
もはや彼方にとってこの事件は巻き込まれただけの他人事ではない。
祖父を狂わせ、姉弟子を悩ます何かがあるのなら知る必要がある。
その熱意に押し負け、茶子は諦めたように少しだけ目を伏せた。

「………わかった。できれば、哉くんには知らずに居てほしかったんだけど」

姉弟弟子の間で話はまとまったようだが、傍からそのやり取りを診ていたアニカは今のやり取りに違和感を覚えていた。
先ほどと同じ、何か小さな、喉に小骨が引っ掛かったような小さな違和感。
それが何なのか掴み切れないが、今のやり取りは何かがおかしかった。

「場所もちょうどいいし、少し移動しましょう。説明はそこでするわ」

だが、それを追求する間もなく、茶子が森林から山中へと移動して行った。
アニカたちもそれを追って、けもの道を歩き始めた。


茶子に案内されてアニカたちがたどり着いたのは山腹にある『穴』の前だった。

繁茂する山林の奥深く、蔦が絡みく古い木々の隙間にその穴はあった。
草木がその周囲を避けているかのようにぽっかりと穴が開いており、まるで木々たちがそこに在る何かを拒んでいるようである。

浮かび上がってきた入り口には岩が無造作に積み上げられており、その奥には暗がりが覗いている。
岩肌には青みがかった苔や、埃っぽい土がこびりついており、積み重ねられた時の流れを感じさせた。

その入口は黒黄色ロープによって封じられており。
ロープには掠れた文字で「立ち入り禁止」と書かれた朽ち果てた木板が吊り下げられている。

朽ち果てているがその横穴は明らかに人工物である。
少なくとも動物の巣や、自然と出来たただの横穴という事はなさそうだ。
不気味な沈黙がその中から漂ってきて、森の中に立ち込めている自然の物とは対照的に、何か異次元的なものを予感させる。

「廃炭鉱……?」

その寂れた入り口を見つめながら、アニカが疑問を漏らした。
山中にある横穴にアニカはまず炭鉱を想像した。
だが、この周囲の山で鉱物が取れるなどと言う話は聞いたことがない。

「さあ、入りましょう」

茶子が異世界への案内人の様に、寂れた雰囲気が漂う洞窟の前に立つ。
立ち入り禁止のロープを上に押しのけ、深い暗がりが広がっている洞窟の中に足を踏み入れた。
無邪気にリンがそれに続き、哉太も大して躊躇うことなく洞窟へと入って行った。

一人取り残されたアニカは闇の先を睨み付ける。
この先に、どのような秘密が待ち受けているのだろうか。
謎が待っているのならば、踏み込むのが探偵だ。
アニカは闇に向かって足を踏み入れた。


「うわぁ、ひっろぉぃい…………っ!!」

ただっぴろい空間に少女の声がこだまする。
広い空間があれば駆け回らずにいられないのは犬と子供の本能なのか。
目の前に広がる空間に向かってリンはパタパタと走り始めた。

「あんまり奥の方に行かないようにねぇーっ!」
「はーい!!」

互いの大声が反響する。
炭鉱のような入り口を進んだ先にあったのは何もない空間だった。
位置としては神社の真下辺りだろうか。
入り口からの僅かな光源しかないはずなのに、洞窟内は妙に明るい。

茶子によって案内されたこの謎の空間に驚いているのはアニカだけだ。
事態をよくわかっておらず無邪気に喜んでいるリンはともかく、哉太も当たり前のように受け入れている。

「カナタ。ここは何なの…………?」
「何って言われても、大空洞だけど?」

戸惑うアニカとは対照的に、哉太はあっさりと答える。
ここは村の子供たちなら誰でも知ってる定番の遊び場だ。
立ち入り禁止にされているが、悪ガキたちはそんなルールを守らない。
かく言う哉太も圭介たちと忍び込みよく遊んだものである。

「What! そんな物があるなんておかしいわ!」

だが、村の人間にとっては当たり前でも、外の人間から見れば異常な空間だった。
そこに在ったのは炭鉱でもなんでなく、巨大なアイスクリームディッシャーで切り抜かれたような空洞だけが広がっている。
下手なドームよりも広い、明らかに自然にできた空間ではない。
だが、かと言って何か目的をもって作られた空間にも見えない。

