アットウィキロゴ
Place to stay
掲示板 掲示板 ページ検索 ページ検索 メニュー メニュー

Place to stay

ash

最終更新:

place0to0stay

- view
メンバー限定 登録/ログイン
【side:Ash】





此処はもうフィリディアではないんだな、と。
そう言ったシャリスの様子は何処か寂しそうに見えた。
仕方が無かったとはいえ、半ば強引に押して連れ出した自覚はあるから少し後ろめたい。

「帰りたいのか?」
「…いや、そうではないけど」

けど、と言ったきりシャリスはそれ以上口を噤んだ。
俺だって故郷にはそれなりに思うところがある。
それがどんな場所であろうと。

「…なぁ、シャリス、質問があるんだけど」
「何?」

顔を上げたシャリスは、今まで通りの無表情だった。
寂しそうにみえた様子なんて全然伺えない。

「人の精神に影響を与えるような魔術ってあるのか?」

此処最近、自分の考えがまるで自分のものじゃないような気がしていた。
シャリスが少なからず俺の様子が妙なことに気付いているのも、知ってる。
それでも繕えないほどに動揺している自分が居る。
確かに死は忌避しているけれど、だからといって此処まで引きずるほどじゃなかったはずだ。

眠るたびに見る、あのもう1人の自分が出てくる夢さえなければ。
何度も何度も俺に似た奴が偽善者と言い募り責めるあの夢さえ。

「…それも禁忌に分類されるものだ」
「コイツの力みたいに、か?」

軽く手を振るとシャリスが頷いた。
忌々しい、人を死に追いやる力。

「人の精神に関与できる魔術が行使できれば、人を意のままに操ったり狂わせたりできるだろう。それは自然の摂理に反する力だ」

意のままに操る、狂わせる…。
それはまるでどちらも自分に当てはまるような気がする。
このままずっとこの状況が続けば、確かに狂いかねない気がするから。

「何かあったのか?」
「いや、大したことじゃないんだけど。最近同じ嫌な夢ばかりみるから…あるのかなーって」

出来る限り軽く言ったつもりだった。
これ以上シャリスに負担などかけたくはなかったから。

「呪殺や蘇生もそうだけど、炎・水・風・地・雷の中には精神に関与する属性はない」
「…そうなのか?」
「だから仮にそういう魔術があるとするなら、『雪の結晶』のように特別なものだけだ」

もう一度手の甲を見てみた。
グローブを外してみれば乳白色に似た白っぽい石。
これがそんな大層な力を持つものだと、最初に見たときは思わなかった。
…これのような特別なものじゃないとそんな魔術を使えないというのなら。
やっぱりあの夢は俺が心の奥底で思っていたことだというのだろうか?

違和感を残しながらも、一先ず立ち上がった。

「そろそろ出発しよう、後もう少しだし」
「そうだな」


もう少しでレデニスに着く。
そしたら宿で休めるだろう。
ベッドでぐっすり休めれば、あんな変な夢なんてきっと見ない。

誰かが何処かで笑うような声が聞こえた気がした。






最近更新されたスレッド
ウィキ募集バナー