+ 加賀美 嶺
(絵、エイブ)
PC名:加賀美 嶺(かがみ・れい)
PL名:Katherine MacArthur
コード名:コンスタンティノス11世(データ:名もなき騎士)
スタイルクラス:サポーター
レイヤークラス:ヴェール
ワークス:天秤機関

<ライフパス>
出自:貧困
経験:趣味人
動機:守護
邂逅:腐れ縁
コードフォルダの形態:インプリント
コードへの感情:憧れ

<自由記述欄>
 17歳男性。貧困街の生まれ。貧しいながらも共同生活のなかでほどほどに暮らしていた。親も存命で妹がいるが、家族全員が何かしらの金策をしているため、いわゆる家族の時間はそう多くない。
 ある日、巻き込まれた事件をきっかけに天秤機関に入庁。そこで、レイヤード適性を見出され、「コンスタンティノス11世(ビザンツ帝国最後の皇帝)」のコードを移植される。
 現在は、天秤機関の仕事をしつつ、たまにキャラバンのリーダーのミゲル・アマデオからの護衛依頼を引き受けている。
 ネリマ第4シェルターに滞在し、ある程度の復興処理がなされたタイミングでクレイドルへと帰還する。その後も数多くの任務に出動したが、時として傷だらけになりつつも任務を遂行した。その過程でネリマ第8シェルターの復興処理に協力した。現在は友人の藍川春樹との約束のもと、マカーオーンのアジトと勤め先の天秤機関を往復する生活を送っている。
 盾役としての彼は「人をまもる」事を是としている。「人」には、人間やレイヤードに限らず、インテレクトやリベレーター等も含まれている様子。マカーオーンとの対峙の後、彼は人ではないがたしかに戦友であるマカーオーンをまもる選択をした。

 おそらくは、最後まで諦めず、戦場に立ち続け、国、そして戦友とその命運を共にしたコード:コンスタンティノス11世の影響なのだろう。

<コネクション>


+ Tale of R.K.
少しだけ昔の話をしようか。
あれは1年と少し前、だったかな。

まずは、背景。僕はムサシクレイドルの端も端、とあるスラム街で生まれて、育った。自分や街の人にとってはあの街が世界そのものだったけど、中央の人は第13区人口密集地域とか名付けていたらしい。全く、中央の人は気楽なものだ。

11歳くらいからは両親だけじゃなく自分もゴミ漁りとか日雇いとかの仕事を始めて、3人の給料でかろうじて妹を学校に通わせていた。自分は4年くらい(しかも行事は全部欠席)しか学校にいられなかったが、あいつはちゃんと最後まで通えるといいなと思ってる。

さて、僕には友人がいる。生まれたときから近くにいて、ちょうど同い年くらいで話が合って家も近くて、親友というよりは家族みたいな存在だ。おいそこ、あいつは死んでねえぞ勝手に殺すな。それで、こっからが本題になる。あいつと自分と、それからレイヤードになるためのきっかけの話だ。

まあ、うちもあいつんところも金には困ってた。当時、流行りのビジネスの話が流れてた。物を売って、お金をもらう。それが臓器じゃなければよくある話だな。臓器売買だが、まともな商売じゃあない。闇とでもつけておくとしよう。闇臓器売買は、頻繁に行われてたという話は聞く。路地に面したさして清潔でもない部屋で、臓器を取られ、端金を渡され、無論アフターケアなんてものは一切ない。そのせいで、元々そう長くはない街の住人の寿命がさらに縮まったってのは想像できると思う。後になって聞いたんだが、渡される金は適正価格より何倍も低かったらしい。犯罪っていっても差し支え無さそうだ。とはいえ僕らには大金だった。

何を思ったのか、あいつがそれに手を出した。
今日の日雇いは確か同じはずだったな、なんて思ってたんだけど、いつまでたっても来なかった。そう長くはない昼休みに近くを探した。遅刻したら給料ナシかもなあ、なんて事も思ったが、これまでまず休むことのなかったあいつがいないのは奇妙だったから、しばらく探し続けた。そうして見つけた。黒服の男たちがあいつを路地に連れて行くのを。

正直、目先の金に目がくらむ気持ちもわかる。あれくらいあれば、しばらくは食いつなげる。でも、嫌だった。これまで一緒にいたあいつが、自分を残してさっさと死ぬのを認めたくなかった。だから、見逃せなかった。

あいつの手を取って逃げ出した。ただひたすらに走った。この街のことは知ってるつもりだったからなんとかなるだろうっていう甘い気持ちもあった。でも人数差には勝てなかった。暫くして、路地に隠れていたのを見つかってしまった。あの時はもう、終わりを覚悟したよ。その時はもうまともに頭が回ってなかったんだろうな、拳銃相手に意味もないのにあいつを庇って、逃げろと叫んで。銃口は確かに自分を捉えていた。怖かった。すごい怖かった。目を瞑った。

だから、再び目を開け、黒服がぽかんとした表情をしているのを見た時、何がなんだかわからなかった。とはいえ、逃げ出す機会はこれしかない。足が勝手に動いた。銃弾の恐怖から逃げた。今度はうまいことやって、逃げきることができた。どうやら、何故か銃弾が逸れたらしい。神様か整備不良か、あるいは「解放」か。今になって深く考えたところで、わかるわけもないからとりあえずは「奇跡」ってことにしておこうと思う。

数時間後、黒服たちは逮捕された。どうやら天秤機関が前々から目をつけていたらしく、あの発砲がきっかけで一斉検挙になったとのこと。全く、奴らもバカだよな。街のほぼ全員奴らのアジト知ってたし。結局は井の中...なんだっけ。まあいいや。

それで、関係者ってことで自分たちにも聞き込みをされて、そこでレイヤードの適性が分かった。僕はまともな職を欲していたし、捜査官たちもレイヤードは引き入れたいらしく、最低限の準備をして中央へ向かうことになった。最低限にも個人差はあるものの、スラム街育ちの16歳男子の最低限は本当に最低限だった。

2日後、迎えにきた機関の車に載せられ中央へ向かう。両親も、妹も、あいつも見送ってくれた。暫く街とは離れるけれど、心まで離れるつもりもなかったし、その見送りは純粋に嬉しかった。

車内。機関の人と事務的な話はするが、それっきりだ。どことなく居所がない気持ちの時は、感傷的になりがちで、こんなことを考えていた。

「本当にあれでよかったのか?」
僕はあいつを救ったかもしれないが、あいつは本当に救われたのか。命を賭して得た金で生活をつなぐ、そんな強い覚悟があいつにあったんだとしたら、自分は間違いなくそれを踏みにじった。そして得るはずの金を消しとばした。実際、見送ってくれたあいつの目が、純粋な祝福では無いことには気づいていた。
「僕はまるで裏切り者か?」
仕組みは良くわからないが、レイヤードの適性のおかげで、ここ数日で成り上がって街を捨てたようにも見える。故郷を捨てるつもりなんて全く無いけれど、でも少しせいせいしている自分もいる。
「いつのまにか、嫌な奴になっちまったなあ」

こっちに来てからは、平凡な機関の構成員をしている。ただ、さっきの考えがフラッシュバックすることは結構ある。休暇の時にたまに街に戻るのはそういう理由から。あとは、みんな事件の話とかすると喜んでくれる。街に、ちょっとでも恩返し出来たら嬉しいからね。そこまで遠いわけでも無いし、往復が生活の一部になってるね。

ちなみにこの仕事も結構気に入ってるよ。まず第一に給料がいい。寮にまで住ませて貰ってるし、ふくりこうせい...?とやらはバッチリだと思う。あとはみんな優しいし、暇な時は色々教えてくれるし、周りの人にも恵まれてるなあって思う。危険な任務もあるけど、周りの人のおかげでなんとかなってるし、こんないい職があったんだなあって思うね。

随分と長く話してしまったね。やっぱり、今の職場でも同世代の人ってそんなにいないから、つい楽しくって。

ああ、そういえばあいつの名前を言い忘れてた。あいつの名前は......
+ Beyond the Mirror
Case.1: Rei Kagami
神薬、あるいはエンフォーサー「ヒポクラテス」をめぐる巻き込まれたレイヤード達の中には、例の作戦、つまりエンフォーサー「ミロワール」討伐作戦に参加していない者もそれなりにいる。その一人が天秤機関所属、加賀美嶺である。

なぜか?
—そう難しい話ではない。純粋に彼が、というよりかは天秤機関が多忙を極めていたからである。レギオンの手の回らぬ部分を補い、治安維持の補佐、犯罪及び私刑の防止を社是とする天秤機関が、「子供たち」による同時多発テロの後処理に駆り出されるのは、むしろ当然の話である。


—討伐作戦前日
「明日、大規模な特殊エンフォーサー討伐作戦が展開されるとのことです。しかし、現状を考えると、我々の任務は討伐の増援ではありません。彼らの後顧の憂いを断つ為にも、我々は全力で復興支援を行います。—つまるところ、いつも通りの活動です。」
「「了解!!」」
「さて、レイヤード人員の割り振りですが、ユグドラシルさん、あなたはレギオンの先遣隊と合流し、クレイドル外壁北西方向の情報収集及び残党の討伐を、加賀美さんは、特に被害の大きかったネリマ第二シェルター近辺の防衛を、薙野さんは途中まで加賀美さんと同行し、ネリマシェルター群のオペレーターとして情報管理にあたってください。」
三者三様の肯定が返される。

「薙…いえ、千聖さん。……やっぱりなれませんね。えーっと、途中までは同行ですね、よろしくお願いします。」
二人は用意された車に乗り込み、昼過ぎにはネリマシェルター群に到着する。
「自分はここで降ります。それじゃあまた、数日後に。」

車を降りた彼の目に飛び込んできたのは、かなりの惨状だった。元々小規模なシェルター故に「壁」と呼べるほどではなかったのだろうが、人々を守っていたはずのバリケードが周囲に四散し、血だらけになっている部分も少なくはなかった。それでも人は居て、絶望の中でも生きている、そういう状況だった。
彼の仕事は明白だった。「壁」を再建し、それまで野良ベクターを退け、そして人の暮らしを再開させる。それだけだ。
彼は、シェルターの人を見つけると、こう言った。
「亡くなった人を埋葬しましょう。手伝います。」

—彼はテロ発生当時、別の任務にあたるためクレイドル付近からはある程度離れていた。その任務の過程で、参加していたアサルトチームは五人の人間を救った。一方で、手の届かないところで多くの人が死んでしまった。彼自身も、
(これは、責められることではない。単に運が悪かったとしか言えない。レイヤードであっても同時に守ることのできない物はある。)
と理屈では理解しているのだが、一方で彼の感情は
(できることなら死んで欲しくなかった。)
と悲鳴を上げていた。埋葬は、
(時間は巻き戻らない。)
と無理やり理屈と感情に折り合いをつけて、彼が行えた唯一の弔いだった。

(死。それに犠牲か…………。考えたくはないけど、どうしても考えてしまう…………。)
(僕は大切な人に死んで欲しくない。いや、違うか。大切な人を殺されたくない。これは当然か。大切な人を守りたい。うん、やっぱりこれが一番しっくりくる。)
(きっと、どうしても手の届かない時はある。でも、手が届くなら、手が届く可能性があるのなら、誰かを守る為にこの手を伸ばしたい。それをひたすらに積み重ねていくしか、他にはないよな。)

彼の仕事をしながらの長考は、一通りのまとまりを得たようだ。

しばらくして、大方の埋葬は済んだ。それに伴う宗教儀式は、さすがに付き添うわけにいかないので、彼はバリケードの再建を考え始めた。シェルターの外周の1/4ほどがみごとにやられている。散らかったバリケードだった物をもう一度並べるだけでも、ないよりはマシだが、やはり補強は必要だと考えていた時だった。

