太田ハード ◆IvIoGk3xD6
「どうすればいいんでしょう……」
今にも消えそうな声で天本令泉はそう嘆いた。
今にも消えそうな声で天本令泉はそう嘆いた。
目が覚めたら見知らぬ男と少年が殺され、自身は殺し合いを強要される。
悪夢のような出来事であるが、紛れもない現実なのである。
そして、天本は自分がただの女子高生であることを知っている。
だからこそ何をすればいいのか分からないのだ。
ゆえに膝を抱えて嘆くことしかできない。
悪夢のような出来事であるが、紛れもない現実なのである。
そして、天本は自分がただの女子高生であることを知っている。
だからこそ何をすればいいのか分からないのだ。
ゆえに膝を抱えて嘆くことしかできない。
何十分そうしていたのだろうか、天本は不意に人の気配を感じた。
後ろを振り向くと、そこには鉈を構えた男が自分に向かって来ている。
咄嗟に立ち上がり走り出したはいいが、男との距離はどんどん縮められていく。
頭がこんがらがったまま走り出した者と、スピードに乗った者のどちらが早いかは明白だ。
後ろを振り向くと、そこには鉈を構えた男が自分に向かって来ている。
咄嗟に立ち上がり走り出したはいいが、男との距離はどんどん縮められていく。
頭がこんがらがったまま走り出した者と、スピードに乗った者のどちらが早いかは明白だ。
3分も経たないで天本は男に押し倒され、後は鉈を振り下ろすだけとなっていた。
天本は恐怖で目を開くことができなかった。
そして、自分が死ぬことを悟った。
だからであろうか、今までの記憶が鮮明に頭の中に映し出されていく。
野球部にしてしまった様々な迷惑、祖母の死、そして大事な人に許してもらったあの時のこと……。
天本は自らの死を覚悟したが、一向にその時はこない。
そのことを疑問に感じた時、自分の上にあった人一人分の重さがいつの間にか消えていることに気付いた。
恐る恐る目を開いてみると、そこには一方的に殴られるあの男の姿があった。
天本は恐怖で目を開くことができなかった。
そして、自分が死ぬことを悟った。
だからであろうか、今までの記憶が鮮明に頭の中に映し出されていく。
野球部にしてしまった様々な迷惑、祖母の死、そして大事な人に許してもらったあの時のこと……。
天本は自らの死を覚悟したが、一向にその時はこない。
そのことを疑問に感じた時、自分の上にあった人一人分の重さがいつの間にか消えていることに気付いた。
恐る恐る目を開いてみると、そこには一方的に殴られるあの男の姿があった。
「てめぇ、一体何しようとしてやがったんだ!」
青いマントを羽織った男が叫ぶ。
青いマントを羽織った男が叫ぶ。
「ぶっ、……な…………はな……ち」
一方的に殴られる男--ジャジメント・スーパー遠前町支店、支店長太田洋将は言葉も発することさえ出来なかった。
一方的に殴られる男--ジャジメント・スーパー遠前町支店、支店長太田洋将は言葉も発することさえ出来なかった。
そして、男が渾身の一撃を加えると、太田は吹っ飛ばされ、崖の下の海へと姿を消した。
「お嬢ちゃん大丈夫かい?」
太田を吹っ飛ばしたことに何の感慨も感じる様子もなく、男は天本に尋ねた。
「あっ、ええと大丈夫……です」
大丈夫と答えてはいるが、天本にはいつもの笑顔はなかった。
「その、あの人は……」
男も天本が何を聞きたいのか理解したらしく、正直に答える。
「おそらく生きちゃいないだろ。この高さだからな」
「そうですよね……」
そこで会話は途切れ、静寂が二人を包んだ。
□
静寂を崩したのは男の方であった。
「で、お嬢ちゃんはどうしたいんだい?」
いきなりの核心を突く質問。先ほどまでの天本だったら答えられなかったであろう。
だが、今の天本は違う。あの死の淵で感じたものは彼女に目的を与えるのに充分だった。
「私はあの人の下に帰りたい。日の出島に帰りたいです!」
