2007/07/30
『英語の壁』 著:マーク・ピーターセン
2003 文春新書 236P
またもピーターセンさん。
いや彼とはとても感性が似ているのか非常に感覚的パズルがかっちりといくのです。
今回も過去雑誌のコラムから成っていまして、他著作と重複するものもいくつかありますが、
白眉は最後のインターネット上オモシロ英語サイトのURL紹介でしょう。
ブッシュのアホ発言サイトから、お料理サイト、映画レビューサイトまで、
実に英語を生で味わうのに役立つサイトが取り上げられています。
2003年時点ですが、今でも大体見られます。
最新の紹介を知りたいところ。
推奨度
★★★★
2007/07/29
『ゲーデルの哲学 不完全性定理と神の存在論』 著:高橋昌一郎
1999 講談社現代新書 254P
本棚から引っ張り出してきて数年ぶりに読みましたが、当時とは全然印象が違う……。
そもそも以前読んだ時はこれでも不完全性定理が何だかよく分からなかったような。
今回も今回で、ゲーデルが自身の存在論証明に何故満足できたのかということについてはサッパリでしたが。
特に気になったのは、本書では触れられていない、ゲーデルのライプニッツ観。
ゲーデル目録はこの10年ほどで研究が進んでいることでしょうから、
著者には是非またゲーデル入門を書いて欲しいところ。
あ、ちなみに本書については大いにお薦めします。
宇宙人フォン・ノイマンが自分より上とあっさり認めてしまった奇人変人ゲーデルさんの一端を、
数々のアナロジーで解き明かしてくれる素晴らしい入門書です。
推奨度
★★★★★
2007/07/27
『英語で発見した日本の文学 古き良き日本語と、新しく面白い日本語』
著:マーク・ピーターセン
2001 光文社 210P
著者近影でピーターセンさんの顔を窺えます、初めて見た。
何故か知らねどデーヴ・スペクター的な感じを想像していましたが全然違いますね。
他の著書とかぶっている話は色々ありますが、本書で特に焦点を当てられているのは、
川端の『山の音』と志賀の『城の崎にて』、それから小津安二郎の映画。
城の崎は著者の全英訳もついていてよりお得。
今作はそこまで毒舌でもありませんが、谷崎を攻撃する丸谷才一に対しては憤慨しています。
それについてはとても同意。
推奨度
★★★★
2007/07/25
『関口新ドイツ語大講座≪上≫ 第56版』 著:関口存男
1983 三修社 219P
ドイツ語に定評のある関口。
初版は1947年。
上巻は基礎文法編。
80年代に入って読みやすく編集されてはいるのでしょうが、
しかし47年初版とは思えない内容の濃厚さ。
本当にこの人は19世紀生まれかというくらいにドイツ語の神ですね。
発音フリガナは古すぎとか、文字小さすぎとかありますが、
それ以外は未だに関口入門を越えるものはあるまい。
推奨度
★★★★★
2007/07/23
『スタンダード英文法』 著:中島平三
2006 大修館書店 147P
最新の英語学に基づいている大学生以上向け英文法、らしいです。
最新英会話からすると古いなと思えるのは、まぁ文語というのは得てしてそういうものでしょう。
別に知的好奇心あふれていれば高校生が読んでも特には難しくないかと。
ただそこまで読みやすいわけでもないですが、キッチリかっちり英文法!という本でありながらこの薄さですので、
その点でオススメ。
推奨度
★★★★
2007/07/21
『英文法のカラクリがわかる』 著:佐久間治
2005 研究社 187P
全部で81の英文法にかんするQ&A。
著者は英語史専門なので、英語史的観点から文法的な謎を解いていきます。
例文はなかなか厄介なものも多く、読み通すまでに結構時間かかりました。
英語史と英文法をいっぺんに勉強できる一冊。
推奨度
★★★★
2007/07/19
『ニホン語、話せますか?』 著:マーク・ピーターセン
2004 新潮社 158P
以前よりだいぶ毒舌気味になったピーターセンさん(敢えて)。
ただその毒舌は爽快、読んでいて不快になる人は、まぁ、むしろちょっと問題のある人なのかなという内容。
もともとは雑誌連載のコラムを集めたもので、気軽に、日本人の英語使用・学習の問題や、
外国人日本語学習者の悩みや問題などが見え、面白いです。
とりあえず、英語教科書作成者やら英語教育に携わっている気になっているだけで脚を引っ張っている方々は、
一読してみることをオススメしますが、しかしえてして自覚していない罠。
推奨度
★★★★
2007/07/16
『ことたび ドイツ語』 著:佐伯啓
2003 白水社 141P
ドイツへの旅行の途中、飛行機で読んで簡単なドイツ語を話せるようにしよう、
的なコンセプトで書かれたもの。
二色刷、文字は大きく読みやすく、旅行会話の基本的な構成として場面別。
ただ、最重要基本文法が見出しにもなっているので、初学者が勉強するにも使えます。
推奨度
★★★★
2007/07/13
『ホワイトヘッドの哲学』 著:中村昇
2007 東京大学出版会 210P
遂に出た、世界一優しいホワイトヘッド入門!?