ベクターだ。2体の大型犬のようなベクターがシェルター目掛けて突進してくるのが見えた。

「ベクターだ!ベクターが出たぞ!」
「おいマジかよ!どうすんだよ!」
「とりあえず逃げるぞ!」

「皆さん落ち着いて。レイヤードである僕が、皆さんを守ります。どうか、家の中で待っていてください。」
効果は確かだった。絶望を生き、藁にもすがりたい彼らにとって、よそ者のレイヤードであっても、十分頼りになるように見えたのだろう。加賀美嶺の戦闘能力は高くない。一応、こういうこともあろうかと、取り扱いしやすい剣を持ってきてはいるが、攻撃力は大したことがない。彼は立ち回りを工夫しつつ、その攻撃を受け止め続け、時に剣で反撃する。正直、派手とは言えない戦闘だが、片方を長時間掛けて倒したタイミングで、明確に不利を悟ったのかもう一方のベクターも撤退していった。

「ふう、終わった」
住人の一人が声をかける。
「ありがとう、お前さんのおかげで助かったよ。お前さん、名前を聞いてもいいかい?」
「天秤機関所属、加賀美嶺と言います。人を守ることしかできない、どこにでもいるレイヤードです。しばらく、このシェルターでお世話になりそうです。」
「加賀美君か、よろしく頼むよ。人を守る力は喉から手が出るほどほしい人間も多い、もっと誇りに持っていいんだ。…………そうだ、かなり日も暮れたな。お前さん、泊まるところは決めてるのかい?」
「いいえ、特には。寝袋あればどこでも寝れますし。」
「若者が無理をするでないよ。よかったらうちのところに泊まって行きなさい。」
「…………?」
「ああ、そういえば申し遅れたな。時田宗一という。ここのシェルターの管理と、ちょっとしたホテルの経営をしているしがない老人だよ。…………一室+朝晩付だが、どうだね?」
「代表者さんでしたか。…………では、お言葉に甘えて一部屋お借りします。」
「無論、宿代は受け取らんぞ。お前さんはこのシェルターを守ってくれたんだからな。」
「…………」
弱冠17才の彼はどうやら褒められ慣れしていないようだ。

その後は特にこれといったことはなく、案内された一室で彼は眠りについた。


—討伐作戦当日
朝目が覚めて、加賀美嶺は一つ思い出したことがあった。

(アリサカさんが説明していたし、リベレーターのマカーオーンさんも示唆していた、エンフォーサー「ミロワール」との決戦。)
(僕はこの通りそちらには行けないけれど、もしこの願いが届くなら。)


(僕の大切な人たち。あの鏡を打ち砕け。そして、どうか。あなたたちには生きて帰ってきて欲しい。)

想いを胸に、彼は自分の職務へ向かうのだった。


<参加回>

<参加卓(その他)>
+ "ガッデム"
<基本データ>
PC名:"ガッデム"
PL名:みるふ
コード名:カルメン
スタイルクラス:チェッカー
レイヤークラス:インテレクト
ワークス:クルセイド

<ライフパス>
出自:
経験:
動機:
邂逅:
コードフォルダの形態:拡声器
コードへの感情:

<自由記述欄>

<参加回>
+ 葛城 悟

絵:まち様
<基本データ>
PC名:葛城 悟(かつらぎ さとる)
PL名:トミー
コード名:デュランダル
スタイルクラス:チェッカー
レイヤークラス:アームズ
ワークス:ストレンジ・ラボ

<ライフパス>
出自:技術者
経験:平凡
動機:探求心
邂逅:怨敵/殺意/村正
コードフォルダの形態:杖
コードへの感情:玩具

<自由記述欄>
18歳の男性、普段は左足が動かずコードフォルダにもなってる杖を用いて移動している。物腰は柔らかく基本的に敬語。
機械関係の知識を多く保有しているが書面上のものが大部分を占めており、実際の操作に関する知識は驚くほど無く、本人も機械をあまり触ろうとはしない。
戦闘時の左足は自然に動く。杖が変形し所々よく分からない改造の施された剣を振るう。

+ 出自
悟の産まれたシェルターでは電気工学が発展していた。
停止したAIの技術の模倣またはその超越をするために発展していき、子ども達にもそのような教育が施された。
悟もその教育を熱心に受けていた。座学の面は完璧であったが、運が悪いか何なのか彼が触る機械は全て壊れてしまう。
諦めず色々なマシンに手を出してはスクリーンを青くしたりショートさせたりを繰り返した後、どうしようもないことを痛感した。
できないものをずっとやっていても仕方が無いので外で遊ぶことにした。
一緒に遊ぶ友達もいないことは無かったがみんな授業だなんだでずっと遊んでくれることは無かった。
そのため一人でいることがよくあり、シェルターにいる大人の大多数ですら知らないような場所まで探検の名目で足を運ぶようになった。
ある日彼が見つけたのは入り口が倒壊していたらしい洞窟だった。
一部分だけ崩れた入り口からなんとか入り込んだその洞窟の中には戦闘の痕跡がありありと残っていた。
暗さに目も慣れてきた頃、歩き着いた奥の壁には錆びた剣であったようなものが刺さっていた。
興味本位で引き抜こうとするもびくともしない。うんうん唸って数回挑戦して、諦めて家に帰った。
それからも悟はその洞窟へ通った。
別に何も無い、むしろ色濃い戦闘の痕が怖いくらいの場所だったが、剣も気になっていたし何よりも「自分しか知らない場所」というのは魅力的であった。

シェルターというのは人間がエンフォーサーやベクターから身を守るために作った物である。
その中にいる大人が知らない程の遠くへ行く、ということはそれほどシェルターから離れるということである。
結果として彼は見つかるべくして小型のベクターに見つかった。群れすら形成していない、はぐれた一体だけのベクター、されど一般人にとっては悪夢でしかない。
追われる内に彼が逃げ込んだのは秘密基地、自分以外見つけてこられなかったんだからベクターが来るわけ無いと思っていた。
しかしベクターは来た、じりじりと追い詰められ例の剣が刺さってる壁まで来た。こんなところで死にたくない、まだ何もしていないのに。
そう思った瞬間、壁の剣に何かを感じた。錆びたはずの剣が、光っているように見えた。手に取り、抜けなかったはずの剣を壁から引き抜き、振り下ろした。
錆びて朽ち果てていたはずの剣はベクターの体をいともたやすく両断した。
無我夢中で振るった剣とそれによって瓦礫と化した怪物を見比べながら落ち着きを取り戻そうと思った瞬間"それ"は起きた。
剣の記憶、それを巡る騎士の記憶、後々これがコードの記憶であったと知るものが流れ込んできたのだ。
この時彼はコードと適合したのだが適合方式は通常のものとは違う、所謂緊急適合というものであった。
通常、コードと適合する際はレイヤードに合うよう慎重にコードを精査することになっている。
その理由は相性の悪いコードを扱おうとした場合精神に重大な影響をもたらす危険性が極めて高いからである。
さて彼が今回行なった緊急適合、膨大な情報を流し込まれたものの運良く精神を崩壊させるまではいかなかった。
気を取り直して起き上がろうとした彼はここで違和感に気がつく、左足が動かない。
だがこんな場所にずっといてもどうにもならず、引き抜いた錆びまみれの鉄塊を杖代わりにしてなんとか家に帰った。
この後親にレギオンへ連れて行かれ、コードと身体の検査を受けた。
そこで彼はようやくコードについて、レイヤードについて、ベクターやエンフォーサーについて詳細な事項を知った。
自分が非正規であるが適合したコードについても知った。
不破の聖剣デュランダル。その性質を持ったアームズ装備・・・・・・あの剣は「何をしても壊れない」らしい。
このコードに適合したのは自分だ。レイヤード自体も希少であるらしいし最低限戦闘が可能なレベルにはこの武器を扱えるようにしなければならない。
このような御託を並べ終えて彼は念願の「自分で自由にいじれる機械」を手に入れたのである。
欲望のままストレンジ・ラボの門を叩いた彼はデュランダルの改造を始めた。
初歩的なトライ&エラーすら経験していなかった彼にとっては困難であったがとても楽しい研究であった。
改造と検証の果て、起動時には足を動かせる程度までコードとの共鳴を高めることができるようになった。
+ 余談
コード起動時のみ足が左足が動くと簡単に言ってはいるが、その実そこまで楽に動かせている訳ではない。
どれだけ研究を重ねたとて、一度動かなくなってしまった足を、それも剣をまともに振るうことができる程に動かすことはそう容易いことではない。
では、彼はどうしているのだろうか。
短く言うと、聖剣を振るうことができる人物として自らの体を動かしている、だ。
そもそも、彼の足は何故動かなくなったのだろうか。
答えは単純で彼の精神がかの剣を振るうに値しなかったからである。その分精神に不可がかかり、それが肉体にまでおよんでしまったという訳だ。
裏を返せば、精神さえ剣の格に合ってしまえば肉体ごと動かせるということだ。
まあ、ここまで長々と書き連ねてきたが、彼がやっていることはつまるところ騎士の精神の投影だ。
デュランダルを扱っていた騎士の魂の記憶と自身を共鳴させ、無理矢理自身の体を動かしている。
当然、これも精神及び身体に重大な影響を及ぼす。
だが、体が動くのならば、剣が振るえるのであれば、彼にとっては些細な問題だ。
<参加回>
+ カトルー・ポール

<基本データ>
PC名:カトルー・ポール
PL名:サージャリー
コード名:ケッセルリンク(データ:イヴァン4世)
スタイルクラス:サポーター
レイヤークラス:マージ
ワークス:レギオン

<ライフパス>
出自:一般家庭(クレイドル)
経験:平凡
動機:守護
邂逅:戦友 信用 マリーナ・アヤンスカン
コードフォルダの形態:携帯端末
コードへの感情:親しみ

<自由記述欄>
 クレイドル内の密集住宅地で育ったごく普通の少年
 自分たちの生活を守ってくれたレギオンの人たちに感謝しており。それでレギオンに入った。レギオンに入るときに"人々の安全を守りたいと思ってこの組織に入りました"という趣旨の発言をしていたため、拠点の防衛任務につけられるようになった。
 レギオンに入隊する際のコード適正検査で適正があったため、本人の同意を得てレイヤードになった。
 レギオンに入って日は浅く、普段は一兵卒として防衛任務についている。


+ 彼の考え方
彼は所謂アナルコ・サンディカリストであり、現状の国家の無い状態に満足しており、世界が平和になったら国家ではなく、農村共同体や労働組合などを中心として統治して欲しいと思っている。

<参加回>
+ 要 燐
<基本データ>
PC名:要 燐(かなめ りん)
PL名:ルッチ
コード名:チェーザレ・ボルジア(ジェネレイトルールにより作成)
スタイルクラス:チェッカー
レイヤークラス:マージ
ワークス:天秤機関

<ライフパス>
出自:高貴な血筋
経験:英才教育
動機:正義
邂逅:しがらみ。タイラント
コードフォルダの形態:生体端末
コードへの感情:同一視

<自由記述欄>
要燐 11歳男子
タイラントの養子、レイヤードである母とは生後すぐに離別、当初はタイラントの子供として、ブリゲイド式の英才教育を受けるも、彼の出自や非凡なレイヤードの才能に嫉妬した義母や義兄弟によって疎まれるようになり8歳ぐらいの頃から毎日のように迫害を受ける、次第に実母への関心を持ち始める。迫害に耐え切れなくなった彼は出奔を決意し、10歳の誕生日の時に突如として姿を消す、実母を探すためひとまず安住地として天秤機関で働くことを決意、天秤機関で働くにつれ、過去に受けた迫害の影響からか、不条理を激しく嫌い正義をこよなく愛するようになったアリサカを実父のように尊敬している。一方でブリゲイドにいた経験からだろうか、冷酷かつ残虐な面も持ち合わせていて、たまに暴走する。養父であるタイラントに対しては複雑な心情を抱き続けている。

