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Place to stay

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【side:Chal】





急かされるように旅支度を終え、隠し部屋を出るとアッシュが用があるという街外れの教会だった。
アッシュと初めて会い、雪の結晶と遭遇した場所。
どうやらこの近くに何か用があるらしい。

そこまで歩きつくと、アッシュは僕に教会の中で待つようにいい外に出て行く。
そんなアッシュを見送ってから、もう錆びれてしまったステンドグラスを見上げる。
明かりを灯さない教会内は暗く、ステンドグラス越しに漏れる微かな薄白い光のみで足元さえ覚束ない。
しかし灯りをつける気にもならず、僕はゆっくりとした足取りで真直ぐと十字架の元まで歩みを進めた。

片膝をついて手を組む。
祈りを捧げる先は神などではなく、父と母だ。

丁度この裏…教会の裏手には数えるほどの寂れた墓石がある。
こんな辺境に墓地を造るものなど殆どなく、もう誰も訪れることない古い墓石の中にひっそりと隠れるように僕の両親の墓もあった。
両親が亡くなってすぐは、よく此処に訪れたものだった。
……父と母の墓前ではなく、この教会に。

あの頃は両親の最後の姿が脳裏から離れなくて、自分だけを残して逝ってしまった二人が恨めしくて、どうしても墓前に顔を出すことが出来なかった。
…だから、この場所からいつも父と母に語りかけていた。

最初は帰ってきて欲しい、僕もどうして連れて行ってくれなかったのか、と。
両親の死を受け入れたくなくて、冥福など暫くの間は祈れなかった。

けれど、成り行きとはいえこの国を出るとなれば、もうきっとここを訪れることはないだろう。
これがきっと最後の挨拶になる。

……だからどうか、二人が安らかに眠れますように、と。



静かに雪の降り積もる音に耳を傾け、祈りを捧げていると背後にある入口のドアがゆっくりと開く。
アッシュが用事を済ませたのだろう。

「用は済んだの?」
「ああ、待たせて悪い。」

立ち上がって振り返りながら聞く。
アッシュはそれに小さく首肯して見せた。

「……それじゃあ、行こう。」

出口に立つアッシュに並びそういうと、僕たちは再び雪の中に隠れるように教会を後に歩き出した。





僕たちが向かうのはクデアという地域にある北東の関所。

フィリディアは中央に王城を構え、そこから北に向けて真直ぐ広い公道が通っており北側に王門が位置する。
主に催しや王族の移動に使われる見晴らしのいい広い道では此方に部が悪いし、まさか脱国に王門を使うわけにはいかない。
それ以外の関所は3つ。王城からみて各々南、南西、北東に点在する。
人気のない場所を選ぶのならば、公道に近い北東よりも城下街とは逆の方向にある南や南西の関所の方がいい。
南側に出れば大陸上を南の方向へ、山越えや森を抜けなければならないが回り道せずに行ける。
逆に北方からの道のりの方がなだらかではあるが、他の国へ逃れるのならば回り道だし、大陸の北にあるフィリディアからでは更に北への逃げ場は期待出来ない。
しかし、フィリディア王とてそう考え南の関所に兵を置くはずだ。

ならば抜けやすい北東の関所へ向かうほうが関所を越えられる可能性は高い。
北東の関所は北の王門に近くそちらを利用するものが多い為、そちらからならば出ると、森へとつながり野党も多く、お世辞にも楽な道のりではないが身を隠しながら進むことは出来るかもしれない。
その森さえ抜け迂回することができれば、大きな道に出ることもできるし、旅人が使うらしい小さな道もあるはずだ。
そこからならば国も大きな動きは取れないだろうし、向かう先の選択肢も広がる。

街に降りられないので装備は満足じゃないけど、この際はそれは仕方ない。
装備を整えるのなら一刻も早くこの国を出て他の街へ向かう方が得策のはずだ。
森を抜けることを考えれば少し不安も残るが、何とかならないこともないだろう。
…死にたくないのならば、なんとかしなくてはならない。



「……あそこだ」

身を隠しながら歩みを進めると、視線の先に淡い光が見えてきた。
近づくにつれてそこが小さな町になっていることがわかる。
北東の関所とはいえ王門近く、旅人相手の宿や店などいくつもの建物が建っており、いつもなら賑わっているはずのそこは、人の気配があるものの少し雑然としているようにも思う。
おそらく、僕とアッシュの手配が出回っているからだろう。
兵の数も少なくなさそうだ。
町の入口まで着くと僕たちは人目につかない路地に入り込んだ。
周囲の建物からはやはり人の気配はする。
しかし、殆どが寝静まった時刻なのか人影はない。
おそらく関所周辺にいる兵士以外は屋内から出てくることもないだろう。



「…兵の数を考えると、目を盗んでってわけにもいかないな。」

アッシュがどこか苦い表情でいう。

「…そうだね。最終的には強行突破は止むを得ないけど……どうする?」

なるたけ兵の目を盗んで、関所まで近づき、あとは強行突破以外の選択肢はないだろう。
そう思いながら問い掛けるような視線をアッシュに向けた。






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