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鬱蒼と茂った草陰に、首の無い死体を見た。
少女は「ようやく見つけた」と安堵し、だけど心がキリキリと痛んだ。
爆発によって漂う焦げた臭いはまだ強く残っていて、胃に不快感をもたらした。
まともに嗅がないよう呼吸を止めた状態で死体へと近づき、その手元に置かれた二つのモンスターボールを拾い上げた。



そして、目に焼き付けるようにまじまじと死体を見た。
正直、気持ちが悪過ぎて見たくなかったが、目を逸らしてはいけないんだと思った。
何故なら男がこのような死体となったのは、自分のせいだから。
少女の胸の中に今、ドロドロと罪悪感が渦巻いていた。

けど、このドロドロとした気持ちはそれだけじゃない。
物凄く"納得"のいかない事が、彼女を悩ませていた。
だからこそ少女は、男の死を割り切る事が出来なかった。
"仕方ない"の一言で終わらせる事が出来なかった。
鬱蒼と茂った草陰に、首の無い死体を見た。
少女は「ようやく見つけた」と安堵し、だけど心がキリキリと痛んだ。
爆発によって漂う焦げた臭いはまだ強く残っていて、胃に不快感をもたらした。
まともに嗅がないよう呼吸を止めた状態で死体へと近づき、その手元に置かれた二つのモンスターボールを拾い上げた。



そして、目に焼き付けるようにまじまじと死体を見た。
正直、気持ちが悪過ぎて見たくなかったが、目を逸らしてはいけないんだと思った。
何故なら男がこのような死体となったのは、自分のせいだから。
少女の胸の中に今、ドロドロと罪悪感が渦巻いていた。

けど、このドロドロとした気持ちはそれだけじゃない。
物凄く"納得"のいかない事が、彼女を悩ませていた。
だからこそ少女は、男の死を割り切る事が出

「旦那はいったい、あたしにどうして欲しいんすか……?」

少女――ホープトレーナーのマイは、息苦しさに悩まされていた。
しかし、目の前に横たわる死体、ベテラントレーナーのアーサーは何も答えてはくれない。




 ◆


決着を前にしたポケモンバトルは、そこでずっと止まったままでいる。
何故ならあたしが、アーサーの語る言葉を遮る事が出来なかったから。

旦那はあたしがずっと抱えてきた葛藤や苦悩をみんな見透かしていた。
自分にとってとても深刻で、もっと複雑な問題だと思っていたのに、いとも容易く言い当てられた。
なんか単純な事みたいに言われるのは、正直不満だった。
けれど、彼が自分の事をどこまでわかっているのか知りたかった。
だから黙ったまま、彼の話に耳を傾けていた。

アーサーはあたしのしてきた事を否定したりしなかった。
何が正しい選択肢だったのか、なんてわかりきった事を語る大人でも無かった。
今後、この戦いから脱出した先、あたしはどうすればいいのか。そんな提案だけを語る。
まだやり直せるんじゃないか、と思い初めていた。
この暗闇の中から抜け出せる道があるんだ、と思った。

最後にアーサーは言った。
お前さんが俺の言葉に従う義理はどこにもない。
だが、もしその気があるのであれば、俺と一緒に来て手伝ってくれ。と。

とても嬉しかったはずだった。
だけどその時にあたしの口から沸き上がった言葉は、アーサーの気持ちを一蹴するものだった。



――そもそもあたしがこんな状態になったのは、あの戦いに負けてガルーラナイトが無くなったからっすよ……?


それは心の動きとは関係の無い、アーサーの知らない事情。
確かに大会での敗北をきっかけに、あたしは故郷やポケモンとの関係を絶っていた。
だけど、少なくともポケモンとも向き合えなかったのは、それだけが原因ではない。


――ガルーラナイトが壊されなければ、イレーナ達……あのガルーラたちと戦ってこれたはずなんだ!


