【side:Chal】
人なんて、血のつながりを持ってしても、簡単に裏切り憎み合い殺し合える。
利益の中でしか好意を持てず、不必要なものは切り捨てて生きていく。
温情や愛なんてものは、それを前にしたら酷く無力なものへと劣転していく。
――叔母やフィリディア王たちのそうだったように。
利益の中でしか好意を持てず、不必要なものは切り捨てて生きていく。
温情や愛なんてものは、それを前にしたら酷く無力なものへと劣転していく。
――叔母やフィリディア王たちのそうだったように。
家柄や周囲の評価から自分を引き取った叔母や、魔石に頼って暮らし形が変わった途端に手のひらを返すようなフィリディア王。
……アッシュだって自分が害される状況でなければ。
結局のところは他と変わりはないのだと。
……そう思っていた。
……アッシュだって自分が害される状況でなければ。
結局のところは他と変わりはないのだと。
……そう思っていた。
…そう、思いたいのに…。
「…何とも思わないのか?理不尽な理由で殺されることに」
先ほどとは違う、抑えた声音でアッシュは言う。
しかし、その声音には変わらず、焦れるような響きが残っていた。
しかし、その声音には変わらず、焦れるような響きが残っていた。
「進んで死ぬつもりは無い」
僕は実にあっさりと言葉を返した。
…魔石が僕やアッシュの中に取り込まれたのは僕らの意志に関係なく、それによってされた死刑宣告もまた同様。
アッシュが言うように、意思が無視されたこの状況は確かに理不尽なものなのかもしれない。
アッシュの言いたいことは理解出来た。
アッシュが言うように、意思が無視されたこの状況は確かに理不尽なものなのかもしれない。
アッシュの言いたいことは理解出来た。
……けれど、共感や同調は出来なかった。
僕はもとより「生きる」ということに然程の執着もなければ、意味を見出してるわけでもない。
生に執着するほどの何かなど今の僕にはないのだ。
無論死にたいなどと思っているわけではない。
だけど、状況がそう流れるのならば簡単に諦めがつく、その程度なだけだ。
生に執着するほどの何かなど今の僕にはないのだ。
無論死にたいなどと思っているわけではない。
だけど、状況がそう流れるのならば簡単に諦めがつく、その程度なだけだ。
「けど、シャリスが言ってたことは同じことだろ?自分で死刑台に向かうのとどう違う?」
死にたくないと望むアッシュから見れば、それには然程の違いはないのだろう。
事実、結果は同じなのだから。
事実、結果は同じなのだから。
けれど……。
「そうだとして、ディアンに関係ある?それと、馴れ馴れしく名前で呼ぶな」
僕はきっぱりと切り捨てるように言葉を放った。
そう、関係ないはずだ。
僕が死のうが生きようが、アッシュは得することも損することもないはず。
僕が死のうが生きようが、アッシュは得することも損することもないはず。
強引に押されるままに、一瞬絆された。
だからここまでアッシュと共に来た。
ただ、それだけだ。
だからここまでアッシュと共に来た。
ただ、それだけだ。
さすがにアッシュがいくらお人よしだとしても、ここまできっぱり言えば頭にもくるだろう。
…そう思っていたのに。
「俺がシャリスに死んで欲しくない、だから口出ししてるんだ」
……返ってきた言葉は予想していたものとは全く違っていた。
信じられない思いで、疑うような視線をアッシュに向ければ少し拗ねたような様子で、仕方ないだろ、そう思うんだから、とぽつりと言葉が続けられた。
信じられない思いで、疑うような視線をアッシュに向ければ少し拗ねたような様子で、仕方ないだろ、そう思うんだから、とぽつりと言葉が続けられた。
一人でならいくらでも逃げきれるだろうに。
僕が生きていたところでアッシュにメリットなどないだろうに。
それでも拒否した名を呼んで、死んで欲しくないと言う。
僕が生きていたところでアッシュにメリットなどないだろうに。
それでも拒否した名を呼んで、死んで欲しくないと言う。
僕はそれをうまく理解できなかった。
けれど、拗ねた様子ようなアッシュの様子を見て、それは本心なのかもしれないと思ってしまった。
けれど、拗ねた様子ようなアッシュの様子を見て、それは本心なのかもしれないと思ってしまった。
…もしそうなのなら、どうしようもないお人よしか物好きだ。
「…バカな奴だな」
小さく呟いた。
それは自分で意図したよりも柔らかい響きで、拒絶の響きは消えていた。
自然と口元が緩んでしまう。
自嘲でも侮蔑でもない、ただの呆れた笑み。
それは自分で意図したよりも柔らかい響きで、拒絶の響きは消えていた。
自然と口元が緩んでしまう。
自嘲でも侮蔑でもない、ただの呆れた笑み。
その表情に驚いたように目を瞬かせたアッシュに、背を向けて再び歩き出す。
「あ…っ、おい、待てよ!シャリス」
すぐに追いかけてくる名を呼ぶ声をやはりすんなりは受け入れられなくて、視線で抗議すれば、それは綺麗にスルーされた。
馴れ馴れしく自分の名を呼ぶ声はやっぱり不快ではあるけど、もう少しだけ。
もう少しだけ、絆されてこのお人よしに付き合ってやるのもいいかもしれないと思ってしまう。
馴れ馴れしく自分の名を呼ぶ声はやっぱり不快ではあるけど、もう少しだけ。
もう少しだけ、絆されてこのお人よしに付き合ってやるのもいいかもしれないと思ってしまう。
……諦めることは、いつでも容易に出来るのだから。
そう決めたのなら、考えなければならないのは次の行動。
そう決めたのなら、考えなければならないのは次の行動。
「…体が冷える前に此処を出る。王にマークされてない場所なら心当たりがある。
……ディアンもすぐに国境を超えようなんて無謀なことは考えてないだろう?」
……ディアンもすぐに国境を超えようなんて無謀なことは考えてないだろう?」
再び歩き出しながら振り返りもせず足も止めないまま、僕はいつもどおりの声音でそう言った。