「…………わざわざ連れてきたという事は、アナタはここの正体を知っているのよね、Ms.チャコ?」

要領を得ない哉太から茶子へと質問の矛先を変える。
茶子は大空洞の奥へと一歩踏み出し、アニカたちを振り返る。
ぽっかりと切り取られたような空間を背にして、その空間自体を示すように自由な右手を広げた。

「ここが――――第二実験棟跡よ」
「第二実験棟?」
「そう。戦時下に行われていた旧陸軍の秘密実験場よ」

不穏な響きに哉太が眉を顰める。

「hang on! あなたはそんな話をどこで知ったの?」

アニカが声を荒げる。
探偵は情報そのものではなく、それをどうやって得たのかと言う背景を問うた。
研究所の情報を聞けると思っていたのに、まさか旧陸軍の情報が飛び出してくるとは思いもしなかった。

「――――――ヤマオリ・レポート」

そして、その名を告げる。

「…………確か、爺ちゃんに対してもそんな事を言ってた」

罵詈雑言のように向けられた言葉の中にそんな単語が含まれていたことを思い出す。
そして、こう言っていたはずだ。
そのレポートは未来人類発展研究所に保管されている、と。

「協力者の報酬として、アナタはそのreportを見たという事ね」
「ええ。実験の詳細データに関しては長い月日で紛失したのか、あるいは何者かによって焚書にされたのか、存在しなかった。
 けれど、旧陸軍軍医中将、山折軍丞が自ら残した報告書だけは別の所に保管され残存していた」
「山折?」

登場した山折の名。
この村が関する名前にして、この村を収める村長の名字である。

「そ。圭ちゃんのひいひいお爺ちゃんね」
「wait a minute! 軍医中将と言えば軍医のtopよ。そんな人間が報告書を手ずから残した?」

将官は軍司令部で報告書を受け取る立場である。
ましてや戦時中の将官は殿上人と言っても過言ではない。
現場に赴き、自ら報告書を認めるなど、そうあることではないだろう。

「元々この土地の権力者だった軍医中将が、自分の故郷を実験場に提供したってわけ。
 山によって外界から隔離されたこの村は秘密の実験をするのにうってつけな環境だった。
 そして地元住民の協力を取り付けるのに軍医中将が直接指揮を執るのは必須だった。
 山折軍丞としても地元を差し出している以上失敗はできない。直接赴いたとしてもおかしくはないでしょう」

報告書でも読む様に淡々と続ける姉弟子を哉太が制止する。

「待ってくれ茶子姉! その言い方だと……村が総出でその研究に協力していたように聞こえる」
「そう言ってるのよ哉くん。この実験に関しては村全体が共犯者だった」
「そんな…………いや、けど、そんな話聞いたことがないぞ」

この村で生まれ育った哉太ですらそんな話は一度も聞いたことがない。
村全体が関わっていたのならばそんなことはありえないはずだ。
その疑問に答えたのは茶子ではなくアニカだった。

「Naturally.80年近く前の話なんだからカナタが知らなくても無理はないわ。
 ちょうど当時を知る人間がいなくなるcycleでしょうしね」

実験があったのは第二次大戦中、80年近くも前の話である。
村人全員が口を噤めば知る者が鬼籍に入っていなくなる時期だ。
それにしたって決して口を割らない一枚岩の結束がなければ不可能なことではあるが。

「ともかく。backgroundは理解したわ。それで、ここで具体的に何が行われていたの?」

切り取られた様な不気味な空間。
こんなところでどのような実験が行われていたというのか。

「この研究棟では異世界について研究されていた、らしいわよ」
「異世界?」
「そ。戦時中の物資不足を解消するための、新たな土壌を開拓するためと言う名目らしいわ」

あまりにも突飛な話が飛び出してきた。
だが、あくまでレポートを読み上げる淡白さで茶子が説明を続ける。

「ここでは異世界に繋がる次元の壁、異界を繋ぐ門を開く実験が行われていた。だけど」
「…………だけど?」
「実験中に起きた事故によって実験棟ごと消滅した。第一実験棟から出た破棄物と一緒にね」
「つまり、その事故のimpactで出来たのが、この大空洞という事?」