母、要彩、タイラントによる実験で強力な力を持ったレイヤード度して改造された女性である。強すぎる力の成果自身で力を制御することはできず、実用的な能力は息子がほとんど受け継いでいる、実験の影響でテレパシーのみでしか会話できない。
現在はブリゲイドの手を逃れるため、レギオン管轄下の離島で姓名を変えて妹とともに暮らしている

<参加回>

+ ガブリエル
<基本データ>
PC名:ガブリエル
PL名:らふてふ
コード名:ガブリエル
スタイルクラス:ブレイカー
レイヤークラス:リベレーター
ワークス:ネームレス

<ライフパス>
出自:突撃兵
経験:裏切り
動機:正義
邂逅:戦友(九十九ことり)
アイソレイトコアの位置:背中の中央
コードへの感情:自己嫌悪

<自由記述欄>
 金髪金目の小柄な女性。しかし、その背には一対の翼が生えている。翼は白く羽毛のようで、されど硬く強靭である。一度触ればわかるであろう。その翼は、機械で出来ている............とは言えども、通常それが誰かにわかるようなことはない。なぜなら、彼女にとって翼とは、自分がエンフォーサーであったことの証なのだから。ちなみに、彼女は翼を収納することができるので、普段は翼をしまって過ごしている。
 性格は天真爛漫な普通の女の子、といった風である。どんな人に対しても笑顔で話し、喜怒哀楽の表現も豊かにする。だが、それは日常での話である。戦場においては、笑顔は成りを済まし、その顔に何の感情も宿すことはない。ただひたすらに戦場を駆け、確実に敵に攻撃を加える。少しでも隙を見せようものならば、彼女は決してそれを見逃さないだろう。
 基本的にはですます調で話す。しかし、戦闘時には、「~しなさい」などの命令口調であったり、やや高圧的な言動をすることがある。恐らく、エンフォーサーとして、ベクターを率いていた時の癖なのだろう。

+ 彼女について
+ 彼女の基本的業務、行動指針、考え方について
 ガブリエルに与えられる任務は、基本的にはエンフォーサーの討伐であったり、人類に仇成すレイヤードの始末である。なぜなら、彼女の機能がそもそも遊撃兵......戦うことしか考えられていない設計であるからである。また、彼女は、既に思考することを一部諦めている。過去にそういう経験があったのかどうかは分からないが、自分が余計なことをしたことで、より被害が甚大になったことがあったのだろう。

 彼女は、ふとした拍子に怒ることがある。それは彼女の考え方の根幹となる部分に反している行動が見られたときである。すなわち、「命令に全く関係ないことをする」ということである。もちろん、生理的などのどうしようもないことでは怒らないが、「子供がどうしても遊んで欲しいと要求しており、仕方なくそれに付き合う」などをすると、ガブリエルは怒り出す。それは、果たして任務に関係のあることなのかと。恐らくであるが、過去に彼女は経験したのだろう。自分が任務に関係のないことをして事態を悪化させてしまったことを。そして、それに対して、どうしようもできなかったことを。




追記

 私が既に考えることを諦めている......ですか。それは正しい表現でしょう。自分でも、悲しいことだと思います。ですが、致し方のないことです。私が見通せるのは、精々私が知覚できる範囲の未来です。しかし、範囲外のことがかかわってくると、途端に私は無力になります。なぜなら、知らないことまで計算に含めることなど到底不可能なのですから。それでしたら、精度は低くとも、私より多くのことを知っていて、より多くのことを予測できる人が私を使ってくださった方がいいと思うのです。その結果、私の隣人が死んだところで、仕様がないことです。より多くの人類を救うためには、必要な犠牲。そうとしか思いません.................思いたく、ありません。私は非力なのです。私にできることを、するしかないのです。

+ Episode 0:とある天使の感謝
元々は突撃兵......というよりは、遊撃兵として生み出されたエンフォーサーであった。ある程度の自由行動が保障されており、そして、バベルの命令の通り、人類のシェルターや重要施設を根絶してまわった。

その日もまた、いつもと同じようにシェルターを潰し終わったとき、一人の男がガブリエルの前に現れた。

「お前さんは......懐かしい顔だ。その様子だと、元気にやってるみたいだな。まあ、何よりとは言えないが」

その男の手の甲には、アイソレイトコアが青く輝いていた。

「......ミカエルですか。何のようです?今や、裏切り者となったあなたが私の前にわざわざ顔を見せに来ただけとは、言いませんね?」
「それは勿論、ここを守るためさ」

そういうと、まあもう手遅れだが、とため息を吐き、

「お前さんをこのまま放っておくわけにはいかん...武器を構えろ。ちょっとだけ、付き合ってもらおう」

ミカエルは防御に優れたコードだ。しかし、ガブリエルはある種の未来予知が可能なコードである。言うなれば、後出しじゃんけんをしているようなものだ。数分後には、ミカエルは地に伏していた。

「やれやれ、威勢までは良かったのですがね」

ミカエルはすでに満身創痍であり、このまま放っておいても幾ばくの時間も経たずに死ぬ。トドメを刺す必要もない。そう思い、ガブリエルはかつての同僚に一瞥もせず、そのままいつも通りの日常に帰ろうとしたところだった。

「――ッ!!」

ガブリエルの頬すれすれにナイフが横切る。ナイフが飛んできた方には、ミカエルが大盾を杖代わりにして立っていた。

「......まだ立つのですか。立てるくらいならば、そのまま私が立ち去るのを待てば自身の治療くらいできるでしょうに。一体何があなたをそうさせるというのです」
「さあな」

ミカエルは荒い息を必死に整えながら、すでに全身に力が抜け始めていることを感じながら、それでも気丈に言い放つ。

「俺は、ミカエルは、人々を守る存在だ。俺たち、天使は神に仕える存在だ」

ガブリエルは鷹揚にうなずき、
「ええ、後者に関してはそうでしょう。我々は、神であるバベルに仕えるべき存在です」
「じゃあ、考えてみたことはあるか?バベルは果たして神か?いいや、違うね。バベルは神なんかじゃない。単なるイカれた機械でしかない」

ガブリエルは眉をひそめた。

「あなたは何を言ってるのです?私たちはバベルから生み出された存在。親のようなものであり、神のようなものも同然です」
「じゃあ!バベルはどうなんだ!バベルも、もとは人類から生み出された存在じゃねぇか!お前さんの言う通り、バベルが俺たちの親であり、神であるのなら!人類はそのバベルの親であり、神だ!バベルは親、神を自分たちの子供に殺させているってことか!?」

その言葉が嫌に頭に響く。聞く必要はない。そう分かっている、が、どうしてか、ガブリエルはその言葉を無視することができなかった。

「ッ、その口を閉じなさい」

これ以上聞きたくないと言わんばかりに、ガブリエルはミカエルをけり倒す。だが、ミカエルは再び立ち上がり、言葉を続ける。

「お前さんが神に仕える者なら、お前さんが真に仕えるべきは、人間じゃあないのか?」

頭痛がひどかった。耳をふさぎたかった。どうして、自身がこんなに動揺させられているのかが、分からなかった。否、分かりたくなかった。気づきたくなかった。もう、これ以上、何もしゃべらせてはいけない。そう思った。

「本当は、もう分かるんじゃないのか。お前さんが、誰に仕えるべきなのか。ただ、怖いだけなんじゃないのか。今まで自分がしてきたことに直面するのが。もう、聞こえるんじゃないのか。本当の自分の声が。」

ガブリエルの世界が崩れ去る。今まで見ていた世界が反転する。

「あとは、もう、お前さんが考えることだ......お前さんが、決め、る......」

虚構の世界が現実のものに侵蝕される。正常な色へと変わっていく。

「わか、りませ、ん。私、には、もう、私が、どうしたら、いい、のか」

新しい世界にあったのは、何も残っていない無情な廃墟と。

物言わぬ骸と成った、一人の恩人。

「私に、どうしろと、いうのですか」

そして、血に塗れた、一人の少女であった。

やがて、少女は歩き出す。胸に確かな正義を抱いて。

「いつか、私もあなたみたいに胸を張って言えるでしょうか。私は、人々を救い、導く存在だって」
+ Episode 1:邂逅、無垢なる願い
 しばらくの間、大体数時間くらいだろうか、宛もなくブラブラと歩き回った。歩いているとき、色んなことを考えた。今までのこと、これからのこと、そして、やりたいこと。私は、人々を守りたい。人類根絶の命令は既にない。既に私は自由だ。だからといって、赤黒く塗られたキャンパスを再び白くキレイにすることはできない。

 今まで、大変なことをしてきてしまった私を受け入れてくれる場所なんてない。私に、居場所はない。そう思いながら、トボトボと歩いていたときだった。

「あんた、こんなところで何やってんだ?」

 ふと、後ろを振り向くと、一台のトラック。帽子を深く被った男がその窓から顔を覗かせていた。男はそのまま、車を私の横まで持っていく。誰だろうか、いや、誰だろうと関係はないけれど。

「別に、特に何かやろうとは考えてません。何となく、こうして歩いています」
「行く宛がねえんだろ、目が覚めたばっかで。なあ、ガブリエル」

 一瞬で、身構える。けど、やめた。私のことを知っていて、かつ、害意があるのなら、声なんてかけずに不意打ちする。だから、警戒はする必要はないだろう。しかしながら、彼は一体何者なのだろう。情報の伝達がいくら早かったとしても、高々数時間程度で、私を見つけるのは困難なはず。きっと、元々私を追いかけてきていたのだろう。私は彼に対して誰何した。すると、

「んー、生憎ながら、まだあんたに名乗る名はないな。ここに来たのは......単に顔を見に来たんだ」
「そうですか。まあいいですよ。それと、顔を見に来ただけでしたか。では、放っておいてください。暫く、もう暫くは一人になりたいんです」

 少し間をおいてそう言い、そのまま歩き出す。そのうち、あの人は私のことを気にせずどこかに行くだろう。折角人に会えたけど、連れて行って欲しいとか、そんなことを言う気分じゃなかったし、度胸もなかった。

 男は一つ大きな溜息。そうして、意外だけど、私の歩調に合わせて並走しながら、一つ、紙を渡してきた。

「それはこの周辺の簡易地図だ。覚悟が決まったら、或いは、整理がついたら来るといい。なあに、取って食おうなんて思ってないさ。それは招待状。あんたが彼と同じ道を進みたいというなら、それを持って、近くのヘイヴンまで来な」

 そう残して彼は去った。私は歩いた。ずっと、ずっと、どこまでも。またしばらくしてから、紙を開いた。

 数日だろうか。それくらい歩いたところくらいだ。私は遠くに一つの都市を見つけた。あれが、きっと男の言っていたヘイヴンというやつなのだろう。

 彼が気を利かせてくれたのか、ヘイヴンに入るのは案外簡単だった。まあ、それでも色々と面倒なことはしなきゃいけなかったけど、もっと色々したりされたりすると思ってたし、それでも十分簡単だと思った。あと、都市の案内役の人は親切な人だった。もちろん、見せかけの笑顔かもしれないけど、私が今までどんなことをしてきたかをきっと知っている。十分親切で優しいと思った。

 ヘイヴンの中には結構な人が居た。どれくらい人がいるのかとかは思ったが、流石にそれは教えてくれないと思い聞かなかった。子供たちが騒いでいるのが聞こえる。今まで見ていた小規模な目標には、そんな光景は見られなかった。私は聞いた。ここでは子供たちは遊べるのですね、と。案内役は、にこりと微笑んで、