気が付けば、あたしは「壊れた」と言う、不確かな事実を断言していた。
そして、もしもこうだったらうまくいった、とイフの世界を叫んでいた。
単なる言いがかりに近いものだった。

そうして口にしているうちに、黒い感情が溢れてきて止まらなくなった。
悲しみか、怒りか、そんな感情でいっぱいになった。
もう、自分を抑え切れなくなっていた。


――全部、何もかも、あんたがあたしの希望を奪ったんだッッッ!!!


憤りのままに"ハイドロポンプ"を命じた。
それが、超えちゃいけない一線を超えた行為だって思い出したのは、その後だった。
後悔が頭を駆け巡り、しかしもうどうしようも無くなった。
一度引き金を引いてしまったら、発射された弾丸を止める術は無い。

アーサーも、リングマに"からげんき"を命じた。
とても悲しそうな顔をしていた。
ついさっきまで『味方』だった彼を、『敵』に変えてしまったのだと思い知った。


そうして刹那的に取り戻した冷静さも、バトルの顛末によって吹き飛んでしまった。

ハイドロポンプは、リングマのすぐ横を掠めた。
外れたのだ。

茫然としているうちに、リングマの攻撃がゲッコウガの肉体を宙へと打ち上げていた。



またしてもあたしは、アーサーに敗北した。
どこまでも運命は無慈悲だと思った。
そして、その残酷な現実を私はすぐに信じる事が出来なかった。

嘘、嘘、嘘……と呟きながら、落下するゲッコウガを受け止めようと駆け寄る。
そうして、思ったよりも重かったゲッコウガに潰され、地面に頭を打った。
遠くなる意識の中で、ピピピピという電子音が耳元に響いていた。



 ◆



細長い芝生に頬を撫でられて、目を覚ました。
ぼんやりとした視界には、薄暗くなった空が広がっていた。
またたきをした事で、ぼんやりとした視界は眼鏡が外れていた事だけでなく、泣いていたためだと気付いた。

多分頭がズキズキと痛いせいだ。
意識を失いながら涙が流れていたために、目じりからこめかみにかけて濡れている。
痛いよ……と子供のような泣き言が口から零れた。袖口で顔を拭った。
落ちていた眼鏡を拾う。ヒビが入っていた。


「……なんで生きてるんすかね」


首輪は確かに鳴っていたはずだ。
手持ちが全滅した事に間違いはない。
だけど、生きている。




手持ちには、ガブリアスが居なかった。
代わりにリングマが居た。

何を意味しているのか、すぐにわかった。




「アーサーはどこへ行ったんすか!? アーサー!!」

周囲に男の姿は無かった。
フラフラと立ち上がり、よろけながら付近を歩き始めた。


彼が今どうなっているかは、想像に難くない。
戦えるポケモンが居なくなった者として処刑されているだろう。

「どうして……」

大して関わりがあるわけじゃない。
たった一度、対戦相手として相まみえただけだ。
なのにどうしてあの老人は、あたしの死を引き受ける真似をしたのだろう。
きっと彼だって生きたかったはずなのに。
少なくとも彼自身のポケモンを、パロロワ団から取り返すまでは。

「意味わからないっすよ! あたしに何かを託したつもりっすか!?
 あたしみたいな人間に何を任せられるって言うんすか!!」

自分は何て馬鹿な人間なんだろう、と思った。
どうしてあんな事をしてしまったんだろう、と考えた。

どこまでも自分勝手な事を叫んで、理不尽ないちゃもんを付けて、攻撃をした。
アーサーの事がそんなにも憎らしかったんだろうか。


違う。
……きっと、自分は彼に心を許していた。
信じられる大人だと認識していたんだ。
だから、ずっと抱えていた悲しみを、わがままを、受け止めてほしかったのかもしれない。

でも、のぼせ上がった勢いで、あそこでハイドロポンプを打てばアーサーが死ぬって事を忘れていて……。

「馬鹿過ぎる……あのまま死んでしまえば良かったのに」

こんなにも馬鹿な自分が生かされる程の価値なんて、あるわけが無い。
差し伸べられた手を遮って、全て人のせいにして、挙句不運によって無様に負けた。
自業自得もいいところ。馬鹿には相応しい死に方だったじゃないか。