空間ごと刳り貫かれたような巨大な洞。
異世界に繋がる次元の扉を研究していた研究棟の実験事故。
異次元に飲まれたとでもいうのだろうか。

「そう。それ以来この大空洞付近の次元が特定の条件下において不安定になることがあるようになったらしいわね。
 人や物が消える『神隠し』が起きたり、逆に向こうからの『漂流物』が現れたりね」

人が異世界に飲まれる。
あるいは向こう側の生き物が現れる事もあったのかもしれない。

「そう言や聞いたことがある。圭ちゃんの叔父さんが昔『神隠し』にあったって…………!」

哉太が思い出したようにつぶやく。
哉太たちが生まれるよりはるか前の事件だが、村長の弟が神隠しにあって消えたと言う話は圭介から聞いたことがある。

「ambilibabo.信じがたい話ね。あまりにも常識から外れすぎている」
「同感ね。このレポートを読んだ当初は戦時の狂った軍部の妄想だと思ってたわ」

茶子だってレポートに書かれていた全てが真実であるとは思っていなかった。
狂った軍部がそういう実験を行っていたことが事実だったとしても、実験内容に関しては眉唾だ。
だが、異能などと言う超常的な力が溢れる今となっては、異世界の一つや二つ程度、あり得ないと否定することもできなくなってしまった。

「ついでに言えば、この仕組みを利用して商売を始めたのが蛇茨の爺様。
 実験で出た廃棄物の処理を任されていた蛇茨家の当主がどういう経緯だったかまでは知らないけれどその偶発的な条件を知った。
 そして、それを死体や廃棄物の処理に利用し始めたの」
「…………マジかよ」

哉太からすれば蛇茨の一族も子供の頃からする地元の良き隣人だ。
そんな人間が非合法な死体の処理をしていただなんて、覚悟をしていたが次々と明かされる事実にくらくらしてきた。

「そんなことまでreportに書かれていたの?」
「いんゃ。この辺は蛇茨のお嬢から直接聞いたのよ」

闇を知るための情報源の一つ。
情報を得るために、前当主の急死により代替わりしたタイミングから蛇茨の現当主と交流を重ねて仲を深めてきた。

彼女がこの仕事を辞めたがっていたというのも大きいだろう。
『神隠し』の具体的な条件までは聞き出せなかったが、蛇茨家にとっては絶対に漏らしてはならない秘中の秘であるこの秘密を洩らした。

「それで、『マルタ実験』ってのは何なんだ? その異世界の研究の事なのか?」

哉太が訪ねる。
あの時、茶子が祖父に向けて告げた言葉。
祖父の動揺を誘った、歪みの原因と思しきキーワード。

「それは違うわね。こっちじゃなく今でいう所の診療所の地下、第一実験棟で行われていた実験の通称よ」
「that means.731部隊のようなことが、この村で行われていたという事かしら?」
「ええ。そういう事よ」

明かされた事実にアニカが僅かに顔を青くした。
だが、一人ついていけていない哉太は一人首をかしげる。

「731部隊って?」

哉太が問いを投げる。
その問いに、アニカと茶子が表情を険しくした。
無知を責めると言うよりは、説明を躊躇っているような顔である。

「……731部隊というのは、戦争中に日本が秘密裏にoperationしてた部隊で、細菌兵器の研究・開発機関の事よ」
「秘密部隊に細菌兵器…………」

アニカの説明に現状と重なる単語が出てきた。
その先を茶子が引き継ぐ。

「マルタとは731部隊における人体実験の実験体を示す隠語なの」
「なっ…………!?」

哉太が言葉を失う。
つまり、この地で行われていたマルタ実験とは人体実験の事を示しているという事だ。
731部隊ですらこのような実験は国内で行うことはできないと海外を拠点としていた。
もし仮に本当に国内で行われていたとするのなら、それ以上の厄ネタだ。

「So? 第一実験棟では何を研究していたの?」

投げかけられた問いに、茶子は答える。
人体実験まで行い何を研究していたのか。

「第一実験棟で行われていたのはズバリ、『不死の兵隊』の研究」
「『不死の兵隊』?」
「名目は言うまでもなく大国の物量に対抗するための兵力の確保。
 死なない兵士をテーマに死者の蘇生や不老不死を研究していたらしいわね。
 生体再生の研究のために意図的な傷害を繰り返したり、当時としては最先端の遺伝子改変なんかも試みられていたそうよ。
 後は集団疎開児童の脳みそをケーキ見たいに解剖したり、新兵の死体なんかも使って死んでも動くゾンビのような兵隊を作ろうとしたとか」

