GM:助動詞にいてんろく
第10話
Last Battle
人造天使を撃退・封印し、その奥にある通路を抜け、研究所の最奥部へと向かおうとする撃退士たち。
ここで、撃退士達は学園で待つ友人にメールを送るなど、決戦への準備を進める。
ちなみに、ここでアプリコットはどことも知れぬ宛先にとあるメールを送っていたのだが、
その内容は遠からず彼女の口から明かされることとなる。
さて、全ての準備を終え、通路を進もうとしたとき、そこでアプリコットとアイが1つの提案をする。
自身でゲートを開き、ゲートを通って、ウィルの部屋に奇襲と掛けようではないか、と。
ゲートの中を通る故、通りすがりの天魔、天然のトラップなどゲートの中では様々なトラブルが
襲いくるものの、そこは高レベル撃退士の彼ら。
それらを軽くいなしてウィルの部屋に続く出口に飛び込む…
(なお、ゲートの中でどさくさ紛れにアリカへの恋心を募らせて半ばヤンデレ化したアイが
アリスに対して誤射を装って軽い一撃を加える一幕があったが…)
ウィルの背後に空いたゲートから飛び出た渚の奇襲に、ウィルは驚いて跳び退る。
互いに睨み合いながら、ウィルの方から口を開く。
「ほう、随分派手な登場だね。 けれど、招待客が裏口から訪れるのはいかがなものかと思うよ。」
「まあ、君たちがわざわざこんなところまで来てくれた理由を考えれば、分からない訳でもない。」
「それに、君たちにはリリカをやられたしね。
君たちの相手はリリカだけで十分だろうと高をくくっていた私の失策とはいえ、私にも君らへの恨みはある。」
(※ 撃退士達は地下室で見つけた手記より、RiLiCaというのは人造天使のコードネームだと知っていた。)
こうして決戦前の会話・口上を朗々と語るウィルを遮って、遅れてゲートから出てきたアプリコットが口を開く。
「研究は全てここでやっていたのか?」という唐突な質問に、ウィルは少しばかりの嫌な予感を感じながらも
肯定の返事を返す。
それを聞いたアプリコットは満足そうに、2つ目の質問を投げかける。
「ゲームは好き?キミは」
「その質問に『イエス』と答えるとろくでもないことが起きそうだが、あえて肯定の意を示そうじゃないか。
さあ、どんなゲームを見せてくれるんだい?」
さて、アプリコット曰く、某ゲームから着想を得て、とある依頼を彼女の旧知の天使、
グリゴリの長たるシェムハザにしていたという。
その内容は…
…あと10分でこの研究所にICBMが着弾するよ。
(※ この核ミサイルは研究所は吹っ飛ばすけど、周りには被害及ぼさない規模だし、放射能汚染も起こさないよ。
人間に知恵を与えた天使、シェムハザの技術ってすげー
ってか、それもはや核じゃないんじゃ…)
「成程、本音を言えばせっかくの来客ともう少し語ることもあったのだろうが、
どうにも天使様がそれを許してくれないらしいな。」
「さて、決着を付けようか。」
こうして、始まったウィルとの決戦。
ウィル1人に対して、ここまでの冒険を乗り越え、学年でも屈指の実力を持つようになった撃退士が5人。
その人数差にあっても、彼はそのアウルの力、意志の力で大鎌を振るい、互角の勝負を繰り広げる。
そして…
劣勢を悟ったウィルは最後の一撃を燕に与え、その刹那、燕の持っていたRiLiCaを封印した封印の要石を奪い取る。
だが、その行動でできた隙を逃さない渚の一撃で、遂にウィルは倒れたのであった。
Ending ~脱出~
戦いが終わったその時、アプリコットの携帯が鳴る。
かけてきたのはクロミエルである。どうやら門番はどうにかしたらしい。
「おい、アプリコット。 今、天界から飛んで来ようとしているものは何だ?」
明らかにアプリコットの無茶に怒っているクロミエルだが、一刻を争う今、言い争いで時間を浪費する気もないらしい。
ゲートを開き、撃退士達の脱出路を確保する。
アプリコット・アイ以外はクロミエルの開いたゲートで研究所を脱出。
自力でゲートを開ける2人は研究所に残り、ウィルに煽りの言葉を掛け、その後、ゲートによって立ち去る。
決戦の後だろうと、核が迫っていようと、彼女らは「いつもどおり」なのである。
さて、1人残ったウィルであるが、窓際に歩み寄り、空を見上げる。
そこには次第に大きく見えてくる1つの点。
「おお、あれか、例の天使様からの贈り物は。」
「さて、上手くいくかは分からんが、足掻けるだけ足掻くか………
……その後、彼が何をしたかを知る者はいない。
Ending for Apricot ~「駄」天使の長、来たる~
研究所の決戦から数日後、アプリコットの部屋を訪ねるものが一人。
グリゴリの長、シェムハザである。
アプリコットは丁寧に彼を部屋に招き入れる。
流石の彼女にとっても、いや、彼女だからこそ、彼は尊敬すべき人物らしい。
「どうだ? この前飛ばしてやったやつは?
