GM:助動詞にいてんろく
第3話
before
下位天使ルーグを撃退した後、ルノ・フィレードは小林渚のクラスに転入することとなった。
彼女はここ2週間ほどの行動については、廃墟を主な拠点にして行動していたが、ある時白衣の男にどこかに連れて行かれそうになり、
その男から逃げ出した先でサーバントに襲われ、アリカに助けられたという。
白衣の男らしき人物については先週の調査により知っていたPCたちだが、その男がルノを連れ去ろうとしたという事実を知って、
より疑念を抱くことになる。
また、緋沙からの話によると、御神楽とアリスについては月曜放課後に連絡を取ってくれれば、面会が出来るように場を設けるとも言われる。
月曜朝~授業 ~3週間後の一大イベント~
月曜日、例によって生存訓練・魔力開発など撃退士としての基礎的な力を高める授業が多い日であるが、
今日は授業の前に高校2年生(アイ、渚、燕)のクラスのHRでは教師から3週間後に控える一大イベントについて話があった。
「3週間後に控える京都・奈良への修学旅行だが、各自、自由行動の時の班を作って下調べをしておくこと。」
「毎年、ろくに調べもせずに行って、自由時間を無為に過ごす学生がいる。君たちはそんなことにならないように。」
「あと、班は3~6人で作って、メンバー表を提出すること、クラスをまたいでも構わない。」
高校2年生は班分けで少し騒がしいクラスの雰囲気の中で、今日の授業を受けていた。
月曜放課後 ~新たな友人、日常、恋愛模様?~
修学旅行の班分けは燕、アイ、渚、緋沙で同じ班で回ろうということになる。
彼らはルノも誘ったのだが、彼女は転校生によくある質問攻め状態であり、クラスメイトの中で同じ班で回りたいという申し出がひっきりなし、ルノも断り切れずに彼らとは別の班で回ることになった。
そんな具合に班分けが決まりつつある中、アイのもとにはとある2人のクラスメイトが話しかけてくる。
「あ…あのっ…すいません。もしまだ班のメンバーが埋まっていないようでしたら、私たちも修学旅行の班に入れてほしいのですが…」
「他のクラスメイト達はどうにももう皆さんメンバーが埋まってしまっているようでして。
何とかお願いできませんかね。」
アイと同じく和服に身を包んだ陰陽師のクラスメイトである文月彩羽と、丁寧で落ち着いた印象のダアトの少年、津崎博人である。
アイは少し考えたのち、他の班に入れないなら仕方ないということで、彼らをメンバーに加えることを了承する。
だが、アイたちはメンバー表を提出した後で妙なことに気付く。
どうやら、他にも空きのある班はあったという。どうして2人はわざわざアイたちの班に来たのだろう…
疑念を覚えつつも、渚、燕の2人は修学旅行に向けて、先生に言われた通り、下調べを始める。
その結果ちょっと京都・奈良の地理に詳しくなった彼らだが、下調べの途中でちょっとした噂を耳にする。
なんでも、修学旅行2日目の夜には肝試しが行われることが慣例らしいが、毎年その場では何かしらの
不思議なことが起こるという。
学校の七不思議的な眉唾ものの話ではあるが、彼らは頭の片隅にこの話をとどめておく。
なお、時を同じくして、もう1人の高校2年生であるアイだが、彼女は今日も研究室を訪れていた。
ただ、今日に限ってはちょっとしたアクシデントが。
隣の研究室から謎の警告音が。
「ちょっ、これ、まずくね? う、うわー」
そんな声が聞こえてくる部屋から逃げる生徒たち。
幸い大事にはならなかったが、久遠ヶ原のカオスな日常を改めて知ったアイであった。
話は変わって、神喰アリカだが、彼は実観アリスとの面会に学園警察の施設を訪れていた。
緋沙の案内に従って部屋に入ったアリカを出迎えたアリスは、アリカからルノとペンダントを狙って天使が現れたという話を聞き何か心当たりがあるような素振りを見せる。
それ以上の追及には答えないアリスであったが、P9Pのことについては素直に情報を語る。
もしかしたら、話をする中で、アリスもまたルノと同じくアリカに好意を持ち始めていたことも素直に情報を語った要因かもしれない。
後日その聞き出した拠点を風紀委員会が調べたところ、その拠点は既に引き払われており、特に成果もなく終わる。
