結論から言えば、捜査は袋小路に入っていた。
事件の概要としては、複数の男が巨大な刃物で斬殺された……というもの。
だが、状況が異常極まりなかった。
死体の倒れ方から、犯人は男達の後から続いて、倉庫の入り口から入って来たのではなく、最初から中に居たとしか思えない事。
男達は銃を発砲して抵抗したにも関わらず、逃げようとする事さえ出来ずに皆殺しにされている事。
床に落ちていた銃弾からは、血液反応が検出されず、銃弾自体何かに当たった形跡が無い事。
頭部から臍の辺りまで斬り裂かれている者、首を斬り落とされているもの達も、鮮やか且つ瞬時に切断されている事。
こんな斬殺死体を作るのは凡そ人間には不可能という事。
何者かが被害者達を殺害するべくこの倉庫の中で予め待ち伏せしていたとして、その犯人は、人間をほぼ両断出来るほどの巨大な刃を持ち込み、銃撃をものともせずに全員を斬殺。
しかも人間の脛骨を瞬時に斬り飛ばし、背骨を縦に切り離すという離れ業を行い、何故か倉庫の床と壁を破壊して、銃器を全て持ち去った……という事になる。
理解出来ない……。という鑑識の一人の呟きが、この事件を表していた
【やっぱりサーヴァント?】
【だろうね、ここで戦ったかどうかは判らないけど】
忙しく動き回る鑑識を横目にアールは北岡と念話を交わす。
宜野座は居ない。警官達も三分の一以下に減っている。
アールが通報して警察が来た直後から、街の方で連続して発生した事件に対応する為に、ここに居た人員を割いたのだ。
駐車場が停めてあった車諸共完全に破壊され、隣接するビルの壁に大穴が穿たれた事件。
自然公園で三度に渡って轟音と震動が断続的に発生し、地面に大穴が穿たれ、複数の木が折れていた事件。
住宅街から化け物が人を襲っているという複数の通報が有った直後、大規模な爆発事故が発生。あるアパートの住民が皆殺しにされていた事件。
アパート街で発生した、何かが墜落したかの様な轟音と震動に続いて発生した火災。
何処ぞの軍隊でもやってきて戦闘が生じていると言われても納得出来るほどの事態が立て続けに生じたのだ。
夜間勤務の者だけでは到底人が足りず、勤務時間外の者を呼び出したり、他の現場から人員を駆り出して向かわせているのだ。
事件の報せにを聞く度に落ち着きを無くしていった宜野座は、住宅街で発生した大量殺人の報せに遂に飛び出していった。
─────どうするかねえ。
すっかり酔いの醒めたアールは胸中に算段する。
宜野座は確実にマスターだ、でなければ此処に宜野座があのタイミングで 表れた経緯が説明つかない。
そして宜野座はアールがマスターであると認識している。少なくとも疑っている。
でなければ、あれだけ動揺しながらも此処に留まり続けた理由が無い。
最後に入った報せに飛び出して行ったのは、前の二件と異なり、事件の内容が大量殺人だったからだろう。
【アーチャー。サーヴァントの気配は】
【消えたよ】
【やっぱりか】
宜野座は黒。マスターであり、サーヴァントは北岡が見たセイバーだろう。
【好都合と言えば好都合だな】
【彼と組むのかい?】
【宜野座は信用できるからな】
宜野座とは短い付き合いだが、聖杯戦争に乗る様には見えない。宜野座はサーヴァントで言うなら〈秩序・善〉に属する人間だ。街を破壊し、NPCを巻き込む聖杯戦争の様な代物は、ハッキリと嫌うだろう。
のっぴきならない事情があって、乗らざるを得ないとしたら、宜野座の性格から考えて、苦悩なり決意なりが顔なり振る舞いなりに表出するだろう。
だが、そういうものは、宜野座には一切見られなかった。宜野座は副芸が得意そうには見えないし、きっとマスターとしての宜野座は、彼本来の性質に沿ったスタンスで聖杯戦争に臨んでいるのだろう。
アールも北岡も聖杯に託す願いを持ってはいるが、これは自分達以外の全てと対立する事を意味しない。
最終的に自分達が勝っていなければならない……という類の願いでは無い。
北岡の願いは少し難しいが、アールの願いに関して言えば、元の世界への帰還である。
要するにアールでなくても勝ち残ったマスターが、聖杯戦争に巻き込まれた者達の帰還を望めば済む。
アールの願い事は他陣営との調整が可能な類のものだった。
宜野座にしたところで、アールが北岡から聞いた朝倉威の様な輩に聖杯が渡るよりも、アールが獲得する方を良しとするだろうし、宜野座自身も帰還を望んでいるだろう。
【それに、彼奴とは妥協点を見出せる】