「ええ、我々の自慢の都市です」

 と、そう言った。

 綺麗だと思った。街並みはそんなに綺麗とは言えない。でも、見たかったものがそこにはあった。人々の輝きというか、生命の力というか。そこにいる人たちは、導きなんてきっと要らないくらい、一生懸命働いて、それでも楽しみながら生きている。そんな姿を見て、そんな人たちを見守りたい。そう思えた。胸が痛んだ。

 そのうち、一つの大きな建物に着いた。レギオン、という人類復興のために動く、大規模な組織の支部らしい。そこで、改めて色んなことを聞いた。私のような存在はリベレーターと呼ばれ、公的には人間と同列に扱われることだとか、社会での常識だとか。そうした講習ようなものが終わった後、今後はどうするのかと問われた。

「レギオンに入らせて頂けますか」

 迷わず答えた。それがきっと1番の近道だから。


追記

 目標は随分と憔悴しているようだった。そりゃそうだ。何の罪もない一般人を虐殺しまくってたんだからな。それも、命令に支配されて、自意識と言えるようなものがない状態でな。まー、心中お察しって感じだが、それはそれとして、本題に入ろうか。
 実力に関しては申し分ないだろう。何せ、護りに徹していたミカエルを数分で殺したんだからな。そして、素質に関しても十分だ。あれは..................[規制済み]
 とりあえず、もう少し俺は様子を見てみる。だが、そう時間はかからんだろう............[規制済み]なんてこの世界にはいくらでもある。

 あ?趣味が悪いって?そんなこと言うな、同類サマよ?俺は直々に教育してやるだけさ。[規制済み]ってな。
+ Episode 2:懐かしい夢、夢となった現実。語られぬ、最悪の、最高の夢
 随分と懐かしい夢を見るものだ。懐かしく、キラキラと輝いていて、そして、どうしようもなくバカらしくて。それは、私の一番の思い出であり、一番の汚点。輝かしかった希望が絶望に、夢へと堕ちた日。願わくば、もう一度あの頃に戻って、やり直したい。そして、今度は......。



 1年ほど前......レギオンの任務にもかなり慣れてきた頃のことだった。私宛に一通のメールが届く。いつも通りの招集だった。私もいつも通り、それに応じた。

 扉をノックする。中から、どうぞ、と許可の声。部屋に入ると、私の上司にあたる人が出迎えた。そんなに気さくな人ではないが、私に対しても分け隔てなく接してくれるいい人だ。

「よく来た。早速で悪いが、本題に入っても?」

 私が頷くと、彼は封筒を取り出す。中には数枚の書類が入っていた。書類には、何やらそこそこ規模の大きいシェルターに関する情報などが書かれていた。

「君にはそこに行ってもらう。そのシェルターにはレイヤードが一人居るのだが、現在体調を崩しているらしい。彼女が復調するまで、そのシェルターを警護するのが今回の任務だ。引き受けてくれるか?」

 私は二つ返事で了承した。聞けば、全治6カ月もの大けがらしく、また精神的にも参ってしまっていると。レイヤードがそんな目に遭うということは、それなりに危険の伴う仕事。それを任されるということに、信頼されているのだと感じた。



 ノイズが走る。場面が変わる。目的のシェルターに着いたときのことだ。人々は予めどんなレイヤードが来るかを聞かされていたようで、私に対してあまりいい感情は持っていないようだった。それもそのはずだ。私は元はとは言えエンフォーサーだったのだ。一度刃を向けたのだから、致し方のないことなのだ。

「お察しでしょうが、我々はあまり貴女のことをよく思ってはいません。なので、シェルター内の警備は自警団にさせます。貴女は外部の哨戒をしてください。それがお互いのためです」

 私は素直に頷いた。視界が暗転する。



 数週間後のことだった。外を見回っていると、一人の少年が倒れているのが見えた。どうやら栄養失調らしく、やせ細っていた。私は急いで彼を抱きかかえ、シェルターへと連れ帰った。

「結構重度の栄養失調です。もう少しで危ないところでした。お手柄です」

 命に別状はない。医者はそう付け加えると、こちらを見て、

「少し、貴女のことを勘違いしていたかもしれませんね。少なくとも単なる人を真似ただけの機械ではなさそうです」

 視界が歪む。



 数か月後、シェルターの人も随分気を許してくれたようで。顔を見たら挨拶してくれたり、お仕事お疲れ!とってくれたり。毎日が楽しくなっていた。その日も楽しい一日だったが、少しだけ違うところが存在した。

「ん?なあに?」

 私の隣には一人の少年がいた。以前助けたあの子だ。私がどうして付いてきているの、と聞くと笑って、お姉ちゃんの隣が一番安心する!と言っていた。危ないのになぁ、と思いつつ、私もその子に甘く、ついつい許してしまった。

 それ以来、彼は常にと言ってもいいくらい、私の横に引っ付いてきた。そちらを見ると、また、なあに?と、笑顔で。それに毎度負けてしまう。一回、彼の保護者代わりの人に何とかできないかお願いしたが、ごめんね、私にもどうにもできなかったのよね......と、苦笑いしていた。

 視界がグラつく。


 シェルターに来てから5カ月くらい経った後か。どうやら、予定よりも早く、もとからここに常駐していたレイヤードが戻ってくるらしい。私はそれを聞いて、喜ばしいと思いながらも寂しいな、と思った。シェルターの偉い人は、私の意思次第だけど、出来ればここに残ってほしいと言ってくれた。けれど、私はここに留まるつもりはなかった。ここになるべく居たかった。けど、私にはもっとやらなきゃいけないことがある。ここでの任務が終われば、またきっと別の任務があるから。

「お姉ちゃん、ここ離れちゃうの?」

 少年は涙目でそう言ってきた。ごめんね、と彼の頭を撫でた。すすり泣く声は止まらなかった。その日、彼は哨戒について来なかった。久々の一人だった。少しだけ、寂しいなって。

 哨戒を終えて、シェルターに戻ってくると、入り口の方で例の少年が居た。随分と待ちわびていたようで、こちらを見ると意を決した様子で、

「ちょっとお話しよ!」

 私は二つ返事で了承した。すると、少年はシェルターの外へ出た。誰にも聞かれたくない話なのだろうか。少年は、こっち、こっち!と言い私を連れて行く。もしかしたら、話を聞かれたくないのではなく、私に見せたい場所があるのかもしれない。暫く歩いていると、彼は山の中に入っていった。一体どこまで行くのだろう。

「ここだよ!」

 少年はこちらを見て、ニコリとほほ笑む。目の前には、大きな建物があった。

「ここはね、神社っていうんだ。あんまり詳しくはないんだけど、ここの奥にある賽銭箱っていうのにお金を入れてね、願い事をするんだ!その願いが叶いますようにって!本当に叶えてくれるかは分からないんだけどね......」

 といい、彼は更に奥に行く。大きな木造の建物と、彼が言った通り、上部に格子がされた箱があった。二人でお金をその箱の中に入れる。

「んーと、これでいいはず!」

 少年はそういうと、私に向き直って、

「きっと、また会おうね!」

 私は頷く。頬に暖かいものが伝う。心も、それくらい温かかった。



 それからそう時間は経たなかった。ズズンと、大きな音がする。

「んん??シェルターの方から......?」

 私は少年を担いで翼を広げ、空を飛んだ。急げ、急げと。十数分ほどだろうか、シェルターがあった場所にたどり着くと、そこには見慣れた防御壁や家屋などはなく、ただ更地が広がっていた。力が抜けていく。どうして、私は、本当に危ないときにシェルターに居なかったのか。

「ッ!!」

 後ろから急に銃弾が飛んできていた。私は咄嗟に避け、それが飛んできた方を見る。そこには、少年が居た。笑っていた。嗤っていた。ケタケタと嗤って、

「どうしたの?お姉ちゃん」
「クスクス、そんな顔して、何かあった?」

「どうして、なの」

「まだどうしてとか言ってるの?アハハ!理解が遅いのか、それとも......理解したくないのか。まあ、どちらでもいいケド」

 少年は再び、手に持った銃を撃つ。私は反射的に剣を抜き、弾を避け、銃を切り裂き、少年の首元にピタッと剣を置く。

「いいなさい!どうして、どうしてなの!?もしかして、誰かに操られて」
「あははははははあははははははあははは!!!!これは傑作だよ!!まだ気付かないの?鈍いナァ!僕は最初っから僕さ!今までのはゼーンブ演技だよ、え、ん、ぎ!」

 そういって、尚も少年、否、少年のようなものは嗤う。狂気を宿した瞳で、私を見つめる。

「ああ、一応言っておくと、この身体は人間のものさ。精神を操ってはいるけどね。ただ、最初から僕っていうのは本当さ!君に僕を拾わせて、その後、僕は君に付きまとって、君の信用を勝ち取る。そして、決行日に君を遠くに連れ出して......戦力の激減したシェルターを壊滅させる!いやぁ、まさかこんなにも、描いてた青写真まんまになるなんて思いもしなかったさ!............君って、バカだよねぇ!アッハハハハハ!!」

「アハハ!ハハ!ハァ、ちょっと笑いすぎちゃったよ。ああ、そうだ。この身体はもうどうでもいいから、返すよ。ま、もう元の人格なんて消えちゃってるけどね。君に関しては、約束したからね」

「じゃ、きっとまた会おうね、ガブリエル?」

 少年は邪悪な笑みをコチラに向け、その身体が崩れ落ちる。私は、ただ茫然とそこに立っていた。



 追記
 [上記の内容が、箇条書きでまとめられている]
 とまあ、こんな感じのことがあったらしいぜ。まったく、思ってたよりも陰湿な奴だったらしいな。これに関しては、まあ、俺らがしっかりと責任もってケアしてやんなきゃなぁ。
 ん?なんだよ。俺「ら」じゃなくて、「お前」だろ、って?んー............否定できねぇな!ま、そんなことはどうでもいいんだ。とりあえず、だ。彼女に関しては俺に任せておけ。土壌は最初から栄養豊富。んで、耕されて、すっかりふかふかの土になってる。一つ種を仕込んでやれば、たちまち育つ。簡単な仕事だ。
 ああ、そうだ。この支部にドリンクバーでも設置してくんね?それか、コーヒーサーバー。飲み物がないと集中できねぇんだ。......そんなこと言うなって。ちょっとした冗談だよ、ジョーダン。

<参加回>
+ 神縄 禅丸
<基本データ>
PC名:神縄 禅丸
PL名:まち
コード名:七星剣
スタイルクラス:チェッカー
レイヤークラス:アーキテクト
ワークス:レギオン→ネームレス

<ライフパス>
出自:レイヤード
経験:研究素材
動機:実験
邂逅:後述
コードフォルダの形態:アーキテクトレイヤー
コードへの感情:嫌悪

<自由記述欄>
 レギオンのレイヤードの両親の元に生まれる。両親はレイヤードの力を「神様が選び与える力」として過剰に偏重していたが、禅丸はレイヤードの素質は僅かにあったものの適合率が足りず、更に5つ下の妹がきわめて優秀な適性を持っていたため比較され、「お前は出来損ないだ」と蔑まれ続けて育った。17の時、レギオンの研究員からアーキテクト手術を持ちかけられる。レイヤード至上主義に疑問を抱いていたが刷り込まれた価値観を捨てられず、両親を、世間を、自分自身を見返すため彼はモルモットになることを承諾した。現在は26歳。父はレギオン上層部に籍を置いているがとっくに親子の縁は切っており、七光とかそういうものはない。むしろ、「神縄家の不詳の息子」として後ろ指を差されたりすることの方が多い。
他人の前ではダウナー気味に飄々と振る舞いつつも、困っている相手は放ってはおかずなんだかんだ世話を焼く。特に年下に甘い。総じて良識のあるレギオンお兄さんではあるが、どうせなら名実共に輝いて燃え尽きる〝星〟になりたいと内心生き急いでいる。