聞くだけで気分の悪くなってくる内容だ。
だが、ゾンビと言うのはまたしても現状との奇妙な符合である。

もしそんな非人道的な行いに村中総出で協力していたとしたらならば、歪みと断ずるのも理解できる。
ましてや藤次郎からすれば、祖父母世代、下手をすれば自分の親が関わっていた可能性すらあるのだ。
むしろ高潔であるほど許し難い事実であったのかもしれない。

「けど……そんな出来もしない非人道的な実験に村全体が協力していただなんて」
「非科学(occult)や実現不能な夢物語(delusion)に奔るのは戦争末期にありがちな狂気の産物ね」

実現不能な妄執に多くの命を犠牲する。
それこそが悲惨な戦争の一端である。

「出来もしない? 本当にそうかしら?」

だが、これを否定する声があった。

「どういう意味かしら?」
「レポートの最後にはこう書かれていたわ」

『一九四五 〇八 〇六 ■ ガ 降臨 サレタリ 。 ■■ 亜紀彦 軍曹 ノ 蘇生 ニ 成功 セリ』

「何分古い資料だからね、一部は掠れて読めなかったけれど、確かにそう書いてあったわ」

1945年の8月6日。
日本人なら誰でも知っている日だ。
広島市への原子爆弾が投下された日である。

「成功したってのはどういう事だ?」

それが真実だとするならば不死の兵士が生まれたと言うことになる。

「さあ? 少なくともレポートに以後の記録はないわ。その後すぐに終戦しちゃって研究も止まっちゃったんでしょう」

敗戦を決定付ける被害と同時に生まれた研究成果は活用されることはなかった、と言う事だろうか。

「だったら研究所はその研究を引き継いだって事か?」

随分と遠回りしたが、ようやく研究所に話が繋がった。
ゾンビに、異能と言う力。
この村の現状こそ不死の兵隊が軍靴を鳴らす地獄そのものではないのか。

「異能やその類のもの関するreportはなかったの?」
「少なくとも私の確認したレポートの中にはなかったわね」

実験詳細は焚書にされているため不明だが。
少なくともレポートに残された実験の概要には書かれていなかった。
その点だけは今回の事件と異なるようだ。

「after all.研究所は何をしようとしているの?」

山折部隊の研究には戦時という理由があった。
では未来人類発展研究所の研究は何のために行われているのか?

「お題目だけは聞かされているわ。曰く――――――世界を救う新薬の研究だそうよ」

世界を救う。
思いのほか大きなお題目が飛び出してきた。
組織が掲げるお題目などそんなものなのかもしれないが。

「世界を救う? どうやって?」
「悪いけど、それは知らない。これは本当。
 具体的にどういう研究が行われていたかまでは私の立場では把握できなかった」

茶子は立ち位置としては末端も末端。
どれだけ探りを入れようとも、研究所の最奥に触れるにはまだまだ信頼が足りなかった。

「研究を引き継いでるってんなら不死の兵隊とかじゃないのか?」
「That's not right.おそらくそれは違うわ」

哉太の意見をアニカが否定する。

「まず第一にMs.チャコの報告から異能らしきinformationがどこにも出ていない。異能を持つ兵士を作ろうというのならばこれはあり得ない」

現時点のこのバイオハザードにおける最大の特異点。
感染者が目覚める異能という力。
戦力しての兵隊作成を目的とした研究でこれに触れないという事はあり得ない。
それはつまり当時の研究では異能は関わりのない項目であったという証左である。

「第二にZombieの扱いの違い。先の研究では死したまま動くZombieは成功例、対して今のVHではZombieのようになるのはウイルスに適応できなかった失敗例よ。まるっきり逆だわ」

