アットウィキロゴ
そろそろ頃合いかな、とつりびとのサエグサは釣り糸を引き上げた。

水平線に沈もうとする夕日は、辺りを鮮やかなオレンジに染め上げる。
太陽と反対側の空は薄暗く、ぽつぽつと星が輝いていた。
サエグサの丸まった背の方には、コイキングが山積みに積まれている。
彼らを収納するモンスターボールなんて無いので、こんなぞんざいな扱いになざるを得ない。
だが、彼らは丈夫なのでこのくらいなら平気なのだとサエグサは知っていた。
そこそこ時間が経っていたが、コイキングたちはしきりにびたんびたんと体を弾ませ、ヒレをひらひらと動かしていた。

「釣りはいいねぇ、人類が生み出した文化の極みだ」
『おんみょ~ん』
「いやぁ充実の一日だったな」

今日の収穫を眺めて、サエグサは満足げに呟いた。
キラキラと光るウロコは、さながら赤い財宝の山だ。
彼はお宝を一匹手に取って、海へと放流した。
キャッチアンドリリース。
逃がす事に名残惜しさは無い。釣る事自体が彼の目的なのだから。
水しぶきが高く上がり、赤い影は海へとするりと去って行った。
これを数十回繰り返した頃には、財宝の山はさっぱり無くなっていた。


果たしてどれくらいの時間が経ったのかな、とサエグサは思った。
彼がこの会場で目覚めた時、確か太陽はてっぺんにあったはずだ。
となると正午から夕方まで、大体6時間近くは経過したのだろう。

「俺の罠も作動した様子は無ぇようだし、その間誰も来なかったんだな。
 いやぁ釣りが邪魔されなくて良かったよ。なぁミカルゲ」
『おんみょ~ん』

ミカルゲは平坦な鳴き声で答えた。

楽しみが終わったところで、ここで「さて、これからどうしようか……」だなんてボケた事は言わない。
サエグサはこの後どうするかを、ちゃんと考えていた。
彼はマイペースだが、ぼんやりと釣りだけに集中する男では無いのだ。

ただ別に、特別なにかスゴい事をしてやろう、とは思ってない。
基本的には自分の安全を優先し、どこか目立たない場所に隠れていようと考えている。
ただし、他の参加者と接触する場合は、必ず一対一の状況に限定する。
危惧すべきは複数の参加者に立て続けに襲撃される事。それだけは避けなくてはいけない。
……と、その程度だ。
幸運な事に、先の釣りでホエルオーのモンスターボールを入手したので、手持ちは三体だ。
シングルバトルであれば、そこまで苦戦しないだろう。いやー釣りやってて良かったわー、釣り最高。

とりあえず、協力者が出来るまでは慎重な行動を心掛けたい所だ。
その上でとても便利なのが、このポケッチの『つうしんサーチャー』という機能。
これを定期的に確認すれば、不意の襲撃だけは防ぐ事が出来ると言って間違いないだろう。

ポケッチの赤いボタンを何度か押すと、液晶画面にはこのように表示される。




 つうしん じょうきょう


20メートル   00
50メートル   00
100メートル  00
200メートル  00



それぞれ0~20m、20~50m、50~100mの距離に居る参加者を表示する。
画面上の三角ボタンをタッチする事で、探索距離を1キロまで伸ばす事が出来る。

ちなみにこれは周囲360度を全てサーチしているわけではない。
ポケッチの上部を向けた方角の、直線距離で判別している。
海側を向いている今、サーチ出来ないのは当然。
しかし、身体をゆっくりと回転させてみると……。



 つうしん じょうきょう


200メートル  00
300メートル  00
500メートル  00
1000メートル 01



おおよそ南側の方、500m~1000m間に参加者がいると表示された。
警戒はすべきだが、まだ慌てるような時間では無いだろう。

「近づかれる前に移動だな。んじゃ移動するぞー、戻れミカルゲ」

サエグサはミカルゲをモンスターボールに戻し、ウルガモスのモンスターボールに手をかけた。
とりあえずウルガモスに『そらをとぶ』を覚えさせ、上空から街の様子なんかを見ておきたい。

「おぉっっとと、手が滑った」

デニムのポケットに指が引っかかり、ボールがコロンと落ちた。
海の方に転がる前にささっと屈んで手で押さえた。

「危ねぇ、せっかくの手持ちが海に落っこち……」

ふと、視界の端に不自然な影が見えた。
細長い棒状の影だった。

「ん?」

これは? と言いかけた時。
影の中から銀色に光る何かが真っ直ぐに突き出してきた。
手に握られたボールを、またしても取り落とす。

「ぐぇッ……」

襲撃だと認識出来た時、既に首の真ん中を深さ2センチほど斬られていた。
何者かのギルガルドの放った『かげうち』だ。
気管を伝って肺に流れ込む血に苦痛を覚え、咳き込みながらもボールを拾おうとする。
しかし、当然そのような猶予など与えられるはずもない。

