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Place to stay

ash

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【side:Ash】





どこまでも続く白。
包まれる。
侵食される。
飲み込まれる。
白が支配する世界。

寒くて、体中が冷たい。
………本当に?
何も感じない気がする。
触感も、音も、寒暖も。
確固たる、縋れるものが欲しくて辺りを見回して。


見つけた誰かの名を呼ぼうとして目が覚めた。





ぼんやりと、映るのは見慣れない天井。
身体を起こして見渡せば、まだ慣れない雑多な部屋。
生活空間の大部分が本に埋まっていて、此処の利用者が余程本好きだったのだろうと思わせる。
つまり、シャリスの父親が。
隣に大きな屋敷があるのにわざわざこんな部屋を作ったのは、貴重品でもあるか…逃れるため、か?
そういえば…シャリスは父が「使っていた」と言ってた。
今はもう使っていないんだろうか?
屋敷の方も失礼かもしれないが誰かが暮らしているような雰囲気じゃなかった。


…しかしあの屋敷、見覚えある気がするんだけどいつ見たっけ。
西の街にあんな感じの建物があったんだったかな…?


「って、そんなことより今何時だ…?」

窓が無いし時計も見当たらないから時間経過が分からない。
やり方がわからないから扉を開けることは出来ないし。

少なくとも眠りに落ちてからそう時間は経ってはないはずだけど。

大抵の人は睡眠時には無防備になる。
だからこそ危険が多く、眠っていても気を張る術は仕事や生活の中で培ってきた。
どんなに熟睡していようと気配を感じればすぐに気付ける。
本当は睡眠ってのは日々の癒しであり活力源だから、毎日ぐっすり安眠出来れば良いんだけど。
俺は惰眠を貪ってるときが一番幸せだ。

今回は二度寝はやめておくことにして、1度身体を伸ばしてから立ち上がる。
多少なりとも眠ったことで疲れは大体取れた。
欲を言えばベッドが良かったけど、牢よりは断然マシ。
少なくとも冷たくて硬い地面じゃなく、暖かい部屋で柔らかなソファだったのだから。

喉が渇いたけど、飲み物、とか何処にあるんだろう?
そもそもあるんだろうか?
…全然使ってなさそうな部屋だしなぁ。
さっきのお茶はシャリスが魔術で出した水を利用していた。
生憎俺は水の魔術は使えない。
たとえコアがあっても素質の問題でアウト。

とりあえずシャリスに聞いてみるか。

奥の部屋のドアをノックしたが、返事が無い。
眠ってるんだったら起こすのは悪いかな?
迷いながら気配を消して、そっと扉を開けると中からは古い紙独特の匂いが漂ってきた。

匂いに顔を顰めながら中に入ると、部屋の中は本だらけだった。
壁は全て本棚で埋め尽くされ、天井の高さのそれ全てに本が所狭しと積まれている。
それだけに飽き足らずに入りきらなかったのか床にまで並んでいた。
さっきの部屋にも本は大量にあったけど………眠くなってきた。
本を読んでると眠くなることは多々あったけど、見ただけで眠くなる雰囲気を醸し出すなんて。

それにしても…。

「…寒…」

暖炉の火は扉で遮断されて、此方まで届かなかったらしい。
外気ほどじゃないとはいえ空気が冷えている。
こんなところに居るくらいなら、暖炉の前に居れば良いのに。

シャリスは一番奥に置かれている机に向かっていた。
傍に分厚そうな本が何冊も積まれている。
コイツも読書好きなのか?遺伝って奴?

「シャリス……?」
………寝てる?

本を読んでいる途中に眠ってしまったらしい。
眠るつもりじゃなかったみたいで、開かれたままになっている。
傍に置かれていたお茶は半分ほど残っていたがすっかり冷めてしまっていた。

暖炉の前に…運んだら流石に余計なお世話だよな。
その過程で絶対に起きてしまうだろうし。
見回してもこの部屋に本以外のものはなさそうだった。

自分が眠っていた部屋に一旦戻る。
どっちかといえばこっちの方が何かありそう。
毛布、みたいなのとか…ないだろうか?

手近な本を纏めて少しずつ退かす。
同じ作業を何度となく繰り返していく。
本の下敷きになっていた箱を開ければまた本。
…どれだけ本好きなんだ、マジで!


如何して俺、こんなことしてるんだろう…。
此処にあるかどうかもわからないのに。
何度もそう思いながらも片付けているうちにやっと本に潰されていたクリーム色の毛布を見つけた。
本に埋もれたままというのが勿体無いくらいに肌触りが良い。
バサバサと降ってみたが本の下にあったおかげで逆に埃もつかなかったようだ。

奥の部屋ではシャリスはまだ眠っているようだった。
扉を開けたままにしていたから、先程よりはほんの少し暖かい。

毛布をかけてやるとシャリスが一瞬身じろぎした。
起こしたか?と思ったが反応はそれだけで静かに寝息を立てている。
良かった…睡眠の邪魔はしたくない。
俺自身が、邪魔されるのが物凄く嫌いだから。

しかしコイツ、寝顔は柔らかい感じがして可愛いんだけどな。
起きてるときは冷たそうな美人って雰囲気だけど。
何にも興味ありませんっていう…醒めた眼差しが与えた印象だったのかもしれない。
綺麗だとは思うから瞑られたままなのは勿体無いとも思う。
淡い紫の瞳は何処か懐かしくて、親しみを感じる。
母さんの瞳が紫暗だった所為だろうか?


…さて、そろそろ向こうの部屋に行ってるか。
男の寝顔をいつまでも見ているのもサムイし、何より今シャリスが起きれば言い訳できない。
起きるまで隣の部屋の片付けでもしてるかな。探せばまだ何かありそうだし。
余計なお世話だとか勝手に触るなとか、後で怒られるのは覚悟してでも。
せめて食べ物とか、飲み物とか、俺の分の毛布とか発掘したかった。






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