目指す先が異なっている。
何より成功例たる正常感染者たちは殺されれば死ぬ。
不死者ではない。

「Above all.その研究の内容まで引き継いでいるのなら、アナタに簡単に情報を漏らすはずがない」

過去にこの村で行われていた非人道的な実験の情報。
村にとっては禁忌とされる情報でも、研究所にとってはどうでもいいからこそ簡単に開示した。
研究所にとって重要な研究内容に関しては秘匿を徹底していることからその差は明らかだ。

「けど、まるっきりirrelevantだとも思わない」

わざわざこの村を選んで研究をしているからには何か意味があるはずだ。
その意味こそがこの事件を解決するための重要なファクターになるのかもしれない。

「ともかく、私から話せるこの村と研究所の繋がりはこんな所よ」

導き出される結論はどうあれ、渡せる材料は渡した。
どう料理するかアニカ次第だ。

「waited! アナタにはまだ話していないことがあるんじゃないの?」

だが、話を終えようとした茶子に待ったがかかる。
藤次郎が凶行に至った理由の一端は理解できた。
だが、その藤次郎に茶子が恨みをぶつけて殺害した理由は明かされていない。

「ええ、勿論あるわ。けど勘違いしないで。
 私はあくまで包帯の対価として、この事態の解決のために必要な情報を提供しただけ。それ以上のことは話すつもりもないわ」

あくまで研究所の引き起こしたバイオハザード解決のために研究所の情報提供を行っただけである。
個人的な因縁や、その他に知り得た村の暗部については元より語るつもりはない。

「exactly.私に対してはそうでしょうね。
 けど、カナタに対しては説明義務があるんじゃない?」

どういう経緯があるにせよ茶子は哉太の目の前で祖父を殺した。
身内の少年に対してそうしなければならなかった理由を説明する義務がある。

「村人全員殺そうなんてイカれたジジイよ? あの状況なら誰だってそうするわ」
「そうかしら? アナタには個人的なresentmentがあったように見えたけど?」

必要に迫られた正当防衛と呼ぶには藤次郎に見せた憎悪は行き過ぎている。
あれは明確な私怨によるものだ。

「否定しないのね」
「言ったでしょう? 話すつもりは、ない」

にべもない態度の茶子に、アニカが眉を歪める。
二人の間に火花を散らすような剣呑な空気が漂い始めた。

「おい、二人とも、いい加減に……」

当事者を置いてヒートアップする二人を哉太が制止しようとする。
だが、それよりも早く、二人の間に割って入る小さな影があった。
大空洞を駆け回っていたリンである。
雰囲気に敏感なリンが、険悪な雰囲気を敏感に察して割り込んできたようだ。

「チャコおねえちゃんを、イジメちゃダメだよ?」

大きく見開かれた漆黒の瞳がアニカを見つめる。
自滅を誘う愛。
解除法は心得ているが、それでもなお油断すれば自分が自分でいられなくなる恐るべき異能。

「いいんだよリンちゃん。そんなことしなくて」
「うん。分かった!」

柔らかく肩に手を置き茶子がリンを制止する。
それでリンは大人しくなったが、その無垢な脅威は健在である。

敵意も悪意もない愛らしさと言う凶器。
少女は庇護すべき対象であり、排除のしようもない。
ある意味で最強の護衛だ。

ともあれ、リンの介入によって熱くなっていた場の雰囲気もいくらか冷めたようだ。
改めて哉太が仕切りなおす。

「俺からも頼むよアニカ、これ以上茶子姉を責めないでやってくれ」
「アナタのgrandfatherの事よ? 本当にいいの?」
「ああ。茶子姉が話したくないんならいいさ。無理に聞き出したいわけじゃない」

本音を言えば姉弟子が祖父を何故あそこまで憎悪するのか、その理由は知りたい。
だが、知る事が姉弟子を傷つけるのならば、そこまでして知りたいとは思わない。

だが、哉太はそれでよくとも、アニカは納得いかなかった。
あれ程の事があってあくまで茶子の肩を持つ哉太の態度もお気に召さないようである。
その苛立ちをぶつけるように、改めて茶子に向かって釘を刺すように踏み込んだ。

「これだけは言っておくわ。コチラとしてもこのZombie panicを解決するためならいくらでも協力する。
 けれど、私もカナタもアナタの個人的なrevangeに付き合うつもりはないわよ」
「あら。どうしてアナタが哉くんの方針まで決めるかしら?」
「パートナーだからよ」