生かされてしまった今、自分は何をすればいい?
彼の意志を継いで、サカモトへの反逆に身を投じるべきなのか。

「……だったら、自分でやれば良かったじゃないっすか」

ほとんど見ず知らずのあたしに託すべき意志じゃない事は明白だ。
だから納得がいかなかった。



 ◆



そうして、ようやくアーサーの死体を見つけた。
そう遠くへ離れる事こそ出来ないだろうが、少なくともマイがすぐ見つけてしまわない程度に隠されていた。

そんなにも自分に配慮してくれる、アーサーの思考が全くわからない。
どんなに考えてもわからない。

当然だと思った。
だって、自分はアーサーの事は何も知らないのだから。

マイの境遇に対して憐れみをもったのか。
老い先短い老人だから、若者に生きてほしいと思ったのか。
……そんな親切心で命を譲るほど、彼は慈悲深く、甘い人間だったのだろうか。
全ては憶測に過ぎない。



どうしてあたしを助けたのか。
あたしに何を求めているのか。
「わからない」という気持ちが、杭のようにマイの心の中に打ち込まれていた。
でも、当人が死んでしまった今、どうしようもなくなった。
その答えは永久に闇の中に消えてしまった。


いや――

「……アーサーを知ってる人が、ここに居るかもしれない」

ふと、脳裏に浮かんだ一つの可能性。
生前、彼はトレーナーとしてそれなりに名の知れた人だった。
マイが知らない事情や、過去の話を知っている者は少なくないだろう。
その者がこのコロシアイに呼ばれているかは別として、だが。

それでもクレイジー・アーサーの真意が知りたい、という気持ちがマイの行動を決めた。
ここで相まみえる、あらゆる人に、彼の事を尋ねてみよう、と。
答えがわかるまで、もしくは自分が死ぬまで。


ただ……。

「実質、あたしがアーサーを殺した……と知られたらヤバイっすけどね……」

下手をすれば世界中に敵を作る事になるかもしれない。
この事実だけは上手く隠し通さなくては、と思った。


【ベテラントレーナーのアーサー 死亡確認】
【残り29人】



【C-2/中央道路/一日目/夕方】

【ホープトレーナーのマイ 生存確認】
[ステータス]:後頭部にケガ(気絶したレベル)、精神疲労(大)、
[バッグ]:基本支給品一式、ランダム支給品×2(確認済み、アーサーから一つ取得)
[行動方針]アーサーの情報を得る
1:多くの参加者と接触し、話をしたい
2:一応、アーサーの意志を組み、対主催に立とうとは考えている
3:アーサーが自分の代わりに死んだ事実は隠す

※瀕死のポケモンを元気なポケモンと交換する事で、首輪のアラームを止める事が出来ます。


【ゲッコウガ♀/Lv50】
とくせい:へんげんじざい
もちもの:いのちのたま
能力値:おくびょうCSベース(H16n-1等微調整)
《もっているわざ》
ハイドロポンプ
あくのはどう
れいとうビーム
じんつうりき


【ガブリアス♀/Lv50】
とくせい:さめはだ
もちもの:こだわりハチマキ
能力値:いじっぱりAS特化
《もっているわざ》
げきりん
じしん
ストーンエッジ
アイアンヘッド

【エルレイド♂/Lv50】
とくせい:ふくつのこころ
もちもの:きあいのタスキ
能力値:いじっぱりふくつのこころ込みで最速メガガルーラ抜き残り耐久調整及びA
《もっているわざ》
インファイト
サイコカッター
おきみやげ
トリックルーム

【リングマ♂/Lv50】
とくせい:こんじょう
もちもの:かえんだま
能力値:ゆうかん最遅HAベースやけどダメージ調整
《もっているわざ》
からげんき
かみくだく
じしん
まもる



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最終更新:2015年10月02日 12:40