街を荒しまわる主従を討ち、聖杯戦争の黒幕を打倒して元の世界へ帰還する。
宜野座とはこの条件で妥協が出来る筈。
それに、従えているサーヴァントは、北岡の目撃したセイバー。
アールは正々堂々正面切って闘う……という思考の男では無い。
アールにとって”殺し合う"という状況は下の下を通り越して論外。アールの流儀とは"只々一方的な殺し"。これに尽きる。
宜野座のセイバーが敵を釣り出し、北岡がマスターを仕留める。叶わない時は援護射撃。
このやり方ならば、少なくともアールと北岡は安全圏に居ながら聖杯へと近づく事が出来る。
宜野座にしたところで、北岡に敵サーヴァントと正面切って戦え、などと強いるのでは同盟を組む意味が無いのは説明すれば理解するだろう。
北岡はアーチャークラスでステータスも正面から殴りあうのは不向き。
クラス通りに、セイバーが前衛。アーチャーが後裔。というフォーメーションが妥当なところだ。
【それで異存はないよ】
北岡からの肯定。北岡にしたところで、正面切っての殴り合いは得手としない。アールの言う"一方的な殺し"に賛成だった。
【それでどうする?もうここに居ても意味なさそうだけど】
北岡の問い掛けにアールは思案する。
【気になるのは自然公園で捕まった二人だな】
少年の方は不明だが、少女の方は顔に奇妙な刺青が入っていたそうだから、確実にマスター。
ロールを利用すれば簡単に接触出来るが、少女の方は意識を喪った状態で病院に送られている為、即座に接触出来るのは少年の方になる。
だが ─────。
【会いに行くとするなら男の方だな。だが。一人で会いに行くのは止めといた方が良いだろうな】
【そりゃまたどうして】
【もしマスターだった場合、戦闘になるかも知れない。相手の戦力か不明な状態では危険を冒す様な真似は避けたい…………。それに、宜野座を刺激したくない】
マスターかも知れない相手に、一人で会いに行ったら、宜野座に警戒心を抱かせるだろう。同盟を組む予定の相手に要らざる疑念を抱かせるのは避けるべきだった。
【大丈夫だと思うけどね。大人しく警察に捕まるって事は、まともな人間って事か、少なくとも警察から指名手配されるリスクを考えてられるって事だから。損得勘定が出来るっていう事だ】
【どっちにしろ宜野座を刺激するのは避けたい。ソイツがマスターならまだしも、マスターじゃ無かったら最悪だ】
明らかにサーヴァント同士が激突した公園で身柄を拘束された少年。
サーヴァントに警官を排除させなかったのは、マスターかサーヴァント何方かが良識を弁えている為か、サーヴァントを斃されてしまったか。
少年がマスターでなかった場合、只宜野座の疑念を招くだけという結果に終わる。
【最悪只戦闘に巻き込まれた只のNPCって可能性もある。病院送りになった女の方は、確実にマスターだ。こっちは戦闘になる可能性が有る】
【確かに、どんな相手か判らない以上、用心しておかないとね。けど、ずいぶん彼に気を遣うね】
【当然さ。どんな奴かも判らない相手より、勝手の知れた奴の方がやり易いからな。
それに、この死体を作ったのはアンタだと思われているかも知れない】
【確かにね。俺の武器で斬殺死体は作れないけど、サーヴァントなら出刃庖丁の一つも有れば充分だ】
二人が互いにしか聞こえない声で会話していると。拷問用具や性具を置いてある部屋から鑑識が真戸暁に報告する声が聞こえてきた。
【金髪が見つかった……か。アーチャー、死体の中に居た?金髪】
【居たけど染髪だった。地毛じゃない】
【つまり此処で殺しをやったサーヴァントはデカイ刃物を持っていて、マスターは金髪……と】
【殺しをやったのとは別のサーヴァントのマスターかも知れないけれど、金髪のマスターには気をつけた方が良いだろうね】
【情報は早さが命……か。精々高く宜野座に売ってやるか】
そうと決まれば話は早い。アールは、宜野座の後を追って住宅地へと移動すべく、真戸暁にこの場を離れて住宅地へ向かうべくタクシーを呼ぶ事にした。
【F-2/廃倉庫/1日目 夜(23:15)】
【
アール(レナート・ソッチ)@ヨルムンガンド】
[状態] 健康
[令呪]残り3画
[装備] スマホ
[道具] 銃
[所持金] 普通 ぬ
[思考・状況]
基本行動方針:元の世界に帰る
1. 鬼兵隊について調べる。
2.警察の捜査に協力する。
3.宜野座と接触して同盟を持ちかける。
4.自然公園で捕まった二人と接触する。
[備考]
宜野座がマスターだと確信しました。