当然のように言い切った。
当てつけの様な物言いに、茶子がピクリと眉を動かす。
そして感情を露にするように僅かに語気を荒くする。

「それならこれはこの村で生まれ育った村人同士の問題よ。
 これは個人的な復讐なんかじゃない。腐りきった汚泥の排除は、この村を良くするために必要な事なのよ……!」

この村は根本から腐っている。
根腐れした苗を取り換えるのは簡単ではない。
村に蔓延る悪鬼たちの駆除は村の浄化には必要な事だ。

時間をかけて一つずつ浄化する長期的な計画だった。
だが、このバイオハザードによって計画は随分と前倒しになってしまったが、膿を出すにはいい機会である。

八柳藤次郎、木更津組、朝景礼治。
今現在の村を狂わせるこの3つだけは何としても潰す。
それが村の浄化を目指す茶子の為すべきことだ。

「この村を、良くする…………?」

最初から言っていた茶子の目的。
それをアニカが呆然とした小さな声で反復する。

「no way……アナタはこの村を、これからregenerationしようと思っているの?」
「? そう言ってるでしょう?」

不思議そうな顔で茶子が首を傾げた。
先ほどから何度も言っている事だ、今更改めて確認するようなことではない。
だが、その反応にアニカが言葉を詰まらせる。

先ほどから感じていた違和感の正体に気づいたのだ。
茶子の語る村の再生論は全て『現在進行形』だった。

ウイルスが蔓延し、ゾンビとなった村人は大量に殺され、特殊部隊に攻め込まれている。
村の惨状はもはや復興などと言う次元ではない。
この村は誰がどう見ても終わってる。

状況のよくわかっていない災害が起きた直後ならともかく、すでにVHの発生から半日が経とうとしている。
いい加減、現実も見えてきたころだろう。
この惨状を見てなお、取り戻せると信じているのなら、それは希望ではなく狂気や妄執の類だ。

ましてや虎尾茶子は現実が見えていない素人とは違う。
多くの闇を見てきた玄人のはずだ。
そんな彼女がその程度の事を分からないはずがない。

見えていないのではなく見ていないのだ。
村がなくなるという現実を。
彼女が現実を受け入れられないのは、村に対する愛憎ゆえだ。

村を良くしたいと言う思いと、この村を滅ぼしてしまいたいと言う二律背反。
一方だけでも狂おしいまでの情念が彼女の中に躁鬱のように渦巻いていた。

そのどちらも山折村という軸がなくなったら、成り立たない。
愛のみで子供たちに未来を見た剛一郎とも違う。
憎のみで罪科を地に求め全てを殺しつくそうとした藤次郎とも違う。
彼女の執着は村そのものにある。

それ故に、山折村がなくなるなど彼女の中ではありえない。あってはならない事である。
VHの発生直後に遠藤と呑気にやっていたのは、そう言った正常性バイアスによるものだ。
彼女にとって山折村とは良しであれ、悪しであれ、そこに在らねばならないのだ。

この村に対する愛憎が虎尾茶子を成す根本だとするのなら、折れてしまえば成り立たなくなる。
だからこそ、茶子は計画が前倒しになったとは考えていても、計画がご破算になったとは考えていない。

「Ms.チャコ。アナタは…………」

アニカの茶子に対する警戒が別の方向に高まっていく。
彼女は既に、正気ではないのではないか?

「どうしたの?」

言葉を詰まらせるアニカに茶子が問う。
その様子はこれまでと変わりない。

「…………No, it's nothing.」

アニカは何も言えなかった。
その事実を突きつけることも、その事実を否定することもできない。
探偵の語彙力をもってしても次の言葉が見つからなかった。

彼女はとっくに壊れている。
それはこのVHで壊れたのではない。
あの怖い家でとっくに少女(アリス)は壊されていたのだ。
そこに山折村という新しい中身を詰めただけ。