ギルガルドの『せいなるつるぎ』が、サエグサの腹部を貫く。
バケツの返したような水音と共に、黄色い芝生が赤黒く染まった。
ごぽごぽという呻き声が響くうちに男の動きが止まる。
ウルガモスのモンスターボールは最後まで閉じたままだった。


 ◆


無数に張り巡らされた細長い糸が、ハンターのアギトの目の前でキラリと光る。
慎重に移動していたため、トラップに引っかかる事無く済んだのだ。
彼は己のギルガルドが、身体を赤く染めて戻って来たのを確認し、モンスターボールを一つ投げた。
タブンネが飛び出した。

「この糸に向けて『こごえるかぜ』だ」

ひゅうっと吹き付けた白い風が、周囲の木々もろとも粘性のある糸を凍らせる。
軽く蹴りつけてやると、糸はペキっと簡単に砕けた。

倒れ伏したつりびとの元へ行き、タブンネに『だいもんじ』を命じた。
当然タブンネは嫌がった。しかしどれだけ嫌がろうと、ポケモンはトレーナーには逆らえない。
ほどなくして、刃物で切り刻まれた人間は、黒くボロボロのマネキンのようなものへ変わった。

アギトはつりびとの持ち物を回収する。
回収したものの中に、ポケッチが含まれていた。
ちなみに今、彼自身の腕にはポケッチが着いていない。



数刻前、サザンドラに乗り上空からつりびとの姿を確認した。
つりびとがチラチラとポケッチをチェックしていた事から、『つうしんサーチャー』を使っている事がわかった。
そうして彼は考えた。『つうしんサーチャー』が探知しているのは、他者のポケッチでは無いだろうか、と。
その仮説を実践するために、林の中――ここから500mちょっと離れた位置――にポケッチを隠した状態で接近した。
張り巡らされたトラップの向こう側にギルガルドを出現させ、『かげうち』で奇襲を命じた。

「反応無し、か」

つりびとのポケッチは液晶が消えたまま、ボタンを押しても動かない。
電波も発信されてないようで、自身のポケッチから『つうしんサーチャー』を使ってもサーチされる事は無かった。
持ち主の死亡が確認されると、機能を停止させられるのか?

「予備として使わせちゃあくれない、ってか」

それほど期待はしてなかったので、あまり気にしなかった。
端を指先でつまんだ状態から、バッグの中へすとんと落とした。


現在、彼の手持ちは六体となった。
ギルガルド、サザンドラ、タブンネ、ミカルゲ、ウルガモス、ホエルオー。
運が良い、と思った。バランスもそれほど悪くない。
夕日を背にして、アギトは小さくほくそ笑んだ。
殺戮は続く――。



【つりびとのサエグサ 死亡確認】
【残り28人】



【A-2/低地/一日目/夕方】

【ハンターのアギト 生存確認】
[ステータス]:憎悪
[バッグ]:基本支給品一式、不明支給品×1、サエグサのバッグ(基本、不明×1、ポケッチ)
[行動方針]対“人間とポケモン”
1:人間にポケモンたちとの関係を考えなおさせる程の傷痕を残す。
2:1のためにポケモンにてできるだけ残虐に人を殺す。
3:タブンネは徹底的に壊し、その上でトレーナー(ノエル)と再会させる。だが別にトレーナーの生死にはそこまで執着する気はない。

※ポケモンを殺すことを禁じられていることを把握しました。
※ノエルの名前を把握しました
※自身の目的に沿った構築にしたようです。
※サエグサのポケモンコンバータは拾いませんでした。

▽手持ちポケモン
◆【サザンドラ/LV50】
とくせい:ふゆう
もちもの:???
能力値:???
なつき度:0
《もっているわざ》
かみくだく/りゅうのはどう/気合球/????

◆【ギルガルド/LV50】
とくせい:バトルスイッチ
もちもの:???
能力値:???
《もっているわざ》
アイアンヘッド/キングシールド/かげうち/せいなるつるぎ

◆【タブンネ】
とくせい:いやしのこころ
もちもの:タブンネナイト
能力値:すなおHBぶっぱ
《もっているわざ》
てだすけ/だいもんじ/ムーンフォース/こごえるかぜ

◆【ミカルゲ/Lv50】
とくせい:すりぬけ
もちもの:いのちのたま
能力値:防御、素早さ特化
《もっているわざ》
のろい/さいみんじゅつ/かげうち/ギガインパクト

◆【ウルガモス/Lv50】
とくせい:ほのおのからだ
もちもの:もくたん
能力値:特攻、素早さ特化
《もっているわざ》
ちょうのまい/だいもんじ/むしのさざめき/そらをとぶ

◆【ホエルオー/Lv50】
とくせい:????
もちもの:????
能力値:????
《もっているわざ》
????


第42話 おきみやげ 第43話 うっかりや 第44話 そこに空があるから

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2015年10月02日 12:40