月曜真夜中 ~屋上の少女~
夕暮れ、アリスとの面会から帰るアリカはいつもの屋上に向かうルノの姿を見かける。
屋上にて何か考え事をしている様子のルノに声をかけたアリカは、振り向いたルノの目に薄く涙が浮かんであるのを見る。
自身が好意を抱くアリカが自分を気にかけてくれた嬉しさと、先程までの悩み事の不安の入り混じった彼女は、
アリカに自身の悩み事、不安を語る。
「私は、記憶が、無いじゃないですか?」
「もちろん、わたしはクローンだし、皆さんと同じ、18年の記憶が無いのは分かります。」
「でも、私が、生み出されてからの、2か月ばかりの、記憶もないのは、どうしても、わたしを不安にさせるのです。
私のルーツが分からないような気がして。」
アリカは「この学園に来たの自体が事故ってやつ(燕のこと)もいるんだし、自分のルーツなんか気にしてもしょうがないと思うんだ。」とルノに語る。
ルノもそれで幾らか気が楽になったようで、アリカにお礼を言い、また自身の中で膨らんだ恋心を抱え、屋上から立ち去っていく。
火曜朝~授業 ~中庭に吹き荒れるは恋の嵐~
火曜日の午前、渚とアリカは前々からの懸案事項であったルノの持っていたペンダントについて調べ始めた。
どうやら、その宝石はアウルを生み出したり、溜め込んだり、その性質を変質させたりできるものだという。
また、撃退士が使えば、すぐさまアウルを回復できるという便利なものである。
同じころ、授業をさぼって中庭で休んでいた燕はある意味大変なことに巻き込まれていた。
初等部4年の女の子、海原満月ちゃんから告白を受けていたのである。
突然の小学生からの「好きです!」との告白に驚く燕は、「その好きはloveか?likeか?」と問うが…
「LOVEですっ! 紛うことなきLOVEですっ!」
と断言されてしまう。
それでも、「いや、もしかしたらそれはloveじゃなくて憧れとかかもしれないじゃないか。」という燕に、満月ちゃんは
「それじゃ、ぼくのこの気持ちが単なる憧れとかじゃないか1週間考えてみますっ!」
「1週間たって、それでも先輩のことが好きだったらまた来ますっ!
その時には先輩も真剣にお返事お願いしますっ!」
そう言って、中庭から立ち去っていく。
来週のこの時間も波乱の予感である。
同じころ、アイは購買に先日実験で壊してしまった弓の代わりの武器として、今度は銃を調達しようと
購買に向かうのだが、運悪くも売り切れていて、手に入れられずに終わる。
満月ちゃんが立ち去った後、中庭に立ち尽くす燕に近づく影が1つ。風紀委員として巡回中の緋沙である。
授業をさぼって出歩いていた燕を注意する一方、どうやら先程の満月ちゃんとの会話を見ていた緋沙は彼女なりにも思うところがあったのだろう
「ねえ、例えば燕は私のことどう思ってるの?」
と普段の彼女ならしないような質問を投げかける。
中庭には今日も恋の嵐が吹き荒れる…
火曜放課後 ~焼きそばパン事件~
火曜放課後、先程武器の調達をし損ねたアイは、今度こそ銃と実験器具を手に入れようと、別の購買を訪れる。
普段あまり行かない購買に行くと、恋愛委員の高良香織が購買のおばちゃんと新商品の試作をしている場面に出くわす。
「いや、おばちゃん、それは流石にどうかと思うよ?」
おばちゃんの驚きの新発想に引き気味の高良先輩は、良い逃げ道を見つけたとばかりにアイに新商品、「メロン豆乳焼きそばパン」の試食を押し付ける。
渋るアイだったが、おばちゃんの自信に満ちた「あたしの味覚を信じな!」の声に押され、新商品を一口…
気分が悪くなって購買からそそくさと退散したアイが再びの銃の調達に失敗したのは言うまでもない。
一方、プールに出かけた恋愛委員、渚は先輩が食品テロの現場にいるとも知らず、プールでいちゃつくリア充を眺めているのであった。
アリカは、昨晩のルノの様子が気にかかっていたのか、ルノの記憶を取り戻す方法はないかと、調べ始める。
その結果、どうやら、恋愛委員の高良先輩の兄が久遠ヶ原で記憶について研究しているらしいと知る。
彼は、高良先輩に兄とコンタクトをとってくれるよう頼むことにした。
燕は緋沙と満月ちゃんについて、恋愛委員の渚に相談しに行く。
その結果、恋愛委員会室のホワイトボードの観察対象リストの筆頭に燕の名前が出る訳であるが、