著者が21世紀をホワイトヘッドの世紀にすべく試みた記念碑的第一作目。
最初の切り口は非常に読みやすい。
しかし、そこは相手がホワイトヘッド、まだまだ難関すぎます。
途中から急激に理解不能な段階に突入。
後はズルズルと手も脚も出ず……
とはいえ、actual entity(活動的存在)という概念が何となく分かった気がするようになれましたので、
それだけでもありがたや。
本当は推奨度を5つ星にしたいところですが、後半の難しさに-1。
これ以上の易しさを求めたい。
推奨度
★★★★
2007/07/08
『ソシュール 一般言語学講義 コンスタンタンのノート』
著:フェルディナン・ド・ソシュール 訳:影浦峡/田中久美子
2007 東京大学出版会 210P
未完とは知っていましたが、完全に「俺達の戦いはこれからだ!」な終わり方。
これからが本題というところで、ソシュール逝去。
なんてこったい。
90年ごろまで広く親しまれていたソシュールの『講義』は、
バイイとセシュエの二人が改編しまくったものだというのは、もう有名なお話。
こちらは、改編無しの生ノート。
まさしくソシュールを体感できる一冊。
読みやすい日本語版登場ということで、内容の専門性や難解さはあるものの、
20世紀最大の金字塔であるこの一冊は万人に広く推奨せざるを得ません。
推奨度
★★★★★
2007/07/06
『ドクター英文法 学校では教えてくれなかった45の処方箋』 編:コミュニケーション英語研究所
2007 リント 197P
コミュニケーション英語を研究しているのに英文法の本。
最初読んでいた時に、他の、英会話における間違い系の本にはないような事柄が多く取り扱われていたことに、
結構な違和感を覚えたものでしたが、なんてことはない、表題が英文法ですもの。
錯覚したのは中身の軽さ。
軽さといっても悪い意味ではなく、よくあるようなカタックルシイ英文法の参考書にあるような、
人をはねつける重さがないということです。
気軽に読める英文法の本として珍しい一冊。
推奨度
★★★★
2007/07/05
『言語起源論 旋律および音楽的模倣を論ず』 著:ルソー 訳:小林善彦
1982 現代思潮社 213P
前半は言語論、後半は音楽論。
ルソーの著作の中でも、相当読みやすい部類に入るのではないかと思いました。
言語が必要になるのは、身体的欲求ではなくて情念からだ!
黙ってても飯は食えるが、感情発露は口にしないと不可能!
だから原初の言語は音楽的であり、それゆえ近代は言語も音楽も堕落した!
というのが基本論調。
かなり見過ごされがちで忘れられた作品という感のあるコレ、
ルソーって社会契約論の人でしょ?とかエミールな人でしょ?とかしか知らない人に、
オススメしたいです。
推奨度
★★★★
見出し
われわれの思考を伝達するさまざまな手段について 言語が最初に作られたのは欲求からではなくて情念によるものであること
最初の語法は比喩的であったに違いないこと 最初の言語のはっきりした特徴と、それが蒙ったに違いない変化について
文字表記について ホメロスが字を書けたということはありうることかどうか 現代の韻律法について
諸言語の起源における一般的ならびに地域的な差異 南方諸言語の形成 北方諸言語の形成 それらの相違についての考察
音楽の起源 旋律について 和声について
われわれのもっとも生き生きとした感覚は、もっともしばしば精神的な印象によって働くということ
色彩と音との間の誤った類推 音楽家たちがおかす彼等の芸術にとっての有害な誤り
ギリシャ人たちの音楽体系は、われわれのそれとはなんの関係もないこと 音楽はいかにして堕落したか 諸言語と統治との関係
2007/07/04
『スーパー図解雑学 見てわかる日本史』 監修:小和田哲男
2007 ナツメ社 163P
案外戦後史にページが割かれていて驚きました。
これまた仕方ありませんが政治史中心。
ですが、先に読んだ日本史の概説より経済状態や文化史にも眼を配っているので、
どちらかといえばこちらの方がオススメですが、全色カラーという点では向こうの方が上。
こちらは基本二色刷。
推奨度
★★★★
2007/07/03
『ドイツ教育史』 著:シュプランガー 監訳:長尾十三二
1977 明治図書 171P
数少ないドイツの教育史。
後者二本は専門的すぎて退屈かもしれませんが、
最初の論文は中世から近代にかけての民衆学校史を短いながらきれいにまとめているので、一読の価値あり。
シュプランガーは彼自身教育史に登場しますし、彼の著作には触れておいて損はないかと。
推奨度
★★★★
見出し
ドイツ民衆学校の歴史 民衆学校就学義務の歴史 職業学校就学義務の歴史
2007/07/01
『ガリレオ・ガリレイ 宗教と科学のはざまで』
編代表:オーウェン・ギンガリッチ 著:ジェームズ・マクラクラン 訳:野本陽代
2007 大月書店 153P
オックスフォード科学の肖像シリーズ。
これまた最近知ったシリーズで、とりあえずこれが最初の一冊になりますが、質は高い。
ガリレイの生涯と思想を、それこそ思想的にも科学的にも総合的に記述しています。
途中のいくつかのコラムでは、数式で再試しているところもあり。
文体は簡明で読みやすいです。
中世から近世への転換点がはっきり見られるでしょう。
推奨度
★★★★
見出し
物理学の誕生 若き数学者 パドヴァ大学教授 空のなかの新発見 哲学と科学における議論
裁判にかけられたガリレオ 歴史のなかのガリレオ