真銘詠唱(エヴァントリガー)

 第五真律譜からの派生術式。ある一人の魔術師が聖霊器を行使する為に編み上げた術理。
 元々は現在の理を全時空に流出させている第三始徒の法よりも前の理を再現したものとされる。
 聖霊器を行使する際に自ら定めた詠唱を用いる事で、その力を起動させることが可能。
 尚、聖霊器を行使する為に編まれた術式とはいえ、応用力さえあるなら別の術理として応用することも不可能ではない。

 聖霊器を扱う為の術式であり、その運用には魂が抱える想念、歪みを必要とする。
 蓄積された想念、歪みが不足している場合は、聖霊器を行使することすら出来ないが、
 怨霊や想念などの歪みを吸収し集めることで、絶えずその歪みを生命エネルギーへと変換し、聖霊器の契約者を絶えず最良の状態に維持する。
 仮に肉体や聖霊器の欠損が起きたとしてもその歪みを変換する事で、即座に再生させることが可能。
 その為、聖霊器の契約者を滅ぼすのなら、肉体或いは聖霊器を跡形も残さず破壊するか、或いは蓄積した歪みや想念を完全に使い切らせる必要がある。

 また、歪みや想念を蓄積させ続けることで契約者の身体能力や防御力は格段に向上し、特に防御力に関しては蓄積した歪みや想念の量に比例して強力な霊的装甲を纏うため、生半可な攻撃では簡単に傷つくことも無くなる。
 その為、聖霊器の契約者にまともなダメージを与えるとすれば、同格以上の武装ないし攻撃手段が必須となる。

 エヴァントリガーには以下4つの位階が存在し、聖霊器使いの経験や魂の質量、聖霊器に蓄積した想念によってランクアップする。
 ランクアップすればするほど聖霊器の能力、出力や契約者の身体能力、防御装甲が格段に強化される為、
 基本的に聖霊器使い同士の戦いに於いては、余程の搦め手を用いない限りは下位位階の者が上位位階の者に勝つことはまず無い。

 エヴァントリガー自体の習得に関しては聖霊器にまつわる魔術書に大概は載っている為に、会得する事自体は決して難しくはない。
 (尤も、エヴァントリガーの適正が無い場合はどうしようもないが)
 しかし、真槍騎士団が扱う本家本元のエヴァントリガーはそこらの魔術書に記載されているような真銘詠唱術式とは一線を画しており、通常のエヴァントリガーでは彼等を突破する事は限りなく不可能に近いとされる。

 一人の聖霊器使いが真銘詠唱によって契約出来る聖霊器は基本一つのみ。
 それは人間が聖霊器使いになる場合は、一つの聖霊器と契約を結ぶだけで霊的キャパシティの殆どを圧迫する為に二つ以上の聖霊器を制御し切れない為。
 超常のキャパシティを持つ者であっても、契約した聖霊器同士の相性次第でその力が相互干渉を起こして暴発する危険性が高い。
 その為、安全を考慮するならば二つ以上の聖霊器を行使するのは愚策と言える。

 逆に契約段階で複数名の真銘詠唱術者が同時に一つの聖霊器と契約する事は可能。
 しかし、聖霊器の力を分割して行使する事になる為に、真銘詠唱の出力は『1/契約人数』を下回る出力に落ちる。
 また、複数名の契約では契約した者達の渇望が衝突を起こしてしまい、互いにその力を相殺してしまう為に、第三位階への到達は絶望的となる。
 (仮に第三位階に到達する可能性があるとすれば、複数名の術者の抱える渇望が寸分違わず同じ物である場合のみ)
 その為、『複数名が限定的な異能を行使出来る』以外での複数名契約のメリットは基本的に無いと言える。
 ただし、複数名が真銘詠唱を行使する事を前提とした聖霊器の存在も確認されている為、必ずしも聖霊器の複数人契約のデメリットが適用されるとは限らない。

真銘詠唱位階


  • 第一位階
 ドットアクター。活動(Assiah)、八卦とも呼ばれる。
 平常状態。同化した聖霊器の力を限定的に行使する。
 刃物であれば触れた対象を斬る、炎を発生させる性質のものならば発火といった能力が使用可能。
 もっとも、これは一定以上の物理・霊的装甲を纏われた場合、容易に防がれる程度の攻撃力しか持たない。

 この位階では聖霊器を扱いこなせているとは言えない。
 それ故か聖霊器とその使い手の力が安定せず、力や精神の暴走故に自滅する危険性も高い。
 また、上昇する身体能力自体もまだ一応は常人の域であり、十分対処出来る程度のレベルしか持たない。

  • 第二位階
 ラインアクター。形成(Yetzirah)、四象とも。
 武装顕現状態。融合した聖霊器を具現化する。
 その武装形態は所持する聖霊器の性質や魂の方向性、渇望の傾向によって大体は以下の四つに分かれる。

