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Place to stay

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【side:Chal】





突然現れ消えた光。
その光の消失と共に倒れこんだ兵士。

…何が起こったのか判らなず動揺と警戒交じりにざわめく周囲。



けれど、右手の甲に微かに感じる熱で、僕にはわかった。
……アッシュだ。

アッシュの手の甲にある魔石が発動したのだと、僕の手の甲にある魔石の共鳴が告げた。
それを肯定するように。
兵士に触れたアッシュが小さく掠れた声で呟いた。

「…俺が、殺した…?」

小さく呟かれた言葉は周囲のざわめきの中で微かに僕の耳に届いた。

「ぅ…ぁ、ああッ―――!」

取り乱すように悲鳴のような声に周囲より少し早く我に帰った僕は慌ててそちらに駆け寄る。

「ディアン!」

アッシュの肩に手をかけて揺さぶるように呼ぶが、取り乱し微かに震えたままのアッシュからは確かな返答は返ってこない。
取り乱すアッシュを後回しにすると倒れたままの兵士を見る。
致命的な外傷のない。しかし、首筋に触れれば、兵士は確かに事切れていた。
先ほど見たとき、アッシュがなんらかの攻撃を加えたようには思えなかった。
ただ、手を伸ばし、兵士に触れた。…そう、触れただけ。
触れるだけで人を殺すことなど出来るのだろうか?

出来るのだとすれば…。

『雪の結晶の欠片をその身に宿したものは、禁忌の力を使う』

王の言葉が真実になった…?

………呪殺。
禁忌とされる魔術。
人の命を根源から奪い去るとされる、魔術。

それが発動したということだろうか…。

アッシュの魔石が光ったこと。
それと同時に共鳴するように熱を持った僕の手にある片割れの魔石。
そして、外傷のない冷えた死体。
相手の生命を魔力干渉により直接奪う忌まわしい呪術。
それが発動した、という何よりの証拠。

だとすれば一刻も早く離れなくては。
周囲の兵士達は今の出来事を見ている。
王に伝われば今以上に血眼で僕らを探し出し殺すように命じるはずだ。

「…ディアン、早く此処から、…っ!?」

兵士からアッシュに向き直ろうとした刹那。
不意に兵士に触れたままの右手が痛んだ。
否、先ほどまでは仄かな熱を感じる程度だった右手の甲の魔石が、光を放ち痛いほど熱くなり出したのだ。



―――死にたくない!
―――生きたい!



強い光と魔力に霞みがかったような意識の中、誰かのその強い意志だけが強い衝撃となって僕を襲う。
悲痛なほど狂おしい意志が、僕に…否、魔石に乞うた。
それと同時に、まるで体中から魔力が引きずりだされるような感覚…。
僕の意思に反して魔石がその意志に応えようとしてるのだ、とまとまらない頭のどこかで思った。



「……え?」

小さくもれたアッシュの声が微かに耳に届いた。

「……!」

同時にそれに僕も気がついた。
………冷たくなってたはずの兵士に微かな熱が戻っていることに。

……生き返った?
……違う、蘇生させたというのか?

驚きに呆然と仕掛けるもその思考は、アッシュのすぐ右に突き刺さった矢で遮られた。
周囲の出来事に僕たち同様、呆然としていた兵士たちが我に返って放ったらしい。
しかし、動揺からかその軌道は大きく外れていた。

とはいえ、囲まれている事実は以前変わらず。
先程の魔石の発動と思しき出来事、あれで一気に魔力の消費を感じる。
このまま考え込んではいられない。
考えるのは後回しだ。
とにかく今は此処をすぐに離れないと…。

「ディアン…!」

動きそうのないアッシュの腕を引っ張る。
ここで兵を迎撃しながらアッシュを守って戦うのは無理だ。
身体はふらついているし、アッシュはこの状態で足を負傷している。
何より、援軍が来てしまえば勝ち目はない。

事態は変わらず絶望的だ。
けれど…やるしかない。
やらなければ、アッシュも僕も殺される。

……殺されてもいいと思ってた。
死ぬなんて、ただ終わるだけなんだと。
だから別に構わないと思っていたのに。

このお人よしに少し絆されてしまったからだろうか。
彼をここでむざむざ殺させてはいけない気がした。



じりじりとアッシュの腕を引き少しづつ後退する。
空いた手でコアのついた短剣を鞘からだす。

関所の門まではここから約数メートル。
あそこを抜ければ周囲は森。
なんとか門を塞げれば一時凌ぎにはなるはずだ。

「…母なる大地と黎明の祖、今一度その力を欲さん…、」

口の中で小さく詠唱をしながら時折飛んでくる矢を短剣で払いのけ、にじり寄ってくる兵士たちに警戒の目を向ける。

「……凍える息吹、凍れる御手に力を与えよ…。」

コアに魔力が集中していくのがわかる。
それが弾けるのをイメージしながら残った力を全てこの術に託す。

「…吹き荒ぶ嵐となって我が敵をなぎ払え…!」

その瞬間、コアから青白い光が放たれ弾けるように凍てつく強風が襲う。
僕はアッシュを引き寄せるとそのまま、術の反動に任せ飛んだ。
地から足が離れると風の勢いを利用して関所門の外を目指しはじき出されるように強い風圧に飛ばされる。

「……っ!」
「……くっ…!」

身も凍るほどの冷たく強い冷気の風。
肺の中にそれが入り込み、肺が痛んだ。

賭けにも近い荒っぽい方法ではあるが、周囲の兵も蹴散らせるしうまくすれば門を出れる。
そして。

ズザザザザ…ッ!

雪の崩れる音がその場の音を大きく掻き消した。

痛む身体を何とか起こして今はじき出されたばかりの門を見る。
術の反動で門の上部に溜まっていた雪が関所門の入口を半分以上埋めていた。
思っていた通りに術が働いたことを微かに息ついて安堵する。
これで少しの間は敵の足が落ちる。
その間に少しでもここから離れ姿を隠せるところを探さなければならない。

力が入らない体を何とか立たせ再びアッシュの腕を引くと、雪の残る森の中を歩き始めた。






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