これが今の天本に言える全てであった。
太田を吹っ飛ばしたことに何の感慨も感じる様子もなく、男は天本に尋ねた。
「あっ、ええと大丈夫……です」
大丈夫と答えてはいるが、天本にはいつもの笑顔はなかった。
「その、あの人は……」
男も天本が何を聞きたいのか理解したらしく、正直に答える。
「おそらく生きちゃいないだろ。この高さだからな」
「そうですよね……」
そこで会話は途切れ、静寂が二人を包んだ。
□
静寂を崩したのは男の方であった。
「で、お嬢ちゃんはどうしたいんだい?」
いきなりの核心を突く質問。先ほどまでの天本だったら答えられなかったであろう。
だが、今の天本は違う。あの死の淵で感じたものは彼女に目的を与えるのに充分だった。
「私はあの人の下に帰りたい。日の出島に帰りたいです!」
これが今の天本に言える全てであった。
「つまり、自分家に帰りたいってわけか。オレと同じじゃねえか。
どうだい、オレと一緒に来ないか?」
「申し出は嬉しいんですが、私なんかじゃ迷惑じゃないですか?」
「構わねえよ。これでも色々とやってきてるんだ。女の一人どってことない」
「そうですか。じゃあご一緒させてもらいますね。ええと、私は天本令泉です」
天本はここに来て初めての笑顔で答えた。
「俺は椿だ。トラブル解決屋をやってる。よろしくな」
男--椿もまた笑顔で答えた。
どうだい、オレと一緒に来ないか?」
「申し出は嬉しいんですが、私なんかじゃ迷惑じゃないですか?」
「構わねえよ。これでも色々とやってきてるんだ。女の一人どってことない」
「そうですか。じゃあご一緒させてもらいますね。ええと、私は天本令泉です」
天本はここに来て初めての笑顔で答えた。
「俺は椿だ。トラブル解決屋をやってる。よろしくな」
男--椿もまた笑顔で答えた。
こうして天本は第一歩を踏み出した。日の出島に帰るための第一歩を。
【B-1/一日目/深夜】
【天本玲泉@パワプロクンポケット4表】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]支給品一式(不明支給品1~3)
[思考]
基本:日の出島に帰る
1:人を殺したくない
2:椿についていく
【天本玲泉@パワプロクンポケット4表】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]支給品一式(不明支給品1~3)
[思考]
基本:日の出島に帰る
1:人を殺したくない
2:椿についていく
時は小一時間ほど遡る。
太田もまた一人膝を抱えていた。
「ああ、私はどうすればいいんだ……」
自分の人生に復讐を果たす正にその前日だった。
そのため、急にこのような場に連れられても何をすべきなのか分からない。
太田もまた一人膝を抱えていた。
「ああ、私はどうすればいいんだ……」
自分の人生に復讐を果たす正にその前日だった。
そのため、急にこのような場に連れられても何をすべきなのか分からない。
そんな折りだった、背後に人の気配を感じたのは。
振り返って目に入ったのは自分のよく知る男--ブギウギ商店街潰しの協力者、椿であった。
振り返って目に入ったのは自分のよく知る男--ブギウギ商店街潰しの協力者、椿であった。
「何だ、人の気配がすると思ったらアンタか。ちょうどいい、どうだいオレと協力しないか?」
「えっ、いきなりどういうことだ?」
「言った通りの意味さ。他人を殺すにせよ、亀田打倒を目指すにせよ、
このゲームは複数人で組んだ方が色々と有利だ。だからこその同盟さ」
「なるほど、確かに一人より二人のほうが何かと好都合だな。よし、その話しに乗ろうじゃないか」
「へへ、話しが早くて助かるぜ。それじゃ行くとするか」
「えっ、いきなりどういうことだ?」
「言った通りの意味さ。他人を殺すにせよ、亀田打倒を目指すにせよ、
