【side:聖夜】
蓉の言う住所に向かい、車が走る。
着いた先はそれなりに立派なマンションだ。
駐車場で車が止まると蓉が一言礼を言って車のドアを開けた。
降りる足がふらつくのを見て手を貸すべきかどうか迷った。
…本当は迷うことなんて無い、手を貸せば良いだけなのに。
着いた先はそれなりに立派なマンションだ。
駐車場で車が止まると蓉が一言礼を言って車のドアを開けた。
降りる足がふらつくのを見て手を貸すべきかどうか迷った。
…本当は迷うことなんて無い、手を貸せば良いだけなのに。
「どうせ聖夜は手伝わないだろ?俺、荷物纏めるの手伝ってくる」
慌てて降りた朔夜が蓉を支える。
その瞬間に感じたのは微かな嫉妬と羨望、独占欲。
今更だな、と自嘲の笑みが浮かんだ。
その瞬間に感じたのは微かな嫉妬と羨望、独占欲。
今更だな、と自嘲の笑みが浮かんだ。
「ああ、行ってこい」
犬を追い払うように手を払う。
2人の姿がマンションの中に消えるのを見てから背凭れに体重を預けた。
溜息をついて目を閉じる。
一気に疲れが出てきた気がする。
朔夜や蓉といった、気を張るべき相手が居なくなったせいだろうか。
2人の姿がマンションの中に消えるのを見てから背凭れに体重を預けた。
溜息をついて目を閉じる。
一気に疲れが出てきた気がする。
朔夜や蓉といった、気を張るべき相手が居なくなったせいだろうか。
「疲れてそうだな」
運転席からからかうような言葉が聞こえて目を開けた。
「…まぁな。悪かったな、2人のところを邪魔して」
「邪魔されんのはいつものことだし慣れてる」
「邪魔されんのはいつものことだし慣れてる」
朔夜は無類の猫好きで、飼っている白猫を溺愛している。
恋人の部屋に猫を連れていくほどのバカだ。
恋人の部屋に猫を連れていくほどのバカだ。
「今回の礼代わりに、今度一週間ほど猫預かってやるよ」
2人の時間をいつも猫に邪魔されている相手に告げて、再び溜息をついた。
どうせ猫を預かったところでエサをやってトイレの始末するくらいだし、大した手間もかけないが。
どうせ猫を預かったところでエサをやってトイレの始末するくらいだし、大した手間もかけないが。
「ああ、それでチャラにしてやる。…そろそろ戻ってくるようだけど?」
そう告げられて座りなおす。
思ったよりも早かった。
急なことだし準備にはもう少しかかるものだと思ったけど。
思ったよりも早かった。
急なことだし準備にはもう少しかかるものだと思ったけど。
怪我人には持たせられないと思ったのか、スーツケースを持った朔夜が窓越しに見える。
蓉はその後ろから困惑した表情で着いてきていた。スーツは着替えてきたらしい。
運転席の男が車から降りて朔夜から鞄を受け取るとトランクに入れる。
過保護な奴…いや、ノロノロ動かれるよりも厄介ごとを早く終わらせたいだけか。
蓉はその後ろから困惑した表情で着いてきていた。スーツは着替えてきたらしい。
運転席の男が車から降りて朔夜から鞄を受け取るとトランクに入れる。
過保護な奴…いや、ノロノロ動かれるよりも厄介ごとを早く終わらせたいだけか。
「お待たせしました」
躊躇いながらも再び乗り込んできた蓉が申し訳無さそうに言った。
「荷物、それだけで大丈夫なのか?」
「はい。これだけあれば仕事には支障はないので」
「はい。これだけあれば仕事には支障はないので」
どうせ最低限の物だけ詰めてきたんだろう。それも、ほぼ仕事の道具とかで。
少なくとも、怪我がある程度良くなったところで出て行くつもりで。
俺としてもそうしてくれたほうが助かるからそれ以上言うことは無く、そうかと頷いてその話題を終わらせた。
少なくとも、怪我がある程度良くなったところで出て行くつもりで。
俺としてもそうしてくれたほうが助かるからそれ以上言うことは無く、そうかと頷いてその話題を終わらせた。
暫く車の中には沈黙が続き、蓉のマンションから20分ほど走ったところで俺の住むマンションが見えてきた。
マンション前の駐車場に停車してもらい、車から降りる。
シートベルトを外そうとした朔夜を止めると不思議そうに此方を見てきた。
マンション前の駐車場に停車してもらい、車から降りる。
シートベルトを外そうとした朔夜を止めると不思議そうに此方を見てきた。
「もう良いから朔夜は帰れ、そいつと約束があったから一緒に居たんだろ?」
「一緒に飲もうって言ってたけど……分かった、何かあったらいつでも連絡頂戴」
「一緒に飲もうって言ってたけど……分かった、何かあったらいつでも連絡頂戴」
隣の奴が不満そうにしているのには気付いていたんだろう。
アッサリ引き下がると、窓越しに蓉に何かを手渡した。
その様子を見ながらトランクを開けて荷物を取り出す。
アッサリ引き下がると、窓越しに蓉に何かを手渡した。
その様子を見ながらトランクを開けて荷物を取り出す。
「これは…?」
「聖夜の家の合鍵。じゃ、無理しないようにね」
「聖夜の家の合鍵。じゃ、無理しないようにね」
バイバイ、と朔夜が手を振っている間に窓が閉まった。
すぐに走り出した車は見送らずに荷物を持ったままマンションのエントランスに入る。
すぐに走り出した車は見送らずに荷物を持ったままマンションのエントランスに入る。
「聖夜、自分で持ちますから…」
「良いから早く来い。辛いのなら手、貸してやろうか?」
「良いから早く来い。辛いのなら手、貸してやろうか?」
間接的にとはいえ俺のせいで負った怪我だ。
郵便受けに入っていたダイレクトメールを取り出しながら一応気遣って見せた。
郵便受けに入っていたダイレクトメールを取り出しながら一応気遣って見せた。