D-2ビルに面した駐車場) D-4住宅街) E-2(アパート街の側の道路)E-3(自然公園) F-2/廃倉庫/
で起きた事態を警察に通報された範囲で知りました。
F-2/廃倉庫で起きた大量殺人事件の現場に金髪の人間がいた事を知りました。
【アーチャー(
北岡秀一)@仮面ライダー龍騎】
[状態]健康
[装備]
[道具] カードデッキ
[所持金] かなり裕福
[思考・状況]
基本行動方針:第二の生命を手にする
1. 此奴は不味いでしょ
2. マスターは護る
[備考]
セイバー(
朽木白哉)が近くにいることを感知しましたが、誰かは知りません
D-2ビルに面した駐車場) D-4住宅街) E-2(アパート街の側の道路)E-3(自然公園) F-2/廃倉庫/
で起きた事態を警察に通報された範囲で知りました。
F-2/廃倉庫で起きた大量殺人事件の現場に金髪の人間がいた事を知りました。
◆ ◆ ◆
【セイバー、サーヴァントの気配は?】
【無い。あの男を疑っているのか】
【ああ】
宜野座は住宅地にむかうパトカーの中でセイバーと念話を交わす。
宜野座はアールがマスターではないかと疑っていた。サーヴァントからの報せが有ったとしか思えない程に、アールの現れたタイミングはおかしかった。
誰かが報せでもしない限り、あんな辺鄙な所で起きた殺人事件を、あれ程迅速に知るのは不可能。
何かしらの伝手でも有しているのかと思ったが、アールのロールからすると考え辛い。
となると従えるサーヴァントしかないのだった。
【アールのサーヴァントがあの殺人の犯人だと思うか?】
【得物を見ない限りは何とも言えん。あの場でルキアと戦ったのは、巨大な刃を用いるサーヴァントなのは確かだ】
斬殺死体は人間の膂力では到底振るえぬ刃で身体を切断されていたが、サーヴァントならば出刃庖丁の一つも有れば可能だ。白哉にしても、死体はルキアの作ったものかどうかは確信が無い。
だが、床と壁の破壊痕。こればかりは白哉は確信を持って言える。”巨大な刃を用いるサーヴァントの仕業だと“。
姉弟と融合したルキアの用いる武器は長柄の鎌。これではあの超重量による破壊と、刃による斬撃とを両立させた破壊痕は残せない。
あの様な破壊痕を作れるのは、黒崎一護の斬月や、更木剣八の始解''野晒し"の様な巨大な刃を有する刀剣のみ。
尤も斧や薙刀といった可能性も有る為"刀剣"とは断定出来ないが。
【あの男をどうするつもりだ】
白哉が問う。
【取り敢えず話をしてみようと思う。何を願っているのか。何を考えているのか】
【解った。一つ忠告しておく。あの男のサーヴァント、アサシンでは無いが近い能力を持っている。あの場で私は最終、サーヴァントの気配を感じなかった】
気配を感じたのは途中から、それも近付いて来たわけではなく不意に現れたのだ。
【会う時にはセイバーを実体化させておくべきか?】
となれば、人目につかない場所を選ぶ必要がある。
宜野座はシートに体重を預けて、アールと話し合う場所を何処にするか考う出した。
パトカーが現場に着くまであと僅か
【D-2/路上(パトカーの後部座席)/1日目 夜(23:10)】
【
宜野座伸元@PSYCHO-PASS】
[状態] 健康
[令呪]残り3画
[装備] ポリスリボルバー
[道具] スマホ、ウォッチ@PSYCHO-PASS、警察手帳
[所持金] 普通
[思考・状況]
基本行動方針:元の世界に帰る。
1. 聖杯戦争に付いて調べる。
2. 住宅街【D-4(住宅街)】で発生した爆発事故及び大量殺人事件の現場に行く
[備考]
アールがマスターではないかと疑っています。
寒気と緊張で酔いが醒めました。
【セイバー(朽木白哉)@BLEACH】
[状態] 健康、霊体化
[装備] 斬魄刀
[道具]
[所持金] かなり裕福
[思考・状況]
基本行動方針: マスターを護る。
1. ルキアを止めたい。
2. マスターに従って住宅街に行く
[備考]
バーサーカー(
朽木ルキア)の姿を発見しました、生前に面識はありますが宝具まで知っているかは不明です。
F-2の廃倉庫からルキアの霊圧を感知しています。
アーチャー(北岡秀一)の霊圧を確認しました、ただし、姿は観ていません。
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| セイバー(朽木白哉) |
| アール(レナート・ソッチ) |
|
| アーチャー(北岡秀一) |
最終更新:2023年10月13日 11:12