なかなか自信作だったんだぜ。いやはや、ミサイル自体は何にも難しくも無いんだが、周りに被害を出さんようにとの注文だとな。
なかなか気を遣ったよ。」
どうにも、彼も随分と破天荒な人物のようである。
アプリコットの性格・行動は彼から影響を受けている部分があるのかもしれない。
立ち去り際、シェムハザはアプリコットに1つアドバイスを残す。
「アプリコット。 やるなら何事も徹底的にな。」
この言葉がいずれどのような結果をもたらすか、今はまだ誰も知らない…
Ending for Tsubame ~2人は今日も、これからも~
燕と緋沙はいつぞやのゲーセンに来ていた。
「またあいつらかよ…」
「リア充爆発しろ。」
他のお客さんの視線に彼らは気付かない…
それはともかく、そういえば、と緋沙が話を切り出すことには、あの後風紀委員は現場となった研究所跡地を
一応一通り調べてみたらしい。
爆破されただけあって、資料・機材の類などはほぼ残っていなかったものの、唯一、「封印の要石」は無事に残っていたらしい。
それ自体は、要石がそれだけ強固だというだけでいいのだが、問題は、その要石にRiLiCaは封印されていなかったらしい。
謎は残る…
「まっ、気にしてもしょうがないよね。
それより、今度はクレーンゲームの方行こっ! ちょっと欲しいもの見つけたんだ。」
そう言って、緋沙は燕の手を引いてお目当ての景品に向かう。
余談だが、この日の閉店時、ゲーセンの店員は自販機のコーヒーだけが売り切れていることに首をかしげた。
Ending for Nagisa ~少女であり少年の彼、かく思う~
渚は今回の件に大いに協力してくれた友人、彩羽と一緒にいた。
「小林さん、今回の件はお疲れ様。
それにしても、あんなに人造天使がいたとはね。」
「僕としても、同じことに興味を惹かれ、研究する身としては思うところもあるけど。」
この場に渚以外がいたら、彼女、いや彼の「僕」という一人称に違和感を覚えるものもいただろう。
けれど、渚は以前から知っていた。
彼は、天使に詳しい友人の少年であることを。
「にしても、最初は確か博人のわがままに付き合って修学旅行班にご一緒させてもらったんだっけ。」
「あのころはこんなことになるなんて思いもしなかったよ。」
「ときに、恋愛委員会のキミとしては、ああいうのをくっつけたりしようとは思わないの?」
話題は恋愛委員会の件に。
更に彩羽は渚に、渚自身は恋愛しないのか?と聞く。
「今はまだいいかな。」と答える渚に、彩羽は、
「まあ、それもいいんじゃない?
きっといつか、自然に見つけ、分かるものさ。
その時、キミの隣にいるのは誰なんだろうね?」
そう言って立ち去る彩羽は小さく続きをつぶやく。
「僕は少し、期待しているよ。」
Ending for Arika & Ai & All ~久遠ヶ原はいつも~
アリカは今日もお気に入りの場所、屋上にいた。
だが、ここはもはや彼だけの場所ではなかった。
アリカが空を眺めていると、後ろから声をかけてきたのはルノである。
「アリカ先輩、またここにいたんですね。」
「やっと全部終わったんですね。 最初もここでアリカ先輩と会ったんでしたね。」
その頃は秋風が吹き始めるころだったのに、今は屋上にいるのは少しばかり寒さがしみる。
そんな屋上にもう一人。
「アリカ先輩、屋上にいると寒くないですかー? って、ルノ、貴方もいたの?」
アリスである。
アリカに会いに来た彼女は、ルノの姿を見つけると、少し残念そうである。
その時、階下の研究室から爆発音が。
だが、アリカは動じない。ここにいるとよくある事である。
しばらくして、研究室から避難してきたアイが屋上に現れる。
アイの後ろからは、毎度おなじみ迷惑先輩が。
「どうしてだ!? 今度は何が足りなかったんだ? 愛か!? 幼い女の子への愛か!?」
喚く先輩はアイによって屋上から捨てられ、最上階のベランダにでも墜落していったのだが、その場にいる誰もが、それを止めなかった。
扉の影からは双子悪魔が
「「きゃー、あの人ちっちゃい女の子が好きなんだってー。 こわーい」」
と適当に煽る。 彼女らはどこにでも現れては好き勝手に場をかき回していく。
後にこの屋上の様子は彼女らの口からアプリコットに伝えられ、今週の放送のネタとされることとなる。
屋上からダッシュで去っていく悪魔たちを追いかけようとするアリカを止めたのは渚である。
「こんな面白い場から、当事者を逃がしてなるものか」という恋愛委員会である。
階下からは「おーい、小林さん。恋愛レポートは書けたかい?」と高良先輩が現れる。
状況を見た彼は、面白く話を転がそうと、意地の悪い笑みを浮かべ、
「アリカ、そんなキミにはこれをあげよう。
逃げる気力もなくなる、おばちゃん謹製の最新作だ。」
彼の手には怪しげな焼きそばパンが握られていた。
さて、ここまで騒げば風紀委員が来て怒られるのは自明の理である。
緋沙は燕を連れて屋上に現れる。
「やっぱり屋上で騒いでるってのは貴方たちだったのね。
苦情に対応するのはこっちなんだから、こんなところで騒がないの。」
こうして図らずも皆が屋上に揃ってしまった。
ここにあるのは、騒がしく、カオスな学園の日々である。
きっと彼ら、彼女らにはこれからも平穏な日々なんて来ないのだろう。
なぜなら、ここは久遠ヶ原であり、ここにいる皆は撃退士だからである!
GMコメント
後期エリュシオン卓最終話ですー
結局シリアスさんの出番はわずかで、騒ぎ、狂い続けたキャンペーンでしたが、まあ、これが久遠ヶ原のカオスな日々です(←おい)
あと、最終話とは言いましたが、もう1話、番外という形でやろうかなーと思ってます。
そっちも期待。
ま、ともかく本編はこれにて完結。
PLの皆さん、ありがとうございました!
最終更新:2014年12月14日 17:29