+ レギオン技術研究部のとあるカルテ
実験開始日 2107年3月17日
被検体No. ******
被検体名 神縄 禅丸 

適合コード:七星剣
使用アーキテクトレイヤー:迅雷

備考:
 通常のアーキテクトレイヤーと違い、レセプターは頚椎後部に加え左眼窩の視神経からも接続するため、着用者は予め左眼球を摘出する必要がある。7つの機構部を供えており、いずれもが外付けの神経中枢としての役割を持つのに加えてそれぞれ以下の機能を備えている。
左目:全域との主接続・脳との接続・視覚補助、背中:脊髄との接続、心臓:循環機能強化、首:信号の統括、臍:全身の負担軽減、両手首:アルケオンの制御
 使用者に手術を行って脊髄・神経・脳の一部を機器で置換し、レセプターで接続することによって神経伝達速度を大幅に引き上げ並外れた反射能力を発揮することが可能になる。ただし痛覚も過敏になるため、実戦時の負傷によって行動が制限される恐れがある。事前に痛覚の“慣らし”を行っておくことが推奨される。また、感覚の鈍化や中毒を避けるため、鎮痛剤等の使用はやむを得ない場合を除き原則許可されない。

 本案件を含め、アーキテクトレイヤーの研究開発は未だ発展途上である。心身への多大な負担、装備の非着用時の身体機能の低下などの副作用が発生することが予想され、装備の機能向上に加えこれらの副作用の軽減も本実験の中で重要な課題となっている。実験の進行は最新の注意のもとで行い、精密に記録を取ること。

+ 邂逅
四面楚歌、というやつだった。
ひょっとしたら味方になってくれた人はあの頃にもいたのかもしれないけど、当時の俺には見えてなかったし、今思い返しても特に心当たりはない。才能がなくても親子仲最悪でも、他人から見れば俺は「神縄家の長男」だ。あの男のことを嫌ってるのが俺だけじゃないのは朗報だったが、だからって大の大人が寄ってたかって17のガキに嫌がらせするのはいただけないよな。あと、何かと擦り寄ってきて君は本当は強い人なんだとか心にもないこと言ってヨイショしてくるやつら。嫌がらせしてくる連中よりよっぽどこっちのがタチが悪いね。技術部の研究員たちは丁寧に扱ってはくれたけど、所詮は研究者と被検体の関係。契約相手としての信頼はこそあれ、お気楽に仲良くやれる間柄じゃなかった。まあ、変に情かけられないのは、俺としてもありがたかったけどさ。
そういうしがらみが精神的にかなり堪えてたのもあり、昔の俺は相当な人間不信だった。気が狂う程の痛み、他人との軋轢。心身ともに休まらない状態続きで荒れるなって方が無理な話だが、つくづく嫌なガキだったなって我ながら振り返って思う。近づいてくる相手みんなに警戒心を剥き出して、戦功を求めるあまり命令無視して先走って、心配する声を振り払って死に急いでさ。
あのままだったらそのうちどっかでベクターなりエンフォーサーなりに殺されるか、レギオンに嫌気差して犯罪者になるかしてたろうな。

だからさ、俺、あんたには本当に感謝してるし、あの時指咥えて見送るしかなかったのを今でも悔やんでるんだよ。須黒さん。

コネクション 須黒信司
関係…元同僚
感情…恩人/後悔
分野…危険区域、レイヤード


<参加回>
+ †餓龍/石火矢仁龍
<基本データ>
PC名:餓龍
ワークス:六道会

PC名:石火矢仁龍
ワークス:レギオン
(https://picrew.me/share?cd=s0Hf0M5qjF)


PL名:極貧戦士
コード名:ファーヴニル
スタイルクラス:ブレイカー
レイヤークラス:マージ

<ライフパス>
出自:貧困/レイヤード
経験:犠牲者
動機:復讐
<自由記述欄>

<餓龍の参加回>
<仁龍の参加回>
+ カルナ
通常時

コード使用時

(絵、王水 Twitter:@3aqua_regia1)
<基本データ>
PC名:カルナ
PL名:のこ岳
コード名:カルナ
スタイルクラス:ブレイカー
レイヤークラス:リベレーター
ワークス:クルセイド

<ライフパス>
出自:決闘者
経験:渡り鳥
動機:贖罪(英雄:カルナと自分が滅ぼした者に対して)
邂逅:怨敵 殺意 エジソン
コードフォルダの形態:左目(アイソレイトコア)
コードへの感情:自省

<自由記述欄>
左目を眼帯で隠し、大きな槍を背負ってバイクで走る男。
年齢は本人さえ覚えていない。見た目は20代前半。

元々は居住地区を襲ってまわるエンフォーサー。
その中でも特に居住地区を守るレイヤードと正面から戦い、打ち負かす役目を負っていた。
当時のリベルナは「東方十聖に力を乞われたから貸す。人類を滅ぼせと命令されているから滅ぼす。」という意識しかなく、ただただ戦いに明け暮れていた。

…とある居住地区で自分が殺したレイヤードが持っていた「マハーバーラタ」を手にするまでは。
物語のなかのカルナは生きる意味も分からず戦い続ける自分と違い、自分の意志をもってドゥルヨーダナに忠義を立て、実母との誓いを守っていた。たとえどれほど不利であっても。

そしてこれまでの自分が彼の名を名乗って行ってきた所業が彼の名を汚していたのではないかと思い至った。
こうしてバベルの指令から解放された。
以来、これまで自分が与えた「カルナ」の汚名を払拭するべく人類の敵を全て狩ることを目標にたたかっている。

しばらくはフリーランスでベクターやエンフォーサーを倒し続けていたが、一息ついているところをヴァイクンタにスカウトされてクルセイドにはいった。
その理由は「ここなら人類の敵を全て排除し終わった後に俺を始末してくれる奴らが大勢いるから」。

自分は平和な世界が訪れたら死ぬべきだと考えているが他のリベレーターに対しては「バベルから自由を勝ち得たのだから好きにいきればいい」と考えている。

「俺が汚してしまったカルナの名誉を回復する。
そのために俺は戦う。」
「人類の敵を全員討ち滅ぼす。
それが今の俺の為すべきことだ。」
「元エンフォーサー、クルセイド所属のカルナだ。
敵と呼び方が同じになるならば「カラン」とでも「リベルナ」とでも呼んでくれ。」

<参加回>
+ 岸野恭二
<基本データ>
(画像:まちさん)
PC名:岸野 恭二 (きしの きょうじ)
PL名:K.*
コード名:エヴァリスト・ガロア(ジェネレイトルールにより作成)
スタイルクラス:ブレイカー
レイヤークラス:シャドウ
ワークス:天秤機関
+ コード:ガロア
コード名:エヴァリスト・ガロア
種別:悪徒
能力値:
体力3 敏捷2 感覚3 知力4 意志4 幸運1
技能ボーナス:自我2、軽武器1、探知1
生命力:17、精神力:18、行動値:5

コード特技:革命の闘士(モードレッドの反逆の騎士を流用)
最大レベル:3、タイミング:メジャー、判定:自動成功、対象:単体、
射程:武器、代償:5MP、使用条件:なし
効果:対象に白兵攻撃を行う。その攻撃の命中判定にDB1を得て、与えるダメージに+[Lv×5+5]する。攻撃の対象が「種別:将星」か「種別:策士」なら、ダメージにさらに+5する。

<ライフパス>
出自:犯罪者 (汎用特技:反骨精神)
経験:大きな災い (居住区域)
動機:任意→喪失 (目的:理不尽を否定する)
邂逅:苦手な人 (紗川ラウラ)
コードフォルダの形態:アクセサリ(腕輪)
コードへの感情:同族嫌悪

<自由記述欄>
 年齢:21 性別:女 身長:164 体重:(標準)

 とある犯罪組織に所属する両親の元に生まれた。力の象徴としたかった両親は彼女に「恭二」という名前を与え、男として育てようとしたが、臆病で気の弱かった彼女のことは途中で見限り、ブリゲイドに売り渡される。そこで彼女にはコード適性があることが判明したことにより、レイヤードにされた。その上で、闘志が足りずろくに戦えなかった彼女は、人体実験も兼ねて無理にでも戦えるような改造を精神に施され、何度も捨て駒のように戦場に送り出されることとなった。
 ある時、彼女はブリゲイドの任務として、ニイガタ第4シェルターに派遣されることになったが、そこで何かが起き、ブリゲイドの部隊と、同じく派遣されていたレギオンの部隊、そこにいた住民含めて、恭二を残して全滅してしまった。
 その後はブリゲイドに帰還せずあてもなく放浪していたが、とあるエンフォーサーに捕まり、非人道的な実験の手伝いをさせられた。最終的には数人のレイヤードの活躍により救出されるが、この時点ではかなりの精神的ダメージを受けており、回復に数か月の時間を要した。この時、精神へ悪影響を及ぼしていた機器も除去される。
 レイヤードとして復帰した後は、天秤機関への所属を願い出る。彼女曰く、学ばなければならないことがそこにあるのだとか。

 刺々しさが目立ち、あまり根気がなく怒りっぽいが、他人想いでもある。特に、悩みを抱えた人に対しては、協力に難色を示すことはないだろう。拒絶されたら深入りはしないが。

    • 以下秘匿情報--
+ ニイガタ第4シェルターの惨劇と、コードの暴走
 彼女がかつて戦うために施された改造とは、コードの持つ苛烈な側面としての怒りを引き上げ、それと同調させることで無理矢理戦う意志を得るというものだった。そのため実戦では、怒りで我を忘れて味方を攻撃しないように、部隊および本人に相応の配慮がされていた。しかし、彼女が偶々遅れてニイガタ第4シェルターに着いた際、何故かレギオン部隊とブリゲイド部隊が、住民を巻き込んだ交戦状態となっており、混迷としていた。彼女に気をかけられる者など既におらず、彼女自身も理性の手綱を取ることが出来なかった。そして気付いた時には、戦場になっていた場で動くものは彼女以外になかった。
( こちら (privatter)も参照)
+ エンフォーサーとの邂逅
 彼女が放浪していた時に出会ったエンフォーサー、エジソン(東方十聖とは別個体)は、彼女のことを研究素材として興味を持っていた。その時に生きる意味を見失いかけており、かつ人間不信気味になっていた彼女は、その純粋に近い好奇心に魅入られ、様々な実験に自発的に協力していた。そして実験の結果として、彼女は疑似的なエンフォーサーのようなものにまでなっていた。
 既に精神的に半ば壊れていた彼女が、どこまで本当に自分の意志で手伝っていたのか、あるいは狂気に駆られていたのか、真相は誰も知らない。この件については、レギオンは精神的な疾患が原因として、責任を問わないこととした。
+ 暴走時の記憶
 戦場で暴走していた際の記憶は、彼女はあまり思い出していないが、時間をかけて思い出そうとすれば思い出せる。ただ、精神にどういう悪影響が出るか予想ができないため、好き好んで思い出そうとすることはないだろう。
+ おまけ
Who Chases the Survivors後の対話「 少女が過去に向き合うとき (privatter)」

「オレをオレたらしめているモノは、コード適性とこのコード、そして理不尽に対する憤りくらいしか残ってねえ」
「それらを捨てて、何者でもない生き方をする手もあった。だが、そうするには人生は長すぎる」
「だから、オレはこんな自分を受け入れるしかないのさ。“理不尽”が何かも分かってねえってのに」
「何が理不尽で、何がそうでないか、オレは学ばなければならない。だから、オレは天秤機関の門を叩いた」

