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Place to stay

ash

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様子を見に行ったシャリスは、戻ってきてから兵士が来ていたことを告げた。
見つかる可能性は低いものの今夜のうちに国外に逃れたほうが得策だろうということも。
俺の方は元々今夜出立するつもりだったから、異存は無かった。

夕食をとって部屋を片付け、あくまでも他人事のようにしているシャリスを急かして準備を終えて。
頃合を見て隠し部屋から抜け出た。
屋敷を見張っている兵士は居たがシャリスのおかげで予め居場所が分かっていたので死角を通り抜けることが出来た。
屋敷に張ってある結界で居場所や人数が分かるらしいけど、正直結界を張れない良く分からない。
俺にとっては魔法って便利だよな、って感じだ。


その後、俺の都合でこの教会に寄ってもらった。
最初にシャリスと出会った寂れた教会に。
俺はこの国に来た目的をまだ果たしていなかったから。


シャリスには教会で待ってもらって、来たのは裏手にひっそりとある墓地。
規模自体が小さい上、滅多に人が訪れないのか雪が深かった。
数えるほどしかない墓石も殆ど雪に埋もれている。
日付が変わるくらいの深夜の教会…特に墓地というのはやっぱり独特の雰囲気があった。

シャリスを待たせてることだしサッサと用事を済ませようと、炎の玉を生み出して辺りを照らす。
墓石に積もる雪を払い、浮かび上がった文字を確認していく。
二つ目の墓石に、目的の名前は刻まれていた。

『シウィーズ・クライリウス』
『メディシア・クライリウス』

刻まれた名前を指で撫ぜる。
冷たい感覚が指先の体温すら奪っていった。

…この下に父さんの親友が眠ってる…。

俺がこの国に立ち寄ったのは、近くまで来たついでにこの人たちの墓参りをするためだった。
シウィーズという人物は父さんの親友だった人で、俺の命の恩人でもあるらしい。
俺が小さい頃病気にかかったときに希少な薬を分けてくれたらしい。良く憶えてないけど。
確か娘が居て、その子と遊んだことは憶えている。
…あの子は今どうしているだろうか。叶うならば、逢いたかったけれど。
きっとキレイになっているに違いない。

「シャノン・ディアンの息子、アッシュです。今更ですけど父さんの代わりに墓参りに来ました。」

滅多に使わない敬語はやっぱり言い慣れない。
やっぱり俺の柄じゃないよな。
そんなことを思いながら鞄から瓶を取り出して中身を墓にかけた。
アルコールの匂いが辺りに広がる。
中身は上等のウイスキーだ。
3分の1を墓にかけ、蓋を閉めて瓶を墓石の傍に置いた。

「父さん母さんも6年前に死んだし、あの世ってのがあるなら4人で酒盛りでもしてください。」
もしもあの世って言うのがあって、そこで死者が出会えるならの話だけど。
あの世も幽霊も俺は見たことがないから実際には如何なのか知らない。

首から下げているロザリオを両手で掴み目を閉じる。


彼らに関しての記憶はないけど、彼らの訃報が届いた日のことは良く覚えている。
聞きなれない北の地から届いた手紙を読むなり、いつも不敵で飄々としている父さんが顔色を失くした。
「そう簡単に死ぬ奴じゃないだろ」
と、揶揄して笑おうとして…失敗していた。
たった一言、居なくなった友人の名を呼んで。
泣いていることにすら気付かないようにただただ、訃報を知らせた手紙を見ていた。
その様子を見て、いつも気丈な母さんが悲しげな瞳で俺の手をギュッと握ってその場から離した。

それほど大切な相手だったらしいのに、結局父さんは墓参りには一度も行けなかった。
理由は知らないけど躊躇って躊躇って…漸く決意してこのフィリディアを訪れようとしたその矢先に命を落としてしまった。
なのでいつか俺が代わり訪れようと思っていたけど、中々近くまで行く機会もなく。
結局6年の歳月が経過してしまった。


目を開き、墓を背に歩き出した。
多分俺が此処を訪れるのはコレが最初で最後になるだろう。


相変わらず開ける度に甲高い音が鳴る扉を開き、教会に足を踏み入れる。
昨日会ったときと同じように十字架の前にシャリスは居た。

「用は済んだの?」
「ああ、待たせて悪い。」



目的は果たした。
後は逃げるだけだ。






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