このゲームは複数人で組んだ方が色々と有利だ。だからこその同盟さ」
「なるほど、確かに一人より二人のほうが何かと好都合だな。よし、その話しに乗ろうじゃないか」
「へへ、話しが早くて助かるぜ。それじゃ行くとするか」
こうして、二人は同盟を結んだ。
そして、その数分後に一人の少女--天本を見つけることとなる
「なあ、椿、どうする?」
木の陰に隠れながら太田が尋ねた。
「そうだな……。店長、あの嬢ちゃんを襲えるか?」
「襲えないこともないが、……その……」
太田が口を濁らせるが、椿にはその理由が分かっていた。
「殺せるかは分からないってことか。しょうがねえなぁ、止めはオレが刺してやるよ。
じゃあ、店長、早速やってこい」
椿が太田に襲撃を促すが、その前に太田は一つの疑問を口にした。
「お前が止めを刺すんだったら、私は行く必要ないんじゃないか?」
「普通の状況だったらな。考えてもみろ、死の淵に立たされた人間は何しでかすか分からないんだぞ。
だからこそ、万全を期すんだよ。いいか、まずアンタが嬢ちゃんを追い立てる。
そうすれば、嬢ちゃんの反応は二つだ。逃げるか戦うかだ。逃げた時はオレが先周りをしとけばいい。
戦う時はさらに簡単だ。すぐにオレが飛び出せば2対1だ。負ける訳がねえ。わかったか?」
「なるほど、二段構えの作戦というわけだな。それじゃあ、後は頼むぞ」
そして、その数分後に一人の少女--天本を見つけることとなる
「なあ、椿、どうする?」
木の陰に隠れながら太田が尋ねた。
「そうだな……。店長、あの嬢ちゃんを襲えるか?」
「襲えないこともないが、……その……」
太田が口を濁らせるが、椿にはその理由が分かっていた。
「殺せるかは分からないってことか。しょうがねえなぁ、止めはオレが刺してやるよ。
じゃあ、店長、早速やってこい」
椿が太田に襲撃を促すが、その前に太田は一つの疑問を口にした。
「お前が止めを刺すんだったら、私は行く必要ないんじゃないか?」
「普通の状況だったらな。考えてもみろ、死の淵に立たされた人間は何しでかすか分からないんだぞ。
だからこそ、万全を期すんだよ。いいか、まずアンタが嬢ちゃんを追い立てる。
そうすれば、嬢ちゃんの反応は二つだ。逃げるか戦うかだ。逃げた時はオレが先周りをしとけばいい。
戦う時はさらに簡単だ。すぐにオレが飛び出せば2対1だ。負ける訳がねえ。わかったか?」
「なるほど、二段構えの作戦というわけだな。それじゃあ、後は頼むぞ」
太田は力強く天本へと駆けていった。
椿は態度は悪いがその実力は太田もよく知っている。
その椿が自分のバックにいるのだ。気が大きくならないわけがない。
椿は態度は悪いがその実力は太田もよく知っている。
その椿が自分のバックにいるのだ。気が大きくならないわけがない。
天本を押し倒すのには5分とかからなかった。
そこで太田は自分の仕事を果たしたことに安堵する。
後は椿に任すだけ、そう思った時ちょうど良く椿が姿を現した。
椿は焦る様子もなく太田へと近づいていき、それが太田をさらに安心させた。
そこで太田は自分の仕事を果たしたことに安堵する。
後は椿に任すだけ、そう思った時ちょうど良く椿が姿を現した。
椿は焦る様子もなく太田へと近づいていき、それが太田をさらに安心させた。
そのために気が緩んだのだろう、太田は目を一瞬閉じ、息を吐いた。
正にその時だった。太田の身体が宙に浮き、地面へと投げ出される。
それが椿による攻撃のためだと気付くにはしばらくの時間が必要だった。
犯人が椿だと気付いた時には、既に頼みの綱である鉈も手から落ちていた。
それが椿による攻撃のためだと気付くにはしばらくの時間が必要だった。
犯人が椿だと気付いた時には、既に頼みの綱である鉈も手から落ちていた。
太田には訳が分からなかった。
(どういうことだ!?話しがちがうじゃないか!)
