【side:Ash】
死というものには何度も触れてきた。
それは病であったり、事故であったりと様々なものを。
中にはとても理不尽な死も、あった。
それは病であったり、事故であったりと様々なものを。
中にはとても理不尽な死も、あった。
6年前の母の死がそうだ。
俺の目の前で死んでいった母と、それによって起こった事件で父もまた死んでしまった。
両親の死の原因となった連中が許せなかった。
何度も何度も苦しめ方を、殺し方を考えて眠れぬ夜を過ごした。
…相手は既に死んでいたけれど、恨まなければ辛くてどうしようもなかった。
俺の目の前で死んでいった母と、それによって起こった事件で父もまた死んでしまった。
両親の死の原因となった連中が許せなかった。
何度も何度も苦しめ方を、殺し方を考えて眠れぬ夜を過ごした。
…相手は既に死んでいたけれど、恨まなければ辛くてどうしようもなかった。
漸く吹っ切れた頃には、人を殺すことに恐れを感じるようになっていた。
俺が誰かを殺せば、昔の俺のように恨みに身を焦がす苦しみを味わう者が居るのだと思ってしまったから。
護衛という仕事柄、そんな甘いことは言えないから仕事のときは別なんだけど。
割り切らないと食ってけないし。
俺が誰かを殺せば、昔の俺のように恨みに身を焦がす苦しみを味わう者が居るのだと思ってしまったから。
護衛という仕事柄、そんな甘いことは言えないから仕事のときは別なんだけど。
割り切らないと食ってけないし。
だけど、今回は。
仕事じゃなかった。
あの兵士は命令に従っていただけで、俺に対して憎悪があったわけでもなかった。
攻撃を避けれないタイミングだったとはいえ普通に戦えば怪我だけで済ませれるような相手だったのに。
仕事じゃなかった。
あの兵士は命令に従っていただけで、俺に対して憎悪があったわけでもなかった。
攻撃を避けれないタイミングだったとはいえ普通に戦えば怪我だけで済ませれるような相手だったのに。
そして――彼には妻もまだ幼い子供も、居た。
俺があのとき見た不思議な映像は俺が殺した兵士の記憶なのだと確信している。
不思議なことに、疑問を抱くことがおかしいというレベルで納得している自分が居た。
俺があのとき見た不思議な映像は俺が殺した兵士の記憶なのだと確信している。
不思議なことに、疑問を抱くことがおかしいというレベルで納得している自分が居た。
あのまま彼が生き返らなかったなら。
あの子供も「父を殺した賊」を恨んでいたことだろう。
自分が恨まれるという事実よりも、自分がかつて苦しかったことを人に与えることが辛い。
シャリスが居なければそうなってたんだろう。
生き返って本当に良かった…。
あの子供も「父を殺した賊」を恨んでいたことだろう。
自分が恨まれるという事実よりも、自分がかつて苦しかったことを人に与えることが辛い。
シャリスが居なければそうなってたんだろう。
生き返って本当に良かった…。
「ディアン、いつまで呆けているんだ」
立ち止まったシャリスに睨まれて、今まで走っていたということを意識した。
追手は撒いたらしく物音は何一つ聞こえない。
ちらほらと降っていた雪はいつのまにか止んでいた。
追手は撒いたらしく物音は何一つ聞こえない。
ちらほらと降っていた雪はいつのまにか止んでいた。
「…悪い」
一言返すと、掴まれていた腕が放される。
離れていく体温が胸に痛かった。
離れていく体温が胸に痛かった。
…結構まいってるのかもしれない。
傍の木に寄りかかってずるずると座り込んだ。
傍の木に寄りかかってずるずると座り込んだ。
「その場所にいると落雪で埋まるかもしれない」
見上げた木の枝には雪が積もっている。
動きたくないと訴える身体に鞭打って場所を移動した。
動きたくないと訴える身体に鞭打って場所を移動した。
「面倒かけたよな。お前のことは俺が守るつもりだったんだけど」
「良いから、怪我見せて」
「良いから、怪我見せて」
…そういえば矢が刺さったままだっけ。
抜いてる暇もなくて、ついでに抜いたら尚更血が出てくるからそのままにしていた。
痛みがすっかり麻痺していたせいでスッカリ忘れてた。
抜いてる暇もなくて、ついでに抜いたら尚更血が出てくるからそのままにしていた。
痛みがすっかり麻痺していたせいでスッカリ忘れてた。
「…忘れてたとか言わないでよ?」
図星をつかれて苦笑いを浮かべた。
いや、だって、なぁ?戦闘してたら多少の怪我くらいは忘れるし、俺的にちょっと色々とショックだったし。
いや、だって、なぁ?戦闘してたら多少の怪我くらいは忘れるし、俺的にちょっと色々とショックだったし。
「血の跡とか残ってねーかな…?」
「さぁ。でも暫く雪が降っていたから、大丈夫だと思う。…抜くよ」
「――ッ…」
「さぁ。でも暫く雪が降っていたから、大丈夫だと思う。…抜くよ」
「――ッ…」
抗議も抵抗もする暇なく、襲ってきた痛みに顔を顰めた。
予想以上に深く刺さってたんじゃないか?アレ。
矢についていた血が白い雪を紅く染めた。
それを見たシャリスの表情が一瞬強張る。
予想以上に深く刺さってたんじゃないか?アレ。
矢についていた血が白い雪を紅く染めた。
それを見たシャリスの表情が一瞬強張る。
「どうかしたのか?」
「いや、なんでもない」
「いや、なんでもない」
首を振るシャリスの顔は寒さや雪のせいだけじゃなく、白い。
青白い表情で鞄から治療道具を取り出している彼に首を傾げながらブーツを脱いでズボンをたくし上げた。
血に濡れたズボンが肌に張り付いていてやりにくい。
大体血の染みって中々取れないんだよな…。
青白い表情で鞄から治療道具を取り出している彼に首を傾げながらブーツを脱いでズボンをたくし上げた。
血に濡れたズボンが肌に張り付いていてやりにくい。
大体血の染みって中々取れないんだよな…。
「…この先どうするつもり?」
傷口の治療をしながらシャリスが呟いた。
「んー。…あのさ、俺の故郷…サイルスに行かないか?俺の父親の蔵書、魔術について書かれた本が結構あったから」
提案してみたがシャリスの表情は優れない。
多分、シャリスの父親の書物の中に記載されていなかったから。時間が足りなくて全部は調べられなかったようだけど。
ヒントがあるとは思えないんだろう。
多分、シャリスの父親の書物の中に記載されていなかったから。時間が足りなくて全部は調べられなかったようだけど。
ヒントがあるとは思えないんだろう。
「父さんはフィリディア出身だから、フィリディアについての本色々持ってたっぽいし」
此処が父さんの故郷なんだと何度か本の挿絵を見せてくれた。
雪が降る中に聳え立つ城のシルエットはとても幻想的で格好良かったもんだ。
実際、住んでたのは全然幻想的じゃないジジィだったけど。
雪が降る中に聳え立つ城のシルエットはとても幻想的で格好良かったもんだ。
実際、住んでたのは全然幻想的じゃないジジィだったけど。