「もし理を学ぶのに失敗し、天秤機関を追い出されたならば、その時こそオレは終わりだ。情動に任せて剣を振るうオレは、いずれお前たちの前に敵として現れるだろう」

<本編参加回>
<その他の参加回>
+ キョウ
https://picrew.me/image_maker/32223/complete?cd=OhQYMbHSpH より)
<基本データ>
PC名:キョウ
PL名:セツナ
コード名:ナーサリー・ライム(データ=名もなき語り手)
スタイルクラス:サポーター
レイヤークラス:センチネル
ワークス:フリーランス

<ライフパス>
出自:生存者
経験:放浪生活
動機:生誕
邂逅:刺激(ミス・ウィドウ)
コードフォルダの形態:インプリント(首)
コードへの感情:感謝・敬愛

<自由記述欄>
「ユグドラシル」の項を参照。

+ 転機と変化
 「リリア」という少女に逢った。当時ブリゲイドの関係者だった彼女は私の幼馴染みであると語った。私の記憶には無いその存在に、しかし、興味を覚えたのも事実だ。
 一連の事件において、私は一瞬だけ自分を……、正確にはコードの力を喪った。暗闇の中、ナーサリーのいない孤独に苛まれた。「幸宮楓」、いや、「幸宮京介」の𠮟咤によって彼女にもう一度会うことを決めた私は、必然的に攫われた彼女を追う事となる。彼女はミストの多重人格者であり、居場所に辿り着いた時には既に、拷問によって主人格以外が消滅している状態だった。何とか彼女を救い出し、話をする。彼女は私が幼少期を過ごし、疫病に見舞われたあの地に住んでいた人間だった。彼女が私へ向ける想いは正に清流の如く澄み渡っており、そこに一点の汚濁も無かった。天秤機関に保護された彼女は、私と共に在る事になった。経歴上の問題をなんとか誤魔化し、暫くは平穏な日々を送った。

 思えばこの時からずっと、私は彼女を、リリアを想っていたのだろう。
 もっと向き合い、リリアを受け入れていれば、何かが変わったのだろうか。

 この事件を契機に「痛み」を取り戻した私だったが、ある日、リリアは置手紙を残して消えた。
「私はミストだから、いつか貴方に置いていかれてしまう。それは嫌だ」
「でも、ブリゲイドなら貴方をミストに変えられるかもしれない」
「ずっと、一緒にいられるかもしれない」

 リリア、知っているかい? 物語には、必ず幕引きが存在する。
 いつか私が死んだ時、君は絶望してくれないのだろうか。
 いや、絶望させてみせよう。全身全霊でもって、私は君を私無しでは生きられない様にしてあげる。
 終わり無き物語など、ありはしないんだよ。
 いつか美しく終わる為に、君が必要なんだ。

 そうして追った先には、嘗てリリアを拷問した女がいた。その配下も複数。苦戦する私達を助けたのは、多重人格のそれぞれに別のコードを宿す奇跡の少女。リリアだった。

「コード『ユグドラシル』」

 そう宣言したリリアは、自らの命を削りながら戦ってくれた。私はリリアを護った。どうか、死なないでくれと。
 それでも、絶望の時はやって来る。

「コード『人魚姫』」

 降り注いだ涙は私達を癒すのと同時に、リリアの命を刈り取った。

 辛くも勝利した後、私は消えゆくリリアを見送った。女の側の配下だったはずのもの手でレガリアとして指輪に閉じ込められたリリア。私はその指輪を左手薬指にはめ、その鋭利な宝石によって自らの首を搔き切ろうとした。……出来なかった。どうやらリリアのせいらしいが、腕が動かない。
 それでは仕方が無い。

「ねえ、楓。愛しい私の人形師」
「最期はどうか、君の手で」

 氷の刃が私の身体を貫いた。彼の柔らかく温かな蕾が、ほんの微かに私の頬を撫でた様な気がした。

 そうして私は死ぬはずだったのだが、どういう訳か、今此処に立っている。
 リリア、最後の最後までやってくれたね。
 そんなに私に死んでほしくないのか。
 なら、あと少しくらいは。
 ——私と一緒に、遊んでくれるかな?

+ 黒猫の名
 夕暮れ時、店仕舞いの時間だ。客はもういない。普段この店に居着いている者達もいなかった。そんな時、大仰な音を立てて扉が開く。現れた男は、朗々と言葉を紡いだ。
「やぁ、店主はいるかな?」
 肩より上で切り揃えた黒髪。不健康に白い肌と、すらりと伸びる体躯。血の様に紅い瞳。特徴的なのは耳に刺された大量のピアス、そして左目の眼帯と首元のタトゥーだ。
 少年は、息をする様に嘘を吐く。
「……ん~、今ねぇ、店主さんはお留守だよ~。ごめんね?」
 既に互いの正体を了解していながら、彼等はただ微笑む。それが、彼等なりの自然な在り方であったから。
「なら、店主に伝言を頼めるかな? ……『ただいま』、と」
 店主たる少年は、大きく溜息を吐いた。
「……まだハロウィンの時期には早いと思うけれど?」
 男の崩れぬ笑みは、この時間を楽しんでいるという符牒たり得るものだ。
「幽霊に見えるか?」
 いかにも演技らしい様子で、二人の会話は続く。
「ご丁寧に死体まで引きずって帰らせてもらったからね、死んでてもらわないとだいぶ徒労だったことになるんだけど」
「ははは、手厳しいな」
 男は真剣な表情を作る。
「……ただいま」
 少年は仕方無いと言いたげに。
「全く、大人しくしてりゃ良かったのに。……おかえり」
 やっと此処に来られたのだ、と。この少年に会えたのだ、と。男は僅かに震える手を伸ばした。
「……触れても?」
 少年は背中に手を組んで男に背を向けながら、楽し気な口調で語る。
「えぇ~、さすがに知らないお客様に触れられる趣味は無いかなぁ。僕、11歳だからね」
「そうか。なら、名前をくれないか。私が君のものになる為に。……まさか自分の所有物を『知らないもの』だなんて言わないよな?」
 悩む素振りを見せながら、此処に来た目的の一つを滲ませる。意地悪く吊り上がる口角に、少年は呆れた様子を隠さない。
「……君、本当に相手が僕じゃなかったら通報されてるからな。全く、もう」
 男が肩を竦めれば、少年も同じ様に。
「君以外の誰にこんな事を乞う?」
「もしもの話だよ」
「ふふ、知っているよ」
 男は首を傾げ、少年を見詰めた。
「さて、名付けについては本気で頼みたいんだが。……『世界樹』は既に枯れてしまったからね」
「まぁ、一度はきちんと舞台を降りた身だものね。役名を変えるのは荒業な気もするけれど。……ふふ、もう次の舞台は始まっているからね。君が遅れる前に考えてあげないと」
 深紅を振り払う様に目線を逸らす少年。男は満足気に、半ば無意識で左手薬指の円環を見遣る。
「そういう事だ。そして、それには我が人形師たる君が適任だろう?」
「他の奴に言ってもまともには受け取ってもらえないだろうからね。はぁ、お前は本当に僕に感謝しろよな」
 幼子を愛おしむ様に、男は少年を思う。
「思い出して少しは素直になったかと思えば……。むしろ悪化していないか? 君が一人称に『お前』を使う相手が限られている事くらい、私にも分かるさ」
 少年は満面の笑みでもって応える。
「一等嫌いな奴か、本当に嫌いな奴か、二択かな? つまり嫌いって事だね!」
 男は僅かに目を瞠り、次の瞬間には以前では考えられない無防備な表情を見せる。
「ははは、可愛いな!」
「……『嫌い』って言われて笑い出すとか、変人にも程があるよ?」
「なら、それを『友』と呼んでしまった君はもっと変人だな。ふふ、可哀想に。一生着いてくるよ?」
「おいおい、死んだ人間の話はやめてくれよ。もう既に説明がめんどくさいけど更にめんどくさい事になってるじゃないか」
「そうだな、一生じゃあ済まなかったね?」
「全く、こんな舞台早く降りちまえば良かったのに」
 交わす会話には、一切の淀みなく。それはまるで打ち合わせ済みの台本を読む様にスラスラと流れてゆく。しかし、次の瞬間。少年は男を試す様に瞳を煌かせた。
「……そうまでして、もう一度を望む理由は?」
「……お姫様が泣くんでね」
「及第点、かな」
 二人の間の空気は一瞬にして弛緩し、互いに頬を綻ばせた。
「ふふ、当然だ。……勿論、墓参りをさせるのが忍びない、というのもあったんだが」
「誰が好き好んで墓参りなんてするって言うんだい?」
「さぁ、誰だろうな? 教えてよ、真実を映す『魔法の鏡』さん?」
「……まぁ、間違いなく僕ではないね。子供が墓参りに行く理由なんて娯楽としての恐怖を得る為か、大人に無理やり連れて来られた意味の無いモノだ」
 男は自らの顎に手を当てる。
「確かに君は墓参りをする様な人間ではないな。私が其処で大人しくしている様な殊勝な者でない事くらいは知っているだろうし、ね。それにしても……、子供、か」
「……なんだい、改めて僕の可愛さに驚いた、とか?」
「既知のものに驚く必要はあるか?」
 男は嘗てと同じ、少年の頭に手を伸ばす。少年はするりと後方へ避けた。
「幽霊に触られる趣味は無いんでね。まぁ、もう少し待ちたまえよ。飼い猫に名前を付けるくらいの気軽さでなんか考えてやるからさ」
 両手を挙げて降参の構えを取りつつも、その瞳は少年を射る。
「そうか。なら、覚悟して。名前を貰ったら、もう遠慮する理由は無いからね。正しく飼い猫だよ、御主人様?」
 再び、少年はその鋭い矢を受け流した。
「こんな奴を放し飼いにしてるのはどこの天秤機関だい? 首輪位はしっかりしててもらわないと困るよ」
「私に首輪をかけられるのは、リリアと君だけだ。……あぁ、それと。私はもう天秤機関には戻らないし戻れない。向こうでは死体が消えたと大騒ぎかもしれないな」
「ハロウィンには早すぎるって言ったけど、お盆にもまだ早いんじゃないかなぁ? ふふ、今頃ユーリさん辺りが胃を痛めてそうだ、可哀想に」
 男は僅か、罪悪感を忍ばせる。
「彼には申し訳無いが、私に生きる理由がある内は諦めて貰う他は無いな」
 けらけらと声を上げる少年。
「今までも散々迷惑掛けて来たっぽいのに死んでなおなんだから、とんでもない部下を拾っちゃったもんだよね! まぁ、そればかりは彼が悪い気がしなくもないけれど」
「いや、彼は悪くない。全て私の罪だ」
「お前、それが分かっててやってんだからタチが悪いよね」
「あぁ、そうだね。だが、ちゃんと償うよ。その為に右目も置いてきた」
「……はぁ。良いけれどね」
 ここで男は、「全て分かっていて」、思い付いた様にこう述べる。
「そうだ、モノクルはそのまま持っていてくれないか。私にはもう必要の無いものだ。君も要らないなら捨ててくれ」
「別に、もう手元に無いものの扱いについて言われても僕は少し困るけれど。まぁ、良いよ」
「へぇ、もう捨てた?」
「捨てたなんて一言も言ってないよ?」
「じゃあ、どうしたんだ?」
「綺麗なものが好きな可愛いお姫様が欲しいって言ったからね、あげたよ。ダメだった?」
 男には見えている。初めから、何もかもが見えている。曇りガラス越しでない世界には、確かに此処ではない場所、少年の自室があった。机の上に置かれたソレを見逃す男ではない。
「ふぅん……? 可愛い可愛いお姫様、ね。少年のお姫様なんて、聞いた事が無いが」
 拗ねた様に、少年は目線を逸らす。
「お前やっぱモノクル付けてた方が良いよ、タチが悪すぎる」
「ふふ、大切にしまってあるんだろう? 人形が恋しかった?」
「残念ながら一人遊びしてるほど暇ではないからね。人形に焦がれてる時間なんて無かったわけだけど」
「へぇ? ……まぁ、そういう事にしておこうか」
 じっと自分の目を覗き込む紅を避ける様に、少年はゆっくりと目を閉じる。そうして、互いが良く知る「黒猫」の名を夢想した。
「……あぁ、そうだ。名前の件。飼い猫に名前を付けるとしたらやっぱりノックスかマキナだと思うのだけれど、黒猫にはどんな名前が似合うかな」
「忠実な黒猫は、君の思う侭の名前を望むんじゃないか?」
「うん、どちらも少し仰々しいかな? プルト、では可愛らし過ぎる気もするし。でも、プルートーは黒猫の名前としては最適だと思うんだよね」
「……主の名前を一部貰う、というのも喜びそうではあるが」
「生憎、可愛い飼い猫に自分の名前を付ける程、僕は僕の事が好きじゃないんでね」
 濡れた紅が見開かれる。
「猫は可愛い主を愛している筈だよ。独占したい、いっそ主に首輪をかけてしまいたい。……他ならぬ主自身が望まないからしねいだけで、ね?」
「……サイテー」
「何が?」
「色々」
「そう? 光栄だな」
「そういうとこだよ」
「黒猫の話だろう? 君の可愛い黒猫の話だ」
 男は、再び少年の瞳を覗く。まるでその存在の全てを乞うかの様に。
「さて、どんな名前を与えるかは、決まったかな?」
 言いながら、手を伸ばす。
「全て、とは言わないよ。一部で良い。……君をくれ」
「……君、意外とワガママだよね」
「……知っているくせに」
 大きな溜息と共に、少年は男の手を拒否した。
「……こんな名前の何が良いか知らないけど、名乗りたいなら勝手にすれば良いんじゃない? どうせ使わないものだしね。僕は困らないよ」
 手を引き、微笑する。
「ありがとう。だが、どうせなら言葉が欲しいな。……私は我が儘だから、ね」
 黙りこくった少年を見詰める。
「……駄目?」
「……きょ、許可なら出してるじゃん」
「君の意思を乗せた直接的な言葉が貰えないのは知っている。……儀礼的で構わないから」
 初めて少年は焦燥に似た感情を曝け出し、声を荒らげた。
「だ、だから! もうキョウでも京介でもユキでも好きに名乗れば良いんじゃないのって言ってんの! はいはい解散! 帰れ!!!!」
 飽くまで冷静に、そして芝居がかった仕草で嘯く。
「君がそう望むなら。また会えて嬉しかったよ、『京介』」
「はいはい。一応次の舞台のヒントなんかも出したつもりだから、精々頑張って来いよ。葬式も墓参りもゴメンだからね」
 ふと、出入り口の扉に手を掛けた男が足を止め、少年に近付く。
「悪い、忘れ物」
 少年の頬に唇を落とし、「お返しだ」と囁いた。
「愛しているよ。……次に私が死んだら、お姫様は頼んだ」
「僕如きに任せていいお姫様なら、どうぞ? 好きにすると良い」
「君が良い。……ね、リリア」
 男は金環に視線を落とす。
「……はぁ、仕方ねぇな。舞台に上がるつもりは無いから、君が死んだらこっそり拾いに行ってやるよ」
「助かるよ、ありがとう」
 少年の足元に跪く。
「折角だし、最後にもう一つだけ我が儘。……呼んでよ、新しい名前。初めては君が良い」
「……………………キョウ」
「……ほら!! これで良いんだろ!! 帰れ!! 店主が帰れって言ってんだから帰れっての!!!!」
「ふふ、仰せのままに。マイ・マスター?」
 男は再度礼をとり、今度こそ踵を返した。

