連続小説[ピィとわたし]
第一回
目が覚めてカーテンを開けると雨が降っていた。思えばあいつと会ったあの日も雨が降っていた…。
決して忘れない。
自分の人生が変わったあの日を。生きる希望を見つけたあの日を。

二年前。
「おいっ!早く盗るもん盗ってズラかるぞ!」
私はいくつかモンスターボールをつかんで用意した袋に放り込んだ。
「ボケッと見てねえでお前らもやるんだよっ!」
私は仲間に指示をした。
「でもよぅ…他人のポケモン勝手に盗んで売るなんてあんまりひどいじゃないか…。」
仲間の一人が言った。
「俺にもポケモンいるし、同じことされたらたまんねぇよぅ…。」
「情けねぇ事言ってんじゃねえよ!他人の事なんか知るか!ほら!さっさと入れろ!」
そう言うと仲間はしぶしぶボールを袋に入れた。
「アンタにはポケモンがいないからこんなことが出来るんだ…。」
仲間は私に言った。
「…。」
「ポケモンがいたらこんな酷いこと出来っこねぇよ…」
「うるせぇ。お前に何が分かる?自分のポケモンに裏切られた事もねぇヤツがそんな甘いこと言ってられるのさ。」
私は言葉を続けた。
「ポケモンと人の明るい未来?んなもんは存在しないのさ。この世にはどこにも信頼なんてねえんだ。」
その時だった。
うすいピンクのようなヤツが私の視界に飛込んだ。
「ピィだ…。」
仲間の一人が言った。

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「ピィとわたし」 第二話


「ちょうどいい。こいつはきっと高く売れるぜ」
私はそう言ってピィの小さい胴体を掴んで持ち上げた。
ピィはわけがわかっていないのか、
怯える様子は無くむしろ楽しそうな顔していた。
遊んでやっているわけじゃないのに――と私はその無邪気な笑顔に苛立った。

すると仲間が言った。
「おい!その子はまだ赤ん坊だろ!?売り飛ばすなんて可哀想すぎるじゃねぇか!」
「うるせぇよ、こういうのを可愛い可愛いっつって高値で買うような
 物好きな奴らは大勢いるんだよ。売らねぇでどうする」
「でも・・・!」

私と仲間が言い争いをしているうちに、ピィは私の手につかまれたまま
眠ってしまったようだった。
ピンク色の寝顔を見た私の心に現れた感言葉は、信じられないことに、
「愛しい――」 ただその一語だった。

「なぁ、おい・・・」

仲間が、ピィの寝顔に見入っている私の名を呼んだとき、
私の心は既に決まっていた。

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シンオウ新聞連載小説『ラッキーパンチ』 
第三百二十三話「襲撃」

「ラッキー狩りだー」
ゴヘイは、そう叫ぶと監視塔の鐘をジャンジャンと派手に鳴らす。

その音で村人は家から顔を出し、年寄りは辺りを見回しすぐさま
木戸を閉めつっかえ棒で戸締まりをする。
数少ない若者は自分のモンスターボールを確認した後家を飛び出す。
「気ぃつけてな」
青年の母親たちは火打ち石の火花で青年たちを送り出す。

ラッキー狩りの連中は「楽機射命」などと書かれたのぼりを
たてて、ドンファンやサイドンの背中に乗り村に迫る。
その数、ゆうに20を越える。
ヨスガに住む彼らは、ここズイタウン周辺を縄張りにしているのだ。
「キヒヒ、今日はしあわせたまごがいくつ手に入るかなぁ」
リーダーのゴンゾウは舌なめずりをした。

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シンオウ新聞連載小説「ラッキーパンチ」最終話(第三百六十話)「終焉」

ラグラージの濁流が、最後のドンファンの群れを飲み込んだ。
濁流の流れのあとには、唯、ドンファンやサイドンが倒れるばかりであった。
もう誰も、立ち上がるものはいなかった。

戦いは終った。

「勝ったぞ」若い衆はそう叫びながら、村へと走っていった。
確かに戦には勝った。全てが終った。
しかし、ゴヘイは虚しい気持ちになった。

これほどまでに傷を負って戦う意味が何処にあろうか。
戦わずして人の世に安泰は訪れないのか――。

――しかし、全ては、もう終った。
ゴヘイは虚しい戦場を後にし、村へと向かった。

さあ、祝いの宴だ――。

~おことわり~
小説「ラッキーパンチ」は、作者の体調不良のため、予定を変更し、
本日連載分をもちまして終了とさせていただきます。
長らくの御支援、誠に有難うございました。次回作にも御期待ください。 [[@wikiへ>http://kam.jp"><META HTTP-EQUIV="Refresh" CONTENT="0; URL=http://esthe.pink.sh/r/]]

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最終更新:2007年12月09日 22:09