そう叫びたくても、椿の苛烈な攻撃はそれを許さない。
(どういうことだ!?話しがちがうじゃないか!)
そう叫びたくても、椿の苛烈な攻撃はそれを許さない。
そして、椿の渾身の一撃が繰り出されると、太田の身体は再び空中に投げ出され、
そのまま崖の下の海へと姿を消した。
そのまま崖の下の海へと姿を消した。
□
「俺は椿だ。トラブル解決屋をやってる。よろしくな」
このセリフを言った時、椿は大笑いしたくて堪らなかった。
なにせ、何から何まで自分の計画通りに事が進んだからである。
「俺は椿だ。トラブル解決屋をやってる。よろしくな」
このセリフを言った時、椿は大笑いしたくて堪らなかった。
なにせ、何から何まで自分の計画通りに事が進んだからである。
まず最初の太田との同盟。
これの目的は太田に語ったものである。
これの目的は太田に語ったものである。
では、なぜ太田を裏切り、天本を助けたのか。
理由は簡単である。
太田といるより、『自分が助けた』天本といる方がメリットがあると踏んだからだ。
このような場で他人からの信用は得難い。
だが、この信用というものは得難いからこそ利用価値は大きいのだ。
それに、椿は太田が無能であることをよく理解している。
遅かれ早かれ、太田をどこかで切るつもりでいた。
そこで、椿は太田を悪に仕立て上げることで、天本の信用を得ることにしたのだ。
理由は簡単である。
太田といるより、『自分が助けた』天本といる方がメリットがあると踏んだからだ。
このような場で他人からの信用は得難い。
だが、この信用というものは得難いからこそ利用価値は大きいのだ。
それに、椿は太田が無能であることをよく理解している。
遅かれ早かれ、太田をどこかで切るつもりでいた。
そこで、椿は太田を悪に仕立て上げることで、天本の信用を得ることにしたのだ。
作戦は見事に的中した。
天本は自分を信用し、さらに彼女が誰かに会った時、『椿に危ないところを助けてもらった』と言ってもらえば他人の信用を得るのに役立つだろう。
天本は自分を信用し、さらに彼女が誰かに会った時、『椿に危ないところを助けてもらった』と言ってもらえば他人の信用を得るのに役立つだろう。
「店長、感謝してるぜ。つっても、もう聞こえねえか」
落ちていた鉈を回収しながら椿はつぶやいた。
「何か言いましたか?」
「へへ、いや何も」
落ちていた鉈を回収しながら椿はつぶやいた。
「何か言いましたか?」
「へへ、いや何も」
楽して手段を選ばず安全に勝つ、それが椿のモットー。
【太田洋将@パワプロクンポケット9表 死亡】
【残り55人】
【残り55人】
【B-1/一日目/深夜】
【椿@パワプロクンポケット9表】
[状態]健康
[装備]鉈
[道具]支給品一式×2(不明支給品1~5)
[思考]
基本:生き残るのに手段は選ばない
1:まずは様子見
2:天本を利用してゲームを有利に進める
【椿@パワプロクンポケット9表】
[状態]健康
[装備]鉈
[道具]支給品一式×2(不明支給品1~5)
[思考]
基本:生き残るのに手段は選ばない
1:まずは様子見
2:天本を利用してゲームを有利に進める
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GAME START | 天本玲泉 | 038:どうして『彼ら』がそこにいた? |
GAME START | 太田洋将 | GAME OVER |
GAME START | 椿 | 038:どうして『彼ら』がそこにいた? |