それはまた別の話である。
火曜真夜中 ~温泉と偶然と~}
火曜夜、燕、アリカ、アイ、渚、ルノの5人は偶然にも皆、温泉に行っていた。
皆それぞれにゆっくりしたり、浴場で転びそうになったりしていた訳であるが、その中でもアリカは、
温泉でのぼせて調子を悪くし、休憩室で休んでいた。
そんなアリカを偶然見つけたルノはうちわを借りてきてアリカをあおぎ始める(本当はルノは
「ひざまくらとかしちゃってもいいかな?」とか思っていたのだがそれは断念)。
はたから見ている人には微笑ましい光景に見えたことだろう。
水曜朝~授業 ~専門科目と買い物と~
水曜、高良先輩から昨日アリカから連絡があった件について返答が来る。
曰く、今日の放課後なら兄に会いに行けそうだとのこと。
そんな連絡を受けつつ、彼らは水曜午前を専門科目の授業、調達に費やすことになったのである。
ただ、昨日のみんな揃っての睡眠不足のせいで、どうにも調子の悪い彼らだったが、こんな時に限ってなかなかポーションを手に入れられないのである。
水曜放課後 ~研究室の戦い~
水曜放課後、再びポーションの買い出しに奔走する彼らは、ルノの助けも借りて、ようやくアリカはポーションを手に入れる。
だが、アリカがそこまで苦労してまで手に入れたポーションを偶然に手に入れてしまった人もいた。
廃墟に向かった燕は先週の占い師と再び遭遇する。
「なんじゃ、1週間ばかりのうちに随分と面妖な顔をするようになったのう。」
まるで、すべての事情を知っているかのような占い師であるが、燕と二言三言会話したのち、燕の調子が悪いのに気が付いたのだろうか、
ポーションを燕に投げて渡す。
「ほれ、これでも飲んでおけ。そんな顔をしてるようじゃ、実る心も実らんぞ。」
驚きつつも占い師に礼を言って立ち去ろうとする燕に占い師は一言気になる言葉を投げかける。
「そうじゃ、お主、というかお主ら。白い翼が迫っておるぞ。せいぜい気を付けるんじゃな」
そして、高良先輩の兄に会いに行った渚は…
にこやかに出迎えてくれた彼曰く、ルノのような短期間の限定的な記憶の欠落は、通常に起こりうるものでなく、
アウル能力や天魔の力など、ある種魔法的なものによる場合が多いらしい。
ただ、詳しくは本人の様子を見てみないと分からないという事だ。
話を一度中断して、研究室の奥の方に高良さんが資料を取りに行った時、そちらの方で争うような声が聞こえた後、
彼が慌てて転がり出てきて、それを追うように2人の男が出てくる。
高良さんに攻撃をくわえようとした彼らの間に割って入った渚は、いつもの印象に似合わず鋭い光を瞳に宿していた。
曰く、ルノの記憶が戻ると困るという人物に雇われたという彼らは「悪いが、こっちも仕事なんでね。」と言って、
ターゲットを渚に変え、攻撃を仕掛けてくる。
渚は、その場にいた高良先輩、現場に駆け付けたアイ、燕、アリカの力も借りて、彼らの撃退に成功する。
2人の暗殺者の内、リーダーと思しき男は、渚の渾身の一閃によって倒れたのであった。
after
後日、高良さんのもとにルノを連れてきて診てもらったところ、やはりルノの記憶にはアウルの能力による封印が掛けられているらしい。
封印を解くことは可能だが、術式の媒介になる、アウルを溜め込めるアイテムが必要だという高良さんに、
アリカはルノのペンダントが使えないかと提案する。
それを了承したルノと高良さんは、記憶の封印を解く術式を発動させ………
おまけ ~アプリコットさんの優雅な日常~
月曜 魔力開発の授業を受ける。
スクールアイドルとして動画を配信。
火曜 授業時間の誰もいない寮で独りになる。
午後、温泉に出かける。
水曜 専門科目の授業を受ける。
屋上に行き、アウルを回復させる。
アプリコットは語った。「これぞニート生活」と。
GMコメント
さて、第3話です。
今回は中途半端なところで話が終わっています。
次回冒頭はそこからダイレクトに続きます。
あと、今回は新キャラ、津崎博人くんと文月彩羽さんの顔見せも。
今回はほんとに顔見せしかしなかった2人ですが、次回以降、
特に修学旅行編では色々と関わってくると思います。
最終更新:2014年10月25日 23:47