「そう。これ以上ないなら追求はここまででいいかしら?」

茶子としても十分すぎるくらいに応じた。
アニカがこれ以上追求出来ないのならばこの話は終わりだ。

「なら、そろそろ出ましょう。長居するような場所でもないわ」

曰く付きの場所だ長居するような場所でもない。
4人は不穏な空気を拭ききれぬまま。
薄暗い大空洞を後にして、外の光が差し込む出口へと歩き始めた。

【A-4/山中大空洞出口付近/一日目・昼】

虎尾 茶子
[状態]:疲労(小)、精神疲労(中)、左肩負傷(再生中)、失血(中・再生中)、山折村への憎悪(極大)、朝景礼治への憎悪(絶大)、八柳哉太への罪悪感(大)
[道具]:ナップザック、長ドス、木刀、マチェット、ジッポライター、医療道具、コンパス、缶詰各種、飲料水、腕時計、八柳藤次郎の刀、スタームルガーレッドホーク(5/6)、44マグナム弾(6/6)、包帯(異能による最大強化)、ガンホルスター
[方針]
基本.協力者を集め、事態を収束させ村を復興させる。
1.有用な人材以外は殺処分前提の措置を取る。
2.天宝寺アニカ、八柳哉太を利用する。
3.リンを保護・監視する。彼女の異能を利用することも考える。
4.未来人類発展研究所の関係者(特に浅野雅)には警戒。
5.朝景礼治は必ず殺す。最低でも死を確認する。
6.さて、これからどこに向かおうか。
7.―――ごめん、哉くん。
[備考]
※自分の異能にはまだ気づいていません。
※未来人類発展研究所関係者です。
※リンの異能及びその対処法を把握しました。
※異能による強化を受けた包帯により肉体が再生しつつあります。

八柳 哉太
[状態]:異能理解済、全身に軽度の裂傷(再生中)、左耳負傷(処置済み・再生中)、失血(中・再生中)、右腕負傷(処置済み・再生中)、肋骨にヒビ(再生中)、
疲労(極大)、精神疲労(極大)、精神的ショック(極大)、悲しみ(極大)、喪失感(大)、無力感(大)、自己嫌悪(大)
[道具]:脇差(異能による強化&怪異/異形特攻・中)、打刀(異能による強化&怪異/異形特攻・中)、双眼鏡
[方針]
基本.生存者を助けつつ、事態解決に動く
1.アニカ達を守る。
2.ゾンビ化した住民はできる限り殺したくない。
3.茶子姉のことを信じたい、けど……。
4.ごめん、うさぎちゃん。
5.爺ちゃん……どうして……。
6.圭ちゃん……。
[備考]
※虎尾茶子が未来人類発展研究所関係者であると確認しました。
※リンの異能及びその対処法を把握しました。

天宝寺 アニカ
[状態]:異能理解済、疲労(大)、精神疲労(大)、精神的ショック(大)、悲しみ(大)、虎尾茶子への疑念(大)、決意
[道具]:殺虫スプレー、スタンガン、八柳哉太のスマートフォン、斜め掛けショルダーバッグ、スケートボード、ラリラリドリンク、ビニールロープ、金田一勝子の遺髪。
[方針]
基本.このZombie panicを解決してみせるわ!
1.Ms.チャコは正気なの?
2.カナタの事が心配だわ。
3.リンとMs.チャコには警戒しないと。
4.私のスマホはどこ?
[備考]
※他の感染者も異能が目覚めたのではないかと考えています。
※虎尾茶子が未来人類発展研究所関係者であると確認しました。
※リンの異能を理解したことにより、彼女の異能による影響を受けなくなりました。
※浅野雑貨店、山折総合診療所、広場裏の森林地帯に違和感を感じました。

【リン】
[状態]:異能理解済、健康、虎尾茶子への依存(極大)、血塗れ
[道具]:エコバッグ、化粧品多数、双眼鏡
[方針]
基本.チャコおねえちゃんのそばにいる。
1.ずっといっしょだよ、チャコおねえちゃん。
2.うそつきおおかみさんなんてだいっきらい。
3.あたらしいおようふくほしいなぁ。
4.リンのじゃまをしないでね、アニカおねえちゃん、カナタおにいちゃん。
[備考]
※VHが発生していることを理解しました。
※天宝寺アニカの指導により異能を使えるようになりました。

093.Monster Hunter 投下順で読む 095.THE LONELY GIRLS
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山折村血風録・窮 虎尾 茶子 「会議を始めましょう」
天宝寺 アニカ
八柳 哉太
リン

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最終更新:2023年10月08日 06:01