(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』を参考にまとめた)
『自由論』(On Liberty)とはジョン・スチュアート・ミルによる自由についての政治学の著作をさす。
概要
1806年にイギリスで生まれたミルは、現実政治について批判する著作を発表しており、『自由論』は当時のヨーロッパ、特にイギリスの政治・社会制度の問題を自由の原理から指摘することを試みたものである。ここで論じられている自由とは国家の権力に対する諸個人の自由であり、これを妨げる権力が正当化される場合は他人に実害を与える場合だけに限定され、それ以外の個人的な行為については必ず保障される。なぜならば、ミルによれば文明が発展するためには個性と多様性、そして天才が保障されなければならない。また当時参政権の拡大をもたらしていた民主主義の政治制度は大衆による多数派の専制をもたらす危険性があり、これをミルは警戒していた。
個人の自由を守る絶対的な原則
個人の自由に干渉することが正当となるのはそれが自衛を目的としている場合だけである
人は誰しも幸福になりたいと願い、そのために利益を追求し行動を起こす。しかし、人間が社会生活を営む以上、個人の発言や行動が他人に影響を及ぼすことは避けられず、必ずどこかで損をする人が現れたり、利益を得られない人が出てくることになる。だがよりよい生活を送るためには利益を上げなければならないのだから、当然人は利益を得るために努力することが必要となる。だからといって利益を独占しようとしたり、故意に他人の活動を妨害してもいいということにはならない。もしこれらを許してしまうと、至る所で争いが起こり、勢力を付けた人たちが社会を支配しようとするだろう。このようなことを起こさないようにするためにも、個人の活動が正当か不当かを判断し、監督する国家が必要となる。その判断基準となるのは「個人の自由に鑑賞することが正当となるのはそれが自衛を目的としている場合だけ」であり、つまり他人の自由の領域を冒さない限りは自由に行動してもよいという原則なのだ。
最終更新:2011年08月20日 18:51