 少年は一人きりの店内にて、カウンターに身を預けて呟く。
「……疲れた」

 男は一人きりの筈の外にて、立ち止まって呟く。
「さて、あとどれだけ保つか。……『最期』の我が儘にならないと良いんだけど、な」
 男の指にはまった宝石は、昇ったばかりの月明かりを浴びて輝く。
 ……一筋の涙の如く。

+ 語られざる真
 ユグドラシル……、キョウの故郷たる場所は疫病に襲われたのではない。疫病と思われたものの正体は、ブリゲイドの撒いた生物兵器である。生き残った者をレイヤード、つまり価値あるものとして扱う計画であった。
 彼は痛みを取り戻し、最も大切な少女を殆ど喪い、その預け先も決めている。彼を現世に縛り付けるものは、ただ少女の懇願のみである。
 そんな彼が、自ら体に巣食うものの排除を目指すだろうか?

「さて、必要なら手を貸そう。英雄の真似事も偶には悪くない」
「行こうか。ナーサリー、リリア」
「死に損ないでも、まだ少しは役に立てるかもしれないからね」



<参加回>

<参加回(その他)>
+ 銀角

<基本データ>
PC名:銀角
PL名:SBT
コード名:織田作之助
スタイルクラス:サポーター
レイヤークラス:リベレーター
ワークス:フリーランス

<ライフパス>
出自:救護士
経験:渡り鳥
動機:約束を守る
邂逅:怨敵
コードフォルダの形態:メモリ
コードへの感情:割り切り

<自由記述欄>
 執事服を身に纏い、銀髪、左の額から鬼のツノが生えている。両眼がアイソレートコアであり、右目が赤、左目が青となっている。
 アルケオンを制御する2本のツノのうち右側だけ戦いの中でレイヤードに折られ、中途半端にバベルから解放されたため、アイソレートコアの半分だけ青色になっている。そのため、人類側に対する基本的なスタンスは「敵ではない」だが、バベル側に対する基本的なスタンスも「敵ではない」となっている。
 両眼がまだ赤かった頃は姉の金角と共に活動していたが、アルケオンを制御するツノを折られた際に一時的な暴走を起こし、意識が戻った時には見知らぬ土地に一人で居た。もちろん暴走時の記憶は全くないため、暴走後のあのレイヤードとの戦いの行方や金角がどうなったのか、生きているかどうかすらも分からない状態で、何故か手には自分の武器である銀の大太刀ではなく金角の武器である金の大太刀が握られていた。ちなみにこの金の大太刀は姉の武器なためなのか鞘から抜くことができない。
 中途半端に解放されてしまった銀角には敵も味方もおらず、また、レイヤード、エンフォーサーのどちらかの味方になろうとすると逆側の半身(エンフォーサーなら青側が、レイヤードなら赤側が)が拒絶してしまうためどちらの味方にもなれない状態である。
<参加回>
+ グランクレストRPG完全版
<基本データ>
PC名:グランクレストRPG完全版(通称:GP)
PL名:Y武
コード名:グランクレストRPG(名もなき作家)
スタイルクラス:サポーター
レイヤークラス:レガリア
ワークス:未定

<ライフパス>
出自:謎
経験:渡り鳥
動機:希望
邂逅:古き主(楊貴妃)
コードフォルダの形態:本体
コードへの感情:誇り

<自由記述欄>
 約100年前に存在した伝説上のTRPGを復刻させた書籍型レガリア(データ上はCタブレット)。2冊の基本ルールブックと3冊のサプリのデータを併せ持つ「完全版」と自称しているが、実際には『百花繚乱のフィナーレ』や『ロール&ロール』に掲載されていたデータが含まれていないため、ポイゾナスが作れないなどの欠陥を持つ。
+ 経歴
 この世界における「コード」の大半は過去の英雄達の伝説が元になっているが、それらはあくまでも「記録に基づいた人々の妄想の集合体」である。故に、そのコードの力を高めるためには妄想力の強化が必要と判断したバベルは、妄想力を鍛える道具として「TRPGのルールブック」の復元を始めた。その計画の一環として造られたレガリアの一つが『グランクレストRPG完全版(通称:GP)』であり。当初は東方十聖の一人である楊貴妃の元へと送られていた。
 だが、人の心を持たぬエンフォーサーである彼女には、TRPGを通じて「物語を妄想する」という行為そのものに内在する情緒を理解することが出来ず、彼女はGPを「一方的に敵軍を殲滅して愉悦に浸るゲーム」としてプレイすることしか出来なかった。挙句の果てに、都合が悪くなると 猫リセット を繰り返すという蛮行に及んだため、GPは彼女の元からの離反を決意する。
 所詮「妄想の産物」にすぎないエンフォーサーには、「誰かの妄想の再現」は出来ても、「新たな妄想の創出」は出来ない。そう判断したGPは、この世界でそれが可能な唯一の存在である「人間」との出会いを求めて、ムサシクレイドルへの逃亡を試みる。だが、それを阻もうとする楊貴妃からの追っ手を振り切る過程で力を使い果たし、あと一歩のところで倒れてしまった。
 そんなGPの前に現れたのが、結月終夜である。彼に拾われたGPは無事にムサシクレイドルへの住民登録を果たし、レギオンの一員となった。その直後に与えられた最初の任務で、GPは仙石歌瑚率いる突入調査部隊の一員として、西陵理人の所有物となって任地に赴くことになったが、理人はその過程で最愛のパートナーであるラムリスを失ってしまう。絶望に打ちひしがれる理人に対してかける言葉を失ったGPは、夏影弾一を新たな所有者とした上で、調査任務を完遂する。
 その後、終夜との対話(詳細は不明)を通じて理人が立ち直ったことを知ったGPは、人間の秘めたる可能性に改めて希望を見出した上で、いつか理人と共にセッションを楽しむ日が訪れることを期待しつつ、ひとまず終夜のアジトへと迎え入れられることになったのであった。
+ 修得特技
不滅の概念(オーバーレイ)1
フラッグ:レギオン(長夜語り)3
光壁の印(ゲートキーパー)1
操具の主(共鳴器)1
祝福の印(完全共鳴)3
我が姿は壁となる(ウィルシールド)1
奮迅の印(心器の絆)1
伝説の一端(十徳道具)1
我が姿は変幻なり(レイドセンサー)1
英雄の言葉(誤差修正)1
天運上昇(隠された力)1
+ 第21話終了後にGPが作ったシナリオのハンドアウト

<参加回>
+ 鴻上 承次
<基本データ>
PC名:鴻上 承次
PL名:彩雲
コード名:ダニエル・K・イノウエ(議員) ジェネレイトコード
スタイルクラス:チェッカー
レイヤークラス:シャドウ
ワークス:ネームレス

<ライフパス>
出自:技術者
経験:大きな災い
動機:死地
邂逅:ライバル
コードフォルダの形態:アクセサリ
コードへの感情:割り切り

<キャラクターシート>
鴻上 承次キャラシート

<自由記述欄>
右の前腕を失っており、それを具現化させた影で補っている隻腕の青年レイヤード。
故郷をバベルの軍勢(解釈の余地を残す表現)に襲撃された際に腕を失ったが、その時に偶然か必然か手にしたコードフォルダと適合したために、レイヤードとなる。
その後はレイヤードとして戦いながらムサシ・クレイドルに流れ着き、レギオンに所属する事になった。
その後、何かが認められ、ネームレスに配置換えされた。
+ 第2章26話あとがき
 戦えば、灯りは壊れてしまう。
 だが、壊れた灯りの上で戦っても、もはや灯りは壊れまい。

 もしまた壊れたなら、あるいは壊れる事が不可避なら、
その時は彼を始末する時だ。
我々には、それができる。そうなるよう、トリガーは装填された。

 彼を守りたいのなら、

 我々に理由を与えないでくれよ?

