【side:Chal】
僕たちが正面にしていた大きな扉がゆっくりと開く。
その向こうには、遠目からだけ知っているフィリディアの王の姿。
王は左右に従者を伴い背後に兵士を従えて悠然とした足取りで部屋に足を踏み入れた。
しかしその表情はどこか険しく、やはりここに連れてこられたのはよっぽどのことなのだろうと思う。
その向こうには、遠目からだけ知っているフィリディアの王の姿。
王は左右に従者を伴い背後に兵士を従えて悠然とした足取りで部屋に足を踏み入れた。
しかしその表情はどこか険しく、やはりここに連れてこられたのはよっぽどのことなのだろうと思う。
周囲の兵が黙礼を捧げるのに、僕も風習に倣い足を一歩引き慇懃に礼の態度で頭を下げる。
別に彼に尊敬の念を抱いているわけでもなければ、敬意を払うわけでもないけれど、それがこの国の王に対する自然な態度だからそれに倣うに過ぎない。
少し離れて隣に立っていた青年も兵に促され渋々膝を折った。
別に彼に尊敬の念を抱いているわけでもなければ、敬意を払うわけでもないけれど、それがこの国の王に対する自然な態度だからそれに倣うに過ぎない。
少し離れて隣に立っていた青年も兵に促され渋々膝を折った。
その僕らの前を鷹揚な態度で通り過ぎ、王座に腰掛けると王はやっと口を開いた。
「……面を上げ、名を名乗れ」
王族特有の高慢な言葉に然したる抵抗も覚えずに、頭を垂れたまま僕は名乗る。
「…シャリス・マクレシアと申します。」
「…マクレシア?…そなた、リディア・マクレシアの…」
「はい。甥でございます」
「甥……。」
「…マクレシア?…そなた、リディア・マクレシアの…」
「はい。甥でございます」
「甥……。」
マクレシア家は魔力の強さで有名で、その当主である叔母の名は王にも残っているらしい。
いや、残っているのはもしかしたら両親の名前の方なのかもしれないけど。
いや、残っているのはもしかしたら両親の名前の方なのかもしれないけど。
すんなり答えた僕にふむとひとつ頷くとそれ以上言及することはなく、今度は視線を隣に移し青年を見る。
「そなたは?」
「……アッシュ・ディアンと申します。」
「……アッシュ・ディアンと申します。」
一応王だからなのか先ほど兵士に向けてた言葉とは違う丁寧な言葉遣いで答えるが、言外には不服の色が滲み出ている。
それを察してはいるだろうが王はそれにもそれ以上言及せずに、同じようにひとつ頷くと再び僕たち二人に視線を戻した。
それを察してはいるだろうが王はそれにもそれ以上言及せずに、同じようにひとつ頷くと再び僕たち二人に視線を戻した。
「…ここまで呼んだのは他でもない。
そなた達の所有する『雪の結晶』を返還せよ。」
そなた達の所有する『雪の結晶』を返還せよ。」
一方的に告げられた言葉に、僕は首を傾げた。
……『雪の結晶』?
……『雪の結晶』?
「『雪の結晶』…っていうのは…?」
僕の思考に被さるように、先ほどアッシュ・ディアンと名乗った青年が口を開いた。
「…惚けるではない。我が国を守るはずの魔石だ」
……お伽話としては聞いたことがある、王族が代々守る魔石があると。
それは意志を持ち、この国を雪で閉ざしこの国を守っているのだ、と。
しかしそんな魔石が実在するなどとは聞いたこともない。
それは意志を持ち、この国を雪で閉ざしこの国を守っているのだ、と。
しかしそんな魔石が実在するなどとは聞いたこともない。
けれど、……もし。
それだけ強い魔石が本当に存在するのだとしたら。
それはあながちお伽話ではないのかもしれない。
しかし、どうしてそれを僕たちが持っている、ということになるのだろう…?
王家に伝わるものならば、常に城で厳重に管理されるはず…。
そう考えてふと袖に隠れて見えなくなっている白い石を思い出す。
それだけ強い魔石が本当に存在するのだとしたら。
それはあながちお伽話ではないのかもしれない。
しかし、どうしてそれを僕たちが持っている、ということになるのだろう…?
王家に伝わるものならば、常に城で厳重に管理されるはず…。
そう考えてふと袖に隠れて見えなくなっている白い石を思い出す。
…まさか、それが魔石だとでも…?