『人器融合タイプ』
 契約者自身と聖霊器が融合状態で一部武装が顕現する。
 身体能力と攻撃力強化に優れる代わりに、聖霊器と同調し過ぎて精神的に極度の興奮状態に陥るが故に理性的な判断が欠如し易く、格下に足をすくわれ易い。
 また、その性質ゆえに他の形態に比べ力の暴走、自滅の危険が有りうる。
 (尚、この弱点は聖霊器使いの精神状態と熟練度次第で克服することは、十分に可能である)

『武装顕現タイプ』
 武装そのものを完全に形にする。
 全体的に隙が無くバランス面で優れるが、逆に言えば突出した点も穴も無いが故に実力以上の力を発揮出来ない。
 その為、未熟者では決定力が無い器用貧乏だが、高位の実力者が扱うのであればその万能性は高く、隙もなくなる。

『事象発現タイプ』
 魔術や呪術のような事象干渉を引き起こす。
 物的破壊に向かぬタイプであるが故に全体的に攻撃力は低いものの、補助・防御に優れる傾向がある。

 ただし、ごく稀にそれらに当てはまらぬ特異な型が発現する場合もある。例としては複数の性質を持つタイプや上記の何れにも属さないタイプなど。
 これらの武装形態は基本、第三位階に成長しても引き継ぐ場合が多い。

 この段階に達しさえすれば聖霊器とその使い手の霊質が安定する為、基本的には第一位階のそれに比べて安定した行使が可能になる。

 また、歪みを聖霊器に収束させて飛び道具として射出することも可能。
 この場合、聖霊器使いや聖霊器自体の属性によって飛び道具としての性質が変わる事も多い。

 尚、この形態以降、基本的にその渇望や信念を何処まで追求し、尚且つ信じ続けられるかによって真銘詠唱の強度が変わる為、
 何かしらの要因で渇望が揺らいだり精神的に大きな揺らぎを生じさせられた場合、発動した力や法則が崩壊・消失する事もある。


  • 第三位階
 トライアクター。創造(Briah)、両儀とも。
 聖霊器使いに於ける必殺技を得る位階。
 自身、またはその外部に異界を創造する事で一つの必殺技とする事が可能。前者を求道(シーカー)、後者を覇道(レギオン)と呼ぶ。
 第三位階起動中は第二位階の形成状態から聖霊器の形状が変わる場合が多い。
 保持する渇望が自己に向いている場合は求道が発現しやすく、外に向いている場合は覇道が発現しやすい。
 尚、その時に顕現する異界は自身の心からの望みや聖霊器の性質によって完全に異なるものとなる。

 また、ラインアクターの行使にそのものに余力が出来る為、何らかの理由で肉体を失った魂に対し、
 『その対象が近しい者であり、合意を得られさえすれば』という条件付きではあるが、その魂に対して仮初めの肉体を形成して与え、使い魔として使役することが可能。
 ただし、魂に与えた肉体の維持には相応の『歪み』を消費する必要があり、その魂が何らかの形で損傷を受けた場合は、そのダメージを維持している聖遺物使いが受ける事となる。

 通常、聖霊器使いはこの位階までが成長限度とされる。
 単純に歪みや想念の蓄積、魂の研鑽などで能力上昇自体は見込めるものの、それだけではこの次にある最終位階に達することは不可能。
 実質限られた者のみが辿り着ける最終位階の一歩手前である為、多くの者はここで足止めを喰らい、この位階に留まったまま実力を伸ばしていく事となる。
 その為、一口に第三位階と言っても実力の幅が広く、上位に位置する者の中には単騎で世界規模、次元規模を滅ぼす規格外の化け物も存在する。

  • 最終位階
 ラストアクター。流出(Atziluth)、太極とも。
 根源にさえ達すれば時空、世界法則を自身の性質・渇望によって総てを根本より破壊、再創造し得る究極域。

 早い話が『』の後継と成り得る域であり、通常であらば決して辿り着けぬ終着点。
 ただし、シーカーのタイプではその魂のが全て自己に向く為に次元・時空規模での法則改竄を行う事は不可能。しかし、個としての存在としては究極域に達し、その存在そのものが特異点と化すため、同じ最終位階に達した者でなければ求道の最終位階に達した者を害することは不可能となる。

 ……尚、ここに辿り着いた時点で最早真銘詠唱は不要なモノと成り果てる。
 そんなモノに頼らずとも、到達者は己が道理で世界を塗り潰す程の域に達するからである。



※真銘詠唱と聖霊器の組み合わせは、実の所一種の超越存在育成ギプスに近い。
 尤も、才能がなければどう足掻いたところで高みにはたどり着けない代物ではあるのだが、感覚としては恐らくそれが一番近いだろう。

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最終更新:2012年07月04日 02:46