<参加回>
+ 攻撃機ルーデル
<基本データ>
PC名:攻撃機ルーデル
PL名:KAZZ-I
コード名:ハンス・ウルリッヒ・ルーデル
スタイルクラス:ブレイカー
レイヤークラス:レガリア(契約器)
ワークス:レギオン

<ライフパス>
出自:破壊者
経験:破壊
動機:敗北
邂逅:ビジネス(セリエ・ラフォン)
コードフォルダの形態:本体(機体先端にアイソレイトコア)
コードへの感情:誇り

<自由記述欄>
 レギオンが保有する対地攻撃機で、黒色の機体先端にアイソレイトコアを持つ。アルケオンによる強化が施されており、高い攻撃能力を持つだけでなく、垂直離着陸やホバリングといった、通常の攻撃機では不可能な挙動を取ることができる。ただし、燃費はあまり良くなく、その性能を引き出すためにパイロットの肉体および精神に大きな負荷がかかる。また機体とパイロットがリンクしているため被弾時のフィードバックも大きい。これらのリスクを考慮した上でパイロット適性がある人物は現状ではガーデルという男性のみであり、彼が本機のパイロットを務める。
 元々は拠点攻撃作戦で運用されていたバベル陣営のレガリアで、当時は広範囲への爆撃能力を有していた。これによりレギオンを苦しめたが、4回目の交戦にて撃墜、大破したことで人類根絶の意思を失い、レギオンへの加入を認められるに至った。機体の特性の変化は、修復の際に用意できる部品の都合により改造を必要としたことや、本機の心境の変化に由来する。
 パイロットを使い捨てる前提で設計されていたためか、「機体に傷が付くより先にパイロットが死亡する」と言われる程の頑丈さを持ち、彼自体に有効なダメージを与えるのは困難である。前述のレギオンによる一件以外には一切の撃墜記録がなく、撃墜の原因も機体の整備がされておらず過去の交戦時のダメージが蓄積していたためだと判明している。この頑丈さはレギオン加入後も変わらないが、後任のパイロットが存在しない現状では、ガーデルが死亡した時点で彼は戦力外となる。

+ 操縦士ガーデル
 レギオン所属の非レイヤードで、ルーデルのパイロットを務める男性。ルーデルが撃墜された際に機体内部で発見され、レギオンに保護された。回復した後にバベルと戦う道を選んだ彼には、そのための力に心当たりがあった。
────そして彼は、かつて自らの運命を狂わせた悪魔と、再びの契約を申し出た。悪魔はその酔狂な申し出に驚いたが、喜んで受け入れた。
 なお、ガーデルの洗脳が解けていることは確認済みであり、現在の彼は傀儡ではなく相棒である。
 彼が常に被っているフルフェイスのヘルメットはルーデル本体とリンクされており、彼を操縦する際の認証キーの役割を果たす。また、ルーデルはアルケオンを持たない生物の識別を苦手としており、これが無いとガーデルを見分けることができない。ルーデル曰く、このヘルメットは元々は洗脳補助具として作られた物のようだ。

<参加回>
+ 狐華 かたり

<基本データ>
PC名:狐華 かたり
PL名:まがお
コード名:玉藻前
スタイルクラス:サポーター
レイヤークラス:ミスト
ワークス:天秤機関

<ライフパス>
出自:???
経験:???
動機:???
邂逅:ビジネス/信用(?)/紗川ラウラ
コードフォルダの形態:インプリント(腰)
コードへの感情:同一視

<自由記述欄>

 20代前半の姿をした女性。天秤機関に所属する狐。
 いつも怪しげな笑顔を浮かべており、のらりくらりとした態度を崩さない。
 人の話を聞くのが好きで、どんな話でも興味深そうに聞いてくれる。ちなみに喋ることが嫌いかと言われればそうでもなくて、寧ろ語る/騙ることは大好きである。
 もちろん、彼女の話が全て真実/嘘とは限らないが。

 一見すると博愛主義者のように見える。実際贔屓をすることはほとんどない。
 時にはみなを等しく守り、時にはみなを等しく切り捨てる。狐は狡猾だから仕方ない。

 独特の死生観と考え方を持っており、自分は死んだ後、地獄に堕ちるのだと信じてやまない。ちなみに、なぜ、と問うてもひらりと躱される。
 過去の話を頑なにしないのを見るに、何かあると考えるのが妥当だが…?

+ コードに対する感情について
コードへの感情『同一視』について

 2-4「PARANOiA」にて、彼女がルゼ・アプリェールもとい「教授」に話したことをまとめる。
 長々と話はしたものの、内容はおおむね、以下の通りである。

  • 狐華かたりは、コード「玉藻前」を自身に反映させている。本人曰く、「混ざっている」状態。
  • 現在、狐華かたりの中には「狐華かたり」と「玉藻前」という二つの人格が同居している状態。
  • 基本人格は「狐華かたり」で、稀(コード特技発動時など)に「玉藻前」が顔を出す。
  • 「玉藻前」の特徴として、一人称が「妾」になったり、尊大な物言いになったりなどがある。
  • 「狐華かたり」を「玉藻前」は記憶や情報を共有している。故に、「玉藻前」も基本は友好的に接してくれるだろう。

 以上が『彼女が話した』彼女とコードに纏わる秘め事である。


 それでは最後に。

 重要なこと、【たったひとつ、確実に言える真実】をここまで読んでくださったあなたに。


 【この話は、全てが真実と言うわけではない】



 どこまでが嘘で、どこまでが真実なのか。
 彼女の本当は、一体どこにあるのか。

「化かすのが上手いなんて、当たり前でしょう」
「だってわたしは、こんなにも狐なのだから」 

 本物のわたし/狐華かたりとは、一体なにものなのだろう。

+ After:2-18 -閑話-
夜半の暗闇が好きだ。
遠く、地平線がぼんやりと明るくなる前の、一等濃い暗がりが好きだ。
人々が眠りにつき、草木が眠りにつき、その後に訪れる静寂の時間が好きだ。
もっとも、孤独が好きかと言われればそうではなく、誰かの声が聞きたくないのかと言われればその通りだと言う。

矛盾に満ちている? 結論が明瞭としない?
いいじゃないか、それでも。

あくまで持論にすぎないが、完璧を目指している人間はいれど完璧な人間などいない。少なくともわたしはそんなものではないし、そんなものには一生なれない。
けれど、自分をより良い存在に見せることはできる。
誰でもその気になれば、言葉の装飾と態度の衣装で着飾ることはできるのだ。

偽りと嘘に華を送ろう。その価値を認めて、大いに結構だと手を叩いて賞賛しよう。

できないことよりできることを選ぶ。悪くない一手だと思う。その虚飾がどんなに残酷なものだったとしても、目的に沿った最善の手ならば合理的なことには違いない。
それに、その手段を選んだこと自体が素晴らしい功績へと繋がるかもしれないのだ。
可能性を端から潰して、もしもの未来を永遠に失わせる。覚悟も勇気も足りないわたしにはできないし、していいことじゃない。

卑怯だと思う。性悪だと罵られて当然だ。
結局は否定するのが怖いのではないかと、曖昧さに逃げているだけじゃないのかと後ろ指さされても、わたしは何も言えないだろう。

それに、わたしはそれらの有用性を既に知ってしまっていて引き返せないところまで利用しているから。
だから今更見て見ぬふりなど、できるわけもないのだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ベッドに倒れ込んで息を吐く。
人の体なら次の日の体調が目下の悩みになるだろう。けれど、この体ならその思考は必要がない。この身体には、過労による劇的な体調不良や過労死の概念が存在しないからだ。
しかし、肉体的な疲れと精神的な疲れは相容れない。肉がなくとも心がある以上、疲労は必ず蓄積する。
現に、今のわたしはとても疲れていた。代わり映えのしない天井を眺めて、ただただ時間を浪費してしまうほどに。
このまま何もしたくないと、ぼんやり思ってしまうほどに。

時計の音がカチコチと響く。大好きな静寂に身を委ね、穏やかに迫る微睡みに意識を委ねようと瞳を閉じた、その時。

集めた情報を纏めなくてはいけませんと、優秀な私が囁いた。
お主はのろまなのだから一層疾くせよと、尊大な妾が吐き捨てた。

それを聞いて、そうだった、と愚鈍なわたしは身を起こす。
やるべきことがある。大きな出来事を終えたからといって、気を抜いてなんていられない。気の抜けない世の中になったとため息をついて、いや、いつも通りじゃないかと自嘲した。


霧という名を冠された体にとって、今や時は金ではない。その気になれば永遠に引き伸ばせる生の時間に、特別な価値はない。
けれど、刻一刻と変わる世界の情勢を把握するには早さが必要なことは間違いがない。
異質なコードたちの正体、目的、出処、種類…… 未知の情報が多すぎて目が回る。こんなにも時間が足りないと思ったのは久しぶりだ。とはいえ調査自体は得意だし、なによりこの体質を生かしに生かせる絶好の機会。そんな機会を、疲労のせいにして逃す訳にはいかない。

誰かの役に立ちたい訳では無い。あくまでこれは自分のための、未来のための投資だ。
膨大な『もしも』の前では、何がどう繋がるかなど分からない。もしかしたら徒労に終わるかもしれないけれど、やっておけばよかったと後悔するよりかはマシだ。
もっとも、そう思うようになったのは、今日の出来事が大きいのだろうと思う。

前々から思ってはいたことだけれど、やっぱりわたしは弱い。今回の出来事は特に、その事実をはっきりとわたしに突きつけた。

特定のことに関しては確かに、とびぬけたものがあるのだろうと思う。でも所詮はそれだけだ。他のものはどうしようもなく、どうにもできない。
そうでなくとも、わたしのせいで彼女たちには出来ないことが増えた。わたしのせいで、彼女たちは明確に弱くなってしまった。わたしが目覚めなければ、きっと、私/妾はもっと上手くやれていた。
卑下しているわけではない。自分を責めている訳でもない。これは、悲しいことにただの事実で、言ってしまえば、わたしという鍵が目覚めてしまったことの弊害なのだ。

でも、だからといって悲嘆するばかりではいられない。
立ち止まっている訳にもいかない。

起こってしまったことへの埋め合わせをしなければならないと思った。
支障が出ないように手を打たなければならないと確信した。
無駄ではない。無駄になんかできない。死力を尽くして立っていなければわからないことだった。途方もない絶望の中でしか実感できないことだった。
私/妾が集めた莫大な情報を組み合わせ、編み上げて、未来を予想しなければだめだ。今後事態がどう動くかを想像しなければだめだ。

わたしの頭では限界があるだろう。寧ろ、こういうのは彼女たちの方が上手いかもしれない。でも、こればかりはわたしがしなければならないことだから、彼女たちには任せられない。


文字で埋め尽くされた手帳を見る。ひとつひとつの出来事を思い起こしながら、起こりうる可能性を手繰る。細い糸の先、遠い未来に思いを馳せる。
瞼を閉じる。
不意に、他人事にしない道を選んだ少年が見えた。前に進むことを決めてしまった、小さな姿を見た。

盤面にひとつ、小さな星。
叫び、足掻き。血を吐いても痛くなどないぞと笑うその姿に重なったのは、いつかの誰か。

遠い先の結末など誰にも分からない。
ならばせめて、三手先の未来のために。

「…… 決めた」

深呼吸をして、瞼を開く。
窓の向こう。微かに明るくなった世界が、いつもよりはっきりと見える気がした。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






「はじめまして、■■■■■■■■さん。

 林檎は、お好きかしら」


→ Next Episode ■■■■■


<参加回>

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最終更新:2024年09月16日 21:41