まさか、ありえない。そんな偶然が起こるとは思えない。
そう思いつつも僕はどこかその想像が拭いきれなかった。
まさか、ありえない。そんな偶然が起こるとは思えない。
そう思いつつも僕はどこかその想像が拭いきれなかった。
そう、偶然ではないのだとしたら…。
この石が現れる前の、光と魔力、そして声。
なんらかの要素や要因が僕と彼を選んでいたのなら。
この石が現れる前の、光と魔力、そして声。
なんらかの要素や要因が僕と彼を選んでいたのなら。
「……何故、それを僕らが所持していると?」
想像や仮説の域を出ない思考を打ち切って、王へ確認するように口を開く。
「そなた達のおった教会から魔石の気配と魔力を感じた。
それは王族の持つべきもの、その波動を我が違えるわけはない。」
それは王族の持つべきもの、その波動を我が違えるわけはない。」
はっきりと言い切られた言葉。
それだけその魔石はこの国の王族と密接な関係があるということだろうか…。
力強く断言された言葉に、知りませんでは通らないことを知る。
この石が王家に伝わる魔石だとするのなら、王の言葉通り王家へと変換するのが筋だろう。
―――しかし。
それだけその魔石はこの国の王族と密接な関係があるということだろうか…。
力強く断言された言葉に、知りませんでは通らないことを知る。
この石が王家に伝わる魔石だとするのなら、王の言葉通り王家へと変換するのが筋だろう。
―――しかし。
「……魔石を返還することは叶いません。」
「なんだと?」
「なんだと?」
静かに言った僕に、王の声が低くなる。
隠し立てして乗り切れる状況ではないかと諦め、右手を差し出すと周囲に見えるよう袖を捲って手の甲を晒す。
隠し立てして乗り切れる状況ではないかと諦め、右手を差し出すと周囲に見えるよう袖を捲って手の甲を晒す。
「…この通り、僕の体の一部になっているようなのです。」
「ああ、俺のも同じ状態だ。」
「ああ、俺のも同じ状態だ。」
同調するように声を発したアッシュも、レザーグローブを外して手の甲に埋まった石を周囲へ見せる。
それを見た王の顔色は一気に青ざめた。
…否、憤慨に紅くなったのかもしれない。
それを見た王の顔色は一気に青ざめた。
…否、憤慨に紅くなったのかもしれない。
「…砕けた魔石が人体に宿っただと!」
怒号といっても過言ではない声を張り上げた王は、思わずといった様子で立ち上がり僕たちを睨め付けた。
「そのようです。なので魔石の返還は…、」
「そのような問題ではない!」
「そのような問題ではない!」
叶いません、と重ねるようそう続けようとした僕の言葉を王は興奮した声で遮った。
「…どういう意味だ?」
王の尋常じゃない様子に、首を傾げたアッシュが声を漏らす。
状況が状況だからなのか、思わず漏らした言葉なのか、敬語はとうに消えている。
状況が状況だからなのか、思わず漏らした言葉なのか、敬語はとうに消えている。
「…雪の結晶の欠片をその身に宿したものは、禁忌の力を使う!
そんな者野放しには出来ん!
…その者達を牢に!その者ら明日一番で処刑を命ず!」
そんな者野放しには出来ん!
…その者達を牢に!その者ら明日一番で処刑を命ず!」
憤慨に畏怖を微かに滲ませながら一気に捲くし立てた王の言葉に周囲で控えていた兵が手荒く僕の腕を取ると引き摺るように立ち上がらせた。
このまま牢にでも連れて行かれるのだろう。
事をまだ理解できないからか、尋常でない王の動揺ぶりに逆に冷静になったのか僕は掴まれる腕の痛みすら一瞬忘れた。
アッシュも流石に抵抗しているようだが、戸惑いが抜けないからなのか結局僕同様引き摺られるように引っ立てられた。
このまま牢にでも連れて行かれるのだろう。
事をまだ理解できないからか、尋常でない王の動揺ぶりに逆に冷静になったのか僕は掴まれる腕の痛みすら一瞬忘れた。
アッシュも流石に抵抗しているようだが、戸惑いが抜けないからなのか結局僕同様引き摺られるように引っ立てられた。
……処刑。
改めて脳内で反芻したその宣告を、僕は不思議とどこか冷静な気持ちで受け止めていた。