【side:蓉】
僕は昔から人との距離を測ることには長けていた。
人の顔色を窺いながら過ごすうち、いつのまにかそれが身に付いていたと言った方が正しいかもしれない。
相手がどういう反応や返答をすれば喜ぶかとか、相手が望む反応は考えればすぐに分かった。
人の顔色を窺いながら過ごすうち、いつのまにかそれが身に付いていたと言った方が正しいかもしれない。
相手がどういう反応や返答をすれば喜ぶかとか、相手が望む反応は考えればすぐに分かった。
ただ一人……あの人だけを除いては。
昔から、「良い子」「気の利く友人」「頼りになる先輩」「しっかりした後輩」。
人から好ましく思われる言動を選んでいた。
そうすることで人間関係は円滑になり、それは必ずしも自分にプラスに働くと信じていた。
人から好ましく思われる言動を選んでいた。
そうすることで人間関係は円滑になり、それは必ずしも自分にプラスに働くと信じていた。
…幼い日。
ヒステリックに叫ぶ母親を背に、父に手を引かれた施設へ預けられたあの日から。
不用意な発言は自分の居場所を脅かすことを知った。
ヒステリックに叫ぶ母親を背に、父に手を引かれた施設へ預けられたあの日から。
不用意な発言は自分の居場所を脅かすことを知った。
でも、あの人は違った。
あの人だけは、霊が見えるなんていうおかしな後輩を自分の傍において、僕が慎重に測っていたはずの距離を壊した。
あの人だけは、霊が見えるなんていうおかしな後輩を自分の傍において、僕が慎重に測っていたはずの距離を壊した。
決して優しい人ではなかったし、どちらかといえば自分勝手な人だったけど。
けれど、そんな人だからこそ、いつのまにか僕の中に入り込んで当然のように居座った。
けれど、そんな人だからこそ、いつのまにか僕の中に入り込んで当然のように居座った。
最初は強引な人だって呆れて、でも段々とそれが心地よくなって。
いつのまにかあの人と過ごす時間は愛しいものになっていた。
いつのまにかあの人と過ごす時間は愛しいものになっていた。
もしかしたら、そんな風に人を好きになったのは初めてだったのかも知れない。
…なのに。
僕はあの人を裏切った。
僕はあの人を裏切った。
こんなことしたくなかったとか、僕が望んだことじゃないんだとか。
言い訳なんか出来なくて。
それでもその事実を彼に知られたくはなくて。
言い訳なんか出来なくて。
それでもその事実を彼に知られたくはなくて。
あの人の隣に立つことが段々と息苦しくなっていった。
いつかあの人に事実が知れてしまうんじゃないかと不安になって。
裏切ったことを隠し騙している良心の呵責に耐えかねて。
いつかあの人に事実が知れてしまうんじゃないかと不安になって。
裏切ったことを隠し騙している良心の呵責に耐えかねて。
……彼の傍を、自分から離れた。
逃げたんだと、今なら認められる。
別の方法があったんじゃないかと思える。
別の方法があったんじゃないかと思える。
……しかし何もかもが今更で。
もうあの人は僕の傍には居ない。
もう僕はあの人の傍には居ない。
…全てはもう過去のことなのだ。
もう僕はあの人の傍には居ない。
…全てはもう過去のことなのだ。
変わってしまったのだ、何もかもが。
……僕自身も、色んなものも。
世界に見える色が、変わるほどに。
……僕自身も、色んなものも。
世界に見える色が、変わるほどに。
だから、あの後悔も、あの想いも…あの人も。
未だ燻ってるものも、いつかきっと忘れられるのだと、信じてた…。
未だ燻ってるものも、いつかきっと忘れられるのだと、信じてた…。